【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
撃墜され墜落する緑谷を一瞥して、フレクトは手を空に翳して横に振る。宙に映し出された、世界各国トリガーボムを仕掛けた場所でヒーロー……重病者達が悪あがきする様を笑みを浮かべて鑑賞しながら、フレクトは呟く。
「あと五分……ついに人類の救済、その第一歩が始まる……数多のヒーロー達の死によってーー!」
その中には、トリガーボム爆発までのタイマーがあった。残り5分30秒をすでに切り、タイムリミットは間近、我らの勝ちに揺るぎ無しと余裕すらフレクトは感じていた。
「させない!!」
「む?」
しかし、それを許さんと撃ち落とされた緑谷は即座に起き上がり、再び殴りかかるが、顔面にその拳は届かなかった。
「トリガーボムは、絶対に止める!!」
「無駄な事をーー」
「ナッツパァンチ!!」
なりふり構わず、フレクトの視界から消えた緑谷は、その股間に禁じ手のナッツパンチまで叩き込む!が、それも虚しく阻まれた。
「浅はかな、重病者の中でもお前は何と浅ましい……よかろう、仲間と共に殺してやろう」
防衛装置から放たれたレーザー、それらが反射して緑谷の身体を幾度も貫き、肉を削る。身体中から血を流し、身を焼く痛みに絶叫しながら意識は遠のき、その中で緑谷は、フレクトが映す世界中の様子が目に入った。
戦っている……絶対諦めないと、必ず世界を救うと皆が戦っている。
麗日さんが、蛙吹さんが。
上鳴くんが、瀬呂くんが、峰田くんが。
切島くんが、障子くんが、耳郎さんが
八百万さんが……。
皆が戦っている……かっちゃんも、轟くんも。
皆を守る為に、笑顔を守る為に。
ならば倒れるな、考えろ緑谷出久。目の前の敵を撃ち倒す術を考えろ!血の一滴が体から無くなっても、心臓が止まっても!この敵を倒す方法を!
「ふー!ふー!ふー!!」
「……何故死なん?こいつ、死ねない病なのか?」
すでに身体中をレーザーが通過し、血溜まりを作り出血多量が見て取れた。それでまだこちらを睨み息を切らす緑谷に、フレクトも流石に気圧された。
しかし、それでもその膝から力が抜けて膝を付いた。目眩、視野狭窄、血を失いすぎた中で、その肩を誰かが叩いた。誰だと振り向くそこに居た人物に、緑谷は目が開かれた。
「ロ……ディ……」
引き返せと言ったはずの、ロディ・ソウルが、緑谷に首を横に振りながら言う。
「やめろイズク、もう大丈夫だ……」
諦観の笑みを浮かべたロディが、緑谷の横を通り過ぎ、そのままフレクトの元へ歩き出した。
「な、何を、何でここに……」
「こいつを……フレクトに渡す為だ」
そう言って背を向けながら、ロディは左手に持った『解除キー』を見せつけた。それは、緑谷が懐にしまっていた筈だった。今肩を触られた際にスられたのかと、手を伸ばしたが、緑谷はうつ伏せに倒れ伏した。
「言われたんだよ……こいつを渡したら、オセオンの爆発は止めてくれるって奴らによ……」
「ロディ……お前……ふざけ……」
「仕方ねぇだろ、イズク……弟と妹の命がかかってんだから……」
突然の裏切りに緑谷は、抜けた力が戻ってくるほどに怒りが湧き上がった。しかし、嫌な怒りだった、確かに最初は宝石強盗とヒーローではあった、出会いも最悪……けれど、家族を大事にしていて、話も弾んで、分かり合えて……何より、緑谷が手を差し伸べて必ず助けると決めた人間からの拒絶が、悲しみにもなって緑谷を締め付けた。
「イズク……俺は、所詮しがないチンピラだ、ヒーローのお前みたいな鋼鉄の意志なんて持ち合わせてない、世界と家族……二つに一つしかねぇなら、どっちかとるしかねぇんだ……」
そんなロディから突きつけられる、悲しい現実。お前はヒーローで、俺はチンピラ、お前のように強くない、そして家族が世界より大事で仕方がないのだと、解除キーを持ったロディがフレクトに歩み寄っていく。
「俺の親父もそうだったんだろ……」
そして、自分たちを捨てた父親もまた、世界か家族かを迫られ、家族を選んだのだろう……ロディの質問にフレクトは答える。
「そう、君の父親であるエディ・ソウルは……人類救済爆弾の開発に協力してくれた……」
「何が協力だ……俺ら家族を人質にして、言うこと聞かせたんじゃねぇか……!」
「おかげで彼は正しい選択ができた……そして、キミも父親と同じだ、愛する者を守る為に正しい選択をした、私も同じ……私は人類を愛したからこそ、この計画を選択した」
ふざけるなよ、緑谷は立ち上がるもまた倒れ、這いながらロディに近づく。目の前の男は、お前の父親を無理矢理言うことを聞かせ、そしてお前と弟妹の幸せを壊したやつだぞ、ならばそれに屈してお前は裏切るのかと緑谷は声を上げる。
「ロディ……ロディ!やめろ、ふざけんなよ……」
フレクトの前に辿り着いたロディは、顔を向けずに言い放った。
「諦めどきだぜ、ヒーロー……人は、こうやって裏切られていくんだ……俺もそうだ、いつもの事さ……嘆く事、ねぇだろ」
緑谷の心に、ヒビが入った。世界が白くなる、これでもう……全てが終わる、ロディが解除キーをフレクトに渡す刹那……緑谷はふと気付いた。
ロディの服にあるフードから……彼の魂、個性であるピノが出てきていて、強い眼差しで首を横に振っていた。そして、羽を片方上げるーー。
合図か、そうなんだな、信じるぞ!ロディ・ソウル!!お前を信じて、立ち上がるぞと、ゆっくり、ゆっくり、気取られないように、力が戻った身体を、緑谷は起き上がらせーー。
ロディが解除キーを、フレクトに渡す間際、コイントスの要領で宙に弾いた!
『ピキュイイ!!』
ピノの鳴き声と、フレクトが視線を解除キーに向けたのは同時!緑谷は即座に立ち上がり、叫んだ!!
「Get over here!!」
「むぅううう!?」
打撃は通らない中で唯一、引き寄せだけはフレクトに通じた!緑谷はフレクトを引き寄せ、ロディから引き離すように反対側へと投げつけた!!
そして宙を舞う解除キーは、ピノが嘴でキャッチしてロディはそのまま、制御システムのドアまで走り出した!
「よっしゃあ!狙い通り!!」
「信じてたよ、ロディ!!」
道は開けた!希望はまだ潰えちゃいない!!しかしこれをフレクトは許すはずがない。
「愚か者めぇ!!」
怒りの号令と共に壁面の防衛装置であるレーザー砲が、ロディに全部向けられたのを見て、緑谷はロディに叫んだ!
「まっすぐ!そのまま走って!!」
「ああ!信じるぜ、ヒーローぉ!!」
照射されるレーザー、しかし緑谷はそのままロディの元まで自らを引き寄せるや、ロディの肉壁となる!!さらに!レーザーの軌道を引き寄せで切り替え、レーザー砲台を同士討ちで破壊していった!
しかし、最後の一台だけは、レーザー砲が奇数台だった為に破壊できず、ロディに向かって放たれた!
「のわぁあ!?」
命中する間際、ロディは何かに背中を押されて転倒して、顔から転んだ。すぐ立ち上がり、振り向けば床に倒れ伏し血を吹き出す緑谷を見かける。
「イズク!?」
「行ってくれ!!キミが頼りだ、頼む!!」
庇ったのだ、レーザーから!この間際まで、信じて一直線に走れと、その為に自ら身体を盾にして緑谷はロディを守り抜いたのだった!
「行かせると思うなぁ!!」
ロディを行かせまいとフレクトが飛んで向かってくる!しかし緑谷は立ち上がり、ロディには触れさせないと、フレクトをそのまま真上に引き寄せ軌道を変え時間を稼ぐ!
「ヒーローの役目だけど……本当は、キミにやらせるべきじゃないけど……!頼むロディ!爆弾を、止めてくれ!!」
そもそもが、こんな場所まで連れてきてしまった。そしてヒーローなのに、巻き込んで危険な目に遭わせてしまった自責、さらにこの最後を頼らざるを得ない事、全てに緑谷は申し訳ないと思いながらロディにトリガーボム停止を頼んだ。
「……死ぬなよ、イズク!!」
託されたロディは、そのまま扉に入って駆け出す。それを見送った緑谷は、ゆっくりと降りて来て見下ろすフレクトを見上げ、一つ深呼吸をして意識を研ぎ澄ました。
「ここから先は行かせない……!!」
「無駄な足掻きをぉお!!」
フレクトは声を上げて緑谷に向かった、だが、それでも勝利は揺るがないとフレクトは確信があった。この重病人はこちらを引き寄せたり方向を変えたりはできても、こちらに傷一つつけられはしない。
つまりは風前の灯、如何様にでも対処できると拳を振り上げ緑谷へ殴りかかった。
その一撃は、空を切る。そして放たれる緑谷の右拳。愚かな、当たるはずがない、弾かれるだけだとそのまま迎え打つフレクト。
「ぶぁあ!?」
だったが、異常が起きたーー。
緑谷の右拳が、フレクトの左頬に思い切りめり込んだのだ。
初めてだった。
フレクト・ターンは人生で初めて、殴られる痛みを体感して、後ろへ吹き飛ばされた。