【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
フレクト・ターンは、左頬に叩き込まれた衝撃と痛みに愕然とした。自らの病は全てを弾き返して決して触れる事が出来ない、それは光すらも、瞼に埋め込んだ装置が無ければ目は見えず、それを可能にするまで何とか病を操るのにどれ程掛かったか。
食事も、衣服を着る事も、この背中にある反射を操作するサポートアイテムがなければ苦労した。
誰も触る事が出来ない、だから両親も、友人も、恋人との触れ合いも不可能であった。
それを……目の前の重病人が初めて、触れて殴って来たと言う事実に、フレクトは地面に背中から倒れず浮き上がって立ち上がり、緑谷に驚愕の顔を見せた。
「馬鹿な……貴様、何をしたっ!?」
思わず尋ねてしまう衝撃!しかし緑谷は鼻で笑って言い返す。
「当ててみなよ、正解したらハワイ旅行に招待してあげるからさ」
「ふざけるなぁ!」
自分で考えろ馬鹿と、煽るような返答にギリリとフレクトは歯軋りして、緑谷に再び飛び掛かる!まぐれだ、あり得るはずがないと反射の勢いをつけた拳に対し、緑谷は右足を抱える!
「チェェストォオァアーー!!」
「おぶぉおああ!?」
気合いと共に放たれた緑谷の右足の足刀蹴りが、またもフレクトの反射を貫いて身体をくの字に折り曲げ壁まで吹き飛ばした!書物を守る防護壁がひしゃげ、フレクトは壁に叩きつけられこそしなかったが、その場に崩れ落ち腹を押さえて口を開き吐瀉物をはきちらす!
「な、何故……反射が、作用しない!?」
おかしい、何故だ?あり得ない!!今になって人を阻んできた自らの病が、個性が!どうして発動しないのだと焦るフレクト。一体、目の前の少年は何をしたのだと、近づいてくる緑谷に目を向けてフレクトは、後ずさった。
「さっきまでの僕と思うなよフレクト・ターン、人は成長する、数秒前の僕よりも今の僕は強くなった……僕がただガムシャラに攻撃してたと思ったら大間違いだ」
「な、なに!?」
「ヒントをあげるよ、僕はね……さっきの攻撃であなたを診たのさ、医者が患者に触れて診察するように……ね?」
どうして攻撃が通っているのか?ヒントをやるよと緑谷はフレクトに言い放つ、決して力押しで貫通したわけではない、からくりがあるんだと緑谷は煽った。
緑谷は、最初の一撃やフレクトの証言により個性『反射』を解析する為、様々な攻撃を放った。背後からの奇襲、高威力の一撃、カウンターによる瞬時のタイミング、急所への攻撃……これらを踏まえてフレクト・ターンの個性『反射』は、常時発動型の個性と断定した。
だがしかし、そうなれば疑問ができる。常時発動型ならば、何故服は着れるのか?それこそ食事は?息すらも出来ないし、排泄すらままならないだろうと浮かび上がる。となると……浮かび上がってくることが一つある。
フレクトの個性は『生活に支障が無いくらいには融通が効き、本人も操れている』と言う事だ。でなければ、ここまで生きて存在すらしてないのだから。
それはフレクトの周囲を浮遊する鏡のようなサポートアイテムのお陰か、それくらい何とかしようと個性を必死に操ってできるようになったかは分からない。
そこから緑谷は、攻撃による『触診』を開始してこの反射の『形状』を確かめた、フレクトの反射は果たして『周囲を囲むバリア』なのか?『皮膚から反射の力場を生み出す鎧』なのか?
そしていくつかの攻撃により、後者であると理解した緑谷。そこから緑谷が導き出し、見事成功させた攻略法……それは。
『フレクトの反射の力場に干渉する』であった。
緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』は、元々母から受け継いだ『引き寄せ』の個性に、AFO因子により個性因子が歪められ、変異した個性である。本来の個性は『引き寄せ』なのだが、これはどんな物も引き寄せる。時には物を手元に引っ張ってくる事も、向かってくる物体の方向を引っ張り逸らす事もできる。
いや、正確には『できるようになった』だろう。
脊髄を引き抜いて殺すしか出来なかった入学時から、雄英体育祭の轟との戦いで、轟自身を引き寄せ、その氷や炎を引き寄せ軌道を変えて互角以上に渡り合った。
デメリット解消の為に林間合宿では岩を引っ張り、仮免試験では手元だけでなく別方向にも使えるようになった。
インターンで、エンデヴァーから指導を受け『概念系は何でもできると思え』と、現実から乖離し理想の動きまでできるようになった。
そんな今の緑谷出久ならば!フレクト・ターンの反射の方向に干渉して捻じ曲げ、こじ開けて攻撃を叩き込む事も可能なのであった!!
イメージするならば、鎧を引き剥がしてそこに拳を叩き込む!それを実行し、見事に緑谷出久は成功させたのである!!
「お前は個性を病と言ったな……生まれながらの病と、貴方の言葉も分かるよ……けど!生まれて抱いてきた個性は!どうしようもない!!」
前にも、轟に言い放った事を緑谷は思い出す。生まれ持った個性は、否定ができない、異形も、危険性も、抱えて生きていくしか無い、それを否定はできない事を。
「僕だって諦めかけた!人を殺すしかできない恐ろしい個性と!悪に堕ちるしかないと!けど、それを引き上げてくれた人が居た!あなたには居なかったんだろう、それでここまで来てしまった!行き着いてしまった!!」
否定と絶望の果てがお前なのだろう、手を引いてくれる友人も、恩師も、差し出された手を握る事も出来なかった事の辛さも分かってしまう。
「同情はする、けど!だからって……今普通に生きて幸せな人を!お前の八つ当たりに巻き込むな!!フレクト・ターン!!」
それで今、普通に生きて幸せな人々の平和を脅かす権利は、誰にも無いと叫ぶ緑谷に、フレクトは叫び返した!
「だぁまれぇええええ!!」
「ごぅう!?」
ロケット弾頭の如く飛来したフレクトと、その拳を思い切り腹に叩き込まれ、壁に叩きつけられた緑谷、更にフレクトは手を緑谷の頭部にかざして壁にめり込ませ、潰しにかかる!
頭蓋が軋む最中、緑谷はフレクトの身体を離すように引き寄せで引き剥がし、そして押し返す!フレクトの拳と、緑谷の拳が交差して頬を擦り皮を擦り切る!
「ぬぅおあああああ!!」
「はぁああああああ!!」
拳が、蹴りが、互いの肉へ打ち込まれ鈍い音を響かせる!フレクトのパンチが緑谷の胸板に叩き込まれれば、返す一撃と緑谷のアッパーカットがフレクトの頭部を跳ね上げ、タタラを踏んだフレクトが即座に持ち直し緑谷の足を払い、倒れた緑谷がそのまま腹部に蹴りを放つ!
拳を伝って、分かってしまう……フレクトの歩んできた人生が、悲しみが!個性で苦しんだ同士だから緑谷は分かってしまう!だがそれでも、この男を倒して止めねばならないと、緑谷は振りかぶったフレクトの拳に勝機を見た!
「ぬぅあぁあ!!」
振りかぶった右拳、それを引き寄せ軌道をずらしフレクトの体勢を崩す緑谷、前のめりに崩れたフレクトの頭部を迎え撃つように、緑谷の右ハイキックがフレクトの顔面にめり込み、そのまま振り抜いた。フレクトはそのまま仰向けに吹き飛び、床に落下して倒れ伏す。
そして……戦いの終わりを告げるかのように、ブザーと共にアナウンスが鳴り響いた。
『トリガーボム、システムダウン、爆破カウントを停止します』
トリガーボムが止まった、宙に映し出されたタイマーが止まっている、そしてメインシステムらしき場所を映した映像に、ロディが解除キーを突き刺したのが緑谷にも見えた。
終わった、世界は救われた……ヒーローの勝利だと、緑谷は安心から一息を吐いた。
これで終わり?まだまだ続くよワールドヒーローズミッション!