【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『全世界を震撼させた無差別テロは、ヒーローチームの活躍により未然に防ぐ事に成功、テロを主導したヒューマライズの幹部達も次々と逮捕され、事件は収束に向かっています』
『同団体の代表にして指導者、フレクト・ターンは、日本のヒーロー、イズク・ミドリヤによって殺害された模様……調べによりますと、トリガーボムの再起動キーと心臓を繋ぎ合わせた装置を停止させる為、やむ無く殺害に至ったと供述しております』
『オセオン警察の発表によると、再起動キーはフレクトの心臓と同期し、たとえ仮死状態で心停止しても再度動き出せばカウントが開始されるようになっており、イズク・ミドリヤの証言は事実との事が分かりました』
『ヒーロー活動内でのヴィラン退治における殺傷は、日本国の場合刑法35条、正当行為にあたるのかは長年議論が交わされており……オセオン国の刑法でも議論されております』
『緑谷出久へ上がる声は賛否両論となっているようですが、裁判等の情報は入っていません』
『雄英高校はこの事態に対し、根津校長は声明を出しておらず……』
オセオン市内、病院。
屋上にて緑谷出久はスマホを眺めながら、此度の事件の顛末を振り返った。
トリガーボムは一つも起爆しなかった、ヒーロー達は世界を守り抜いた。その中で起きた惨劇、ヴィランを殺したという事実を緑谷出久は噛み締めていた。
この事件で、緑谷出久は二人のヴィランを殺した。
一人は傭兵であり弓矢のヴィラン、ベロス。
そして、フレクト・ターン。敵の首魁だった男。
殺さなければ、トリガーボムは爆発していたのだ。それはオセオン警察検死官の報告が正式発表されて、そうしなければいけないと世界に報じられている。
緑谷はスマホのニュース動画から目を離し、右手を見た。幾度と、蘇らせられるとはいえ、擬似的に人を殺してきた個性である手。それがついに、本当に命を奪ったのだ。
フレクトの心臓の熱に脈動が、今でも思い出せてならない。今更後悔するのかと、自らを嘲笑する幻覚すら聞こえそうだった。
「どうするかな……本当に……」
これ程大々的に報じられているのは驚きだった、フレクトが戦いの様を世界に流したらしく、下手したらゴア動画としてネットタトゥーの様に調べたら出てくるぐらいには広まっている。
殺したフレクトに言い切った。
世界を救う為に返り血を浴びるなら、喜んで被ると。
後ろ指を差され、世間の風評に晒されようと、身を捧げると。
改めてこれが、背負う辛さなのかなと呆けながら空に視線を向ける中、屋上の扉が開かれた。
「ここに居たか、イズク」
意外な人物が現れた、訪ねてきたのは……エンデヴァーだった。緑谷は一度驚いたが、ゆっくり立ち上がり、深く頭を下げて言う。
「大事な任務で、勝手な行動をとってしまい、申し訳ありませんでした……エンデヴァー」
事の始まりが買い出しからの捕物で、ここまで大事になったことを緑谷は謝罪した。
「いや、いい……数奇な事件だったな、そしてよくやってくれた……」
エンデヴァーからすれば、最早誰がそんな流れでこんな事態になろうかと言う、責めも叱りもできやしないと緑谷を逆に気遣った。ただの、まだ仮免のインターン生がよくぞやってくれたと。
「……焦凍くんのお見舞いに来たんじゃないんですか?」
「もう行った、結構な苦戦を強いられたらしいが、そこまで酷い怪我はなかったそうだ」
あの別れて先に行った時に、強敵と当たったらしい。爆豪もズタズタでリカバリーガールが来るくらい酷かったなと、自分は身体中穴ボコにされて1日で立って歩くまで快方してるあたり、治癒力ってあるのかもしれない。
欄干にもたれ掛かる緑谷の横にエンデヴァーが立ってしばらく互いに黙る……先に口を開いたのはエンデヴァーだった。
「つらくはないか?」
投げつけられた疑問、この人本当に不器用だなと思いながら、緑谷は本音を言った。
「少し堪えてます……」
決意を吐いておきながら、いざこうしてのしかかったら重いこと……あれだけ中学時代、擬似的に人を殺しておきながら、いざ本当に人を殺めるとこうもなるのかと。
「……エンデヴァーさんは、ヴィランを……いや、いいですやっぱり……」
だから、聞きたかったのかもしれない、ヴィランを殺めたヒーローは居るのか、そして失礼過ぎるだろと聞くのをやめた緑谷に、エンデヴァーは答えた。
「ヒーローがヴィランを殺してしまう事は……稀にある事だ、殺されかけた際の反撃、個性暴走の鎮圧の為……理由がなんであれ、バッシングはどうしても受ける」
「…………」
「ヴィランを殺したヒーローが辿る道は、二つある……一つは、そのバッシングや殺した事実に押しつぶされ辞める、もう一つは……その殺した命を背負って活動を続けるだ」
ヴィラン殺し、それはこのヒーロー社会のヴィラン退治においてやはりある事で、バッシングは来る。そして、ヴィラン殺しのヒーローの結末もまた決まっているとエンデヴァーは説いた。
辞めるか、それでも続けるかだと。
「殺したヴィランだけじゃない、助けられなかった被害者、その被害の余波で自ら命を断つ者……ヒーローは、それら全てを背負って進まねばならない」
エンデヴァーの言葉を聞いて、緑谷は拳を握った。その通りだと、だから、あのフレクトとの戦いで言い放った言葉を、自分は決して曲げてはならないのだと、力が籠る。
「明後日には帰国だ、帰ったらまたインターンを再開するぞ」
あとはどうするかお前次第だと、エンデヴァーは言ってはないのだが、そう言われた気がする。エンデヴァーはそのまま屋上から出て行き、緑谷一人だけがまたその場に残された。
背負って進む、か。緑谷は立ち去ったエンデヴァーの背中を見送って、また続いて屋上に入ってきた人物を出迎えた。
「ここに居たか、クソヒーロー……」
「やぁ、運び屋さん」
ロディだった、お見舞いに来て病室に居なかったから探していたのかもしれない。クソヒーロー呼ばわりに運び屋で返して、ロディはそのまま欄干にもたれながら緑谷に言った。
「お前、俺が運び屋なの警察に言わなかったんだな?」
「はー?何の事?」
「来たんだろ、事情聴取……宝石強盗の」
ロディから尋ねられたのは、二人が出会った宝石強盗の件だった。運び屋としてロディは受け取った宝石を渡す手筈だったが、それを緑谷が確保したのが始まりだった。そもそも、緑谷がロディを守った理由は最初から宝石強盗のメンバーとしての重要参考人としてが理由だった。
だが、オセオン警察の取り調べに緑谷はこう言った。
『すいません、僕の勘違いでした』と。
つまり、ロディを庇ったのだ、宝石強盗のメンバーとして突き出す気だったのに。
「どういう風の吹き回しだ?イズク、お前……俺を警察に突き出したいから俺を守ったんじゃないのか?」
それが理由なんだろ、何故俺を庇ったと言われた緑谷は、ロディに指を立てながら話した。まずは人差し指を立てて、一つ目の理由を語る。
「一つ目、僕は警察に殺人犯として冤罪を被された、その仕返し」
「はぁ?ヒーローがやる事かよ?」
恨むにしてもヒューマライズの団員が警察に居て、それによる冤罪である、もう晴れたが余程恨んでいたらしい。
「二つ目、その方がややこしくない、治療中でさっさと話を終わらせたかったから」
「結局テメェの事情と胸先三寸かよ……」
二つ目はと中指を立てて話す緑谷。治療中で警察との時間なんて割きたくないからと、なんとも自分勝手な理由だと呆れるロディに、薬指を立てて三つ目を語った。
「三つ目、約束したから」
「約束だぁ?誰と?」
三つ目はまた個人的な約束と、誰とだよというロディに、緑谷は驚きながら言った。
「覚えてないの?言ったよね、キミを救うってさ」
「あ………」
色々あって、忘れていた。あの洞窟で手を差し出されて、自分は掴んだ事を。何とも傲慢で、考えなしな……それでも、こうして自分は救われた事をロディは思い出して恥ずかしくなって緑谷から顔を背けた。
「僕が帰っても悪さしないでよ……したら次は……」
「しねーよ、真っ当に生きるさ頑張って……ハラキリザンシュなんて勘弁だぜ」
本当に悪さしないのかとニヤニヤ笑いながら緑谷はロディを見ると、頭髪から現れた彼の魂、ピノが羽を親指に見立てグッドサインを見せた。
「お前も、ヒーローやめるなよ……世界に広まって辛いだろうけどさ……」
「うん、頑張るよ……」
お互いに、これから行くのは茨の道だと分かってる。けど、だからこそ倒れず踏み締めて超えていこうとロディのエールに緑谷は応えると決めた。
「……お腹空いて来た、ロディ?この辺で美味しい食事できるとこ知らない?」
「はぁあ?お前病人だろ?」
「病院食じゃ力にならないんだよ、ほら奢るからさ、何ならキミの弟妹も連れて来なよ」
「言ったな、じゃあ三人奢ってもらう事にするよ、後でダメとかナシだからな?」
軽口を叩き合いながら、二人は屋上から出て行く。まるで、この数日間の出来事は夢だったかのような足取りで。
こうして、世界の危機は去っていった。
世界中のヒーロー達と。
一人のチンピラと。
一人の殺人者(ヒーロー)によって。