【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
緑谷は帰りの飛行機の中で考えていた、今後自分はどうなるのかと。世界を救うという大義の果てに一人のヴィランを殺害し、それを世界に流された。
はっきり言えば……雄英には居れないかもしれない。いくら世界を救っても、人を殺した映像が世界に広まったのだから、そんな学生を雄英がそのまま迎えてくれるとは思わなかった。
根津校長から退学を言い渡される覚悟と、日本ヒーロー界隈から追い出される覚悟はしないといけないのかなと、機内で寝ては覚めてを繰り返し、緑谷は日本へ帰国した。
帰国便から降りて荷物を受け取り、身構えた。あんな映像が世界に流れた以上、インタビューの為にマスコミが押し寄せてくると。
思ったのだが……特に何事も無く緑谷達は雄英へ帰る事ができた。もしかして、世界的な危機だったから、今それどころではない?交通網がまだ麻痺していたりするのかと思いながら空港を出発して、雄英高校へと向かった。
ヴィラン襲撃時のように、雄英高校の門にマスコミが殺到していたり……という事もなかった。異様な静けさすら感じた緑谷、爆豪と轟はさっさと門を通ったが……その正門と校舎を見上げながら緑谷は足が止まってしまった。
今更ここに、自分が踏み入れていいのかと。まるで見えない壁が阻んでいるようで、緑谷は立ち止まってしまう。
「どうした、緑谷?さっさと寮に戻ろう」
「あ……うん……」
クラスメイトも、知っているだろう。本当に人を殺した事を。例えそれがヴィランだろうと、ヒーローによるヴィラン殺しのタブーを行ったクラスメイトを、今までと同じように見てくれるなんて無いだろう……足取り重く緑谷が歩く中、声がかけられた。
「緑谷少年!!」
校舎から、必死に走って来る人が居た。オールマイトだ、彼は息を切らして緑谷に走り寄って、ぜぇぜぇと大変だろうにそれでも早くと駆け寄って来る。
「オールマイト……」
「無事でよかった……現地に行ったリカバリーガールが出血が酷いと言ってたから……」
「いえ、まぁ……大丈夫です」
肩や腕とあちこちに触れて大丈夫かと尋ねるオールマイトに、緑谷は力なく返答した。そして、オールマイトは彼に告げた。
「緑谷少年……今から、校長室まで来てほしい……」
やはり来たかと、緑谷は覚悟を決めた。こんな爆弾を、流石に雄英が抱えるわけにはいかないかと。フレクト・ターンを殺したように、今度は僕が死刑宣告を受ける番だなと、心配する轟と、眉間に皺寄せる爆豪を見て、緑谷は力なくも強がって笑った。
オールマイトに連れられ、緑谷は校長室まで向かった。
「おかえり、緑谷くん!よく、帰ってきてくれたね?」
校長室にて待っていた根津校長は、いつもと変わらず朗らかに緑谷を迎えた。だからこそ怖かった、流石に学校としてはキミを置けなくなったと、やんわり言われそうで……どうしようもないんだと宣告を受けるのが見えた。だから、緑谷出久は一礼し、胸ポケットの生徒手帳とそこに挟んだヒーロー活動仮免許を、校長の執務机に置いた。
「お返しします……」
「はい、じゃあ返すね」
「えっ?」
ここにはもう居られない、ヒーローにもなれない以上もう必要無いと返した生徒手帳と仮免許、それを丁寧に根津校長は緑谷へと返した。
「緑谷くん、大変だったね……そして、つらかったろう……そうするしか無い状況だった、だからキミはそうした、違うかい?」
「…………」
そうだと言いたかったが、緑谷は断言をできなかった。あの場に居たのが、また別のヒーローだったら……自分以外だったら、もっと違う結末があったのではないかとやはり思ってしまう。
「ヒーロー活動は……その場面の判断の遅れで命がこぼれ落ちる事もある、時には非情な判断をしなければならない事も……それはプロヒーローとして雄英を卒業してから……早ければインターンの時に直面し体験した生徒も沢山居る……」
「……」
「僕は、キミの判断を決して間違っていたとは言わない……他のヒーローでも、同じ結末に至ったと僕は思う、緑谷くん……雄英は、ここでキミに指導している先生皆が、キミの味方だからね?だから、こんな事しちゃいけないよ?」
こんな事とはつまり、自主退学の事。返されたヒーロー活動仮免許と、生徒手帳を見つめながら、緑谷は深々と頭を下げた。
そのまま1-Aアライアンス寮に緑谷は戻ると、皆が談話室で緑谷を出迎えた。
「緑谷くん!よく帰って来た!!」
「お疲れ緑谷、怪我は大丈夫?」
「大将!やっと帰って来たな!」
皆が、いつも通り笑顔で迎えてくれて、緑谷は……少しだけ、胸が痛んだ。皆、無理してるんじゃないかと、人殺しを触れないように笑顔の仮面を被ってるのではと、緑谷の笑顔は引き攣っていた。
ああ、笑えよ緑谷出久……せっかく持って皆が気にしないように声をかけてくれたんだから、振る舞えよ、気丈に、大丈夫だと。緑谷はそう言おうとしたが、口から乾いて出ない……。そんな最中……。
「緑谷くん……辛いん?」
その声にハッとした、麗日お茶子の声だった。
「辛かったら、辛いって言ったらええよ……」
麗日も、この任務に参加して怪我をしているのに、ガーゼが貼られたままの頭で、緑谷に近寄ってそう言った。
「緑谷、大丈夫だからな、おいら達分かってるから……緑谷が頑張ったの、怖かったの分かってるから……」
峰田も緑谷に大丈夫だと言う、あんな選択を迫られた恐怖を、そして必死に頑張って戦った事を皆理解してると。
「辛い選択でしたでしょう……決断への恐怖は当人しか計り知れないと、大丈夫ですからね、緑谷さん?」
あの場の恐怖や選択した決断への心労は、当人しか分からない、だからこそ自分達が、クラスメイトが居るんだと八百万も言う。
ああ……本当に、キミ達はなんと優しすぎるのか……せめて一人くらい非難してくれたほうがまだ楽になれたかもしれない。その方がまだ振り切ってひたすら進み続けられた、だって今まで一人で頑張って来たのは慣れていたから。
雄英に来て……多分自分は、甘くなった。非情さが消えていった、だから……ヒーローとして、フレクトに手を伸ばした。
「フレクトもさ……個性で色々と人生駄目になったの、分かっちゃって」
「うん」
「あの場に居たのが……違うヒーローだったら、こんな事にはならなかったのかなって考えてさ……」
「うん」
「手を払われて、世界を救わなきゃって……いつもこんな個性だから、慣れもあったんじゃないかって……」
「ええ……」
「けど、けど……!いざ本当に、命を奪ったらさ、取り返しつかないって分かってさ……やっぱり……辛いよ……!!」
崩れ落ち、引き絞るような嗚咽を緑谷は漏らしながら泣いた。身勝手なくせに、殺したくせに、なんとか違う道がフレクトにあったのかもしれないと後悔しながら……。
しかしもう取り戻せない、この世界でのフレクト・ターンの結末は死であった。そうする事でしか、彼を止める事はできなかったのだ。
雄英高校は、クラスメイトはそれでも緑谷出久を迎えて優しく包み込む。
だからこそーー。
緑谷出久は、このしばらく後に、雄英高校から去る事になるのであった。