【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
プロローグ キミはあまりに早く走りすぎた
緑谷出久が雄英高校に入学して、一年が経とうとしていた。
一度は腐り、諦めかけたヒーローになる夢。オールマイトと出会って引き上げられて改めて目指し、そして入試を突破して得た入学。
クラスメイトとの出会いと、ヴィラン連合襲撃での個性暴露、雄英体育祭での轟との死闘に、職場体験での師匠たるグラントリノとの特訓と、ヒーロー殺しステインとの生死をかけた一瞬の戦い。
爆豪と組んで、オールマイトへ完全勝利を果たした期末試験。
I・アイランドで久々に父親と出会い、知らぬ間に決まっていたフィアンセ、メリッサとの会合、そして起こったテロ事件。
血を流して頑張った林間合宿は、またヴィラン連合に襲撃され、攫われた爆豪を助けに、ヴィジランテに扮してオールマイトと共にAFOと対峙した神野……。
そして仮免試験。爆豪との禊の決闘……ヒーローインターンで出会った最高の先輩、通形ミリオと共に立ち向かった死穢八斎會、オーバーホールとの戦い。
準備から終わるまで楽しかった文化祭、アクシデントもあったが成長を感じれたクラス対抗戦。
離れ小島、那歩島でのヒーロー活動と、ヴィランとの戦い。
さらにヒーローとして研鑽を積んだ、エンデヴァー事務所のインターン。そして……世界規模の危機を止めた、オセオンのヒューマライズ事件。
たった一年で、色々あったと……緑谷出久は雄英高校屋上で、周辺の景色を眺めながら緑谷出久は思い返していた。
雄英高校の屋上、立ち入り禁止の場所であり、そこへ出るための扉は今……固く閉ざされている。しかし、今の緑谷なら個性を使えば楽々と外から登って来れるわけで、緑谷はヒューマライズ事件以来、暇があればここで一人景色を見るようになっていた。
学校も、先生も、ヒューマライズ事件での自分を庇ってくれた。A組の全員にも、辛いと吐いて理解をしてくれた。
本当に恵まれている、恵まれすぎている程に。だからこそ……苛まれるのかもしれない。
お前は、過去にあれだけの事をしておいて、ヒーローになれる気でいるのか?人を殺しておきながら、のうのうとまだ普通であろうとするのか?振り払っても現れるモヤモヤを、ここに来て景色を見たら少しは晴れたから、日課のようになっていた。
昼休みに金網を掴みながら、呆けて景色を見て、チャイムが鳴れば授業へ向かう。放課後の間の少しの時間も緑谷は度々ここへ登っていた。
「不良生徒はっけーん、何してるの緑谷くん?」
その立ち入り禁止の閉め切られたドアを開き、声がかかった。振り返ればミッドナイトが、相変わらずのヒーロースーツと笑顔で立っていた。
「ミッドナイトせんせーー」
「二人だから睡って呼びなさい」
「……睡さん」
「よろしい、学生らしく黄昏てたの?」
ヒーロー名でなく本名呼びを許したミッドナイト、いや香山睡は金網から景色を見る緑谷に、青春してるのかと尋ねて緑谷は力なく笑った。
「まぁ……そんなところです」
「いいわねぇ、思い悩んで青臭くて好きよ……それにしても、屋上に来る生徒はいつの時代も現れるのねぇ」
「そうなんですか?」
「私はあそこの貯水タンクで景色を見てたし、イレイザーにマイク……はここを溜まり場にしてたのよ、伝統って感じがするわぁ」
この雄英の屋上は、かつて雄英で学んだヒーロー達が溜まり場やお気に入りの場所にしていたらしい。立ち入り禁止なのに、もしかして先生達も、目溢しして見てないふりでもしてるのかなと思い馳せる緑谷に、香山は尋ねる。
「やっぱりまだ、引きずってるわよね……」
らしくない、しおらしい笑顔になった香山の言葉に、緑谷は頷く事も、返事をする事も出来なかった。
虚勢が分かる黙秘、強がろうと滲み出してしまって、その癖分かってほしい、察してほしいと浅ましさすらも緑谷自身が自覚し、嫌悪したくなる反応をしてしまい、しまったと顔を見せないために香山から顔を逸らした。
「ふふ、分かるわ……強がろうとしたでしょ、それでさらにあからさまに当たり散らしたようになって……キミは優しいから嫌悪した……違う?」
「うわぁ……全部言い当てられた……」
「大人としての経験が違うわよ、何年ヒーローやってると思うの?」
決して敵わない経験値、積み重ねてきた人生の差異が緑谷を見抜き、手玉に取る。やっぱり敵わないな、プロと訓練一年目の学生はと痛感する。
「けど……緑谷くんは、色々早く経験しすぎたわね……余りにも過剰なくらいに……」
香山は緑谷の左頬に右手を添えて、優しく撫でた。
思い出してしまう。仮免を受かってその後、誘われて身体を重ねた事を……忘れる事はできないから、顔を振ったりして振り払ったりしたがやはりあの時は鮮明に、脳にこびりついてしまって離れない。
「甘えたくなった?」
「え、あ、それは……あの……流石に、えーっと……」
「キミってやっぱり溜め込むタイプよねぇ……若い子って大概、一度味わったら何度も翌日も、毎日って感じなのに珍しい」
香山はそう言ってから、顔を耳元に寄せながら緑谷に囁いた。
「外出届を出しておくわね……」
その囁きにくらつかない男性っているのだろうか。そして……まだ振り切れず甘えたかったのは事実であった緑谷は、手を振り屋上から立ち去る香山……いや、ミッドナイト先生の背を見て立ち尽くしたのだった。
次回、二度目のミッセンとのエッチ回