【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
野次馬達も、その場に居たヒーローも絶句した。1人の少年が、ヴィランの目を引き抜いた挙句、脳髄から脊髄まで引き抜いた様に。そんな事も気にせず、引き抜いた目と、視神経より繋がる脳髄を傍に置いて、爆豪の元へ緑谷は向かう。
「だ、大丈夫だった?かっちゃん……」
手を差し出して、立たせようとする出久……だが、その手は打ち払われた。
「て、テメェ!クソヴィラン!!つ、ついに殺しやがったな!?」
「えーー」
「何がヒーローだ!ああ!?周り見てみろよ!!テメェのやらかしでドン引きだろうが!テメェみてぇなヒーローが居てたまるかよ!!」
爆豪は即座に立ち上がり、この惨状の場から逃げるように立ち去った。緑谷は改めて周囲を見て、その視線が民衆に向くたび、後退りと悲鳴が上がる事に気付く。
何だよあれ……目をくり抜いたのか?
死んでるじゃん……絶対
人殺し……
何だよ、ヴィラン同士の縄張り争いか?
ああ……やってしまった……遂に。ヴィランの体液に塗れた手を見て、そして涙腺が緩んでいく。
「ヒーローでない人間が、個性を表立って使用する事は違法行為だ」
この場所に駆けつけたヒーローの1人、デステゴロが、厳しい眼差しでそう緑谷に言う。
「少年、キミを拘束させてもらう、悪いがついて来て貰うぞ」
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こうして、緑谷出久は折寺警察署に連行された。そして今、取調室にて静かに待たされている。やってしまったと、手錠をはめられた両手を見つめて項垂れる出久。ついに、人を殺してしまった、幾ら悪人であれ、ヴィランであろうと殺人は殺人である。いや、まだ戻せるかもしれないが遺体も脳髄やらも回収されてるし、蘇生できるなんて信じちゃくれないだろう。
聞いた事がある、異能犯罪者を収監する特殊な刑務所がある事を、もしかしたら僕はそこに叩き込まれるかもしれない……ヒーローだなんだと言う前に殺人犯かと、諦観に出久は天井を見上げた。
「父さん、母さん、ごめんなさい……僕、ヒーローになれなかったよ……」
涙を流しながら天井を見上げていると、扉がノックされて開かれた。
「やぁやぁ待たせたね!」
金髪痩せ身の、鶏ガラの様な男がフランクに語りかけて来た。一体誰だ、この男は?怪訝に眉間へ皺寄せて緑谷は尋ねる。
「あの、どちら様ですか?」
「おいおい!私だよ!!ほら!?」
するとまるで空気を入れたかのように、鶏ガラ男が見知った姿に変身して緑谷は驚いた。
「お、オールマイト!?え、な、なんですかそれ!?」
「プールで腹筋に力入れてる人居るだろ?あれさ」
「嘘だぁ……」
「ふふふ、まぁ私の秘密である個性、その一端としておこうか、まぁそれはさておいて……キミの件で、私が来たわけだ」
オールマイトが、直に話に来たと聞いて緑谷は戦慄する。成る程そうか、僕はヴィランとしてオールマイトに退治される、その為に来たのかと緑谷は頭を下げた。
「楽にとは言いません、この命どうぞ……持っていってください」
「待て待て待て待て!?話が飛躍しすぎだ落ち着きたまえよ!!」
「退治しに来たんじゃないんですか……」
色々諦めた中で、オールマイトは歩きながらこの取調室唯一の小窓を眺め語りだす。
「プロヒーローで無い者が、能力を使う事を禁じられているのは……人の個性が時に、人を殺すからだ……そんな気が無くても、軽い悪戯だろうと、からかいでも個性の種類によっては人を簡単に殺してしまう……」
知っている、自分がそうだから。
「だからこそ、ヒーロー養成の学校があり、プロヒーロー資格がある。決して間違えた力を使わないように、自身の力をしっかり理解する為に」
「はい……」
「キミは、自分の力を知りながら……あんな無茶をしたのかい?」
「そうです……」
「それは……何故?」
この個性は所詮、人を傷つけ殺すしかできない個性。小さな頃から理解している、でもあの時……どうしてなんて、理由は決まっている。
「それでも……助けたかったんです、クラスメイトを……かっちゃんは!クラスメイト達は僕のこと、クラスメイトだとか、仲間とか思ってなくてもーー僕は、体が動いていたんです!!」
自分が彼らにして来た所業から、ただ力を使いたい、振り翳したいと、ヴィラン候補と思われても仕方ないとは知っている……それでも、こんなどうしようも無い個性で助けられるならと、身体が動いていたのだと叫んだ。
オールマイトは感じた……危うい子だと。
彼は今揺らいでいる、ヒーローかヴィランの間で。この個性でも彼はヒーローになりたいと、ヒーローでありたいと願い、努力を重ねて来たのだろう。しかし、その個性の危険性はそれを決して許さない。
簡単に人を殺せる個性……それを否定された先にある彼の姿にオールマイトは戦慄する。
彼に必要な事、それは『肯定』だ。それは今が瀬戸際だと、オールマイトは決心した。
「キミのした事は決して許されはしない、例えその個性によって蘇生できようとも、キミは何人も、その手で擬似的に殺めて来たのだから……」
「はい……」
「だが、キミはまだ学べる、自分を、個性を……それらをしっかり理解した時……」
『キミは、ヒーローになれる』
緑谷の涙腺が決壊した……どれだけ、その言葉が欲しかったか、どれだけその言葉を求めていたか、否定の累積全てを弾き飛ばす憧れからの一言に、緑谷は泣いた。
「その為には……まず責任を取る事だ、では行くぞ」
「うう……あ、あの、何方へ」
「死体安置所、まずキミ……あのヴィランを蘇生させないと流石に私も擁護しようがないからね?頑張れ蘇生!!」
こうして、デクは警察や当時鎮圧に当たっていたヒーロー達全員の立ち会いの下、ヘドロヴィランの蘇生を『なんとか』行う事ができた。
ヘドロヴィランは戦意を完全に失い投降し、緑谷出久は釈放に至ったのであった。