【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
緑谷出久の叫びを聞いた瞬間、蛇腔病院が崩壊した。
それどころじゃない、まるで土砂崩れでも起きたかのように蛇腔病院から、市街地まで砂塵が押し寄せてくる!次々と飲み込まれる建造物が、まるでチリのように砕け散って崩壊していくのだ!
「何なにナニ!?」
上空から、自らの個性『波動』により飛行して避難所に向かっていた波動ねじれも、彼方からどんどん広がる崩壊に驚く。
「全員走れぇ!!追いついたら護送車も早急に運び出せぇ!!」
爆豪が他のインターン生やヒーローに叫んだ。この時点で幸いだったのは避難がすでに完了し、バーニン率いるグループの区画も護送車がすでに移動し始め、ヒーロー達も引き上げていた事だろう。崩落音と緑谷の声を聞いたヒーロー達も、歩いていた足を一気に走らせ個性を使い避難を開始する!
それでもーー蛇腔病院近くまで、避難をしてない者達が居ないか確かめるために来ていたヒーロー達は……身体は砕かれ塵と化した。
全員が退避する最中、まだ出発してしばらくの避難民を乗せた護送車にインターン生も、バーニンも追いついてしまった。
「ウラビティ!!」
「分かった!!」
緑谷に名前を呼ばれた麗日が、何をしたいのか、何をするのか即座に理解する。護送車に触れていき、無重力となった護送車が浮き上がり、緑谷はそれを引き寄せた!
「人形操りの糸(マリオネイター)!」
不可視空想の産物の糸が護送車を引き上げる!これなら軽々、すぐにこの血肉の景色の範囲から切り抜けられる!緑谷は護送車を引き寄せながら自らも避難所方角に自らを引き寄せ、一気にスピードを上げた!ウラビティも次々護送車に触れて無重力を作り上げ、ねじれも個性の波動で護送車を浮かび上がらせ避難所まで運び出す!
「病院は何してんだ!?誰か!応答しろ!エンデヴァー!!リューキュウ!ミルコ!クラスト!誰でもいい……返事をしてくれ!!」
バーニンが随時前衛のヒーローに呼びかけるのを、緑谷は護送車を運びながら聞いた。
嫌な二文字が……頭によぎってしまう。
『全滅』
あの崩落とヒーローが砕け散った崩壊する力……思い出すのはあの男。
「そこに居るのか……死柄木弔……!!」
死柄木弔……まさか、そこに居るのか?蛇腔病院に居たのか?群訝山荘親玉としてふんぞり返っていなかったのか?
ヒーロー達は、無事なのか?イレイザーヘッド、プレゼント・マイクは?ミルコは?クラストは?リューキュウは?エンデヴァーは?
不安が渦巻く中でも、仕事を全うし、この崩壊より来る死から避難民を守る為、ただ今は緑谷は駆け抜けて、やがて死の気配の領域からヒーロー達となんとか脱出した。
土煙が晴れる中、現れる異様なる地形。
蛇腔病院があったその山間部は、その男を中心とした周囲数メートルだけが残り、その周囲は削れて窪んでいた。
白い髪をたなびかせ、近場にあった……殺してチリにしたヒーローのマントを羽織って、男は近場の培養ケースをこじ開けると、煙が上がり……歪んでしまったケースを見てため息を吐く。
「ああ、殆ど駄目になってらぁ……せっかく手に入れたのに」
赤い薬品弾頭……個性因子破壊薬。かつて死穢八斎會が作り上げた薬品で、わざわざ警察の護送車を襲撃して手に入れたのにと。
「これじゃあオーバーホールも浮かばれないぜ」
砕けた弾頭を眺めながら、死柄木弔は呟いて、唐突に襲って来た頭痛に眩んで、培養ケースを支えにした、
……カワレ……カワレ
「頭痛ぇ……」
普通の右手と、小指と薬指を失った左手で頭痛がする頭を押さえれば、声は止んだ。そして気付いた、足元に媒体があった。そして色々思い出しながら、死柄木は歓喜した。
「いいねぇ、崩壊が自由に操れるなんて……」
触れたら関係なく発動する崩壊、それが自由に操れている。地肌に触れたらそれで掻きむしる羽目になっていた自らの個性が操れている事に気付いて声色が明るくなった。
媒体を拾った死柄木は、電源を入れながら現状を整理した。
「さて、見たところ現状は良くなさそうだが……俺が起きたら始めるんだったな……おいで、マキア……みんなと一緒に始めよう」
その声は引き金、いや、起爆スイッチとでも言うべきか。死柄木の号令により、この蛇腔から離れた群訝山荘で、ある厄災が目覚めたのであった。
「あーあーあー……もうめちゃめちゃだなぁ……ていうかトゥワイス負けてんじゃん、やっぱ地力の差かねぇ?」
群訝山荘の階上から、ヴィラン連合メンバー、Mr.コンプレスは階下で戦う超常解放軍とヒーロー、それと増えるトゥワイス達。
「うわぁああーー!?」
「だめだーー!!」
「おいこっち味方ぁああ!?」
トゥワイスは増えている、増えて押し返してヒーローと拮抗状態へ確かに押し戻した。だが、ヒーロー達がこの奇襲に成功した時点でこちらは『負け』だったのかもしれない。
超常解放戦線、確かに人数からヴィラン達の個性も黎明期以降最高戦力だろうが……統率が取れてない。今この場で持ち堪えはできているが、それは強個性が暴れ回っているに過ぎない。
現に今、トゥワイスの分身が吹き飛んでいる。仲間の攻撃で、あれはいかん。氷の個性持ちだったか……たしか外典とか言う、リ・デストロの懐刀で、ヴィラン連合として戦った際も荼毘が苦戦していたが、独りよがりな戦い方をしている。
「ミスター?逃げねぇのか?」
そんな高みの見物を決め込んでいるコンプレスに、荼毘がさらに上の階から降りてきて尋ねる。
「荼毘、どこに行ってた?お前隊長だろうが」
「テメェもだろが、軍隊ごっこなんざもう機能してねぇよ……他の連中は?」
「私はここに居るのです!」
「おートガちゃん、お帰り」
次いでトガヒミコが下の階から上がってきて、その後ろから恐らく本体のトゥワイスも上がってきた。息を切らしたトゥワイスは、怒りながら声を上げる。
「なんだよもう!マグ姉がやられてから押し返したってのに!あの山脈女に吹き飛ばされるわ仲間からも同士討ちくるわ!俺はモブエネミーかっつの!」
指揮系統が機能してない、俺が俺がと先に出るために同士討ちすら起こっている。いくら増やしても、これでは意味をなさないとトゥワイスは投げ出して来たようだ。
「マグ姉……やられちゃったのですか?」
マグネの死を今知ったらしいトガは目を見開いてトゥワイスに尋ね、トゥワイスは首を横に振った。
「俺なんかのこと庇ってよ……この居場所を守れって俺、言われたのに……こんなんじゃマグ姉がうかばれねぇ!」
託され繋げられたから、今抵抗したのに……押し返した戦線が無駄になったと嘆くトゥワイス、しかしそれに荼毘は言い放つ。
「守れてんじゃねぇか、トゥワイス……現にここには俺にコンプレス、トガも居る……あとはスピナーだな、マグ姉の言う居場所はあくまでヴィラン連合……違うか?」
マグネが守れと言ったのは『超常解放戦線』ではない『ヴィラン連合』だと。そしてお前は確かに守った、マグネが繋ぎ自分達はこうして生きていると、決して守れていない事は無いと荼毘は言い切る。
その瞬間だった。
群訝山荘の地上階の床に亀裂が走り、そして巨大な揺れと共に強大な手が地面を突き破って飛び出して来た。
「マキアが動いた!?」
「目覚めたな、死柄木が……」
超常解放戦線の……いや『ヴィラン連合』の切り札が起動した。それ即ち、死柄木弔の目覚めを意味する。
ヒーロー達がその災害の目覚めに驚愕する表情に、荼毘の口端は吊り上がった。