※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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295話 超えるため

 エンデヴァーからの通信で『ワン・フォー・オール』の名前が出た。しかし自分が持っているのは欠片だ、楽観的な考えをすれば『本物』を狙うだろう、つまりこの場に居ないオールマイトの下に向かうと考える事も出来る。

 

 楽観視は大事故、大惨事の始まりだ。例え欠片だろうが自分はOFAを持っている、むしろ欠片を手に入れて肩鳴らしなんて思い立ってもおかしくはない。

 

 では、今すべき事は何か?緑谷出久は考える。避難民がバーニンの指示によりヒーロー達の先導で再移動を開始している……自分がここに留まったら、その答えが出た瞬間緑谷は蛇腔病院方向へ走り出していた。

 

 今自分がすべき事は……避難民から離れて死柄木を誘導する事だと走り出した緑谷。その左右にそれぞれ、人影が一つずつ緑谷の視界に入った。

 

「ここで秘密言ったら、ヒーロー達は人員割いてテメェ守ろうとしちまうもんなぁ!」

「狙われると思ったんだろう、それで被害を出さないために飛び出した、水臭いよねぇ!イズク!」

「かっちゃん!ミリオ先輩!」

 

 爆豪と通形、この二人はそれぞれ経緯は違うが、緑谷がOFAの欠片を宿している事を知っている人物だった。だから通信を聞いた瞬間、緑谷が動くと分かってついて来たのだった。

 

「OFAの直後にこっち向かってくるだけじゃ、正味根拠は薄いけどなぁ!」

「そこなんだよ、僕の宿しているのは欠片だから……けど……」

「最悪を想定したんだね、ならこれしかないってなるよねぇ!俺だって同じ事考えるよ!」

 

 そのまま走るや近場の塀を引き寄せの飛翔、爆破による飛行、そして透過状態からの解除による弾かれる挙動で3人は塀を飛び越えた。

 

「杞憂であって欲しいけど、街の人の安全を確保しないと……!」

「兎に角テメェは動くしかねぇ……!」

 

 もし自分が狙われなかったらその時だ、今は兎も角緑谷は、自分という不穏で不確定な存在が死柄木を呼び寄せるならば、避難民から遠く離れて安全を確保する必要がある為、バーニンの指示を無視して離れ始めた。

 

「おい!どこ行くんだ!?通形先輩まで!」

「忘れ物!すぐ戻る!」

「大丈夫!俺がついて行くからさ!!」

 

 唐突に離れた3人を轟が何をしているんだと止めたが、端的に忘れ物と緑谷は嘘を吐き、自分が先輩として付き添うから心配するなと通形が続いて言った。

 

 引き寄せと爆破で、荒廃したビル群の合間を抜け、透過からの解除の反動で3人が飛び交う。緑谷は蛇腔病院跡、今やクレーターとなり砂埃舞う景色を見て考察する。

 

 この距離と砂埃で、死柄木はまずこちらを視認はできないだろう。探し当てるとしたら他の手段が必要になる……エンデヴァーの戦闘時の通信から推測して、死柄木弔は現在複数個性を持っているとするならば、目に頼らずこちらを探し当てる個性があってもおかしくなかろう。

 

 そう、例えばAFOがラグドールから奪った『サーチ』だとか。

 

 緑谷はどんどん避難所から離れていき、インカムを操作してエンデヴァーに繋げた。

 

「こちらイズク!個別通信失礼します!死柄木は……僕を狙ってる可能性があります!」

『何を言っている!?』

 

 エンデヴァーからの返答に緑谷は、まぁそうだろうなと予想通りの返答が来て顔を顰めた。唐突過ぎるし理由があまりにも限定的で理解して貰えないのは百も承知だと、緑谷はそのまま通信を続ける。

 

「人の居ない所に誘導できるかもしれません!少し交信をお願いします!」

 

 通信は切らずそのまま繋げていてほしいと頼みながら、もっと避難民から離れようと飛び続ける緑谷に、エンデヴァーから通信が入った。

 

『死柄木がイズクを追っているだと……何か根拠があるのか!』

 

 だが、誘導の提案に対しては意外な返答が来た、何を言うか馬鹿らしいと否定が来るかと緑谷は思ったが、理由があるのかと怒声混じりに尋ねられた。

 

「そのワケは後で言います!こっちから死柄木を視認できないので、もしも進行方向を変えるような事があれば教えてください!」

『今はそれどころではーー』

 

 緑谷のインカムにノイズが走る、衝撃音や炎の揺らぐ音……遠方から衝撃音が聞こえ、通信が再び返ってきた。

 

『南西に進路を変えた!!』

 

 その一言で、やはりかと理解する。これでほぼ確定だろう、死柄木弔はOFAを狙っている!それが欠片であれ欲している、こちらに向かってきていると分かった緑谷は通信を返した。

 

「ありがとうございます!これで避難の時間稼ぎができる……このまま死柄木を引き付けます!」

『待て小僧!!えぇい、皆聞け!死柄木は南西に進路変更!!超再生の個性を持っている!!もはや以前の奴ではない!!』

 

 エンデヴァーから今の死柄木の情報を聞いた緑谷は、いよいよあいつ化け物になったのかと呆れ返った。最後に会ったのは死穢八斎會の地下、いよいよ『改人脳無』ならぬ『怪人』になったらしい。ヴィラン連合は秘密結社ショッカーだったかと、特撮じみた事態が現実に起こっているようだ。

 

「かっちゃん!ミリオ先輩!来るって!」

「ああ、バッチリ聞いた!」

「テメェこそ聞いたんか!化け物になっちまってるってよあのカス!だったら尚更引き寄せんぞ!」

 

 被害を出さないためにさらに遠くへ死柄木を引き付ける!そうして三人が飛び交って行く最中……緑谷はある事に気づいた。

 

「待って!?かっちゃん着いてくる理由あったか!?」

 

 こんな事態で爆豪が、能動的に動く理由があったかと振り返って尋ねた瞬間、爆豪はそれどうやってできるんだと化け物の様に目を吊り上げて言い返した。

 

「ぶっ飛ばすぞクソヴィラン!!この状況で!!ノータイムで事情納得して行ける奴なんざ俺くらいしか居ねぇだろうが!?つーか俺からすりゃあ!全裸先輩まで付いて来たのが驚きだ!!」

 

「俺も爆豪君と同じなんだよね!イズクの事情は話し合ったし!通信聞いてまず飛び出すって思ったから着いて来たんだよね!!」

 

 爆豪も通形も、緑谷の中にあるOFAの欠片を知り、秘密を共有する者同士、あの通信から緑谷が避難民の為に飛び出すのは見て取れたと同じ理由から着いて来たと言い放った。

 

「あ、ありがとうかっちゃん!ミリオ先輩!」

「いいって事よ!イズク!!」

 

 緑谷の感謝にサムズアップで返す通形、しかし爆豪は舌打ちしながら俺は違うと理由を語り出した。

 

「自惚れんなよクソヴィラン、テメェ主役になったつもりかよ……俺はあのカスに用があるんだよ……俺は……俺のせいで、オールマイトが終わっちまったんだからよぉ……」

 

「え……」

 

 爆豪の吐いた言葉に、緑谷は一瞬唖然とした。オールマイトを終わらせてしまった?どう言う意味だと、記憶を弄り爆豪がオールマイトに何かしたかと思い出そうとした。

 

「あの時俺が、ヴィラン連合に捕まるなんざヘマしなかったら……テメェに助けられるなんて借りまで作った挙句、オールマイトが引退するなんて無かった……」

 

 爆豪の話を聞いて、緑谷は黙った。神野のAFOとの戦い……林間合宿でヴィラン連合に連れ去られ、そして緑谷に助けられてしまったという借り、更にオールマイトが勝利したとは言え引退したという事実。それが爆豪勝己のプライドをズタズタにし、そして苛まれていた。

 

 もしも、あの林間合宿で自分が拐われなければ、オールマイトはまだヒーローを引退してなかったのかもしれない。だからこの現場は、爆豪にとってまたとない機会だった。

 

「テメェは餌だ!あの日の雪辱を果たすんだよ俺がぁ!完全勝利する絶好の機会なんだよ!!」

 

 自らを責め立てる過去を振り払う、あの日の雪辱を晴らして勝つ為に俺はお前を利用するんだと爆豪の私情丸出しな理由に、緑谷は……。

 

「そう……分かった、じゃあ餌らしく足手纏いにならない様に働くよ」

 

 それを飲み込んで餌らしく動くとだけ爆豪に伝えた。

 

 背中を見ながら、爆豪はふと思い返す。

 

 ここに来るまで……長かったと。

 

 

 お互い、オールマイトに憧れた。

 

 スタート地点は一緒だと思った。

 

 個性が発現して、爆豪には爆破というヒーローらしい、かっこいい個性が現れた。

 

 対して緑谷に現れたのは脊髄ぶっこ抜きという、ヴィランの個性。

 

 爆豪は嘲笑った。

 

 ヒーローになれるわけないだろと。

 

 そして分からされた、その強さに、あまりに無慈悲で恐ろしいと。

 

 オールマイトの強さに憧れたくせに、身近な悪に屈して、凄まれたら顔色を伺うしかできなかった。

 

 雄英に入って、強くなって、対峙してようやく恐怖を乗り越えた。そしてヒーローとしては上回ったと思えた。

 

 そしたらまた飛び越えてきた、いや……遥か先に行っていたのだ。

 

 那歩島で共闘した時に、融合した時に全てを見てしまった。

 

 憧れから認められ、後継者なんて呼ばれた癖に、後継者は別に居るからと執着も無く緑谷はそれを捨て、自分が目指す目標に向かっていた。

 

 上等だ、爆豪は更に火がついた。

 

 憧れたNo.1ヒーローを超えて、その憧れに認められた男を超えて、真のNo.1ヒーローになる。その為にこの雪辱を晴らして更に向こうへと、爆豪は緑谷の飛び交うより先にと飛んでいく。

 

「負けねんだよ俺は……負けたままじゃいられねぇんだよ!!」

 

 確固たる意志を孕んだ叫びと共に、爆豪は緑谷の速度を超えた。

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