【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
鍛え上げて来た肉体と、分たれたOFAの欠片による身体能力底上げ。そこへ更に発現した変異個性バーニアによる火力の向上……それだけ詰め込んでも、それだけ借りても、それだけ託されても……!
「終わらせるだっけか?終わらないなぁ、緑谷ぁ?」
「くぅう!?」
届かない!死柄木弔の命に!まだ一つ届かないのだ!!攻撃を当てて骨を砕いた感触も感じた、穴を開ける熱線を当てても!死柄木弔が止まらない、再生する!!そして奥の手である脊髄ぶっこ抜きは通じなかった!
ジリ貧だと分かっている、キレていたがようやく頭が冷えた中で緑谷があと思いつくのは……。
『変身』しかない。
変身すれば、確かに死柄木まで手が届くかもしれない……不確定だが、制限時間がある……その後は個性がしばらく使えなくなる無防備状態になる!
後を考えるな、やれ、残り99.9秒で!!緑谷は腰元に手を当てた。黒い得体の知れない触腕がベルトを形成していき、駆動音を響かせる!
「変身!」
ベルトを中心に緑谷へ纏わりつく触腕!それが皮膚を、鎧を形成して化け物の姿へと作り変えた!
「はっ!そんなんでヒーロー名乗ってんのかよ!鏡を見た事ないのか、お前……脳無となんら変わらないぜ!」
「知るかぁああああ!!」
くぐもった声と共に、黒き化け物の鎧に身を包んだ緑谷が死柄木を引き寄せ殴り抜く。その衝撃波が、爆豪達が見上げる地面までも伝わった。
「情け無い……今あそこに居るべきは……俺だろうが!!」
緑谷の戦いを見上げながら、焦凍の氷で今は身体を冷やすしかないエンデヴァーは、自分の情けなさにそう呟いた。No.1プロヒーローとして、なぜ自分があそこに立ち戦っていないと、なぜ自分が見上げるしかできないのかと。
インターン生のまだ一年に任せるしかないこの現状だが、今は籠った熱を冷ますしかないと焦凍の出す氷を掴み、熱を逃して機を見る他無かった。
焦凍も同じだ、助けてやりたくても、今は何もできない。緑谷が引き寄せで空に死柄木を繋ぎ止め、エンデヴァーが復活する為冷やすしかできない状況に歯噛みする。
「頑張れ……緑谷!」
持ち堪えてくれと、後少し待ってくれと、化け物の姿になって戦う緑谷に絞り出す声で轟は応援を送る。
そして……。
「ぐくぅう……!」
歯を食い縛る爆豪もまた、見上げるしかできなかった。お前は餌だと言っておきながら結局死柄木は見向きもしない、それどころかNo.1の代わりに今、最強のヴィランと対峙して渡り合っている。
『大丈夫、かっちゃん?』
あの日、ヴィランに襲われたところを救われて、手を弾いた。その時から……いや、それよりも前からだった……。
爆豪の目にはいつだって、緑谷出久の背中が見えて仕方がなかった。
遠い、遠い、遥か先に緑谷出久は居た。
『ヒーローカード狩り?』
『うん、キラカードをうばってるやつらがいるんだって』
小学生の頃、折寺の地元でいつもの集まりの中、自分の取り巻きからそんな事を聞いた。ヒーローチップスのレアカードが高値で売れるから、子どもたちから奪う不良が居ると。
『へん!そんなやつおれのばくはでけちらしてやるよ!』
『だよね、かっちゃんつよいもん!』
『おれもきたらたたかう!まけるもんか!』
個性が発現した万能感、周りが皆自分のヒーローのようなかっこいい個性に憧れて、そのリーダーとして頼られる多幸感、この個性があれば誰にも負けないって思ってた。
『お、オールマイト持ってんじゃんこいつ!5万ゲット!!』
『やっぱ金になるよなぁ、ヒーローカード狩り!』
『また上納よろー、ガキども!!』
『か、返せ、俺のカード、返せよぉ!』
中学生と小学生、個性があっても勝てやしない、力の差は歴然で……ただ倒れて泣くしかなくて。その筈なのに……。
『かっちゃん……取り返したよ……カード……』
『え……』
夕方、自分と相手の血に塗れて、緑谷はカードを取り返して来た、今まで奪われた、売られた分まではダメだったがそれでも、緑谷はたった1人で『中学生を二度と悪さできない体にして』取り返して来たと言った。
それが、あまりにも、今の情け無い自分と違ってカッコよくて、爆豪はカードを持つ手を払った。それでも緑谷は、また拾って爆豪に渡して足を引き摺りながら家に帰って行った。
爆豪勝己は知っている……。
『緑谷出久は、どこまでもヒーローな奴』なんだと。
弱きを助け、強きを挫き、その為ならば誰に後ろ指を刺され何を言われようと、助けを呼ぶ声あれば駆けつける。化け物の個性な癖に、ヴィランの個性な癖に、その根っこはヒーローそのものだ。
だから妬んだ、恨んだ、馬鹿にした。オールマイトに憧れながら、その力を手にしても追いつけなくて、必死に追いかけてまた追いつかれた。
それは今も変わらない……けど、そんな幼馴染の憎たらしくて……『憧れた男』は今、窮地に立たされていた。
「駄目だ、このままじゃ負ける……」
爆豪勝己は、緑谷の戦況にそう呟いた。