【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
唐突に起こった暗転、先程まで空に浮いていたのに地面を踏み締めて、緑谷は周囲の景色を確認する。
「ここは……」
あの時とは違うが分かる……緑谷はここがワン・フォー・オールが作り出す精神世界だと理解した。最初に来た時は何故か『喫茶どんぶら』だったが、今はそんな景色を作り出す余裕すら無いらしい。
ただ、崩壊した地面の一部と暗い世界だけしか見えなかった。その世界で、奥から何か足音が聞こえ顔を向けた緑谷は驚いた。
「死柄木弔!?何故ここにーー」
死柄木弔が現れた、奥からゆっくり歩いてきて、何故ここにいると緑谷は問いただそうとして気付く。
死柄木弔ではない、いや……死柄木の肩から何かが生えていた。
「出て……来るな……!」
肩から生えている、人間の上半身。その顔は黒いモヤで見えないが、スーツを着ていて、手を死柄木の頭に置きながら優しく語り出した。
「そうは言っても弔……僕が力を貸さなきゃ炭と化して死んでたし、生きてたとしても落下死だったぜぇ?」
その声を聞いて緑谷は戦慄する。神野の時に聞いた、絡みつく様な、安心と恐怖を感じさせる声……。あの間際に、死柄木の割れた顔面から見えた、まさかと緑谷はその名を口に出した。
「オール・フォー……ワン!!」
お前が何故ここにと、そのまま殴りかかろうとした矢先、その突貫を遮る者が居た。
「欠片だからだろうね、キミを遮る事はできないみたいだ……けどキミは下がれ、ここは私たちで何とかする」
白いマントを羽織った鍛え上げた肉体のヒーロースーツの女性が手を出して遮る。彼女は確か……喫茶どんぶらにも居た、つまりは継承者の一人で『バーニア』の個性の元『浮遊』の個性の持ち主。
七代目継承者、志村菜奈が緑谷の前に立ち、AFOに言い放った。
「死して再び会うとはな、オール・フォー・ワン」
それに対してAFOは、死柄木の頭に置いた手を指差して言った。
「見ろよ弔、すごいぜ死人だ!キミの祖母にして無謀で哀れな志村菜奈がそこに居る!」
唐突な煽りと侮辱に緑谷は、さっきまで継戦していた疲れにより苛立ち、その暴言にくってかかった。
「ああ?何だよこの玉なし顔金玉!……いきなり悪口か!!」
「どーどーどー、抑えて九代目、血の気多いなぁキミは……」
まぁ落ち着いてと前に出さない様遮る志村、話はそのまま続いた。
「彼女が現れたのが何故だか分かるかい?弔……これはね……転移だ!」
この精神世界で、弔の前に祖母が現れたのは何故かとAFOは、その答えを転移だと説明した。
「臓器移植を受けた人間の性格や嗜好が変化したと言う話……半ばオカルトの様に語られる事もあるが、幾つもの事例が報告されている……」
緑谷も、その話は聞いた事があった。臓器移植を受けた患者が、時折そのドナーとなった人の記憶を夢で見る事があったり、全く無関心だった事を気になったらドナー患者の生前の趣味だったり……そんな事例を。死柄木の肩から生えたAFOは語りながら、左手で額をトントン突きながら話を続けた。
「僕は……稀に不思議な夢を見る事があってね?奪った個性の持ち主が罵倒してくる夢、その度に落胆したものさ……自分も人並みに罪の意識があったのかと……」
「どの口が言ってるのやら……」
「話の腰を折らないでくれないかい?」
ヤジを飛ばす緑谷に、AFOもちょっと黙っておくれよ良いとこなんだからと苛立ちながら、手慰みに死柄木の髪を撫でつつ続けた。
「だが、その個性を手放すと持ち主は二度と夢に出てこないんだ……おかしいよなぁ?僕は根に持つタイプだってのに……しかし、ドクターと会って原因が分かったんだ……」
そればかりは緑谷も少し黙って聞く事にした、この精神世界が現れた理由、それをAFOは知っているらしい……そして彼は言った。
「臓器、細胞に記憶が宿っていると言われるように、個性因子には意識、正しくその思考が宿る事があるらしい!」
AFOはにかりと笑みを浮かべ左手人差し指を立てながら、さらに自らを語った。
「どうやら僕は個性に直接干渉する力のおかげで、その意識に触れられる特別な人間だったみたいでね!」
死柄木はそれでかと理解した、緑谷出久が持つOFAの欠片には、歴代継承者の意識が宿り、そして死柄木にはAFOの個性が今宿っている。そして緑谷にAFOを発動して個性を奪い取ろうとした中で、死柄木弔とその祖母であり七代目継承者、志村菜奈の意識が繋がりこの空間で会合したのかと。
「志村菜奈……」
声色からして恨んでいるのが分かる、緑谷はなんとも言えない無表情の志村を見て、この人が一体、孫の死柄木に恨まれるほど何をしたのかと疑念が湧いた。
「なんであんたが……」
その言葉を死柄木が呟いた矢先、地面にひび割れが入った。それを気にせずAFOはまた語り出す、OFAとは何か、どうしてそれが生まれたのかを。
「僕が個性に宿る意識に干渉できるように……僕の血縁、弟も個性を与える力で人の個性に直接干渉可能だったぁ……与える個性に、力をストックする個性が混ざった結果!人の意識ごと次代に運ぶ寝台列車となったんだね!」
AFOの弟、初代継承者『与一』が有していた『譲渡の個性』に『ストック』が加わり、やがてそれが次の代へ託され、そして様々な個性と経験、継承者の意識すら宿したのが、個性『ワン・フォー・オール』の正体!
「と言うわけで、挨拶は大丈夫かい?」
話はこれで終わりだ、さっさと事を終わらせようと言うAFO。対して志村菜奈は、初めて見る孫の姿に憂いの眼差しを向けていた。
「貴方が、狐太郎の……」
「……なんでこんな事になっているか、訳はともかくだ……安心しろよおばあちゃん」
死柄木はそんな祖母に対しても、狂笑を見せて言い放った。
「あんたもしっかり憎んでる」
その一言と共に、地面に亀裂が走り、空が黒から赤に染まり始めて緑谷は実感する。こいつ、僕の精神を侵食しに来ているのかと。強風にタタラを踏む緑谷を守るように、志村は両手をかざし侵食を押さえこんだ。
「いいぞ弔!君の憎しみが伝わってくる!!欠片とは言え所有者の意思でしか動かせないOFAの原則を!君の怒りが今犯し始めたぁあ!!」
「し、志村さん!?」
「大丈夫、下がってて!」
大丈夫とは言うが、押されているのが分かる!実感してしまう、このままでは全てを奪われると。だがーー。
「あ?」
死柄木の肩から生えたAFOも、何やら亀裂が入っていた。死柄木自身も、AFOに好きかってされるのは癪らしい。
「おっとそうだったね、僕も嫌われてた……上等だよ、それでこそ恐怖の象徴……!だが、まだ足りないようだ」
侵食を抑え込む最中、緑谷はさらに背後の気配を察知して振り向いた。そこに佇む白髪の青年もまた、片手をかざした。初代OFA、始まりの青年にしてOFAの弟与一が、AFOを強い眼差しで見つめていた。
「弟は僕に似て意地っ張りだから……」
「次はその子か、兄さん!」
対峙する兄と弟、現れた弟に兄たるAFOは優しく諭すように語りかけた。
「お前が僕の物にならないのが悪い」
その言葉は酷く独善的で、何とも気色悪かった。その言葉に対して与一は強く返答した。
「僕たちは、そっちへは行かない、僕たちは、この子の中に居る事を選んだ!」
与一と志村の瞳が青く輝き、侵食を押し返す!緑谷は二人を見て、そして目の前のAFOと死柄木を見て、どうしたらいいのか分からなくなった。
死柄木は、侵食した意識を押し返されていく様子に、歯噛みした。先生はあらゆる力を奪い、好きにしてきた。その先生が唯一、好きにできなかった力がOFAだったと言う。
「一体、何なんだーー!?」
「力だよ!弔ぁ!!」
まるで死柄木を乗っ取ろうとして、AFOが肉体をさらに構築して緑谷達へ手をかざした!
「キミの力に僕の力を合わせれば奪い取れる!この欠片を!意思を!奪ったらそのあとは!引退して戦えなくなったオールマイトからも奪い取れる!!所詮僕に負けた死者数人だ!!」
「く!?」
「うう!!」
「志村さん、与一さん!!」
再び侵食が始まる!力を奪う赤い奔流が世界を染め上げる!!緑谷はうめき出した二人に声をかけたが、それでも立ち続ける二人が、前には出さないと阻んできた。
「弟よ!選んだだって!?強がるなよ……分かってるんだろう?弔を通して見ていたよ……欠片であってもこんな素晴らしい力を制御できずに振り回されて!友達も!先生も守れない!!どころか守られて!!挙句!!師と同じく怒りに身を任せ!!結果!!そうして死人に縋るように背中に隠れるしかない!出来損ないに渡ってしまった事が!!間違いだって!!」
呆然とした、緑谷はAFOの言葉に立ち尽くした。見ていたのか、この男は……僕と死柄木の戦いを、爆豪に守られて、相澤先生に守られて……挙句無様を晒した自分を。その通りで、言い返せなくて、緑谷はそのまま両膝が地面に着きかけた。
「失敗作には十分な末路だ!!緑谷出久!!お前は私の因子を持ちながら私の代わりにも!!ヒーローにもなれない!!失敗作の化け物なんだよお前はぁ!!お前に後を託したオールマイトも、グラントリノも後悔してるだろうさぁ!!」
時として、その一言が、心を打ち砕く事もある。
だが……AFOは間違えた。
そのまま緑谷出久を責め立てていれば、彼は終わっていた。
あろう事か、憧れを、師を引き合いに出してしまった。
緑谷出久という少年は……自分が馬鹿にされるよりも……友人や関係者が馬鹿にされる事を特に嫌う。
そして……その怒りは……。
「今、なんつった?ああ?オール・フォー・ワン……」
「あ?」
「今!!何て言ったかって、言ってるんだぁあああああ!!」
その怒りが!!崩れかけた緑谷の心を、再点火して激しく燃えたぎり押し込まれていた精神汚染を一気に押し返すどころか!!
「ぬぁああ!?」
「な、にぃい!!」
「こ、これは!!」
「逆に、死柄木へ侵食している!?」
紅く染まった空が塗り変わり、紫色へと染め上げる!!志村と与一も、押し返してさらに逆にこちらが死柄木の精神を侵食するという事態に、驚くしかなかった。
二人の間を歩み抜け、堂々と、死柄木とAFOに歩んでいく緑谷。その身体を紫色の稲妻を纏い、右手の平に紫色の奔流が現れたのを見て、与一ははっとした。
「9代目!キミは、まさか!!」
与一は理解した。
緑谷出久が体に宿したのは、兄の『因子』
そして、彼の本来が持ち得る個性『引き寄せ』
それが混ざり合って生まれた『脊髄ぶっこ抜き』という個性!!
あり得る、十分に!!この子がたどり着いた新たな力の形は!!
「恐怖の象徴だと!!小さなガキの頃に!!僕に屈したそこらのチンピラブラコンヴィラン程度が!!入学したての僕に集団で現れてボコボコにされて逃げ帰ったお前如きが!!」
「こ、れは!?まさか貴様!!」
AFOも唖然として、近寄った緑谷はその死柄木の頭と、AFOの頭をそれぞれ鷲掴みにして言い放つ!!
「教えてやるよ……そして刻み込め!!本当の恐怖をなぁ!!」
「ぬぁあああああああーーー!!」
「ぐぁああ!?うぁああああ!!」
緑谷の両手に走る紫色の奔流が、死柄木から、そしAFOから!!真紅の血のような結晶をその手に作り出して、それを力づくで引き抜こうとする!!
「まさか、これはぁ……!!ま、まずい!!」
AFOが、そう言った瞬間緑谷を思い切り弾き飛ばし、世界に光が戻った。