【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
気が付いたら、全てが終わっていた。
緑谷出久が起きた時に見たのは、母親の顔で涙ぐんでいた。すぐに看護師へ報せに行ったのを見て、意識がぼうっとしたまま、ここはどこの病院なのか、何があったのか、聞きたかったが……そんな事すら億劫になるくらいに身体が重かった。
あれから何日経ったのか?いや、そもそも搬送されてすぐか?兎にも角にも現状を知らなきゃいけない、なのに力が入らない緑谷。
何時間か、日を跨いだのか……一度眠って……意識が晴れて来てようやく、オールマイトが来て、現状を教えてくれた。
「死柄木は……倒したんですか……」
「……逃げられてしまった、あの後……隙をついて、従えた脳無を使って……」
纏めればこうだ。
超常解放戦線の主だったメンバーや構成員の一斉検挙は確かに成功した。だが、群訝山荘に待機していた大型ヴィランにより、ヴィラン連合のメンバーが逃走に成功した。
大型ヴィランにより、未曾有の被害が出て、ヴィラン連合は死柄木弔と合流し脳無と共に逃走。
結果……超常解放戦線は壊滅すれど、ヴィラン連合メンバーは逃してしまった、という事になる。
それだけでは無い……ヴィラン連合メンバー『荼毘』は……なんと、エンデヴァーの息子にして轟家の長男、死んだ筈の『轟燈矢』だったという。
轟燈矢こと荼毘は、放送をジャックし、エンデヴァーが隠していた個性婚とその家庭事情を暴露……さらに、ホークスがヴィラン連合の一人マグネの殺害した場面を流した。
ヒーローの信用を損なう、ヒーロー社会の信頼を破壊する一手を、此処で打ち込んだらしい。
この、今入院しているセントラル病院前が騒がしいのは、エンデヴァーへの説明要求のデモらしい。
その後は、頭に入らなかった……ベストジーニストが生きていて大型ヴィラン、名前はギガントマキアか……ミッドナイトが眠り香を当てたが止まらなかったものの、何とかベストジーニストとエンデヴァーにより止まったらしい。
轟焦凍は兄である荼毘との戦闘で負傷し、ヒーロー達は何人も死んだ……それでも、群訝山荘側のインターン組が救助してこれでもマシな方、だったらしい。
それからしばらく……死柄木により、全国6ヶ所の刑務所が襲撃されて、うち4か所からヴィラン達が脱獄……その中にはあのタルタロスまで含まれていて……AFOも、凶悪なヴィラン達も出て来て、日本は個性黎明期の混沌へ逆戻りらしい。
つまりは……そう。
『ヒーローの敗北』
これで全て、片付く話であった。
「オールマイト……グラントリノは……」
それでも信じたく無いからか、緑谷はオールマイトに尋ねた。グラントリノはどうなったのかと。実は全部夢で、僕は瓦礫に頭をぶつけて昏睡していて、今目覚めたら全部うまく行っていたなんて……そんな馬鹿な期待を否定するように、オールマイトは形見となった黄色のマントを見せて、首を横に振った。
たった一週間……それでも、自分を強くしてくれた、初めての師匠だった。そんな師匠が、オールマイトを鍛えた男が呆気なく死んで、もう居ないという事実に、緑谷出久は涙を流した。
「緑谷少年……その、今後の事なんだけど……」
「ごめんなさいオールマイト……しばらく、一人にしてください」
今は一人で居たい……緑谷出久はそう言ってオールマイトを退室させた。窓辺から見えるエンデヴァーへのデモ、そして思い出す戦いの景色……緑谷はふと、右手を見た。
穴が空いていた、小さな穴だ。ああ、そうかと理解する。あの時に多分、自分は行くとこまで行ったのかもしれないなと……左手を見て同じように小さな穴が空いていて、あの精神世界の出来事を理解する。
……行こう、それが責務だ。
緑谷出久は、点滴を外してベッドから起き上がった。
ーーー深夜0:00 雄英高校ーーー
その夜は酷い雨だった、寮にはまだ誰も帰って来ていない。だが自室には簡単に入る事ができた。
自室の傍らに鎮座する、ヒーロースーツ。父からの贈り物を緑谷は装着していく、ヘルムはまだいいかと傍に持ち、左腕のデバイスを操作する。
『お久しぶりです、マスター……随分と日本が荒れているようですね』
「分かるの、イーヴルマジン」
『情報は常に最新の物へアップデートするようにしております、それで、何用でしょうか?』
「出て来て、これから戦うから」
『……かしこまりました』
イーヴルマジンは、現在雄英高校預かりで、サポート科の教材として雄英高校教師の駐車場でコンテナのまま待機していた。それを呼び覚まし、出て来て欲しいと命じた。
そして緑谷は……寮の談話室に1通だけ便箋を置いてから外に出た。
激しい雨の中、髪の毛を濡らすのも構わず、光が差し込めば自動で緑谷の前までイーヴルマジンは動いて来たのだった。
「行こう、イーヴルマジン」
『かしこまりました、マスター』
傍にずっと追従し、雄英高校の敷地から出て行こうとする緑谷。裏口に差し掛かったそこで、待ち構えていたとばかりある人物が立ちはだかった。
「緑谷少年、どこへ行く気だい?」
スーツ姿のオールマイトだった。その鶏ガラの身体に悪かろうに、余程急いできたらしい息も切らしているのが分かる。
「よく分かりましたね……オールマイト」
「病院に行ったら居なくなっててんやわんやさ……皆探してる、戻るんだ」
有無は言わさない、そんな感じかと緑谷は首を振って……オールマイトに尋ねた。
「オールマイト……貴方は、平和の象徴になる代わりに、どれだけ犠牲にして来たんですか?」
「え……」
唐突な質問に、オールマイトは少し呆けた。それは、誰かを見捨てたとか、見ぬふりをしたという意味かと捉えてしまった。
「個性の事もあります、けど、貴方は人並みに幸せも享受できた筈だ、恋だってできた、普通に暮らせた……それを捨てて平和の象徴として活躍してきた……」
「何が言いたいんだ、緑谷少年……」
「オールマイト……僕も貴方に憧れた、そしてヒーローを目指して雄英に入った、けれど……決して貴方にはなれない……だけど今……貴方みたいな人が必要な時代に、戻ろうとしてーー」
途中まで言いかけて、力が抜けたか、無理をしたのか、緑谷が片膝をついたのを見て、オールマイトは思わず駆け寄った。
「緑谷少年!!やはり無茶を……すぐに病院へーー」
「オールマイト、貴方は優しすぎるーー」
オールマイトは見た、その手に空いた穴を。
まさか、それはと理解する間際ーーオールマイトの頭部に紫色の奔流が迸る!
「み、緑谷少年!?まさか……それは!!」
「オールマイト……貴方は休んでいてください、僕が……僕が必ず……貴方の代わりになって見せる……形は違っても、もう一度この国に平和を!!」
オールマイトの顔面から、真紅の結晶がゆっくり構成されていく。そして……それが抜き取られた瞬間、オールマイトは膝から崩れ落ち、そして前のめりに倒れた。
「貰います……残りのOFA……あとは僕が全てを終わらせて来ます……AFOから生まれた化け物として……それが……僕が果たすべき事ですから」
「み、緑谷少年!待つんだ!!緑谷少年!!」
そのまま緑谷は、イーヴルマジンに跨り、アクセルを吹かし雄英高校の裏門から走り去った。手を伸ばしたが、テールランプは雨の中に消え、オールマイトは何とか立ち上がりながら言った。
「なんて事だ……OFAを……奪われてしまった!!」
個性 AFO'(オール・フォー・ワン、ダッシュ)
緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』が、AFOと精神世界での会合により覚醒した新たな形の個性。
脊髄、臓物ぶっこ抜きをそのままに、以下のことが可能になった。
①個性ぶっこ抜き
対象の個性を『因子血晶』という特殊な状態にして引っこ抜き、対象から個性を奪う事ができる。また、その因子血晶を取り込めば自身がその個性を使う事も可能。取り込んだその個性を抜き取り血晶化して戻す事も可能。つまりは、個性をカートリッジ化して奪える。
さらに、この因子血晶を傷つければ個性因子に傷を付け使用不能、弱体化も可能。砕けばその個性を破壊できてしまう。AFOや死柄木の個性に傷をつけたのは、中途半端に引き抜いて逃げた際に傷が付いたからである。
②ラーニング
触れた相手の個性因子を読み取り、自らに再現することができる。爆豪に触れたら『爆破』が、轟に触れたら『半冷半燃』が使用可能に。ただし、使えるのは『一回』だけで、もう一度使うにはまた触れて個性因子を読み取らなければならない。
③武器化
説明不用の『脊髄着装』ぶっこ抜いた脊髄を個性の武器として作り変える。