【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
イーヴルマジンが何処に二人を避難させたのか、左腕デバイスで位置を特定した先に向かった緑谷を迎えたのは、いまだに避難していない民間人のヴィジランテのアジトであるビルだった。
「イーヴルマジン、二人は?」
『こちらの方々に保護を頼みました、今は彼らを率いるヒーロー達に通信を試みています……傑物学園高校の学生かと……』
現れたアーマーの男と、先程自分達と交渉しに来た学生ヒーローを抱えて避難してきたロボットが話すのを見て、リーダーが一人歩み寄って来た。
「突然来たから驚いたが、アンタのロボットかサポートアイテムか……」
「二人は?」
「意識を失っちゃいるが、息はしてる……」
どうやら処置までしてもらったらしい、目を閉じる真堂と、ケープをかけてもらった中瓶を見下ろして、ヘルム越しに安堵した緑谷にイーヴルマジンが語りかける。
『マスター、彼の携帯からMs.ジョークの番号を見つけましたので、救難メールを出しておきました』
「助かるよイーヴルマジン……じゃあ行こうか」
後はMs.ジョークさんに任せるか、イーヴルマジンに命令し、ビルから出ようとした緑谷に、ヴィジランテのリーダーが制止した。
「待ちな、あんちゃん、ヴィランを退治してくれたんだろう?」
「ええ、信号弾で報せてます、動けないようにもしてますから行かなくても大丈夫ですよ」
「そうじゃねぇや……礼くらいさせてくれ、アンタのロボットが止めなかったら俺らまでこうなってたんだからよ、おい!」
リーダーが仲間達にそう言うと、一人がビニール袋に非常食とペットボトルのお茶を入れて持って来た。
「俺らもよ、あんな事あったからやっぱりヒーローってのを信じられなくなっちまってんだ……それでもやっぱり、こうして身を粉にして今を頑張ってるヒーローが居るなら、話ぐらい聞かにゃならねぇよな……」
眠る真堂と中瓶を見て申し訳なさそうにするリーダーが、非常食の袋を緑谷に渡して言う。
「……貴方達の気持ちもわかります、ですが、危なくなったら逃げてください……」
ヒーローを信じられなくなった顛末も理解できる、緑谷は一礼だけして背を向けて忠告だけはして、イーヴルマジンとビルを出た。そのまま何か命ぜられる前に、イーヴルマジンはバイクモードへ変形して、緑谷はそこに跨った。
「イーヴルマジン、近隣での救難信号や通報は?」
『範囲内にはございません、マスター、先程のダツゴク2名をリストから消しておきました』
「ありがとう、じゃあ次は隣県まで行こう」
アクセルを吹かせ、荒れた街中をイーヴルマジンが発進して走り出す。もうすぐ昼かと、貰った非常食やお茶は後で食べようと考えながら、ふと歩道に走る姿を三つ確認した。
Ms.ジョークに、傑物学園高校のヒーロー科の人たちかと横切った瞬間、サイドミラーでMs.ジョークが振り返ったのを緑谷は見たが、構わず振り切ってギアを変えてアクセルを吹かした。
雄英を去り、プロヒーローとの接触を避けた緑谷出久が拠点にしていたのは……保須市であった。かつて職場体験で、ステイン事件で降り立った街である。
何故ここにしたのか、理由を聞かれたら『何となく』としか言えなかった。頭に浮かんだからか、偶々良さげな目に付きにくい廃屋を見つけたらか……それとも本当は、誰かに見つけてもらって引き戻してほしい未練を抱えているのか……。
兎も角緑谷は、一日中様々なニュースや救難信号、悲鳴を頼りにイーヴルマジンを駆り、ヴィランを退治し、ダツゴクを再起不能にし、逃げ遅れた市民を助けて戻ってきた。
さる裏路地の目に付きにくいテナントが、今の緑谷出久の活動拠点だ。対面にガレージがあり、そこも勝手に使わせてもらいイーヴルマジンを停めて、緑谷出久は廃屋テナントに入った。
あるのは古びたベッドに、キャンプ用品……こんな状況だから電気も水道も通るわけ無く、ただ寝るだけの拠点として緑谷は底を使っていた。
ヒーロースーツ『シン』を外して、古びたベッドに腰を下ろした緑谷は、両手を胸元に当てて息を整えた。
「ぐ、うう、ああああーーっ!」
その手に現れる真紅の結晶が、みるみる緑谷の胸元から数センチ離れた場所から生えて来て、やがて大きな塊となってドスリとマットに落ち、緑谷も息を切らして倒れた。
「はあ、はあ……はあ……着脱可能とは言え、こんなに苦しいとは」
緑谷が今抜き取ったのは『因子血晶』と呼ばれる物質だった。これは『個性因子』が結晶となって固形化したものであり、緑谷出久が蛇腔で死柄木弔……AFOとの戦いで目覚めた力『AFO'』によって作り上げられた物質だった。
AFOの個性は、他人から個性を奪い自分の物にでき、さらにはまた別の人間に与える事ができる。緑谷出久も同じ力に目覚めたが、形が違った。この結晶は所謂『カートリッジ』で、それを逐一自分や他人に挿入して個性を使う事ができる。
今抜いたのは……オールマイトの個性『OFA(ワン・フォー・オール)』だ、自らに分たれた欠片と、オールマイトから引き抜いた本体が合わさった完全なOFA、それを緑谷が抜いた理由は……。
「ふー……本当に……一気に疲労が来る……疲れた、節々も痛い……」
そう、反動だ。本来個性を複数持つように人間はできていない……それどころかOFAはオールマイト含めて8人の継承者に渡って来た個性で、その力は他の個性を凌駕している。
神野でオールマイトと共闘した時に分たれた際、そこへ緑谷出久の経験や個性情報も上乗せされ9人分の力がそこに宿り、もしもこの力がオールマイトか緑谷片方に渡っていたら神野が吹き飛ぶ恐れがあった程の力だと、初代OFAの与一は語っていた。
今の緑谷出久の肉体は、それに耐えうる肉体にまで成長した。だが、それでもずっと抱えたら寿命を削ると歴代継承者が警鐘を鳴らした。だから、こうして逐一抜いたり刺したりして負担を軽減しているのだ。
そして必要な時に因子血晶を刺して、OFAを解放して自らを強化し、自警団活動を行なっていた。
「夕方まで寝よう……そこからまた活動だ……」
ヴィランの活動は夕方から夜間が激しくなる、それまで体を休めようと緑谷は古びたマットレスのベッドで目を閉じた。