【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ヒーローの信頼も失墜し、脱獄したヴィランや市中に潜んでいたヴィランも暴れた混沌の日本で、普通に暮らしていた人は誰もが不安になる。いつになったら元の生活が戻るのかと、ヒーロー達に声援ではなく罵倒を浴びせ、自分の財産や家族を守るため、町を守るためと武器を取り自警団を立ち上げる。
その苛立ち、焦り、恐怖……それはヒーローやヴィランだけで無く、同じ一般人同士にも向けられた。
ーー夜も遅く、巨躯な人影が必死に街中を走っていた。息を切らして、早く逃げないといけないと角を曲がった。
「いたぞ!化け物だ!!」
「ち、違う!!」
偶々遭遇したのか、待ち伏せていたのか、3人の男のうちの一人がサポートアイテムを構え人影に向けた。巨躯な人影だった、その正体は、ゆうに成人男性を軽々超える異形系個性を持った女性だった。
違うと否定しても、有無を言わさずサポートアイテムから水の強水圧な弾丸を放ち、壁に追いやる男に、彼女は必死に声をあげる。
「やめて!私……何もしてない!!ただ怖くて!!」
そんな弁明も聞かず、放たれる水の弾丸は両手で防ぐが、異形の一般女性は尻餅をついた。
「やめて、お願い!」
「そうやって騙して襲うつもりだろ!」
「お前らの手はお見通しだ!」
壁に追い詰めて、サポートアイテムを構えた男が更に言い放つ。
「とっととここから……出ていけぇ!!」
「やめてぇえええ!!」
無抵抗な一般女性に、追い討ちを仕掛ける男のサポートアイテムがうなりを挙げた瞬間、そのサポートアイテムを取り付けた腕が……あらぬ方向に曲がった。
「あーーぎゃぁああああ!?」
「ええっ!?お、おいどうしたんだよそれ!?」
「まさかこの女ーー!うわっ!?」
異形で更に違う個性まで持ってるのかと苛立つ自警団達、しかしサポートアイテムとは言えない、ナタのような刃物を持った男が、何かにそのナタを引っ張られる力に取り上げられて、夜闇に消えていくのを目で追った。
「無抵抗な相手を痛めつけて……自警団を気取るヴィランか?お前ら?」
重い足取りで闇から現れたアーマーを着込んだ男から、くぐもった声が響く。ビカァアン!と、無機質な赤い光が瞳に灯って、自警団の男達は肝を冷やした。
彼が個性を使い取り上げたらしい刃物を、アーマーの男は刃先から、親指の力で、鈍い音を立てて少しずつ砕いていきながら地面に落として、アーマーの男は言い放つ。
「選べ、このまま立ち去るか……その首引っこ抜いてその欄干に晒されるか……どっちがいい!!」
その言葉を聞いて、自警団達は気付いた!!無機質な鎧を着て、血に染まった赤いマフラーを巻いた、ヴィランに一切の容赦無いヒーローを!!最近ニュースや噂にもなっている、ヴィランやダツゴクよりも恐ろしい男を!!
「こ、こいつ首狩りライダーだ!!」
「ヴィラン殺しの首狩りライダー!?なんでここに!?」
「ち、ちが!!違うんだ、俺たちはただ自警団として、お、おい!?逃げよう!!す、すいませんでしたぁああ!!」
サポートアイテムをはめたまま折れた腕を庇い、3人の自警団達は背を向けて逃げていった。それをただ、一般女性は見つめる事しかできず、その男がこちらを向いたので、ひっ!と怯えて言い放つ。
「やめて!わたし、何も悪い事してない!!殺さないで!!」
顔を隠して涙を流す一般女性、その男……緑谷出久はヘルムを外すボタンを押して外し、その顔を見せてから傍に落ちていた彼女の傘を拾い、差し出した。
「大丈夫ですか……」
「え……」
「もう大丈夫です、僕がいますから……」
一般女性も驚いた、仮面の下から現れた、首狩りライダーと呼ばれた恐ろしい男の正体が、まさかこんな年端もいかない少年だと想いもしなかったのだから。
「どうしてこんな夜中に一人で……」
自警団を追い払った緑谷は、異形の一般女性に何故こんな夜中に一人で出歩いていたのかと尋ねた。
「避難が遅れたの……この街は最初にそんな変化は無くて……だから、家にこもっていればそのうち落ち着くと思って……でも、あちこちで被害が出るようになって……怖くなって……避難所に行かなきゃってなって……」
涙を流し、渡した傘をまた落とすほどに彼女は取り乱していた。緑谷は、また傘を拾いさしてあげようとしたが、まぁこの一般女性が大きいので自らを『人形操りの糸』で吊り上げで浮いて、その身体を濡らさないようにと傘を持ってあげながら話す。
「こんな情勢で、誰もが不安なんです……あの人達もそうだ……けど、だからって当たり散らすのは違う」
さっきの自警団も、不安から異形を恐れ出したのも理解できる。だからと擁護できないからあんな風に止めた、それ程までに人の余裕は無くなりつつある情勢なのだろうと、緑谷は一般女性に語った。
「元に……戻るのかしら……」
一般女性は涙を拭い終えて傘を手に取りながら呟いて、緑谷はその呟きに返した。
「……僕が戻します」
「えっ……?」
「例え……ヴィランの屍を築いて、この身体を血に染めても……必ず」
自らに言い聞かせるように、決意を込めて緑谷は言う。そして道路から眩い光が近づいてくるのを見て、一般女性は目を絞った。
「イーヴルマジン……彼女を守ってあげてほしい、それと……秘匿回線を使ってオールマイトに連絡して」
『了解しました、マスター』
「え、え?バイクが喋ってる?」
現れたバイクが、誰も乗ってないのに走って来て会話したのを見て一般女性は目を見開いて驚いた。さらに、目の前で音を立てて変形するや一般女性より少し小さなサイズのロボットとなり、その機械の手を彼女に差し出す。
『傘をお持ちします、お嬢様』
「あ、ありがとう」
ロボットと相合傘という形になり、その傘に入ったのを見て緑谷は再びヘルムを被った。
「しばらくしたら迎えが来ます、それまでそのロボットが貴方を守りますから、僕はこれで」
「あ、あの!?」
それだけ言って、緑谷は凄まじい勢いで飛翔し、一般女性はそれを見送るしかできなかった。
「名前……聞けなかったな」
緑谷出久は、今現在プロヒーローすらも避けた単独行動で、ヴィランやダツゴクを討伐している。しかし、一人でできる事は限られているわけで……その際は現場の警察やプロヒーロー、医療関係者へ繋ぐ形で頼る事にしていた。
今助けた女性……恐らく今は異形への風当たりを考えたら近場の避難所は追い返されるかもしれないなと、先程の自警団の反応から見た緑谷は、背に腹は変えられないと、イーヴルマジン経由でオールマイトへ連絡をした。雄英高校なら、彼女を受け入れてくれると考えたから。
イーヴルマジン、及び緑谷出久のヒーロースーツ『シン』のデバイスは、独自の秘匿回線を使用しているので、足はつかない。ただ、今回はイーヴルマジンを護衛に待たせている為、いやでも位置特定はされてしまう。
『緑谷から連絡が?』
「ああ、座標が送られて来た……あと、救助者ありとだけ……今ならその近辺に彼がいるかもしれない」
『分かった、俺たちがその近辺を探そう……お前はその救助者の保護を……』
「すまない、エンデヴァー……もしもの時は」
『……その手はいざという時にしておけ、オールマイト……死柄木も、AFOも捜査が進んでないんだ』
雄英高校に待機していたオールマイトが、電話でエンデヴァーに連絡を取る、雨の中駐車場に向かい、車に乗りながら緑谷から連絡があった事と座標を伝えた。
あれからしばらく……彼は確かに、ヒーローとして一人戦っていた。引き継がれた力と、悪戯に与えられた力を使って……。オールマイトは、あの雨の中の別れを思い出す。
『オールマイト……貴方は休んでいてください、僕が……僕が必ず……貴方の代わりになって見せる……形は違っても、もう一度この国に平和を!!』
代わりを務めるとまで、彼は言った。
だが、オールマイトは更に思い出す。彼が神野で共に戦った後の事を。
『貴方の意思を受け継ぐのは、僕だけじゃあ無い……今のプロヒーロー達、そしてかっちゃんやクラスの皆、雄英生徒……いや、僕たちの後に続く、貴方に憧れた人皆が、意思を継いでいくんです』
『僕たちみんなで……オールマイトのようになって、平和を守りますから』
彼はそう言った筈だ……グラントリノの死が、そして彼に宿ったAFOの因子、その目覚めがキミを変えてしまったのか……。ならば、私がやらねばならないことは決まっていると、オールマイトはキーをひねる。
「私が必ず、キミをもう一度引き戻す!!」
彼をヒーローの道へ引き寄せた者として、その責任を取らねばならないと、オールマイトは友から贈られたスポーツカーを走らせた。