【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
この町で最も高い場所、それがこのテレビ塔だった。その鉄骨に立ちながら緑谷は、かつては賑わい夜も明るかった街並みを見下ろして、ヴィランを探す。
『この荒廃した景色、まるで時代が逆行しているかのようさ……』
頭の中で声がする、いや、それどころか緑谷の隣で幽鬼の様に、五代目継承者……名前は万縄大悟郎が立っていて、街の景色を眺めていた。
『ヴィラン達に目をつけられない様、息を潜めるだけの日々……まるで超常黎明期さ……』
かつてのヴィラン隆盛の時代が、今ここに再び来ようとしていると、万縄の呟きに緑谷は尋ねる。
「……二代目と三代目の二人は、まだ力を解放させてはくれませんか?五代目」
『ああ、あの偏屈二人はな……初代が頼んじゃいるんだが……』
五代目を仲介として、精神世界で緑谷は、かつての継承者達に頼んでいた。全ての歴代個性、その解放を。
自分を除き、全8人のOFA継承者……本来の個性がAFO因子で捻じ曲がり変異しているが、それでも今、その内六人の個性を解放して使用可能となっている。
『六代目……揺蕩井の奴は俺から言って解放したが……あの二人はまぁ、一番強い時代のAFOと戦って来た……その力をお前が発現しちまったしなぁ……』
だが、二代目、三代目はまだ解放をしてくれなかった。理由は単純だった……自分がAFO因子持ちだからだろう、倒すために受け継がれた個性が、AFOの力を持つ物に渡ったら、それは拗れるだろうなと緑谷はため息を吐く。
「その、万縄さん……はっきり言って今の僕でも、死柄木とAFOに勝てるかすら分からないですよ?エンデヴァーと相澤先生と組んであんな様、脊髄ぶっこ抜けなかったし……」
『もう一回トライしてもダメなのさ?』
「一度抜けなかった、と頭に刻まれたらダメなんですよ……オールマイトの時は差し出してくれたから抜けましたが」
緑谷は言う、この今の自分でも、死柄木とAFOと戦って勝てるか分からないと。脊髄をぶっこ抜くのは一度死柄木に行って力技の超再生で防がれ『抜けない』と一度実感してしまった。
エンデヴァーには『できると思え』と言われて引き寄せを練習して来たが、脊髄ぶっこ抜きは一度防がれたら記憶と手に刻まれて抜けなくなるのだ。
『……あ、まて、九代目!話があるらしい!ちょっと繋ぐさ!』
「え?」
唐突だった、しかし繋ぐとは……となったところで、緑谷の目の前に色濃く、二人の幻影が現れた。
二代目、そして三代目の継承者であった。いよいよ現れた二人。バンダナを巻いた三代目継承者から、口は開かれた。
『九代目……話は纏まった、悪いが……今お前に、二代目の個性を解放するわけにはいかない』
悲報だった、全解放はどうやら望めないらしい。緑谷は目を細めて三代目に尋ねる。
「……それは何故ですか……僕がAFOの因子を持っている化け物だからですか?」
少し嫌味をぶつけてやった、それくらい許されるだろうと卑屈な物言いに、三代目は待ってくれと首を横に振る。
『二代目の個性を解放して使えば……九代目、今のお前では自壊して死ぬからだ』
「えっ……」
『OFAが、代を経る事にその経験、個性をストックしていくのをお前は知っている筈だ……』
決してお前の出立ちへの抗いではなく、もっと真っ当な理由だった。二代目の個性を使ったら、自分が死ぬと聞いた緑谷に三代目はOFAの力をストックする仕様は頭に入っているなと確認させる。
『それは代を遡る事に強くなっていく……二代目の個性は、最早元の個性からかけ離れた力になっている……そこに九代目の因子が加わった為……最早人智を超えた人の扱えぬ力になっている』
「そんな事に……」
『だから……死柄木、AFOとの戦いまでは三代目の俺までの力を解放させる、二代目個性は奥の手……使うとなったら覚悟をしてもらうぞ』
積み上げて来た力と、AFO因子による変異が、二代目の個性を人智を超えた力にしてしまい、使えば命を失うほどの物になっている。だから、使えるのは三代目までを解放すると妥協案で纏まったらしい。
「分かりました……では今夜から、よろしくお願いします」
『ああ、それと……気を付けろ、お前にも見えているかもしれないが……』
二代目以外の個性がここに解放された……そして、三代目からの忠告に緑谷は頷いた。緑谷の佇む鉄塔……その目の前に広がるビル群が……返り血を浴びた様に赤く染まっていた。
それに……此度はむせかえる様な血の匂いまで漂って来た。
「匂い立つな……えづくような血の匂いがします……まるで、僕と同じ人が待っているような……」
『九代目と同じ?』
「人殺しの匂いです、血に塗れた匂い……」
『……本当に大丈夫か、九代目がこの子で……』
ヴィランの暴れる気配、悲鳴も無い……待ち伏せされているのか、あるいはと、緑谷は戦の前の腹ごしらえと懐から非常食として貰ったエナジーバーを取り出して噛み砕いた。