【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
みんな大好き、ヒーローのトレーディングカードが一袋に一枚入ったお菓子『ヒーローズチップス』
このお菓子のおまけのカードになるという事は、日本ヒーロー界隈において人気を誇るステータスでもあろう。緑谷出久は今でも購入して集めるくらいに好きだ。
だが、そんなヒーローズチップスから消えたヒーローもいる。ある者はクレームが来て、またある者はヒーローとしてやってはならない事をして。
レディ・ナガンもその一人だ。
『スナイパーライフル人間』
昔のテレビ番組で、スナイプ先生が彼女をそう呼んでいた。
『遠距離系個性最強ヒーローは、レディ・ナガンただ一人であり、他はそれの下に過ぎない』なんて話を聞くくらいに、他と一線を画す。
その秘密は弾丸にある。
彼女の弾丸はその頭髪によって作られる、エポキシパテの様に2色の髪の毛を練り上げて弾丸とし、曲がる弾から徹甲弾、亜音速弾まで思いのまま。
そしてその射程距離は3km……スナイプ先生の個性『ホーミング』が視認した600mに投げた物が追尾して当たるのに対し、技術だけでそれ以上をやってのけるのが彼女。
だが、そんなレディ・ナガンは逮捕された、同じヒーローを殺害した罪で……。そして今、ダツゴクとしてAFOに与し、自分を捕獲しにかかっていると緑谷は、建物の中で立ち上がり落ち着こうとしていた。
かつての伝説のヒーローが、自分を狩りに来たかと。飛び込んだ先は空きテナントの一室らしい、立ち上がった瞬間ーーまた発砲音が聞こえて窓が割れた。
「はぁあ!!」
右腕を振るい、アームブレードが弾丸を両断して後ろの壁に二つの穴を開けた。
目視したわけでは無い……四代目のOFA継承者、四ノ森避影の個性『危機感知』が変異した個性『死の気配』。自身や他人、また場所から死を感知して景色に上書きするように現れる。
緑谷は自身の死を色濃く感知した瞬間、スーツのアームブレードでレディ・ナガンの弾丸をタイミングだけで叩き切ったのだった。
この個性がなければ初段で撃ち抜かれ死んでいた……今の攻撃といい彼女は本気だ。だが、弾丸の方角から位置は分かった。ならばこちらから接近するのみと窓から出ようとした瞬間ーー。
ぶわりと、部屋が血に染まった。
『小僧!扉から部屋を出ろ!!』
何代目の声かは知らない、だが背後の扉から飛び出てさらに目の前の窓から緑谷は外に飛び出した瞬間ーーテナントが爆風に覆われた。
「ーーっつあああ!?」
爆風が背中を押して、緑谷はコンクリートの地面に落下しかけたが、自らの背中を引き寄せ着地の衝撃を和らげ転がって着地した。
今自分が居た、ビルのテナントが燃え盛っている。のを見て、緑谷はマジかよとヘルメットの中で冷や汗を垂らした。
「ロケットランチャー!?どっから持ってきたそんな物!!」
緑谷はビルの裏路地に駆け込みながら流石に声を荒げた。
足元に投げ捨てたロケットランチャーの発射機と、燃え盛るテナントを見てレディ・ナガンは呟く。
「三発も避けられたのは初めてだ……そして生きてるな、まだ……」
タルタロスが陥落し、脱獄した際……ナガンはAFOと会合し、緑谷出久を連れてくるように言われた。なぜ私がそんな事をせねばと、過去には追っていた巨悪のヴィランから頼まれた彼女。しかし、ナガンが欲したヒーロー社会の破滅は、緑谷出久という少年が居る以上実現しないと言われ、契約は交わされた。
「個性どころか、こんな物まで用意させるとは……私が今戦ってる緑谷出久という少年は、化け物なのか?」
自身の個性のライフルだけでは無い、どこから集めてきたのか、機関銃に手榴弾と、まるで戦争でもするような装備品までAFOは調達してきてナガンによこしたのだ。それだけじゃない、AFOはナガンに『きっとキミの役に立つ』と、新たな個性まで押し付けたのだ。
ナガンは機関銃を携え、手榴弾も括り付けてビルの屋上から街を見下ろし呟いた。
「それじゃあやろうか、少年……獣狩りだ」
そのままナガンはビルから飛び降りて……まるで空に足場があるかのように何も無い空間を歩き出した。
路地裏に逃げ込みつつ、緑谷は再び先程自分が撃たれた弾道の方角へ、引き寄せを使い迫る!あちらが移動するよりも早く、こちらが接近して叩いてやると意気込んで、真っ直線でなく蛇行して、狙いを絞らせずにとビルの合間を飛翔して行く!
だが、また一つの区画を飛び出し大通りに出た瞬間ーー。
「えっ!?」
目の前に、安全ピンが抜かれた手榴弾が現れ、即座に緑谷は空へと自らを引き上げる!殺意が、死の気配が解らなかったのは無機物だったからか!?骨や内臓が軋む無理矢理な急上昇を耐え、爆風の範囲から逃れた瞬間ーー緑谷は視界にレディ・ナガンの姿を見た。
「捉えたーー」
「ちいい!!」
構えていた機関銃から放たれた弾丸の雨に、緑谷は前腕と脹脛から骨を飛び立たせ変形させ、炎を吹き出す!バーニアによる飛行で急旋回して掻い潜った。
「個性の複数持ちーー?闇が深ぇ」
「お互い様だろう、レディ・ナガン!」
互いに姿を見せた接敵の最中、緑谷の死の気配が視界の外からの死を感知して、振り向きざまに左腕を振り抜いた!
「ぐぁあ!?」
が、弾丸を叩き落とすに至らず!ヘルムの左目を掠るように命中してひび割れが入った!
旋回しながら落下する中、宙を浮くレディ・ナガンが左脇に軽機関銃を、右腕は変形させたライフルに変わっていたのを見てああそうかと理解する。
タイミングは分からない、恐らく手榴弾が 爆発したあたりで、既に個性のライフルの曲射を行っていた。だから発砲音が聞こえなかった!
手榴弾で炙り出して、機関銃で追い詰め、あらかじめ撃っていた自身のライフルの弾丸で仕留めにかかる……そして何より……何故それを思いつかなかったかと、緑谷は恥じた。
レディ・ナガンがAFOから個性を与えられ複数持ちとなっている可能性を考えなかったのかと歯を食いしばる。
『エアウォーク』
AFOが彼女に与えた個性は、狙撃による戦闘をメインとした彼女に機動力を与えた。さらに用意された実弾装備により中距離をカバーし、確実に緑谷出久を倒すためにと用意周到さが伺える。
出し惜しみなんてできない、このヴィランは……レディ・ナガンは今まで習った事、借りた全てを総動員しなければ勝てない!緑谷は手足のバーニアを再点火して道路ギリギリで低空飛行し、ヘルムの口元を開いて息を吸い……そして吐いた!
「ブフアァアア!!」
紫色の煙が吐かれ、緑谷の姿が隠れる。それを上から見下ろすレディ・ナガンは目を細めた。
「こんな道の真ん中で煙幕?意味がないだろう」
ただ闇雲に張られた意味の無い煙幕に、腕を変形させたライフルのスコープを構えて待つナガン。やがて、もくもくとその紫色の煙が霧散する中ーー鼻が捉えた異臭にナガンは即座に離れた!
「違う!?これはーーごほっ!!」
この煙が煙幕でないことに気付いた瞬間咳き込み、煙の中から今度は紫色の液体が勢いよくナガンへ噴射された!咄嗟に回避したナガンのライフルの銃身に擦り、融解していく!!
「これは、酸!?あいつ何を!!」
片腕のライフルの銃身が溶けたのを見て、何をされたのかと離れるナガン!煙の中では緑谷が、口元から紫色の液体を垂らして、その雫が路面に落ちて溶けてコンクリートに穴が空く!
『へいへい九代目……僕の個性がこんなグロテスクに様変わりとは、AFOの因子は凄まじいね』
「おかげで仕切り直せました……ああまるで、レプタイルになった気分だ……あのキャラはトカゲで、酸は緑色だけど」
これもまた、本来の歴代OFA達の個性が変異した物だった。この個性の持ち主は六代目継承者、揺蕩井煙、本来の個性は『煙幕』!
6th morphing『毒霧』!!
有毒性の霧を吐き出せるようになる!その有毒レベルも操作可能で催涙ガスから、呼吸困難に陥れ殺傷できる程にまで!さらに!空気ではなく液体であるため、口に溜めて放てば高圧水流のように放つ事も可能!放たれた毒霧の液体はあらゆる物を溶かし尽くす!!
「あぁこりゃ、納得だ……私は今……化け物と戦っている!!」
近場のビルの屋上に降り立ち、変形解除したライフルの腕の皮膚が煙を上げて焼ける痛みに、レディ・ナガンは納得した。
今戦っている相手は……過去対峙したどんなヴィランよりも恐ろしいと。