【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『心ってのは流動的だ』
『だぁから、ちゃあんと契約不履行の場合にも備えておいたよ』
『結局、最後までいいように使われるだけ』
『呪うならその恵まれし個性を呪え』
『哀れで悲しい……レディ・ナガン』
どこかで、悪辣な笑みを浮かべ、オール・フォー・ワンは呟いた。
呆然とするしか無かった……殺意も敵意も無かった。ただ、いきなり首根っこを引っ掴まれて、窓から投げられて……やかましい音と光が現れた……まだ耳鳴りがする。景色が揺らぐ、緑谷は彼女の名前を叫んだが耳鳴りに消えて、投げられた窓から飛び込んだ。
ビルが揺れている、すぐ倒壊してもおかしくない。それでも幸いだったのは、彼女の体は確かにあった事だけで、黒焦げの彼女を見て即座に近寄り緑谷は声をかけた。
「レディ・ナガン!!」
ようやく耳鳴りが消えて自分の声が聞こえた。そのまま緑谷はナガンを抱き抱えて、窓から脱出した。
考えられる事は一つだ、個性を与えたAFOの仕業……裏切った時の為に彼女へ仕込んだ、それしかない!背後で倒壊するビルから急いで離れ!爆発で焼けこげたレディ・ナガンに緑谷は声を掛ける
「レディ・ナガン!レディ・ナガン!!返事をして!!レディ・ナガン!!」
雨が強くなっていく、助けは居ない。
手を差し伸べたのに、取ろうとしたのに……するりと落ちていく。緑谷はナガンを抱えながら歯を食い縛るが、耐える事なんて出来なかった。
「畜生……畜生!ちくしょおおおおおおーーーー!!何で、何でこんな、助けられないんだよぉおおおおーーー!!」
雨音に叫びは消されていく、どうして、助けようとして、止めようとして差し出した手から、すり抜けていくんだと緑谷は慟哭した。
そんな背中に、眩い光が照らされた。
「見つけた……ようやくだ!大丈夫か緑谷くん!!」
「爆発が二度もあったが一体何がーー」
オールマイト経由で、連絡が来たプロヒーロー達。ホークスにエンデヴァーがようやく見つかったと声を掛ける。そして……振り返った緑谷の泣き顔と、抱えられたレディ・ナガンに、二人はハッとするのだった。
「その女性は……」
「エンデヴァー……ホークス……レディ・ナガンが……レディ・ナガンが!!」
「落ち着け緑谷!!すぐ救急へ運ぶ!!何があったんだ!?」
目に力が無い、錯乱しているとホークスはまず緑谷からナガンを移動し、エンデヴァーは肩を揺らし声を張り上げた。何があったのか、どうしたのか、答えてくれと緑谷に尋ねる。
焦点が定まってきた緑谷、そしてポツリ、ポツリと語り始めた。
「襲撃されました、連れていくと……恐らく彼女は、AFOの刺客で……戦闘になりました……けど、説得したら……いきなり爆発して……」
話し始めた緑谷、ホークスにエンデヴァーもそれを聞く最中、ホークスは袖を引っ張る感覚に気付く。
「あ……う……」
「生きてる……!?何だ、何があるのか!?先輩!!」
ホークスは彼女を先輩と呼んで、口を動かすのをしっかり耳を凝らして聞いた。面識は無い、だが話は聞かされていた。公安直属のヒーローとして同じ道を歩んだからこそホークスはナガンをそう呼び、彼女の声を聞き逃すまいとした。
「に……か月以内に……はいぼりの……しんりん……洋館へ……ターゲットを……連れて、来る……事……」
そのか細い声を、離れていた緑谷出久も確かに聞いて、涙なんて引っ込んだ。すくりと立ち上がって……ビルが崩れた瓦礫に転がっていた外れたヘルムを引き寄せで掴み、被りなおして、即座にエンデヴァーとホークスに背を向けた。
「待てイズク!一人で行くな!!」
歩き出そうとしたイズクの肩を掴もうとして、エンデヴァーは手を伸ばしたが弾かれた。また一人でこの子は行く気かと弾かれた手を伸ばした瞬間ーー。
「がっ!?」
緑谷の身体が硬直した。
「逸る気持ちも、キミの怒りも理解しよう……だが、この先一人ではAFOにとって思う壺だ」
「ジーニスト……すまない、よく止めてくれた」
動きを止めたのは、運転していたベストジーニストであった。彼の個性『ファイバーマスター』により、ヒーロースーツ『シン』の繊維が操られ、緑谷を止めたのであった。
「協力しよう、イーヴルヒーロー……チームアップだ……」
ギリギリと軋む肉体から、いよいよ力を抜いて、緑谷出久はようやく立ち止まった。
ようやくであった……緑谷出久との合流。もしも彼がAFOにとって手に落ちていたらと思うと気が気でならない……無事だった事を秘匿回線デバイスのメッセージで受け取ったオールマイトは、胸を撫で下ろした。
『オールマイト、彼女を雄英までお願いします』
「ああ、分かったよ、さぁ後ろに……」
「ありがとうございます……」
緑谷の連絡で、要救助者の座標に来ていたオールマイトは、一般女性を後部座席に案内した。
「イーヴルマジン、キミはどうするんだ?」
ロボットであり彼のバイクであるイーヴルマジンに、これからどうするのかと尋ねた。無論と彼は目を光らせながらその質問に答えた。
『私はマスターの愛車でありマスターためにあるAIです、マスターの下に帰ります』
自分は緑谷出久、イーヴルヒーロー・イズクのために生まれた。ならば主人の元に帰るのが当たり前だと、無機質な音声らしからぬ大人の声で答えた。
「そうか……彼は、元気かい?」
『ボロボロですね、元気とは言えない……ですがマスターは大丈夫と強がるでしょう』
「むーー?」
オールマイトは驚いた、彼はAIだ、主人優先の為そのあたりは秘匿するかと思ったが違った。まるで本当に彼の使用人か執事のような返答と共に、イーヴルマジンはオールマイトの車に手を置いた。
すると、カーナビが突如作動して、GPSが表示された。
「これはーー」
『マスターのデバイスのGPSです、エルクレスと同期しておきました』
「えっ!?」
『彼女を送った後にでも、会ってあげてください……』
それだけを伝え、イーヴルマジンはバイクに変形し、自動で走り出した。一体何故、まさかAIが主人の意に反して動いたのかと驚くオールマイトだったが……まずは彼が助けた子の女性を送ってからだと、シフトレバーを切り替えた。