【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「オール・フォー・ワァアアン!!出て来ぉい!!」
「慎重にと言ったのだが……」
正面玄関の勇壮な両開きドアを蹴り破り、奥まで吹き飛ばしながら、緑谷出久はズカズカと中に入っていく。
ここは灰堀森林……かつて『異形排斥集団CRC』と言う思想団体が使っていたアジト、その跡地だった。AFOにいいように使われたヒーロー、レディ・ナガンが託した証言……AFOとは緑谷出久を確保してここに連れてくると契約していた。
大阪府警顔負けの怒号と突入に、チームアップしたヒーロー達もタジタジであった。前もって慎重にと釘を刺したベストジーニストも閉口せざるを得なかった。
チームアップしたからこそ……緑谷とヒーローは互いに得た情報を照らし合わせることが出来た。しかしそれでも、AFOには辿り着けない。ようやく分かったのはナガンの証言で。
『他にも、自分以外に協力を仰いだダツゴクが居る』
そして未確定だが……ここまで逃げていることから分かる事がある。それは、AFOと死柄木はまだ万全な状態では無い、と言う事だ。
レディ・ナガンを緑谷に刺客として送りつけた事から、彼方も時間を稼ぎたいのが分かる。蛇腔での戦闘は無駄ではなかったと思いたいと、跡地を見回したが……そこにAFOの姿は無かった。
「……やはりもぬけの殻か」
次いで入ってきたエンデヴァーが呟いた、緑谷は傍にあったソファを苛立ちで蹴り飛ばした。すると、壁際の棚から光が溢れ出した。
『レディ・ナガンとの問答は楽しんでくれたかな?緑谷出久』
光から映像と音声が映し出され、拍手する見知った男……AFOが拍手しながら趣味の悪い椅子に座り、いかにも悪役であるとばかりに語り出した。
『これが起動したと言うことはそう言う事だ……本当にキミは厄介な奴だよ、全く正反対なのにオールマイトがちらついてならない……僕から生まれた化け物のくせに』
産んだのは貴様だろう、緑谷は拳を握りしめて映像を映し出す機材を壊そうとしたが、背後のエンデヴァーに落ち着けと止められた。
『化け物がヒーローの皮を着てヒーローごっことは実に滑稽じゃないか?キミはそれで誰かを救えたか?オーバーホールは肉塊に成り果て、フレクトから心臓を引き抜き、レディ・ナガンも結局救えずここに来たのだろう?足元に幾つ屍を築く?それじゃあ僕たちヴィランと変わらないぜ緑谷出久?』
「緑谷くん、耳を貸さなくていい……」
ホークスからも聞かなくていいと言われた、だが聞いてしまう、それ程までに……緑谷の心が限界に近づいていたやもしれない。
『血に染まったキミを民衆はヒーローと呼べるのかい?いい加減目を覚ませよ、キミも所詮排斥される化け物、ヴィランでしかないんだ、悪を抱いて正義を成すなんてのは古臭いコミックと特撮だけ……オールマイトから力を奪ったってね!正しくキミは!!僕の後継への道を歩んでるじゃあないか!!』
全てを終わらせるため、目の前の悪を倒すため、その為にと奪った。それは正しく僕がやるはずだった事で、キミは正しく僕だと、ヒーローでなくヴィランだと映像のAFOは笑いながら言い放つ!
『こっちに来なよ緑谷出久、そして僕と死柄木を殺してみな?その時キミは、僕になる!!』
次は……君だ!!
その台詞と同時に……アジトは爆発した。
ーーアメリカ合衆国ーー
国防総省『ペンタゴン』
「日本に飛行機を飛ばしてほしい?そりゃ無理だ、渡航制限中でヒーロー派遣もまだ決まっちゃいない……いくらアンタがVIPだろうと、無理な話だ……Mr.ヒサシ」
その一室で、長官と対面している男が居た……。
彼の名前は『緑谷久』
現在、I・アイランドにて様々なヒーローのヒーロースーツ、そしてサポートアイテムの開発の第一人者、デヴィット・シールドのチームに属する一人であり……米国政府とデヴィットの繋がりを作り上げた『デザイナー』である。
そう、ただのデザイナーだ。その一介のデザイナーでありながら彼は、デヴィットと米国のヒーロー関連開発で橋渡しになり、彼を米国に繋ぎ止め莫大な利益を産ませた立役者であった。
米国政府関係者で、彼の名前を知らない人間は居ない。
そんな男が、わざわざI・アイランドから出てきて国防総省に来たのだから国防長官は驚いた。そして来てみれば……いきなり渡航制限された日本へ飛行機を出してほしいと頼みに来たのだ。
「戦闘機ならあるだろ?ヒーローを行かせるならそれに乗せてもらって構わない、だから頼みに来た」
「余計無理な話だな、アンタは日本人だ、アメリカ人じゃあない……しかし、ヒサシ?どうしてそこまで?」
態々ご足労悪いが無理だと長官は突っぱねる、だが理由は聞いてやるかとイスを回して横になりながら尋ねたら、単純な理由だった。
「息子が危機にあっていてね……行かねばならない」
「…………」
息子か……そりゃこんな事するよなと長官は溜息を吐いた。血を分けた子どもが故郷で危機にあって、行かない父は居ない。十分な理由ではあるなと、長官はそれでもとまたイスを動かし久に向いた。
「それでも無理なーー」
ことり、と……机の上に何かが置かれた。シガレットケースのようだが、置いた久がそれを開き中身を見せる。試験管に入った赤い液体……それを見て長官は尋ねた。
「何だこれは?」
「私の血です……」
「それが何かーー」
自分の血で事を動かせるのかと思った長官だったがーーふと思い出した。この地位まで上り詰めた際に聞いた話だ。
緑谷久の兄は……AFOに並ぶヴィランだと。
そして……彼やこの久が持つ個性因子は『特異』な因子を持っていて、それは現アメリカNo.1ヒーローにすら無いものらしい。
『緑谷の血』
一日本人でしかないこの男を、米国がデヴィット同様にVIPにする理由がこの血液だと長官は揺らぐ血液を眺めて……ダラダラと汗を垂らした。
「……貴様の命の保障はできんぞ?」
「構いません、遺書も書いている」
血を渡す、それがどんな事か、血液は情報で財産だ、この超人社会では……個性因子情報もこの血液に刻まれている。それを差し出してでも、この男は日本に行きたいと言うのだ。
長官は舌打ちして、机の電話の受話器を取り上げた。
「今回だけだからな!!ヒサシ!?」
「Thank you sir」
感謝の一言だけを残し、久は長官に背を向けて退室した。