【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
灰堀のアジトの爆発から逃れた、エンデヴァー達トップヒーローチームは、少し離れた港の倉庫に集まっていた。
「間一髪爆発からは逃れたが、連合の痕跡は吹き飛んだ……」
「緑谷くんも……爆発に乗じて離れるとは……」
何とか逃げれたがまた痕跡は失われた、エッジショットの言葉にホークスも、まさか爆発に乗じて再び離れるとはと首を横に振る。
「あのヒーロースーツ……余程の耐火と衝撃性らしい、拘束した際に繊維の質を感じたが……さながらジョンブルのヴィンテージのようだった」
繊維からして物が違った、ベストジーニストがそう語る。メーカーの名前まで出すのは余程の物という事だ、だからこそ爆破に紛れながら飛び去るなんてできたのだろうと、再び消えた緑谷に、プロヒーロー達は肩を落とす。
「……ナガンから更に絞れんのか?」
エッジショットは、まだナガンから話を聞けないのかとホークスに尋ねたが首を横に振った。
「無理っすね……セントラル病院をして、何故これで死んでいないのかと言わしめる程の重体です……」
「失意と絶望に打ち拉がれた人間が、今際の際に足掻いている……というわけか」
ホークスの返答は不可能、だった。日本で一番の医療技術と設備が集まるセントラル病院、その医療をもってしても死んでなければおかしい、レディ・ナガンはそんな状態だったのだ。
打ち拉がれてなお、とどまっている状態かと、シンリンカムイもため息を吐いた。
「彼は……緑谷くんは、自分一人で終わらせようとしてるのかな……かつてのオールマイトみたいに」
再び離れた緑谷の動向に、Mt.レディは彼の単独行動は、まさかオールマイトの様に此度のヒーロー社会崩壊を一人で食い止めようとしているのかと尋ねた。
「一応……この場にいる方だけには話しましたよね、Mt.レディ……彼はAFOの因子を過去に打ちこまれたと……だから、責任を感じているんです」
「サバイバーズギルトか……それが彼をこうも一人走らせるの……」
この場に居るプロヒーロー達にだが、緑谷出久の情報は共有されていた。AFO因子を宿し、ただ一人生き延びた少年……故に、だからこそ、生き抜いて立っているからこそ、AFOを倒さなければと罪悪感と責任に彼は囚われている。
そして彼は成し遂げるまで止まらない、たとえヴィランの屍を築き上げ、血に染まり、その姿を化け物と民衆が指さそうと……屈しない程の狂気を緑谷は宿していると、インターン中に指導したエンデヴァーは顔を押さえた。
エンデヴァーのスマホが鳴った……。メッセージと不在着信は焦凍からだった。
『オイ、電話出ろ』
それを確認して、エンデヴァーはスマホをしまう。荼毘……燈矢の事、そして緑谷の事だろうなとエンデヴァーは焦凍に心中で謝罪した。すまないと、もう少し待ってくれと……。
ただただ、雨音だけが、強くなっていく……。
ーーその頃、とある美術館にてーー
「あが……あ……」
「答えろ……AFOは、死柄木は……他の仲間は!」
「し、知らない……知らなーー」
ならば用は無し、ナガンの言うダツゴクの一人が、涙を浮かべ、足の膝が、腕が、あらぬ方向に曲げられて必死に弁解して、その首を引きちぎられ、脊髄が体内から引き出され投げ捨てられた。
吹き出す血を浴びて、散乱した亡骸を、まだ呻くヴィラン達を他所に、緑谷出久は外に出た。
ヒーロースーツの返り血を雨で流し、流れ落ちた血がまるで河のように帯を作る。
あと、どれだけ殺したらいい。
あと、どれだけの血を流せばいい?
決まってる……。
AFOに、死柄木に辿り着くまで……。
もう一度あの眩しい、平和な日々を取り戻すため……歩みを止めるなと、緑谷は自らに言い聞かせる。
『お迎えにあがりました、マスター』
雨の中現れた、今や唯一の相棒イーヴルマジンが声をかけてきた。どうやら、ちゃんとあの異形の女性を守ってくれたみたいだと少し安心した。
「……行こう、イーヴルマジン」
『はい、ですがその前に……』
イーヴルマジンが、唐突に静止を促す。緑谷が命じてもいないのに、イーヴルマジンはロボット形態となり、雨の中の景色を指差した。
「緑谷少年!」
その指し示した方向から……雨で危ないのに、今の細身の鶏ガラで転けたら怪我するだろうに、その男はやってきた。
「……教えたの?イーヴルマジン?」
『今のマスターには、休息が必要です……』
AIの癖に、何を勝手な……だけど……走ってきた恩師を前にして、緑谷はまた背を向けることは出来なかった。
息を切らし、目の前に立つオールマイト……さぁ、どんな言葉が飛び出す?帰ってきなさい?OFAを返しなさい?それが最後の言葉にして、僕はオールマイトを振り切ろうと、緑谷は決めた。
「……ごはん」
「……はい?」
「ごはん!食べてないだろう!?」
けど……出てきた言葉は違った。オールマイトの風呂敷に包まれた弁当箱……かつての英雄は、その力を奪った男に食事を差し出したのだ。
緑谷は……差し出された弁当箱を、両手で大切に持って……それから振り返った。
「ありがとうございます、オールマイト……僕はもう、大丈夫ですから」
それだけで、その気持ちだけで……また頑張れる。進めると、緑谷はその場を思い切り飛んだ。オールマイトが手を伸ばしたのが見えた……緑谷は左手のデバイスを操作して……イーヴルマジンに指示する。
「イーヴルマジン、雄英に帰って、ここからは僕一人で行くよ」
『……マスターがそうおっしゃるなら、ですが、いつでもお呼びください』
「もう呼ばない」
「分かりました……」
イーヴルマジンが呼んだなら、もう二度とオールマイトを危ない場所には来させないようにする。緑谷の決意は固く、決して折れなかった。
彼に手を伸ばしたオールマイトは、違うんだと、彼方に消え去る背中を見て、佇むしかなかった。
彼は突然現れるーー。
人々が言う、彼は空を飛び、火を放ち、毒を吐き、爪で敵を切り裂き……凄まじい力を持っていて……。
ヴィラン達は許しを請うが許されず、泣き叫び、絶叫をあげて、首を切り落とされる。
誰が呼んだか……彼の名前は。
『首切りライダー』
敵か味方か、正義か悪か?
誰も知らない、知られちゃいけない。
首切りライダーが誰なのか?
誰も……知らない。
知られなくても構わない……。
それで全てを守れるならば。
恐れられても
指を差されても
非難も
罵倒も
返り血も
全て一人で受け止める
ただ一人、この道を……
光無き道を……
それでも……
「いたぞ、テメェら……」
声が聞こえた……光が射したような気がした。