※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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320話 誰も知らない、知られちゃいけない

 灰堀のアジトの爆発から逃れた、エンデヴァー達トップヒーローチームは、少し離れた港の倉庫に集まっていた。

 

「間一髪爆発からは逃れたが、連合の痕跡は吹き飛んだ……」

「緑谷くんも……爆発に乗じて離れるとは……」

 

 何とか逃げれたがまた痕跡は失われた、エッジショットの言葉にホークスも、まさか爆発に乗じて再び離れるとはと首を横に振る。

 

「あのヒーロースーツ……余程の耐火と衝撃性らしい、拘束した際に繊維の質を感じたが……さながらジョンブルのヴィンテージのようだった」

 

 繊維からして物が違った、ベストジーニストがそう語る。メーカーの名前まで出すのは余程の物という事だ、だからこそ爆破に紛れながら飛び去るなんてできたのだろうと、再び消えた緑谷に、プロヒーロー達は肩を落とす。

 

「……ナガンから更に絞れんのか?」

 

 エッジショットは、まだナガンから話を聞けないのかとホークスに尋ねたが首を横に振った。

 

「無理っすね……セントラル病院をして、何故これで死んでいないのかと言わしめる程の重体です……」

「失意と絶望に打ち拉がれた人間が、今際の際に足掻いている……というわけか」

 

 ホークスの返答は不可能、だった。日本で一番の医療技術と設備が集まるセントラル病院、その医療をもってしても死んでなければおかしい、レディ・ナガンはそんな状態だったのだ。

 

 打ち拉がれてなお、とどまっている状態かと、シンリンカムイもため息を吐いた。

 

「彼は……緑谷くんは、自分一人で終わらせようとしてるのかな……かつてのオールマイトみたいに」

 

 再び離れた緑谷の動向に、Mt.レディは彼の単独行動は、まさかオールマイトの様に此度のヒーロー社会崩壊を一人で食い止めようとしているのかと尋ねた。

 

「一応……この場にいる方だけには話しましたよね、Mt.レディ……彼はAFOの因子を過去に打ちこまれたと……だから、責任を感じているんです」

「サバイバーズギルトか……それが彼をこうも一人走らせるの……」

 

 この場に居るプロヒーロー達にだが、緑谷出久の情報は共有されていた。AFO因子を宿し、ただ一人生き延びた少年……故に、だからこそ、生き抜いて立っているからこそ、AFOを倒さなければと罪悪感と責任に彼は囚われている。

 

 そして彼は成し遂げるまで止まらない、たとえヴィランの屍を築き上げ、血に染まり、その姿を化け物と民衆が指さそうと……屈しない程の狂気を緑谷は宿していると、インターン中に指導したエンデヴァーは顔を押さえた。

 

 エンデヴァーのスマホが鳴った……。メッセージと不在着信は焦凍からだった。

 

『オイ、電話出ろ』

 

 それを確認して、エンデヴァーはスマホをしまう。荼毘……燈矢の事、そして緑谷の事だろうなとエンデヴァーは焦凍に心中で謝罪した。すまないと、もう少し待ってくれと……。

 

 ただただ、雨音だけが、強くなっていく……。

 

 

 ーーその頃、とある美術館にてーー

 

「あが……あ……」

「答えろ……AFOは、死柄木は……他の仲間は!」

「し、知らない……知らなーー」

 

 ならば用は無し、ナガンの言うダツゴクの一人が、涙を浮かべ、足の膝が、腕が、あらぬ方向に曲げられて必死に弁解して、その首を引きちぎられ、脊髄が体内から引き出され投げ捨てられた。

 

 吹き出す血を浴びて、散乱した亡骸を、まだ呻くヴィラン達を他所に、緑谷出久は外に出た。

 

 ヒーロースーツの返り血を雨で流し、流れ落ちた血がまるで河のように帯を作る。

 

 あと、どれだけ殺したらいい。

 あと、どれだけの血を流せばいい?

 決まってる……。

 AFOに、死柄木に辿り着くまで……。

 

 もう一度あの眩しい、平和な日々を取り戻すため……歩みを止めるなと、緑谷は自らに言い聞かせる。

 

『お迎えにあがりました、マスター』

 

 雨の中現れた、今や唯一の相棒イーヴルマジンが声をかけてきた。どうやら、ちゃんとあの異形の女性を守ってくれたみたいだと少し安心した。

 

「……行こう、イーヴルマジン」

『はい、ですがその前に……』

 

 イーヴルマジンが、唐突に静止を促す。緑谷が命じてもいないのに、イーヴルマジンはロボット形態となり、雨の中の景色を指差した。

 

「緑谷少年!」

 

 その指し示した方向から……雨で危ないのに、今の細身の鶏ガラで転けたら怪我するだろうに、その男はやってきた。

 

「……教えたの?イーヴルマジン?」

『今のマスターには、休息が必要です……』

 

 AIの癖に、何を勝手な……だけど……走ってきた恩師を前にして、緑谷はまた背を向けることは出来なかった。

 

 息を切らし、目の前に立つオールマイト……さぁ、どんな言葉が飛び出す?帰ってきなさい?OFAを返しなさい?それが最後の言葉にして、僕はオールマイトを振り切ろうと、緑谷は決めた。

 

「……ごはん」

「……はい?」

「ごはん!食べてないだろう!?」

 

 けど……出てきた言葉は違った。オールマイトの風呂敷に包まれた弁当箱……かつての英雄は、その力を奪った男に食事を差し出したのだ。

 

 緑谷は……差し出された弁当箱を、両手で大切に持って……それから振り返った。

 

「ありがとうございます、オールマイト……僕はもう、大丈夫ですから」

 

 それだけで、その気持ちだけで……また頑張れる。進めると、緑谷はその場を思い切り飛んだ。オールマイトが手を伸ばしたのが見えた……緑谷は左手のデバイスを操作して……イーヴルマジンに指示する。

 

「イーヴルマジン、雄英に帰って、ここからは僕一人で行くよ」

『……マスターがそうおっしゃるなら、ですが、いつでもお呼びください』

「もう呼ばない」

「分かりました……」

 

 イーヴルマジンが呼んだなら、もう二度とオールマイトを危ない場所には来させないようにする。緑谷の決意は固く、決して折れなかった。

 

 彼に手を伸ばしたオールマイトは、違うんだと、彼方に消え去る背中を見て、佇むしかなかった。

 

 

 

 彼は突然現れるーー。

 

 人々が言う、彼は空を飛び、火を放ち、毒を吐き、爪で敵を切り裂き……凄まじい力を持っていて……。

 

 ヴィラン達は許しを請うが許されず、泣き叫び、絶叫をあげて、首を切り落とされる。

 

 誰が呼んだか……彼の名前は。

 

 『首切りライダー』

 

 敵か味方か、正義か悪か?

 

 誰も知らない、知られちゃいけない。

 

 首切りライダーが誰なのか?

 

 誰も……知らない。

 

 知られなくても構わない……。

 

 それで全てを守れるならば。

 

 恐れられても

 

 指を差されても

 

 非難も

 

 罵倒も

 

 返り血も

 

 全て一人で受け止める

 

 ただ一人、この道を……

 

 光無き道を……

 

 それでも……

 

 

「いたぞ、テメェら……」

 

 声が聞こえた……光が射したような気がした。

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