※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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325話 未成年の主張 上

 

 

 

 静寂だけが、この場所を支配した。砕け散った仮面、現れた顔は雨と涙に濡れて、皆が心配そうに緑谷を見下ろしていた。

 

「立てるかい?緑谷くん……」

 

 飯田が手を差し伸ばして来たので、緑谷はゆっくり手を伸ばして、その手を飯田は再び掴んだ。

 

「肩、貸すぞ?そらっ……」

 

 反対の脇に肩を入れた切島が、力を込めて緑谷を立ち上がらせる。

 

「痛みはございますか?」

「傷は見えんけど、大丈夫?」

 

 顔を覗き込み、痛みはないかと八百万と麗日が尋ねて来て、緑谷は思った。

 

 どうして……皆、そんなに優しいんだろう。

 

 USJの時だってそうだ、こんな恐ろしい個性……何より悪の首魁と同じ個性になってしまってまで、どうしてまだ自分に優しさを向けてくれるのか。

 

「何故かって……顔をしてるね、緑谷少年……」

 

 水蒸気と共に、オールマイトが歩み寄っていつもの鶏ガラの肉体になりながら、支えられて立つ緑谷に言う。何故皆が優しいのかと……。

 

「……分からないです……」

 

 純粋に、分からないと、率直にオールマイトへ答えた。

 

「緑谷少年、ここに居る皆がキミと縁を育んで来たからさ……この学舎で、雄英高校で共に学び、切磋琢磨し、苦難を超えて来た……だからこそ、キミを放って置けないとこうしてキミを引き戻しに来たんだ……」

「縁……」

 

 縁……無かったな、そんなの。緑谷は中学時代を思い出す……全てが敵だった、クラスメイトめ、先輩も、先生すらも。

 

 唯一の縁はそれこそ、両親だけだ気だったのかもしれない。ここまでしてくれる、心配してくれる友人は、今まで居なかったから。

 

 オールマイトの横から、爆豪が歩み寄って来て、口を開く。

 

「……死柄木にブッ刺された時、言った事、覚えてっか?」

「…………」

「覚えてねぇならもう一回言う、一人で勝とうとしてんじゃねぇ、だ……続きがあるんだよ」

 

 覚えていたけど、緑谷は黙った。むしゃくしゃして苛立ちもあったから。

 

「体が勝手に動いてブッ刺されて……!言わなきゃって思ったんだ……お前をずっと憎んでた、俺より強いから……いつだって前に居たから……屈した自分が嫌になった……」

 

 違う……緑谷は、顔を向けた。そうじゃないかっちゃん、そもそもは……言おうとしても眼差しがそれを止めた。

 

「だから酷い事言った、ヴィランの個性って、クソヴィランって……そしたら、お前がねじ曲がった」

 

 違うんだよ、それは僕が悪い、止まれなかった僕が悪いと、緑谷は涙を流す。

 

「誰だって、一歩間違えたら取り返しがつかないのが個性なのに、お前だけが悪者みたいに嘲って、周りの奴らも言い出して……ここまで来てしまった……怖かったんだ、俺より強いやつを否定したかった……雄英入って、思い通りに行く事なんて一つもなかった、毎日弱さを突きつけられて理解していく日々だった……」

 

 爆豪は、向かい合った緑谷に頭を下げながら言い放つ。

 

「言ってどうにかなるもんじゃねぇけど、本音だ、出久……」

 

 

「あんな事言って、ごめん」

 

 

 爆豪からの謝罪に……緑谷は歯を食いしばり嗚咽を我慢した。

 

「たった一人でも戦おうとするお前は、オールマイトをなぞろうとしてる、けど、今お前はフラフラだ……理想だけじゃ超えられねぇ壁がある、お前が拭えねぇもんは俺たちが拭う、理想(オールマイト)を超える為に、お前も雄英の避難民も街の人も、もれなく助けて勝つんだ」

 

 自分より強い……?違う、違うと緑谷は遂に……膝を折った。昔からキミの方が、僕なんかより何倍も強かった、力や個性じゃない、心が強かった……結局自分が捻くれてねじ曲がってたから、何も悪くないと緑谷は涙を流した。

 

「謝るのは……僕の……」

 

 自分で立って、謝りたくて、それでも力は使い果たしたから、前のめりに緑谷が倒れたところを爆豪は支えた。

 

「だったら……お互い様だ……」

 

 ようやく緑谷出久は戻って来た、やっと、やっと戻って来た……それでもーー。

 

「とりあえず第一関門はクリア……ですわね……ここからはより険しいですわ」

「うん」

 

 まだ、これからだ。戻って来ても、ここからが大変なんだと八百万の言葉に、麗日は頷いた。

 

 

 

 意識を失っていた緑谷の目が、景色を映し出した。

 

「お、目開いた!13号!起きました!」

 

 瀬呂の声を聞いて、瞼が開けば……緑谷は障子に背負われていた。そして目の前の巨大な黒い壁に……ここはどこだと、どこに連れられたのかと混乱する。

 

「ああ良かった!聞こえるかい緑谷くん!」

「はい……」

 

 13号先生が珍しく素顔を晒していた、普段ならすごいレアだと驚くがそんな元気も無いなと、緑谷はここからは自分で歩くと障子の背中を降りた。

 見上げた先の黒き要塞には『U.A Emergency Security System』と記されているのを目視した。

 

「雄…英…?」

「雄英バリア発動中、この壁も機能のごく一部に過ぎねぇって」

「システム聞いたらマジ腰抜かすよ!士傑とガッチャンコするってーー」

 

 瀬呂に葉隠が、かつての校舎を囲む黒い壁を見て呟く緑谷に説明する。13号先生も色々話してくれたが、全て聞き取るのは疲れから難しかった。

 

 曰く、脱ヒーロー派も限界から逃げて来た事、過激派は徒党化して追いやすくなった事、防衛とダツゴクの確保両立ができるようになり始めたくらい状況は変わったのだと。

 

 皆、最善を尽くしている。あの日のヒーロー社会崩壊の後、ヒーローたちがスーツを脱ぐ中でも、それでも残った人たち、警察が頑張っている。

 

 戻れるなら戻りたい……緑谷の本心がそれだ。

 

「けど……戻るのは駄目なんだ……」

 

 皆が引き止めてくれた、無理矢理にでも手を引いてくれた、それでも雄英には戻れはしないと緑谷は諦めていた。その理由は簡単だーー。

 

「中が騒がしい……?」

 

 13号先生が、壁の先から声が聞こえると、ゲートを開き、緑谷もA 組も入った瞬間ーーその怒号が聞こえた。

 

「その少年を雄英に入れるなーー!!」

「噂されている死柄木が狙った少年って、そいつだろーー!!」

「AFOの実験体の化け物を追い返せーー!!」

 

 ああやはり……そうだよなと緑谷は諦観が身体にのしかかった。

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