【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「その少年を雄英にいれないでくれーーー!」
「雄英は、安心と安全を保証するんじゃなかったのか!」
「死柄木が来る!」
「そいつは、AFOの尖兵と聞いたぞーー!」
「脳無の完成形だと動画で見た!!」
「また隠蔽して、やりすごそうってかぁ!?」
雄英高校校舎への道を阻むように、避難した者達から叩きつけられる、入れるな、出ていけという声。それだけならまだしも、A組は唖然としていた。
「おい、どっから漏れた……?」
「動画に上がってるって……」
緑谷出久の秘密が、AFO因子の話が漏洩している事に。いや、いつかはあり得るが、まるで今このタイミングを待っていたかのように避難民達の中に、緑谷の実情を知った非難や罵倒が飛び交っていた。
『ヘイヘイヘイ落ち着いて!』
「これが落ち着いていられるか!そいつは、AFOが作り出した実験体なんだろう!?」
「どう責任をとるんだ!雄英は、雄英はヴィランを育てていたのを隠していたのかぁ!!」
プレゼント・マイクの話にも耳を貸さない、暴徒化しつつある惨状に、緑谷は歯を食いしばった。
大丈夫、分かっていた、出ていけば全て終わる。緑谷は身体を反転させようとしたがーー。
「大丈夫」
その手を、麗日が掴んで止めた。消える必要は無い、任せてほしいと彼女の力強い意思の瞳が、緑谷を引き止めた。
「化け物がぁ!俺が殺してやるよ!!」
「!?」
避難民の一人が、遂に我慢の限界と個性で作り上げた、拳大の岩石を緑谷向けて投げた。つまりは、麗日にぶつかる射線である。
「麗日さん!!」
疲れ果てても、身体は麗日を庇う為に抱きしめて背中を向けた。プレゼント・マイクも反応が遅れ、A組も唐突な避難民の暴力に緑谷を庇おうとする中ーー。
「あうっーー」
女性の呻き声がしたーー。
その声に緑谷は振り返って、唖然とするしかなかった。どうやって間に合ったのかすら分からない……けど、その岩石に弾かれて硬い地面に転がってA組達の前に転がったのはーー。
「か……母さん!!」
緑谷引子、緑谷出久の母親だった。避難民の中には、同じ地区に住んでいた爆豪勝己の母、爆豪光己も居て……彼女が飛び出したのを止めたが手を振り払ってまで息子を庇って、顔に岩石をぶつけられたのだ。
「おい、母さんって……」
「じゃあ、あの化け物を産んだーー」
「そんなやつまで入れてたのか、雄英は!」
雨の中倒れ伏し、右瞼から血を流して、それでも引子は震えながら立ち上がり手を広げた。息子の出久だけじゃなく、麗日、いやA組全員を守るかのように。
「この子は……私がお腹を痛めて産んだ子だ」
避難民を片目で睨みつけ、威嚇するように、息を切らしてその細身の身体を盾にして、彼女は言う。
「普通に生きれた筈なのに、悪戯でウイルスを打ちこまれて、普通じゃなくなった!文句があるなら私に言いなさい!私に石なり何なりぶつけなさい!!この子は悪くない!!」
実の子を守る為ならば、母は鬼にもなるのかもしれない。その一喝で、避難民の声が鎮まった。
それでも……そんな姿を見た子どもが、許せるわけがない。
「誰……今、母さんに石をぶつけた奴……殺してやるって……」
麗日から離れた緑谷が、呆然としながら立ち上がって……母の前に出ようとして、それを爆豪が止めた。
「押さえろ出久、分かってるが今はーー」
「離してよ、かっちゃん!」
脇に手を入れ行かせないと力を込める爆豪に、それでも絶対許さないとスイッチが入ってしまった緑谷。それを見ていた……上鳴が呟いた。
「なぁ……こいつら……守る価値あんの?」
綻びが伝播していく、そんな事を呟いてしまう上鳴に、クラスメイトは目を向けた。
「頑張ったじゃんうちらの総大将、一人で……たった一人で……こいつら知ってんの?その仕打ちがこれ?」
「上鳴……」
「上鳴くん……」
近場にいた耳郎と口田が、何と言えばいいのだろうと名前を呼ぶも目を伏せる。
「こんなんじゃ……守りたくも無くなるよ、辞めていったヒーローってさ……こんな感じなんかな……」
上鳴が、民衆の姿に失望していた、これが頑張って来たヒーローに対する仕打ちなら、スーツを脱ぐのも分かってしまうと。
「くそ!離せ!殺してやる!!よくも母さんをーー!!」
いよいよ爆豪だけでは耐えきれなくなるくらい力が入る緑谷、しかしーー。
「出久!やめなさい……」
それを止めたのも、引子だった。何故とばかりに目を見開く出久に、母の引子が言う。
「こんな現状だもの、色々皆不安だから、怖くなってしまってこんな事もある……私は大丈夫、だから……鎮まりなさい」
右目から血は止まらず、それでも引子は、我が子を諭した。
「貴方も……絶望しなくていい、ありがとう……うちの子を思ってそう言ってくれただけで、うかばれるから」
そして、上鳴の絶望に対しても、気を落とさないで欲しいと上鳴に感謝した。
止まった避難民を見て……麗日は無重力を自らに使いながらプレゼント・マイクの拡声器を奪い、雄英高校校舎へ飛んだ。
避難した中には麗日の両親が居て、彼女が雄英高校校舎の屋上に降り立つのを目で追い、避難民も自ずと目で追った。
拡声器のスイッチを押して、麗日は避難民に向かって言い放った。
『えっと……緑谷出久は!特別な力を持ってます!!』
「知ってるよ!AFOの実験体だろ!?」
麗日の話に、避難民の一人が声を上げた。
『違います!!彼は、被害者なんです!!子どもの頃に!!AFOの息がかかった医者にウイルスを打たれて、知らない間に利用された!普通の人間です!!』
麗日は否定する、そこから間違っていると。彼は『実験体』ではなく『被害者』である。それをまず知ってもらいたいと彼女は力強く叫ぶ。
『けど!彼は、そのことを知ったからこそ雄英を出て行ったんです!!迷惑を掛けないように!!それを連れ戻したのは私達です!!』
息を吸って、必死に避難民へ、涙ぐみながら麗日はさらに続けた。
『彼の力は特別で!その……AFOに討ち勝つ為の力なんです!!だから狙われる、だから行かなきゃいけない!!そうやって出て行った彼が今どんな姿か!見えていますか!?』
麗日の声に、避難民達が緑谷出久の姿を見た。ボロボロになって、汚れて、返り血を浴びて、顔はもう疲れ切っているのが分かる。
「嘘……あの鎧……あの時助けてくれた……」
そして、その中には、緑谷出久に救われた異形の一般女性の姿もあった。