【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「戦ってたんだ……私を助けてくれた後も、すっと戦ってたんだ……」
仮面で顔を隠して助けてくれたヒーロー。一切に容赦なく、敵を撃ち倒していたヒーローの、仮面の下の何と幼く弱々しいことか……。こんなになるまで、あんな顔になるまで彼は戦い続けていたのかと、避難民が麗日の声に落ち着きを取り戻す。
「だから……だから何だってんだよ!?見たら何!?俺たちまで、泥に塗れろってか!!」
それでもやはり、自分の身は可愛い。不安で、明日も分からないから、声を上げる。泥に塗れて戦うのはヒーローの仕事だろうがと、反論を叫ぶ。
「泥に塗れるのはヒーローだけです!!泥を払う!暇をください!!」
麗日はそれにも懇願するように叫び返す、守るべき人達に泥がつかないようにするのがヒーローだが、ヒーローも泥を払わねば身が持たないと。
そんな彼女の姿を見上げて……緑谷は雨でも隠せない涙が流れていた。
「緑谷くん……麗日くんは今、戦っている……」
「……うん」
飯田からも言われて、緑谷はああやはりと思い知る。戦うだけの自分では、どうしようもできない、また違うヒーローの姿……。
試験の日に、彼女が危なくて手を伸ばした。
『こっちに来い(Get over here)』と。
そんな彼女が、そして仲間達が、緑谷へ手を伸ばしてくれた。
『こっちに来い(Come here)』と。
絶対に1人で行かせないと、彼女はさらに強く思いを叫ぶ。
「今!この場で安心させる事は……ごめんなさいっ、できません!!私たちも不安だからです!皆さんと同じ隣人なんです!!」
麗日は思う、ヒーローが辛い時、ヒーロー達が辛い時……ヒーローを守るのはきっとーー。
「だからっ……!力を貸してください!共に明日を笑えるようにーー!皆さんの力で!どうか!彼が隣で!っ!休んで備える事を許してくれませんか!!」
いよいよもって、緑谷を阻んでいた避難民達は麗日の声に止まった。息を継いで、彼女はまだまだ言い放つ。
「緑谷出久は!!力の責任を全うしようとしているだけの!!まだ学ぶ事があるただの高校生なんです!!」
「ーーで、でも」
まだ躊躇して、戸惑う避難民へ、麗日は叫んだ。
「ここを!!彼の……!!ヒーローアカデミアで!!いさせてください!!」
麗日の言葉に……緑谷出久は膝から崩れ落ち蹲った。それを見て、避難民の中を押しのけて彼に駆け寄って行く者達が居た。
「出久兄ちゃん!!」
1人は出水洸汰、かつて林間合宿で緑谷に助けられた少年が、名前を呼んで駆け寄って、彼のそばまで走って来た。
「ごめんね!僕……怖くって、動けなかったんだ!ごめんよ!でも……!あのお姉ちゃんが頑張って話してて、僕行かなきゃって!兄ちゃんみたいにならなきゃって!だから……僕、来たよ!だからもう、泣かないで!大丈夫だよ!」
「洸汰……くん……」
泣きながら、それでも踏み越えて笑う洸汰に、緑谷は泣くまいと歯を食いしばって顔を見せたが涙は止まらない、そんな崩れ落ちた緑谷の身体を抱き上げたのは、緑谷が異形差別から救った一般女性だった。
「雄英の人だったんだね……」
「お姉さん……」
「あの後、オールマイトに雄英に送ってもらって、ずっと気になってた……名前も知らないヒーロー……こんなに傷だらけになって、あの時は助けてくれて、ありがとう……泣き虫ヒーローさん」
助けた2人から、感謝されて、ここに居てと抱きしめられる。それを見た避難民達の中から……1人の中年男性が、声を発した。
「ヒステリックに糾弾する前に……話ぐれぇ聞いてもいいんじゃねぇのか?」
緑谷を阻んでいた避難民達の心が、ゆっくりと動き出して行った。
「緑谷のおばさん!目は大丈夫ですか!?」
「眼球に傷が付いたかも……すぐリカバリーガールの所へ!」
出久を守り、瞼から血を流す引子に、切島や芦戸が心配しながら尋ねる。目からの出血だ、下手したら失明もあり得るとなる中で、引子は2人に言う。
「この程度どうでも無いわ、ただ少し右目の見える範囲が狭まっただけだから……大丈夫」
「それは視野狭窄って言うんです緑谷のおばさん!?ほっといたら失明もあり得る!!」
「とりあえず横になってください!八百万さん担架創って!!」
「了解しましたわ!!」
それは誰から見ても大怪我なんですと障子はこの人どれだけ気丈なんだと思いながら諭し、口田も横になるように促した、担架を持ってくる時間も惜しいと口田は八百万に担架を創造するように頼み、即座に担架を作り上げて引子をそこに寝かせた。
「……出久は幸せね?」
「え……」
担架に乗せられ運ばれる間際、引子の呟きを八百万は聞いた。
「心配してくれる友人、ちゃんと見てくれる人が出来て……本当に良かった……」
「引子さん……」
個性で様々な問題を抱えて腐る人間もいる、我が子出久もそうなりかけた。だが、雄英に入って、オールマイトやクラスメイトと掛け替えの無い存在ができた事を引子は喜んだ。
「これからも、出久の友達でいて頂戴……あの子、一度動いたらやり遂げるまで止まらないから……」
「……承知しております」
全くその通りですと、クラスメイト全員とオールマイトでようやく止まったさっきのいざこざを思い出し、八百万が苦笑しながら返事をした。
担架に運ばれる中、狭まった視界の端で、我が子が泣きながら傘をさしてもらって、声をかけられる姿を見て、引子は一息ついた。
「久さん……出久は立派になりました……」
ここまで守って来た甲斐があったと、ここに居ない夫に向けて呟き、目を閉じた。