【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
とりあえずは一区切り、休む事も必要だとベンチに座る上鳴が水を飲み唸り、その隣で峰田はもぎもぎをもぎ続けてさらに生成量を上げていく。
「オールマイトが総力戦っつってたけどさぁ……」
「おお?」
上鳴の呟きに、峰田が反応した。
「ヴィランの大将2人は、今弱ってるじゃんねぇ?」
「うん」
「ギガントマキアも拘束して眠らせ続けてんだろ?大将2人見つけりゃ、今度こそ行けんじゃね?」
今の状況、こちらがしっかりと着実に追い詰めていると希望的観測をする上鳴。しかし気を引き締めるためか、そして現実を知るべきだと爆豪が上鳴に厳しく言い放つ。
「ざっくり、3点甘ぇ」
「えぇ……3つもぉ?」
三つもあるのかと上鳴がなよなよと声色から力が抜けたが、それでも爆豪はその三つの難点を挙げた。
「まず1、多分見つかんねぇ……」
その一つ目はそもそも、AFOも死柄木も見つけられないし見つからないだろうと爆豪が言う。
「これまで脳無格納庫や死柄木のアジト、研究施設は見つかっても、オールマイトに敗北後、奴自身の所在は一度もつかめた事がねぇ……」
そもそも神野まで、都市伝説のヴィランだった存在だったのがAFOだ。今でこそ姿を現したが、逃げて隠れて裏で様々な悪の手引きをして来た男が簡単に見つかるわけがない。現に緑谷が単独で探し回ってダツゴクを狩っても手がかりは掴めなかったのだ。
「逃げ隠れるなら世界一なんだよ、あの顔金玉は」
「シモやめて」
話を聞いていた耳郎が、下ネタはやめろと釘を刺した。
「そうだよかっちゃん、ちゃんと呼ばないと……玉無し顔金玉ってさ」
「ぶふぉ!?」
「ぶふぁ!!」
「緑谷ぁ!?」
そして緑谷もちゃんと名前を呼ぶべきだと釘を刺したと思ったらこれだったので、耳郎はハシゴを抜かれたように驚き叫んだ。上鳴も峰田もこの不意打ちに耐える術はなく吹き出した、それを聞いた爆豪はーー。
「そういやあいつ、潰されてたな……顔は金玉なのに」
確かに神野で金玉潰されてたなと思い出したのだ、潰したのは目の前にいる緑谷出久(スコーピオン)である。
「うん潰した、多分あの顔は金玉の顔を移植したんだよ、だからシワがあるんだ」
「玉無しで、顔金玉か……」
「そ、玉無しで顔金玉……」
「「…………HAHAHAHAHAHAHA!!」」
2人して爆笑し始めて腹を押さえたのを見て、八百万が赤くなりながら腰にいつもホルスターで携えている『ヤオヨロ辞典』で、緑谷の頭を軽く小突いた。
「おやめなさい緑谷さん、はしたないですよ」
「あ、はい……」
「おほん……二つ目は、そもそも前回戦った死柄木は不完全な状態だった、ですわね」
注意して、二つ目の難点はと八百万が引き継いで語り始めた。
「こちらの甚大な戦力減を鑑みると、現状でも五分と言えるかどうか……」
ヒーローへの信頼を失い、辞めていった者達も居る。つい少し前まで飽和していたヒーロー達が居なくなって、戦力はガタ落ちなのだと八百万は顔を顰めた。
「それ、んで3……火蓋を切るタイミングは向こうが握っている」
二つ目に言いたかった事だと爆豪が八百万に言われ、三つ目はと説明した。つまりは先手が打てない、必ずこちらが後手に回らざるを得ないと。
「ラグドールが奪われた……遠方からでも個性を特定できるさ"サーチ"アメリカ戦でその個性が消えたとしても、おそらく後手は必死、だからこその今のやけくそ人海戦術なんだ」
戦いの始まりは彼方が決めれる、姿を隠し見つからない、人海戦術であたるしかない現状を聞いた上鳴の顔は沈み込んだ。
「だからせめて出方を、死柄木達の動きを誘導できるように、早速僕も捜索にーーあたっ!?」
その口ぶりが違うだろと、緑谷の脳天にチョップを放ったのは飯田であった。またキミは1人でやろうと口に出ていると、飯田が正しく言い直す。
「僕達……だろ?」
「そうだぞ緑谷ぁ!!」
切島もそうだと声を上げ、いつの間にか皆緑谷の周りに集まっていた。何度でも、忘れそうになったら、忘れさせるものかと緑谷に示す。お前は1人じゃないと……緑谷は集まる皆に笑顔を向けたがーー。
「あれ?青山くんが居ない……と言うか、葉隠さんも?」
ふと、青山の姿が見えないし葉隠さんも気配が無いと辺りを見回した。
「あぁ、多分ご家族の方と面会してるんじゃあないかな?出歩きもできるしね、麗日くんの演説を受けてヒーロー科と避難民の接触も緩和されたからな」
気恥ずかしいと赤くなりもじつく麗日、そう言えば彼には発熱して看病して貰ったし、親御さんに感謝と挨拶くらいはしなければなとふと思い立ち、緑谷は青山と葉隠を探す事にした。
葉隠透は、木の幹に身を隠しながら、その事実に呆然とした。雄英高校敷地内の森林、そこは人目がつかない死角ともなる場所。
「やるしかないのよ……あの人が再び指示を出して来た……大丈夫、これまで通り傍受されていても民間の日常に取れるよう、暗号化してあるわ……ここなら監視の死角になるんでしょ?」
彼は、群訝・蛇腔戦から特に元気が無かった。だから1人寮から立ち去ったのが心配になって、葉隠は追って来たのだ。メガネの紳士と金髪の美女が、彼に縋るように頼んでいた。その表情もまた必死で、悲壮だった。
「神野までちゃんとAFOの言う通りにできたじゃない……やらなきゃ、私たちが殺されてしまうの……!優雅!!」
そんな2人の大人から必死に頼まれた、青山優雅の顔は、涙と鼻水に染められ見れたものでは無かった。
葉隠も度々被害にあったA組の1人、内通者が居ると聞いた事がある。それがまさか、クラスメイトの青山くんだなんて信じられなかったし、信じたくも無かった。
「入学間もない頃、上手くあの人の要望に応えたじゃない……合宿でも、誰にもバレずに居場所を教えられたじゃない……!」
「友達の秘密を避難民に流したのも心苦しいのは分かる……優雅……!」
USJの襲撃も、林間合宿の襲撃も……そして、緑谷出久の秘密が避難民に流されたのも……青山優雅がやった事だと、彼の父母の命乞いにも似た説得から葉隠は知ってしまった。
どうしたらいい、誰か先生は居ないか、誰かと葉隠は辺りを見回して……そこに彼が歩いて来たので、葉隠は手招きとジェスチャーで来て欲しいと伝えた。
「私たちだって……一度だって好きでやってないわ……けれど、もう遅いのよ……遅すぎるの……!」
「ママ……パパ……でも……ぼく……」
泣く息子の気持ちも痛いほど分かる、こんな顔にさせない為にと両親は行動して、そんな両親の苦しむ様を見たくないから息子の青山優雅も行動していた。
「私たちはただ……あなたにただ、幸せをつかんで欲しかった……個性を持たず生まれた貴方が、皆から外れないように……皆と一緒に夢を追えるように……!ただそれだけを願って……」
「こうなる事が分かっていたら……、しなかった……!絶対に……AFOに個性を貰うなんて……!」
「でも私たちは……関わってしまったらもう!AFOから逃げられないのよ!」
青山優雅は……『無個性』だった。この時代における無個性差別は、異形型個性とは違うもののあった。子ども達のいじめの的になり『無能』の烙印を刻まれる。
そんな優雅のことを考えた2人がすがったのがAFOだった。それが、さらなる地獄への道とも知らずに。
「ずっと……苦しかった……!絶対に疑われないように……振る舞って来たよ……罪悪感におしつぶされるから……無理矢理気丈に振る舞ってたよ……」
涙を拭っても止まらない、次々と溢れてくる。心が締め付けられる、ずっとずっと、クラスを、雄英を、ヒーローを裏切って来た罪悪感に青山は苛まれていた。
「神野でAFOが捕まった時……いやしくも勘違いをしてしまったんだよ……これで皆と一緒にって!」
「あぁ優雅……許して頂戴……愚かな私たちを許して……」
「僕!ママンとパパンを守りたくて……!死なせたくなくてぇ……!!」
「優雅……お願い……私たちを助けてぇ……」
壊れそうな我が子に、死にたくないと、助けてと頼む母。そしてそんな両親を愛してるから、死なせたくないとどうにかしたくても、もう限界が来てしまった息子……。共倒れの地獄へ向かう最中、草を踏む音が聞こえ、青山の両親は過敏に反応した。
「……」
緑谷出久が現れて、泣きながら青山は彼の名前を呼んだ。
「緑谷……くん……」
青山は理解した、終わったと。彼と一年少し過ごして来たから分かる……ヴィランには一切容赦しない彼の苛烈さを。そして突きつけられる、緑谷出久を連れ戻す為に……皆が声をかけた中で、自分だけは何も言えなかった事を。
それどころか自分は……彼が戻れないようにと、AFOの頼みで緘口令が敷かれた秘密を流布した……。
「青山くん……何で泣いてるの?」
そんな彼がまずして来たのは心配だった……心配してもらえる資格なんて無いのに、緑谷出久は歩み寄りながら、もう一度尋ねる。
「両親に、何か言われたの?誰がキミを泣かしてるの……?」
苛烈な中にある確かな優しさが、余計に青山を追い詰めた。それが、彼の限界だった……どこまでま彼はヒーローで、自分の卑しさに惨めさが、青山優雅の心の器を壊した。
「USJも……」
「え……」
「合宿も、僕が手引きした……」
「優雅!!」
母の静止も聞かず、懺悔と罰を受ける為、断頭台へ登るように青山は自白する。
「キミの秘密を流したのも……僕だ……緑谷くん……」
その瞳から、ゆっくり光を失い、泣き顔で青山は緑谷に告げた。
「僕は……クズのヴィランだ……」