【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
クラスメイトであり、友人からの自白を聞いた緑谷出久。USJも、林間合宿も……それどころかAFO因子の話を流布したのも自分だと言われた緑谷の顔は歪んだ。
だが……怒りの色も、呆れの色も薄く、それよりも苦心の表情が強いのを見た青山に、両親は言う。
「優雅逃げましょう!」
「逃げるんだ!」
両親それぞれが青山に手を回して引き連れ逃げようとしたのを見て、緑谷が追い縋る。
「待って!!」
それを見た青山の行動は、両親の背中を押して先に行かせようとしたのだった。青山優雅にとって両親は何よりも大切で、自分を無個性から救ってくれた人だから。
何不自由ない富裕層の家系の生まれだった2人、生まれて来た無個性の優雅にひどく狼狽えた。だからこそ、自分の子どもが他の子に虐げられ無い為にと藁にもすがる思いで何とかしたかった。
子への愛情が生んだ悲劇、そして親が殺されない為に……その愛に報いたいと思い子どもである優雅も頑張った。
『オールマイトが教師になるという噂がある、雄英に入れなさい』
『クラスが孤立するタイミングを教えなさい』
『合宿先を教えなさい』
『緑谷出久が孤立するように、真実を流しなさい』
『緑谷出久が1人になるように、誘き出しなさい』
そんな自分にでも、話をして、互いに両親が大切だと共通点があって……自分が流布した噂によって緑谷の母親の目は重傷を負った。それでもまだ、自分に何かあったのかと聞いて来て、手を伸ばそうと、助けようとする緑谷の姿と自分自身の矮小さに、青山優雅はーー
「キミの優しさに僕はぁ!!」
「やめろ青山ああああ!!」
絶望したのだ。
死の気配が、自身の顔面に伸びている。当たれば無事では済まない、青山優雅の腹部のベルトから光が集まりだした。緑谷は逸らしたり、避けたりと頭に浮かばず、青山を引き戻す為に手を伸ばしーー。
その光線が照射され、緑谷の手前で屈折して命中しなかった。
宙に浮かぶ口とグローブ……青山のレーザーに当たったからか、ふとその子の輪郭がくっきり浮かび出したのを見て緑谷は目を見開いた。
「私の身体は……光を屈折させる性質があるーー!」
葉隠透、個性“透明"の彼女の姿が、青山のレーザーの光に当てられて自身の体の中で反射して、その姿をゆっくりと露わにしてしまった。
「皆、死んじゃってもおかしく無かったんだよ?」
自分も、クラスメイトも下手したら死にかけたし大怪我になった。
「日本中がおかしくなっちゃったんだよ……!」
今のこの日本の姿は、キミがそうして一端を担っていた!
「何考えて……教室居たの!?寮で!みんなと暮らしていたの!?ねぇ!!青山くん!!」
「あぁぁああぁああああーーーー!!」
見えない美少女が姿を現して、どうしてこんな事をしたと悲しみと怒りのないまぜで吐き散らかされ、青山優雅は絶叫をあげた。
「違うんだぁ!!」
「優雅はぁあ!!」
違う、全て親である自分たちが悪いと弁明の為に戻る青山の両親ーーだったが、その身体は息子の優雅に届かず、地面へ釘付けにされた。
『人形操りの糸』
緑谷出久の引き寄せで足も手も地面に引き寄せられ、青山も大の字に磔にされたように地面に引き寄せられ身動きを封じられた。
「青山くん……葉隠さんは……キミがこれ以上人を傷つけないようにしてくれたんだ……」
拳に力が入らないくらいに、心に悲鳴が上がる。今こうして個性を使うのだって、制御が効かなくなりそうで、緑谷は顔を両手で覆いながら膝を折り、嗚咽を殺して青山に頼んだ。
「止めよう……もう……頼むから……止まってくれ、青山くん……」
その手で隠した顔から、涙を溢して緑谷は嗚咽を噛み殺した。
雄英高校校舎内、視聴覚室に青山夫妻と青山優雅は連れられ、拘束された。内通者であると報されて集まった警察関係者にオールマイト、プレゼント・マイク、根津校長、そしてA組全員の表情は様々だ。信じられない、嘘だ、そんな馬鹿な、ふざけるな……そう言った様々な表情が青山に突き刺さる。
「成る程……AFOから個性を与えて貰い、支配されるに至ったと……個性の付与は約十年前か……」
青山夫妻と優雅の証言を繰り返し、塚内はため息を吐いた。
「今無事という事は……ナガンの様に裏切ったら爆発する仕掛けは無いようだが……」
「……まさか生徒だったとは」
プレゼント・マイクもこれには閉口するしか無く……根津校長は集まったA組の方に振り向いて言った。
「できれば……キミ達は下がっていなさい」
内通者の話はあったが、それがクラスメイトだったなんて耐えきれまいと、優しい顔はそこには無い。酷な事だから出て行ったほうがいいという校長に、轟と上鳴が力なく声を上げる。
「下がっていられる……」
「……道理がねえよ」
声色も様々だ、轟は怒りを孕んでいるし上鳴は嘘だと思いたいと力が抜けている。
「葉隠さんが見つけてなかったら……何するつもりだったんだ……?」
泣いているらしい葉隠の肩と腰を支えて、恐怖心が声に見える言い方で尾白が尋ねた。
「青山さん……」
「青山ぁ!嘘だって言えよぉ!!」
「騙されてたんだよな……?わざとじゃねぇんだよな!?」
嘘だと言って欲しい、AFOに操られてましたと、騙されていたと、そうあって欲しいと八百万に切島、峰田が願うように青山に尋ねる。
「元無個性か……いたたまれねぇな、本当によ」
爆豪は……一番に怒り散らすかと思えば静かに目を伏せてそれだけ言って黙りながら、緑谷の方に目線が向けられた。
そして、3人を拘束した緑谷は……目元を見せたく無いとばかりに右手で顔を押さえたままであった。
「生憎、まだ我々は秩序に生きようともがいている……AFOについて知ってる事、洗いざらい喋ってもらう……」
塚内から質問が下される、協力者ならば知っていることを話せと。それに答えたのは青山の父だった。
「知ってる事は何も無い……私たちはただ、頼まれたら実行するだけだ……失敗したら殺される、嘘をついても殺される……!」
「……どうやって?」
「見せられた……そうした人間が“処分"される様を」
それが、AFOの情報網だった。例え警察に自首して牢の中に入ろうと、出所したら殺される……AFOを裏切ったら決して死からは逃れないと青山の父は涙ながらに証言した。
「……自分が、殺していたかもしれない人達だ……」
そして、ようやく青山は口を開いた。自責に後悔……気丈に明るく振る舞っていた仮面は剥がされて、ただ泣くしかできない本来の
青山優雅が、必死に言葉を紡ぐ。
「僕は……仲間の顔して笑い合った……笑い合えてしまったんだよ……たった1人でも、AFOと戦う為に1人出て行った彼を知って……自分の惨めさに絶望したんだ……それどころか、自分可愛さに彼が帰れない様に秘密まで……性根が腐ってたんだよ、青山優雅は……根っからのヴィランだったんだよ……」
自分可愛さに友達を売った、もはやこれのどこがヒーローなんだと目を曇らせて自白する青山……それに対して緑谷が、目元を隠した手を下ろして口を開いた。
「青山くんは、悪くない……」
「えっ……」
「青山くんの父さん母さんも……悪くない……全部全部AFOが悪いんだ」
子どもの駄々っ子のような言葉だった、まだ涙を流していたのか、涙の線が残っていて、それでも緑谷は続けた。
「無個性のいじめは……昔の異形差別と同じくらい酷いのを知ってる……時には無個性だからって親から捨てられた子も居て、社会に出たらそれだけで就職をはじかれたりした話を聞く、僕の町では飛び降り自殺した子も居た……」
異形差別とは別に、無個性の差別もこの世界に存在した。そのいじめや差別の残酷さを、緑谷自身も知っていた。
個性というものが現れてから、それを宿した者、宿さなかった者……それぞれ抱える物があり問題があり今でも続いている……異形差別しかり、異形でなかろうと、個性によっては迫害される事もあるのだから。
「キミの両親が藁にもすがるのが分かる……形は違っても、僕の父さんも母さんも個性の事で僕を守ってくれたから……もし僕が青山くんと同じ立場だったら、同じことをしていたかもしれない」
何より、緑谷自身も『個性差別』の被害者であり、それを両親が守ってくれたからこそ、青山優雅と彼の両親の行動を否定する事はできなかった。誰だって、我が子や肉親は最も大切な相手……それらを助ける為なら、恩に報いるなら同じように考え、同じ様な事をしてしまうと緑谷は同情した。
緑谷は青山の拘束された椅子に近づいて、膝を折りたたみ目線を同じ高さにしながら、青山に言った。
「泣く程嫌で、絶望するくらいに自責しているなら、どうにかしたかったんだ……助けも呼べない中で1人……ごめん、気付いてあげられなくて……だから、お願いだ青山くん……まだ取り返せる、戻れる……キミはまだヒーローになれる」
「み、緑谷くん……」
拘束された青山の膝に手を置き、目を合わせる緑谷に、青山は涙が溢れ出した。
「そこまでだ緑谷くん、理由があったとは言え……AFOに与した罪は変わらない」
ここで、塚内が割って入り、優しく緑谷と青山の間に腕を入れて、緑谷を押す様に青山から引き離した。無理矢理では無く促す為に力は入れてない、緑谷は立ち上がって元の立っていた場所に戻され、塚内は他の隊員に目配せすると。青山の口元に拘束具を取り付けた。
「状況から安全と推測しているだけで、まだナガンの様な仕掛けが無いと言い切れない……セントラルの検査結果が出るまで、これ以上彼に喋らせるのは良く無い」
いくら事情があろうと、仕方なかろうと今の彼は『AFOの内通者』例えその意思がなくても、個性なり何なり仕掛けがされて内情を盗聴されていたりするかもしれないと、塚内は緑谷を近づかせない様にした。緑谷は一度塚内を睨んで戦慄させたが、その眉間から力を抜いて目元を緩めて伏目になった。
「お母さん、お父さん……我々が神野へ強襲をかける事を何故報告しなかった」
さて、塚内はここで気になる事があった。青山一家が協力者ならば、神野のヴィラン連合への同時拘束作戦を伝えられた筈だ。それをしなかったのは何故か?尋ねられた青山父が理由を語った。
「……こちらから連絡はできない」
彼は語った、そもそも連絡が一方通行なのだと。
「向こうが求めた時のみ、その都度連絡先が伝えられ、終わればすぐに使えなくなる」
「捕まっても辿られないように、か……ならば……」
「塚内さん」
その声だけで、塚内は背筋が凍って振り返った。え?僕何か悪い事した?殺される!?となるくらいに、振り返った先の緑谷出久の冷たい声に冷や汗が出た。
「AFOは見つからない……それが、今の見方でしょう?」
その一言を聞いて……一番最初に気づいたのは上鳴だった。緑谷が何をしようとしているのか、何を考えているのか、寮の前での話を思い出して思わずあっと唸る。
『恐らく後手は必至、だからこそのヤケクソ人海戦術なんだよ……』
爆豪が言っていた決戦となる際の三つの懸念の一つである。
「出方を……死柄木達の動きを誘導できる様に!?」
上鳴の言葉にこの場に居たA組から警察関係者、雄英教師陣までもが気付いた。
「そっかぁ!」
「見方を変えれば、現状ただ1人青山さんだけが!AFOを欺く事ができるかもしれない!!」
現状、内通者である彼だけが……雄英とAFOを繋ぐ連絡手段。つまりはうまく利用すれば……AFOを誘き寄せれることが出来る!!
それを考えて、緑谷は青山を説得したのかと思ったが、決してそんな打算なんて無いだろう。
「もう一度言う、青山くん……きみは、まだ、ヒーローになれる!!」
かつて、道を踏み外しかけた自分の手を掴んでくれた憧れの様に、緑谷出久は青山優雅に言葉で、手を差し伸べた。
※セキアカ裏設定
セキアカ次元では異形差別もだが『無個性差別』も原作より酷い。こちらでは超人社会の個性持ちの活躍から『無個性より異形がマシ』くらいな風潮がある。
そして、爆豪と緑谷は過去、その無個性差別で投身自殺した小学生のクラスメイトが居た。形や思いは違えどヒーローを目指す2人は、この事件の事もあり『無個性差別はしないし許さない』と、同じ約束を内に秘めている。
この為この次元のかっちゃんは『無個性を決して馬鹿にしない』という原作との違いがある。