【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
scene1 男が居た
ーー1人の男が居たーー
薄暗い部屋にて、ホームシアターから映された映像を眺めていた。この映像を、どこから撮って来たのやら……金色に輝くヒーローの一撃が、巨悪を打ち砕く瞬間ーー。
『ユナイテッドォ!ステイツオブ!スマァアアアアォッシュウウウ!!』
「ブラーボォ!!オオブラーボ!ブラーボォ!!ああ……最高だぁ……」
男は立ち上がりながら拍手をした、オールマイトの活躍は何度見てもいい、ワインの肴に最高だ。そして何より、この引退を決めた最後の戦い!総決算とばかりに最後の力を振り絞り、新たな姿でAFOを打ち倒した神野のラストバウトは伝説だった。
「いかなる困難をも克服し、己の理想に向かって邁進する……やはり……オールマイトは最高だ!!」
そして有終の美を飾るように、彼は皆に本来の姿を晒した。なんと頼りない痩せ細った体、この身体からあの勇壮な姿に変身して彼は今まで戦って来たが、ここが限界とインタビュアーに最後の言葉を残す。
『私の意思はもう託した……次は……キミだ』
「!!」
その言葉に男は胸に手を当てながら、幾度も見た映像のオールマイトに向けて頭を下げた。
「分かっているともオールマイト……この俺が……象徴を引き継ぐ」
そう慈しむ様に言う男の部屋には、様々なオールマイトの写真が壁から天井すべて、所狭しと貼り付けられていた。
ーー1人の男が居たーー
金髪の美人な令嬢の写真を瓦礫に立てて、耐熱ガラスのティーポットにお湯を注いでいる。茶葉が踊りながら、湯を琥珀に染めていく。
「なんだいありゃ?」
「人探しだとさ……」
超常解放戦線と死柄木弔により、社会の崩壊した日本。自警団としてショッピングセンターの跡地を根城にしている男達が、駐車場にて茶を嗜む男を眺めながら、何者なのかと呟いた。
「あの格好で?見つかるわけがねぇ……」
「あぁ、この国はとっくにぶっ壊れてる」
格好からして目を引かれる。しっかり整えられた執事服の男だった、どこかの金持ちの使用人で、主人でも拐かされたか逸れたか、はたまた亡骸を探しているのか……。
その執事は赤髪を後頭部で纏めて、右目には眼帯、右腕に至っては機械製の義手だった。
左手に茶ごしを持ち、キャンプ用品の折りたたみカップに添えて煮出した紅茶を注いでいく。所作もこんな荒廃した場所でありながら、身に染み付いているらしく優雅さが伺えた。
香りを楽しみ……一口飲んだその時……サイレンが鳴り響いた。
『現在、西地区全域にヴィランが出没しています、ヒーローが事件を解決するまで安全な場所に避難をーー』
どうやらヴィランがでたらしい、執事服の男は即座に紅茶を飲むや携帯ガスコンロを素早く分解してバッグに入れていき、近場に駐車していたバイクへと取り付け跨った。
「避難って……どこに行きゃいいんだ」
自警団の男は、このヒーロー社会が崩壊した日本でどこへ逃げろと言うのだと嘲った。そして駐車場を使っていた使用人は、赤い大型バイクを走らせて即座に出て行った。
その探している人とやらは、ヴィランに攫われたのかと考えながらも、自警団の男は俺には関係ないかとタバコに火をつけた。
「邪魔だ邪魔だぁ!どきやがれぇ!!」
ヒーロー社会が崩壊した日本は、超常黎明期の混沌へと戻って行った。ある商店街も、ヒーローを信用できないと自警団を作り上げて自衛していたが、この日ヴィラン達によって物資を強奪されていた。
3人組のヴィランのうち、青いモヒカンのヴィランが所有しているトラックの上に飛び乗り、手を車体にかざせば……その身体がトラックに入り込み一体化し、刺々しい攻撃的なフォルムとなって、商店街を走り抜ける!
「逃すなぁ撃て!撃てぇ!!」
商店街の自警団達が銃型サポートアイテムで迎撃するが止まらない、荷台から球体じみた肥満体のヴィランが飛び出て体をゴム毬の様に弾ませて、商店街の店やアーケードを使い跳ね回り、自警団達にぶつかっていく。
そして、オレンジ髪のヴィランが投げたブーメランは、突き刺さった先から爆発していき、彼ら3人組のヴィランは物資を奪いバリケードを突き破り脱出してしまった。
「大量大量!」
「これで当分は食いっぱぐれずに済むぜぇ!!」
いい時代になったものだと、大量に奪った物資を荷台に乗せて、ヴィラン達は逃走を開始した。
今の時代はもう、ヒーロー達がすぐ駆けつけてくる事は難しい。
あの戦いから、ヒーロー達はスーツを脱ぎ、そして事務所を閉めた。
だが……そんな荒廃した時代にも、ヒーロー達はまだ生き残っていた。
ーー1人の男が居たーー
「聞こえた、複数の破壊音ーー車の走行音が遠くなっていく」
装甲車の助手席より、耳郎響香がイヤホンジャックを通して通報があったヴィランの場所を特定していた、それを後部座席のチームメンバーへと伝える。
「距離は?」
「約2キロ」
尾白猿夫が距離を尋ね、大凡2キロと特定し、座っていた瀬呂範太が笑いながら、準備運動を始めた1人の男に言った。
「その距離なら行けるな、総大将」
ならばここはお前の出番だろう、その問いかけに緑谷出久は笑って頷いた。
「ああ、任せて」
任せてくれと言う緑谷に、同じチームの麗日お茶子もまた笑って言った。
「手加減したげてよ、出久くん」
「できたらね」
キミはいつもやりすぎる、手加減は必要だと言う麗日に、できたらねと返した緑谷。
「ハッチ、オープン」
彼らは学生だ、だからこの装甲車を運転しているのはロボットだった。そのロボットがハッチのボタンを押せば、後部ハッチがゆっくり開き出した。
「じゃ、行きますか!」
走行したまま、道路に飛び出した緑谷は空を引き寄せて空に跳ねた。そして、ヴィランが逃げる方角へ体を向けつつ、両腕前腕、両足の脹脛に意識を集中させれば、肉が裂け骨が変形して噴射孔ができ、甲高い音をあげて火を噴き出す!
「7th morphing、バーニア!!」
変異したOFA歴代個性の一つが、緑谷の空中高速移動を可能にした。
あっという間に装甲車から緑谷は離れ、荒廃した街を下に見ながら、目標のヴィランが運転するトラックを目視にて確認する!
「なんか来るぞ……」
荷台の幌に乗っていたオレンジ髪のヴィランもまた、その姿を目視して呟く。
「あの黒い服……帽子……」
その特徴を確認して数秒後、二人は青ざめながら叫んだ。
「「うわあ あ ああ ああああああ!?イ、イズクだぁああ!!」」
「はぁ!?おい冗談だろ!!」
「スピード上げろ!!早く!はやーく!!」
ヴィラン達は一気に恐慌状態に陥った。今やこの荒廃した日本のヴィラン達にとって……緑谷出久は『死刑宣告』に等しい存在だった。
ヴィラン殺しにダツゴク狩り、ヴィランが最も恐れるヒーローが俺たちの前に現れた事実!!早く逃げなければとトラックに同化した仲間を焚き付けるがもう遅い!!
「Get Over Here(逃げられると思うなぁ)!!」
右の袖を振りかぶり、袖口から放たれた鎖苦無がトラックの後部に突き刺さる!そのまま着地した緑谷は、まず他人から見たらあり得ないとその身一つで!トラックを停めて見せた!
『引き寄せ』の個性に、今はその身体に宿した、オールマイトより授かった『OFA』の超パワーがそれを可能にした!
「ええい!?このまま捕まってたまるかぁ!!」
オレンジ髪のヴィランが、紫色のブーメランを両手に作り出して緑谷へぶん投げる!それを見た緑谷は、ほぼ動かず身体を少し傾けただけでそれを回避した!
ならばとその隙に肥満のヴィランは体を弾ませて瓦礫に当たってさらに弾み、緑谷の斜め上から体当たりを仕掛ける!しかし!それも少し足を動かして回避してみせた。
だがそれは囮!!その避けた背後から戻って来たブーメランが緑谷の背中に襲いかかる!
「返す!!」
それすらも、待っていたとばかりに緑谷は戻って来たブーメラン2本を蹴りで弾いてから浮き上がったその2本をさらに蹴り抜いてーー。
「あぎゃあ!?ひ!?そんな!!ああああーー!!」
持ち主のヴィランにお返しして、ブーメランが突き刺さった。そしてーー時間経過に焦るヴィランは抜く間も無く逃げようとして爆破に自ら巻き込まれて、黒焦げになり宙を舞った。
さて、仕上げだと緑谷は鎖を両手に持ちーー。
「ぬぅん!!」
「うわぁあああああああ!?」
トラックと同化したヴィランを思いっきり引っ張って宙に浮かせた。物資が散乱するのをよそに、運転席と同化したヴィランが最後に見たのはーー赤く目を輝かせ狂気の笑みを浮かべた緑谷出久だった。
「バイオレントォオオ!ラァアアアアアアッシュ!!」
凄まじい速度と威力の打撃に、運転席がみるみる形を変えていき、最早事故を起こしたとしか思えないひしゃげた形となって、やっと青髪のヴィランが個性を解いて出て来て空を舞った。
既に腕や足の関節が幾つも増やされている程ボロボロになっている……が!
「Finish Him!!」
その掛け声と共に緑谷は跳躍して青髪ヴィランを逆さにして、足で顎を押し蹴る形にして固定しつつ自由落下しながら叫んだ!!
「劇場版必殺技!!イーヴル・フェイタル・バスタァアアアーーー!!」
「うわらば!?」
その必殺技と共に、脳天からコンクリの地面に叩き落とされたヴィラン。その衝撃は地面に亀裂を走らせ、頭蓋骨が粉砕されて血を脳天から水風船の破裂した様に撒き散らし、さらにその衝撃で脊髄から尾骶骨まで亀裂が入り……人体の中で真っ二つにされるのだった。
「……Fatality」
青髪ヴィランは、コンクリ地面に突き刺さったまま硬直して倒れず、そこには黒焦げの仲間と愉快なオブジェにされた仲間だけが残った。
「ひ、ひぃい!?」
肥満体のヴィランは最早抵抗の意思など無く……ただ尻餅をついて、ズボンの股間にシミが広がり出した。そんな最後の一人にゆっくりと歩み寄り、緑谷は見下ろしながら尋ねる。
「どうする?このまま無抵抗で捕まるか……それとも二度とまともな暮らしができなくなってから豚箱にぶちこまれるか……決めなよ」
最後の審判が下されて、肥満体のヴィランは即座に答えた。
「じ、自首します!!」
「よろしい」
自首すると言った、それを聞いた緑谷が、にっこり笑ったのを見て許されたと安堵のため息を吐いた瞬間ーー肥満体ヴィランの頭が鷲掴みにされた。
「それはそれとして、護送までに抵抗されたら敵わないから脊髄ぶっこ抜くからね?」
「そ!そんなーー」
「大丈夫、ちゃんと刺し戻してあげるから、さ!!」
ボン!と破裂音じみた音を鳴らし、肥満体ヴィランの頭部は脊髄ごとぶっこ抜かれ、血の雨が吹き出した。
「あのさ、緑谷……やり過ぎ」
「誰が後引く怪我させろっつったよ大将!?」
「手加減してって言ったよね?」
「ちょっとこれは擁護できないぞ」
「ただでさえ病床が圧迫されてるんだからね!」
「すいません……」
そして、緑谷出久はコンクリの地面にて正座させられていた。チームを組んだ耳郎、瀬呂、麗日、尾白、そして葉隠に見下ろされて、しゅんとなった緑谷の後ろには、既に護送車だけで無く救急車もサイレンを鳴らして駆けつけていた。
「一人は息がある!青い髪の方はすぐICU運べぇ!!」
「なんてこった、心音が止まったぁ!」
「電気ショックよーうい!!」
「畜生今夜も徹夜じゃねーかよ!!」
通報があった3人のヴィラン、うち1名の爆破ブーメランのヴィランは、自身の個性による自爆だったがそちらは軽傷で済んだ。
が、トラックと同化した青髪のヴィランは一刻を争うようで、今心停止して電気ショックを行なわれている。救急隊員達がてんやわんやと徹夜コース確定に嘆く横では。
「もう、しません……許して……助けて……」
手足を拘束された肥満体ヴィランが脊髄を刺し戻されたが、精神は壊されたらしい繰り返し懺悔を呟き目を虚にして涎を垂らしていた、精神病棟行きは免れないだろう。
「本当……恐ろしいね、緑谷の脊髄ぶっこ抜きはさ?」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてないよ?」
呆れながら耳郎が、慣れはしたけどやはり見れば恐ろしい力だと、この有様に苦笑したのを見て、頭を掻いて緑谷は笑うがピシャリと冷たく叱られた。
そしてふと、正座して説教される中、視界の端の崩れた高架道路に、赤いバイクに跨るフルフェイスの人物が、こちらを見下ろしているのを見つけた。
その人物はしばらく、こちらを見ていたがバイクを走らせて去っていった。
なんだったのだろうかと思いながらも、緑谷はチームのクラスメイトから説教を受けつつ、とりあえず捕まえたヴィランを引き渡す為、護送車に乗るのだった。