【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「新しいオールマイト……!?」
緑谷からすれば、こいつ何を吐かしてんだ勘違いコスプレ野郎はと怒りをこえて唖然とした。恐らく全国、いや全世界のオールマイトファンを敵に回したぞこいつはと固まってしまうが、構わずオールマイトを嘯くそっくりさんは演説を続ける。
「オールマイトが何故平和の象徴と呼ばれるようになったか?答えは至ってシンプル……」
そっくりさんは明らかにオールマイトらしからぬ邪悪な笑みで拳を握りしめながら宣告した。
「強かったからだ!!オールマイトの強さにヴィランは平伏し!力を持たぬ者達はその強さに憧れ!畏怖と羨望は希望となり!やがて象徴となった!!」
的外れもいいところな、ねじ曲がって見ているのかと思うほどに理解していないオールマイトのあり方を、さもその通りで正しいと言い放つそっくりさん……いや、偽物の話を緑谷は黙って聞き続ける。
「だが!その象徴は失われた!!周りを見回して見たまえ……ヴィランに敗れ、世界から見放され!法と秩序を失い原始に戻ったこの日本を!こうなったのは……オールマイトが力を失ったからだ……今のヒーローが未熟だからだ!」
ハイになっているらしい、身振り手振りを大袈裟にしながら、偽物のオールマイトはさらにヒートアップしながら声を張り上げる!
「俺は誓う!オールマイト誕生の地この日本で!いや!この日本から!!世界の新たな象徴となり飛び立つ事を!!オールマイトの理想を……引き継ぐ事を!!」
言い切った、とばかりに偽物は右手の親指を立てて自らを指し示しながら宣言した。
「さぁ……次は……俺だぁ!!」
その言葉を聞いた瞬間ーー緑谷出久の怒りの琴線が切れて。
「俺が正義!俺が象徴ーー」
パァン!!
「ぬ!?」
ヴィラン・ハントを構え即座に引き金を引いたが、反応した偽物は指輪を盾に変え、放たれた強化ゴム弾を弾いた。
「その口で、その顔で……!その声で!!オールマイト(あの人)を汚すな!!偽物がぁ!!」
ここまで怒りを抱えたのは久々だと、拳がわなつくくらいに握られて、ヴィラン・ハントをしまいながら緑谷は偽物のオールマイトに叫んだ。何より、憧れの顔と姿で本物がそうであるかの様に言い放つ姿が、より緑谷出久の怒りをさらに湧き立たせていた。
「強かったから象徴になっただと!?笑わせるな!!オールマイトは……その無償の献身の心と、人々を安心させる笑顔で、力無い人々に希望と勇気を与え続けたから平和の象徴になったんだ!強さに畏怖と尊敬があったのは確かにその通りだ!けど……それは添え物で一側面でしかない!!それが全てと嘯くな!!」
自身を深き闇の底から引き上げてくれた、そしてヒーローになれと励ましてくれた恩人。それを汚された緑谷は偽物に言い放つ、その似通った姿で喋るなと。オールマイトという理想からかけ離れても、それでも尊敬して違う道を選んだ緑谷は、憧れを汚したこの勘違いの偽物を指差し叫ぶ。
「お前はオールマイトなんかじゃない!!この偽物がぁ!!」
貴様は決してオールマイトじゃない、その言葉を聞いた偽物オールマイトは、ニヤリと笑って緑谷に言い返す。
「いいねぇ!流石世界のために人を殺めた殺人鬼ヒーロー!!それくらい跳ね返りの方が、俺のサイドキックとして首輪のつけがいがある!!ならば!その否定を俺が塗りつぶして屈服させ、じっくり調教して俺の物にしてやろう!!」
対して偽物は、その跳ね返りを否定して屈服させ、言う事を聞かせてやると右手親指を下に向けながら、決してオールマイトが言わない言葉を、同じ声で吐き散らかして円柱から飛び上がりクルーザーへ乗り移る。
マントを見せつける様に脱ぎ、そして左腕を伸ばすと人質から救出した少女アンナが浮き上がり、偽物の隣に浮かされて無理矢理で優しさもなく物を扱う様に肩を掴んで引き寄せ、目を見開いた。
そして……偽物と少女の足元から花が咲き誇り蔦まで伸び始めてクルーザーの船体に生い茂り伸びていく!
「これが!象徴となる物の力!俺の力だ!!」
その宣告と共に右手を天に伸ばし、手品としか思えない大量の金貨をオールマイトの偽物はばら撒いた。金貨が地面に落ちると水面の波紋の様に光が広がっていき、金色の糸が出てきてクルーザーへ漂う。
そこからだった!近場の車やコンクリートの地面、瓦礫までもその糸に引かれてクルーザーへ引き寄せられ始めたのだ!
「なんだこの個性はーー!?」
凄まじい規模の個性が、緑谷に見せた死の気配が本当だったと理解させられる。この規模は、I・アイランドのテロリストや、那歩島に現れたナイン、そして死柄木やAFOに匹敵すると冷や汗が流れた。
クルーザーは既に金色の光に染まり、ふと気がついた時には避難民だけではない、クラスメイト達もその光に引き寄せられ始めて緑谷は、しまったと遅すぎる反応に歯を食いしばった。
「今助ける!!」
そう宣言した緑谷を嘲笑うかの様に、金色の光は緑谷を、避難民を、そして麗日達クラスメイトを取り込んでしまったのだった。
そしてそれはーー。
「なんだありゃあ……」
「この光は一体……」
遅れて到着した、爆豪、轟チームも目撃していたのだった。
轟チームに入っていた飯田は即座にスマホを構え映像を撮影し、雄英高校のヒーローチーム総本部へ繋げた。
『雄英本部!見えますか!?西地区の港の避難所に謎の発光現象!膨張を続けています!!』
飯田のスマホを介してリアルタイムで送られた映像に、総本部の職員とそこに来ていたヒーロー、ホークス、ベストジーニスト、セメントスは確認して言う。
「この光……何の個性だ……?」
「これ程の個性を紡ぐ人間が、AFOの他にも居たとは」
光は膨張し広がり続けている。あまりの規模にその個性はAFOに匹敵するやもしれんとジーニストは感想を漏らし、なんの個性かとホークスは訝しむ中、総本部のドアが開いた。
「オールマイト、無理をなさらず!」
「避難民と緑谷少年達の安否は!?」
入ってきたのはオールマイト、そして緑谷出久の父、緑谷久だった。早足に駆ける慌てたオールマイトに、傷に悪いと宥める様に久が付き添っている。入ってきた二人にセメントスが現状を報告した。
「謎の発光現象に飲み込まれた模様……生死は不明です……」
「そ、そんな……」
あの偽物の自分が作り出した光に飲み込まれ、緑谷出久とクラスメイトが飲み込まれ安否が分からないと話すセメントスに、オールマイトは愕然とし、それを聞いた久がスマホを取り出して操作した。
「繋がらない……あの光……電波を通さないみたいだ」
「妨害電波も飛ばしている、と見ていいでしょうね」
久は、出久に電話を試しにかけたらしい。しかし繋がらないとなれば、希望を持つなら光の中には妨害電波が飛んでいる。最悪あの光で死んだ、と考えたくないが過ってしまうが希望的観測をヒーロー達に伝えた。
「こいつ、どんだけデカくなるんだよ!!」
轟チームに所属していた峰田が、迫り来る光の壁を見上げながら叫ぶ。建物や車すら飲み込む光を前に、轟が皆の前に立ち右手から冷気を漂わせながら言った。
「俺が止める……」
巨大な光だが、自分なら止められる氷を作り出せると轟は早速右手を振りかぶり、巨大な氷壁をいくつも作り出して光を阻んだ!
「よし!飲み込まれた人達の救助を!!」
これなら行けると飯田が、所属クラスメイトの八百万、蛙吹、障子、上鳴、峰田へ指示を出して前に出た。が!その光は氷壁を透過して轟達に迫ってきたのだった!
「いかん!?退避を!!」
これは流石に予想を上回られたと退避指示を出したが、轟チームも無慈悲に光に飲み込まれてしまった。
ーーその頃爆豪チームは……。
「何逃げてんだ!!戻れ!!Uターンだぁ!!」
『ムチャイウナニンゲン!』
「んだとぉ!!』
この男、真っ向から叩き潰そうと護送車を運転し逃げる運転ロボットにUターン指示を出していた。バンバン車体を叩いて戻る様に指示を出すが、それよりも早く光が車に追いつきーー爆豪達も光に飲み込まれた。
やがてその光の肥大化は進み、何やら形を作り出していく。やがて、その光が解かれて現れたのは、巨大なオールマイトの像を抱えた……戦艦とも言える物体が現れたのだった。
「巨大な物体の出現を確認!光は未だ膨張を続けているようです!!」
本部職員から映像を映し出され、オールマイトは冷や汗を流しながら言う。
「これを……あの男が作り出したと言うのか……」
これ程の規模の個性、さらに操る練度を持った自身を継ぐと宣う男の力に驚くオールマイト、そこへホークスが声を上げた。
「オールマイトさん!これを見てください!」
ホークスが、一人の職員の画面を見る様に頼めば、オールマイトはそちらを見た。先程の偽物の演説時に、クルーザーへ並んでいた男女の顔を読み取っているようだ。
「どこかで見たこと見た事があると思ってたんです……」
「彼らは一体……」
そして、顔からデータを検索して、彼らが一体何者なのかを即座に割り出して、同時にホークスも知っていた様で彼等が何者かを言い放つ。
「ゴリーニ・ファミリー……」
「な!?」
その名前を聞いて、オールマイトは目つきを鋭くする中、隣に居た久も顎に手を当てながら聞いた事あるなと口を開く。
「確か……傘下一万人近くのヨーロッパ圏最大の犯罪組織だったか……イタリアを本拠地としたヴィランを幹部に据えたマフィアだったか?」
「よく知ってますね、久さん……」
ゴリーニ・ファミリー……イタリアを本拠地としたヴィランを幹部に据えたマフィア集団であり、ヨーロッパ圏最大の犯罪組織で、かつての黎明期時代からのしあがり、ヨーロッパ圏裏社会を制覇し統一したマフィアである。
「そのゴリーニファミリーが何故、私を真似てこの日本に来たのだ……」
今この大変な時に、そのゴリーニ・ファミリーがなぜ日本に来て、自身の真似をして迷惑をかけているのか、訳がわからないとオールマイトは眉間に皺寄せながら呟くのであった。