【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
制限時間一分でお前の全てを否定してみせる、そう豪語したダークマイトの実力は緑谷の想定外だった。この人もまた、たどり着いた場所がこんな場所であろうと、オールマイトに憧れてその背を追って来た一人だと突きつけられた。
だからこそ、緑谷の構えも眼差しも真剣だった。どうして憧れながら、その意思を曲解して受け取りこうなったのか、それでもこの男は強いと油断を一切するなと自らに言い聞かせる!
「ええやっ!!」
「そるぁあ!!」
互いに踏み込んだのは同時!ダークマイトの拳が先に緑谷の顔面を捉えたが、それを横に身体を傾けつつカウンターの左の拳を放つ緑谷!それを見て掴んで見せたダークマイトは、緑谷の足を払いながら捻り上げて押さえ込もうとするも、緑谷がその捻りに身体をついて行かせて押さえ込ませない!
「シッ!!」
逆に、緑谷は膝裏ヘ払うような蹴りでダークマイトの足を払い膝をつかせて膝蹴りに繋げたが、ダークマイトはそれをしっかり防御して後転して間合いを離しコインを親指で弾いてエネルギー弾を放つ!
「やるなぁ少年!だが!象徴の俺には届かんぞ!!」
「勝手に言うな!!」
エネルギー弾に対し、緑谷は引き寄せで横に逸らす!しかしダークマイトの姿は視界から消えた!だが、影が視界を暗くして跳んだと気付いて!上空からコインをばら撒き波状エネルギー弾を放つダークマイトに、その範囲から思い切り横に飛んで逃れた。
「くぅうう!!」
緑谷は木の囲いに自らを引き寄せ、そこを地面として利用し、着地したダークマイト向けて三角飛びで近づき飛び蹴りを放つ!
「おっとお!!」
その一撃をダークマイトは腰を逸らして回避して対面の囲いに激突しかけた緑谷だが、身体を空中で転身してもう一度囲いを蹴り、ダークマイトへ飛び掛かる!
「これならどうだぁああ!!」
今度は、緑谷の蹴りがダークマイトの防御する腕に当たった。それを見た緑谷は叫びながら、次いで逆の足で更に蹴り、また更に逆の足で踏みつけるように蹴ると、ダークマイトを地面に見立てその場で走るように蹴り続ける!
「ぬぅおぁああぉあ!?」
「イーヴル・バイシクルキック!!アタァアア!!」
フィニッシュに思い切りサッカーボールキックを放つ!しかし、そのフィニッシュの蹴りをダークマイトに緑谷は掴まれてしまった!
「お痛がすぎるなぁ……少年!!」
「あうっ!?」
握力も凄まじい!ミシリと骨が軋み、そしてダークマイトは右腕をまるで、幼児の子どもが必殺パンチを放つように腕を回しながら言い放つ。
「ボローニャアア……」
だが、その拳の指輪が輝いたのを見て緑谷は即座に腕を交差させて防御体勢を取りーー。
「スマァアァアッシュ!!」
「がっ!?」
真正面から、ダークマイトの一撃を受けて囲いまで吹き飛ばされ、その頑丈な囲いすら砕かれて緑谷はリングアウトしたのだった。
なんてパワーだ……本当に、期末試験の時のオールマイトが頭に過るくらい、その一撃を受けた緑谷は意識こそ保って即座に立ち上がるがーー。
「ぐぅう!?」
景色が眩んだ、脳を揺らされた、片膝を突いてしまい緑谷は離れたダークマイトを睨みつけるしかできなかった。
「んー……1分7秒か、確かに1分では無理だったが……これで理解しただろう、象徴を引き継ぐダークマイトの強さ!偉大さを!!」
ダークマイトは腕時計を確認して満足げにしながら道着を脱ぎ捨て、また白のスーツへ早着替えしてみせ、バルコニーへと浮いて戻り緑谷を見下ろしながら言う。
「この偉大さを知るまで、気が済むまで、何度でも挑んで来ればいい……まぁ、勝つことなどできやしないだろうがな?はーッハッハッハッ!!」
「ま、待て!くっうう……」
ダークマイトはバルコニーから立ち去り、そして消えていった。立とうとしたが足に力が入らない、景色が揺らぐと倒れそうになり、その身体は赤髪の執事が支えた。
「無理をするな!脳震盪だ……横になりなさい」
「……くっそぉ……!!」
恐らくは二度目。
緑谷出久は人生で、徒手空拳の戦闘で敗北を喫した。
一人目は、自分を連れ戻す為に残り火まで使ったオールマイトで。
二人目が……よりにもよってその偽物という事実に悔しくなって、緑谷は拳から血を滲ませた。
「お楽しみになられましたか?」
ダークマイトの側に立つ、赤鼻の小柄な老人、カミル・ゴリーニは、ダークマイトに楽しめたかと尋ねる。ダークマイトは満面の笑みで答える。
「ああ、最高だった!しかし惜しいものだよ、イズク・ミドリヤもまた、オールマイトに憧れたのが分かる!俺たちは同志になれると思った!掛け値なく!俺の隣に立ってくれる力を持っていた!」
ダークマイトは緑谷に賞賛を送った、俺の求めていた、ダークマイトとしての相棒、サイドキックはあの子しかいないと。互いにオールマイトを敬愛しているが、道は交わらないのかと悲観すら混じるダークマイトは、口の端から血を流したのに気付いて、懐からハンカチを取り出し拭い、そして捨てた。
「仕方あるまい、他の部下同様に力で従わせるしかないようだ……まぁ、まだ俺に歯向かう力があればだが……」
そうだ、俺と君は……掛け値なしに理解者となれた筈だった。その個性の凶暴さとは裏腹に、拳の打ち方や蹴り方にはオールマイトが時折見えた。同じ憧れを抱いた、力に魅入られた筈なのにとダークマイトは悲しそうな顔で、生成されていく道を歩いた。
「ジャングルの次は山か……」
緑谷と離れてしまった瀬呂達は、ようやくテープを伸ばしきり緑谷が着地した雪山に降りて来た。
「個性が使えなくなる仕掛け、無かったね?」
先に降りた緑谷の姿は無く、個性が使えなくなったと言っていたがそれも無かったなと葉隠は呟いた。
「緑谷がなんとか……あー……したみたい」
恐らく緑谷がその仕掛けを解いたのだろうと予想した、そして尾白は確信した。
「どうしたの尾白?」
「あれ」
「あ……」
耳郎が何かあったのかと尋ねて、尾白が指差した先、山を降りた先の平原に倒れたギャング達3名が見えた。ああやったなあいつと仕事が早いと耳郎は苦笑した。
「そのイズクくんは何処にーー」
じゃあその彼は何処に?と麗日が尋ねたその瞬間、麗日達が着地した雪の場所が円状にゴソッ!と音を立てて窪んだ。
「「「「「え?」」」」」
そして案の定、その縁に沿った穴が開いていた為。
「「「「うわぁあああああーーー!」」」」」
五人は仲良く穴に落ちて滑っていったのだった。
ーー同刻、シンドロームパラダイス内、ダンジョン最奥ーー
「ああ……誰もここへは到達できなかったか……わざわざ衣装まで用意したというのに……」
丸メガネに髭を蓄え、杖を片手に持ち如何にも怪しい魔法使いの服を纏うこの男、ダンジョンでラスボスとして待機していたゴリーニファミリーの一人であるサイモン・ゴリーニは、映像から消えた爆豪達にそう感想をこぼした。
辿り着いた際にはラスボスとして戦う予定だったが、威勢のいい割にもう声も無いと、暇になったなぁと気を抜いていた。
だからこそ、背後が爆発して椅子から飛び上がるほど驚いてしまった。
「テメェがラスボスかぁ!!」
背後の爆破と共に壁が崩れ、そこには爆豪チーム勢揃いで現れ、サイモンは監視カメラの映像と爆豪達を二度見した。つまりはこの子達はとサイモンは何をしたのか理解した。
「ショートカット!?貴様ぁゲームにあるまじき行為を!エンターテイメントをなんだとーー」
サイモンの文句に有無を言わさず、爆豪は籠手のピンを抜き取り貯めた汗を解放、爆炎にてサイモンは黒焦げとなり倒れたのだった。
「ただの裏技だ、レギュレーション指定したんかよああ?」
ショートカットでは無い、裏技だ、そもそも裏技無しを指定したかよと爆豪が切って捨てるように言い切ると、サイモンは現れた穴……なんか見た事ある緑の土管に『ディウディウディウ』と聞いた事ある音も鳴らして吸い込まれていった。
そしてゲームクリアしたのを見ていたらしい、サイモンの見ていたモニターに、ダークマイトが映り拍手を送った。
『お見事!しかしゲームはまだ終わらないぞー!?』
部屋の壁から、次々と今度は脳無に似た怪物が現れて、爆豪達を取り囲んだ。
「そうかよ……」
一辺倒だなと爆豪は手のひらから火花を散らし、再び戦闘に突入した。
「そうヘソを曲げないでください鬱陶しいですから……」
「…………」
「勝負がつくまでやれば、貴方様が勝ってました」
徒手空拳で負けた、結構ショックだった緑谷はタンデムシートで肩を落としながらもまたトンネルを執事と共に走り抜けていた。結構辛いなと落ち込む緑谷だったが、フォローしてくれた執事に、礼を言う事にする。
「お気遣いありがとう……えっと……」
「ジュリオ……ジュリオ・ガンディーニ」
「ジュリオさんか、僕は……」
「イズク・ミドリヤ、さっき奴が話してましたね……」
自己紹介になったが、こちらはもうダークマイトの口から言われて会話のリズムが崩れてしまったと、緑谷は溜息を吐いた。
「ヒーロー名は?」
が、ジュリオはヒーロー名を尋ねて来たので、緑谷は答えた。
「イズク……イーヴル・ヒーロー、イズク」
「殺人鬼ヒーローでなくて?」
「ダークマイトが勝手に言っただけ、迷惑だよほんと」
「そうですか?似合ってるとは思いますが……」
「蹴り飛ばしていい?」
「蹴落として差し上げましょうか?」
口喧嘩もしていると、トンネルはすぐ抜けた。そして次はまるでファンタジーの城塞都市が現れて、緑谷は凄いなと呟きそうになったが……。
「自己顕示欲の塊だな、ダークマイト……」
その街の頂に祀られた像を見て、彼の自己顕示欲もまた、オールマイトとかけ離れて違うと眉間に皺がよった。
「……あれは」
「え?」
そうつぶやいた緑谷を他所に、ジュリオはふと何かに気付いて、ハンドルを傾け城塞都市へと向かった。