【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
薄れ行く意識の中、ダークマイトことバルド・ゴリーニは思い出していた。
父、先代ゴリーニからファミリーのボスの座を奪い取った日のこと、父を殺した日の事である。
『力に固執するお前では、ファミリーを纏める事はできん……恐怖だけで人は動かん』
ヴィランでありながら、父は力を否定した。
ヨーロッパ最大のヴィラン組織を束ねながら、穏健派であった父親は……バルドへ次代を継がせる事を拒否した。拳銃を前にしてなお、くたびれた顔の奥にあった眼光は今でも覚えている……死を間際にして、なぜそんな顔ができるのかと苛立つくらいに。
『オールマイトは……その力で理想を手にしました……』
『彼は理想のために力を欲したのだ、お前とは違う』
その一言で、バルドは引き金を引いた。そして地位を簒奪し、自分こそが正しいとここまでやってきた。
そして……オールマイトに否定され、教え子達により覇道を砕かれたのだ。
「ちち……うえ……」
今となっては応えてくれない父を呼びながら、ダークマイトは意識を手放した。
着地した緑谷、そして最早立てないダークマイトを見やる爆豪、轟。揺れが始まり、ドームに描かれた青空が亀裂を走らせて砕け、本当の空が広がっていく。
終わった……ダークマイトは倒れ、個性により作られた要塞は崩落していく。ふと、殴り倒してスカッとした多幸感から、緑谷はある事に気付いて辺りを見回す。
「やばい!?ジュリオさんどこ行った!?まさか瓦礫に潰されてないよな、ジュリオさーん!」
色々構わず攻撃してたからジュリオの事が頭から吹っ飛んでいた。この瓦礫の中に埋もれてないかと緑谷は叫び辺りを見回すと、蠢く瓦礫を見つけて緑谷はそこへ走り出した。
「ジュリオさん!大丈夫ですか!?」
「な、何ヶ所か、骨が折れたみたいですが……」
「ああだったら安静にーー」
「そうは……いきません……」
骨が折れてるなら応急処置だと楽な体勢を取らせようと焦る緑谷に、ジュリオはそれはまだだと痛みに呻きながら立ち上がり、離れた椅子へと一人歩き出す。
「アンナさん……」
その椅子に体を預け、倒れているアンナの……主人の下へ執事が向かう。肩を貸してやりたかった緑谷だが、拒否されるのが見えて、緑谷はただ見守るしかできなかった。
「ん……んぅう」
「お嬢様ぁあ!!」
意識を取り戻したらしい、寝起きのぐずりのように呻くアンナへジュリオはつたない足取りで走り寄る。
「んぅう、うぁあ!うぁあああああーーー!!」
しかし、その手が、アンナに届く事は無かった。
頭を押さえのけぞりながらアンナは絶叫し、あたりに花びらが舞い散る。それどころか巨大なイバラが椅子を包み込み持ち上げ紫色の瘴気があたりに広がり出した。
彼女の金色の髪の毛は、すでに毛先まで漆黒へ染まり切っていた。
「ぐぅう!?」
「んだこりゃあ!?」
その瘴気に充てられた爆豪と轟は頭痛に呻く、緑谷も同じで痛みに奥歯を噛み締めて堪えながら、ジュリオの言葉を思い出す。
「アンナさんの個性が……暴走したのか!?」
イバラは急速に成長し、花も部屋中へ咲き乱れる。悍ましさと美しさが同居するような空間で、イバラに叩きのめされそうなジュリオを見つけた緑谷は即座にジュリオを引き寄せた。
「お、俺をお嬢様の所へ!」
「けど……」
「頼む!」
引き寄せたジュリオが、即座に緑谷へ頼んだ。アンナの元へ連れていってくれと、二の足を踏みかけたが、救うと決めたのはジュリオも、そして緑谷もだ。なら行くしかあるまいと、緑谷は鎖でジュリオと自らを巻きつけて固定してから、空を引き寄せて跳躍した!
途中、バルドがイバラに包まれていたのを見たが今はアンナさんだと、不規則に蠢くイバラを掻い潜る緑谷。しかし……。
「うう!?」
アンナの過剰変容に適合していない緑谷に、頭痛が襲いかかる、身体中が痛みに軋む、それでもと必死にイバラを避けて、ジュリオをアンナの下へと気張ったが、痛みに一瞬揺らいだ瞬間ーー。
「!?」
イバラではない、質量ある光が突如迫って来て……咄嗟に緑谷はジュリオと自らを固定する鎖を解いて、ジュリオを花咲く地面に落として自らだけがその光に当たって弾かれた。
「イズク!!」
本当に、咄嗟であった。二人諸共沈んだらいけないと反射運動でそう行動した緑谷は、宙を舞い地面に落下した。
ーーそして、緑谷に倒されたバルドの肉体は、花やイバラを押し除けて、錬金のエネルギーの柱によって宙に浮かされた。
砕かれた肉体を補強する様に、バルドの肉体がミイラの様に布に包まれて形を整え、そしてエネルギーが入り込むや布が破れ去り、異形の口が盛り上がり飛び出した。それだけではない、紫色の肉が肉体を形成してバルドを取り込み……やがて異形の怪物が腕を掲げて現れたのである!!
「ショウチョウダァ!オレガ!!セカイノスベテダァア!!」
個性の暴走が生み出した化け物から、声が響き渡る。兎にも角にもこの化け物を止めねばならないと、爆豪と轟は即座に戦闘を再開した!氷の道を作り一気に近づく轟に、気づいたその化け物の腕が道を打ち砕く!
「ぐぁ!?」
道を断たれて落下する轟だが、即座に落下地点に違う道を作りながら着地して化け物と化したダークマイトの股下を通り抜けた!
「ふぅう!!」
瞬間、ダークマイトの下半身が一気に凍りつく!!その刹那、爆豪がダークマイト向けて爆炎を見舞った!!
「っだらぁぉあ!!」
爆豪の身体がダークマイトを貫通し、遅れて爆破が起こりダークマイトが包み込まれた!
「おぉおおお!!」
さらに追撃と、轟が頭上より炎を叩き込んだ。
しかし……確かにダメージは通ったが、より早く変容していく個性が肉体を再構築していった。
「モットダァ!モットチカラォオオオァ!!」
「のわぁ!」
「うわぁあ!?」
化け物が叫び散らし、その肉体をさらに変容していく。紫色の表皮が赤く染まり、異形の頭は三つに増えながら、咆哮の衝撃波だけで、爆豪と轟は吹き飛ばされた!
緑谷から落ちたジュリオが、ひたすらにイバラの山を登る。その頂で未だに呻くアンナを見て、ひたすらに義手を、義足を動かして必死に登る。
しなだれた右手を見て、ジュリオは義手の右手を伸ばし、そして掴んだ。
「駄目だ……やっぱり個性が使えねぇ……!」
ジュリオの因子相殺は『右手』で発動する、ゴリーニの襲撃で失った為、義手では決して発動しない。分かっていた、だからもう殺すしか無かったのだ。
「頼む、頼むよ……頼むから!俺に……個性を使わせてくれよぉ!!」
無慈悲な結末を前にして無力を理解して、それでも人は祈る。お願いだからこの子だけは助けて欲しいと必死に願った。
アンナの呻きと共に、イバラが形を崩したのを見て、ジュリオは必死に力を全て使って、彼女のそばに登った。
「お嬢様!!」
そして……両腕で、力強く抱きしめた。因子変容の副作用である頭痛がジュリオに走った。
ただひたすらに、ジュリオは願った。
この子を助けたいと、ずっと屋敷に閉じこもって、誰とも触れ合えないで、その力をヴィランに利用された可哀想な、ただの女の子が……こんな暴走の果てに苦しみ抜いて死ぬなんてあってはいけないだろうと。
抱きしめたからわかる、痛みで力が入って苦しくて呻くしかできないのが分かる。そんな彼女の為に自身の個性があるはずなのにと、ジュリオはより強く力を込めた。
その時………不思議な事が起こった。
ジュリオの頭痛が消えて、身体中の痛みすらも消え去っていく。力が入り強張っていたアンナの身体から、みるみるうちに力が抜けてリラックスしていき……染まり切った黒髪が毛先から金色に戻っていくのだった。
「このままじゃあ……キリがねぇ!」
吹き飛ばされた爆豪と轟は、叫び暴れるダークマイトだった化け物の再生能力を前に、どうすればと勝つための手段を考えた。
「くそ……おい!起きろや!寝てんな出久ぅ!!」
キリのない再生能力に、どうしたらと呟く轟、そしてこちらまで弾かれたらしい倒れ伏し気を失った緑谷を叱咤して呼びかける爆豪。
このまま負けっぱなしで終われるわけねぇと咆哮をあげるダークマイトを見て、爆豪は意識を失った緑谷を見て、ふと思いつく。
「轟!出久の手に触れ!!」
「なに?」
「説明は後だ!!」
癪ではある、二度はごめんだと言った……。
しかしそれは、蛇腔までだ。自分で言った、皆で漏れなく救って勝つと!!
爆豪はそのまま緑谷の下に走り、轟も爆豪の言葉を信じて緑谷の下に走る!
「寝てんじゃねぇ出久!!ヒーローなら、とっとと目を覚ましやがれぇ!!」
「皆で救うと言ったなら、こんな所で寝てんじゃねぇ!!」
そうして、二人してベッドスライディングをしながら、緑谷の左右の手に爆豪と轟は触れた。
ーー瞬間、3人は光に包まれたーー
『『目を!覚せぇええ!!』』
『あいたーーー!?』
精神世界でぐったりしていた緑谷の顔面に爆豪の拳が、腹部に轟の拳が叩き込まれ、緑谷はようやく精神世界にて目を覚ました。
『いたたたた……え?かっちゃん!?轟くん!?何でここに!?二度はごめんって言ってたじゃん!!』
殴られてようやく目覚め、見上げた先で今精神世界に居ると即座に理解した上で、また入ってきた爆豪と、初めて入ってきた轟ふたりに何故ここにと質問するが、そんな呑気な暇があるのかと爆豪が声を荒げた。
『テメェが不甲斐無いから態々叩き起こしに来たんだろうが!!』
『流石にちょっと寝すぎだと思うぞ緑谷?』
轟も弛んでると頷かれ、返す言葉もないなと緑谷は即座に立ち上がって謝った。
『ごめん二人とも……』
『さっさとあのパチモンの化け物、ぶっ倒すぞ』
『ああ、これ以上時間をかけれねぇ、頼むぞ緑谷』
謝罪に対して二人とも答えは同じだった、あの贋作パチモン勘違い野郎を倒す。二人はそう緑谷に伝えて光となり、手のひらにメダルとなって収まった。
『え……これって』
さらに……緑谷の手のひらが輝けば、もう一つのメダルが現れる。
その横顔は……自分自身だった。その三つのメダルが呼応したか、銀色から金色へと輝きを変えて光を放ったのだった。
そして……ベルトが変異し、左手に那歩島以来現れなかった扇形の変身道具が握られ、即座にアクセスカードを挿入した!
『Midoriya Access Granted』
アナウスが響き渡り、順番はその場のアドリブとメダルを嵌めていく!
『大・爆・殺・神ダイナマイト!』
一枚目は、幼なじみであり和解した親友のメダル。
『ショート!』
二枚目は、共に切磋琢磨し合う好敵手のメダル。
『……イーヴルヒーロー!イズク!!』
三枚目は己自身!!そのメダルをはめ込み、拡げて認証を通していった!!
『GREAT EXPLOSION MURDER GOD DYNAMIGHT』
『SHOTO』
『THE EVIL HERO IZUKU』
その三枚のメダルが認証された瞬間ーー扇形の変身アイテムが光を放ち……姿を変えて緑谷の前に浮遊しながら現れた。
『……ベルト、ライザー……次はこれか!!』
それは所謂サングラスや、メガネに類する変身アイテムだった。それを手に取るや緑谷は、この変身アイテムに相応しい口上を叫んだ!
『さらに向こうへ!!プルス・ウルトラァアアアアア!!』
その叫びと共に目元へ翳して、右上のボタンを押し込んだ。