【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
意識と、無意識の狭間……ダークマイトことバルド・ゴリーニは力を求め暴れ狂う。最後の時を迎える中、彼は見た。
金色の光より現れた、幾度と見たトリコロールカラーの装い。金色の頭髪に筋骨隆々の姿。
その力に憧れた、活躍に拍手を送った、そうなりたいと、彼も願った一人であった。
それを捻じ曲げて受け止めた果てが今の自らであり。それを断罪する為に彼はまた……目の前に現れたのだろう。
足掻きか、否定を受け止めたくない故か、バルドはその光放つ憧れへ熱線を放つ。しかし、左手から放たれた爆炎を纏ったような拳が簡単に押し返した。
ならばと、石柱を操り潰そうとしたが右手の炎が、払うように焼き溶かす。
分かっていた、最早敗北は見えていた。
その蹴りの一撃で、変異した肉体が霧散し。
さらに、もう一撃放たれた蹴りが、再び組み上げた要塞を両断する。
露わになったバルドの下に踏み込んだ光り輝くヒーローは、バルドの肉体に右の拳の一撃を叩き込み、虚栄の石像へ吹き飛ばして叩きつけた。
崩壊していく要塞、砕け散った石像からバルドはゆっくり落下していく……逆光で見えたシルエットは憧れ、目指した象徴そのものながら……更に三つの姿にも見えた。
ーーこうして、ダークマイトとその傘下、ゴリーニファミリーによる騒動は幕を閉じた。
これからの戦いの前に起きた一時の騒動は、甚大な被害を出した。街も瓦礫に埋もれ酷い有様であった。
夕焼に染まる要塞の瓦礫の中心、うず高く丘のようになった場所で……ジュリオとアンナは互いに抱きしめ合っていた。
A組は、その姿をただじっと見ていて……。
「ん……んぅ……ジュリオ……!」
目を覚ましたアンナが、抱きしめているジュリオに嬉しそうな声を出したのも束の間、身じろぎをした瞬間彼の身体は、アンナの支えを失い地面に横たわった。
「ジュリオ!?しっかりして!ジュリオ……ジュリオ!!……そんな……」
遅れて来た緑谷と爆豪、そして轟は、泣きながら名前を呼ぶアンナを見て立ち尽くす。緑谷がそんなと駆け寄ろうとしたが、それを爆豪が手を伸ばして制した。
「あぁあ……ジュリオぉ……」
涙を流しながら、嗚咽を漏らし横たわるジュリオを呼ぶアンナ……こんな結末なのかと緑谷も歯を食い縛る最中ーー。
「勝手に……殺さないでいただけませんか……」
ジュリオが、そう呟いてむくりと起き上がって緑谷は一気に力が抜けた。ジュリオは生きていた、その表情は主人を助ける事ができた安堵や歓喜ではなく……何とも平坦で物悲しさが伺えた。
「お嬢様は限界を超え……個性因子を出し尽くしました……」
「全て、相殺したというの?」
「お嬢様の因子を受けて変異した個性で、全て相殺しました……一か八かでしたが、どうやら私も、お嬢様の個性の適合者だったみたいです……」
最後の賭けだった……右手で使えないならば、より強く変異すればとジュリオは、アンナの過剰変容に身を委ね、それによって因子相殺が変異して全ての個性因子を相殺したのだと。
ジュリオは立ち上がり、ぼろぼろになった執事服の姿のまま、しかと背筋を正してから言葉を紡ぐ。
「これでもう、個性で苦しむ事はありません……貴女は正真正銘、ただのお嬢様です……」
胸に手を当てて一礼して、ジュリオはさらに言う。
「つまり……契約は終了した、って事だ……アンタはもう狙われねえし、俺がそばに居る必要もねぇ……好きな物に触れ、どこへでも好きなところに行ける」
ジュリオは最早ボロ布と変わりない執事服の上着を脱ぎさりながらアンナに言う。自分の契約は、お嬢様が普通になった時、もしくは暴走の果て殺した時に終わると。今はもう個性因子を失い自由となったならば、ただのお嬢様として暮らしていける以上自分は必要無いと突き放すような言葉だった。
「……自由だよ」
キミは自由だ、どこへでも行けると言い残してジュリオはアンナから背を向けて一人歩き出す。その自由を阻むのは、自身すらも勘定に入れていたらしいジュリオが、ヨタつきながらも立ち去ろうとする。
その背中に、アンナは身体をしなだれかからせ体重を預けて行く事を阻んだ。
「……俺の話を聞いてなかったのか?」
「聞いてたわ」
「雇用契約は終わったんだよ」
「良かった……これで対等になれるね?」
雇用契約は終わり自由となったのだ、執事とお嬢様の関係が終わったならば、それをどう変えるのも私の自由だろうと、アンナがニコニコ笑顔を向けて……ジュリオは振り返ってその笑顔を見た。
「お嬢さーー」
恋して愛を知る女性の強いこと、振り返ったジュリオに向けて、名一杯背伸びをしたアンナの唇がジュリオの血濡れた唇に重なり、すぐ離れながら彼女は言う。
「アンナ、よ?ジュリオ」
アンナは間違えたらダメと、もう離さないとジュリオの身体に腕を回して抱きしめる。ジュリオは唐突な出来事をようやく処理して赤くなり、もう押して離すこともできない彼女の抱擁に一度苦笑して、苦笑を笑顔に変えながら抱きしめ返す。
「アンナ……」
夕陽に影が折り重なり抱き合う二人を見て、緑谷はふうと一息吐いた。本当に良かった、さらわれたお姫様は救われて、王子様と結ばれる……ありきたりで、100点満点の終わり方だ。
背後の女性陣はラブロマンスに赤面している所悪いが、これはさっさと退散して邪魔しないようにするのが花だろうと、緑谷は手を上げつつ皆に、雄英の方角を指さして小さく言い放つ。
「じゃ、帰ろうか」
色々あったが、まだ戦いは残っている。さっさと帰って明日に、本当の戦いに備えようと、緑谷は歩き出す。
彼方見える雄英のバリケードの上で、避難した人達が手を振っている。緑谷達は仕事を終えて、雄英高校への帰路を歩き始めた。
これは、AFOとの最後の戦いの前に起こった、一時の事変の顛末である。
・イーヴルマイト・トライオリジン
緑谷出久が、自らのメダルと、爆豪勝己、轟焦凍のメダルをダークイーヴルライザーで認証して現れる新たな変身アイテム『オールマイトアイ』で変身する、3人のオールマイトへの憧れ、想いが具現化した形態である。
オールマイトを原点に持つ3人の思いが具現化した姿は、かつての英雄を蘇らせた。その強さは……語る必要も無い。