【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
互いにコーヒーを飲みながらベンチに横並びに、間を開けて座る。エンデヴァー……轟炎司が横目に見た緑谷久は、ダークマイトの際に見せた熱線を繰り出すとは思えない見かけだった。
身長に対して痩せている矮躯、押せば倒れそうな頼りなさが見て取れる。そんな男は顔を向けず、口を動かした。
「改めて、息子がインターンでお世話になってます」
「む、ああ……こちらこそ」
思えばこうして、ヒーローを目指す子どもの親と話した事は無いなとエンデヴァーは思い返す。いや、そもそもこうした父兄での集まり、子どもの事は冷に押し付けていたのだった。
授業参観、運動会、三者面談……せいぜいが入学式くらいしか自分は息子や娘たちと関わっていない。焦凍を鍛えるだけが、轟炎司唯一の交流だった。
「メールで……」
「む……」
「出久が、メールで教えてくれてます、あなたの指導でまたヒーローに近づけたと」
「そうか……それは……なによりだ」
インターンで、指導によりヒーローへ近づけたと聞いていると久から礼を言われて炎司は、受け取るしかできなかった。仕事の会話は出来るくせに、ただの父同士の、子どもについての会話がこうもできなくなるとは……改めて自分が子ども達を見ていない事を炎司は突きつけられた。
「焦凍が……」
「はい」
「その……I・アイランドで世話になった、遅くなったが……礼を言わせてくれ」
「いえ……僕も彼に助けられた身ですから、お気になさらず」
「そうか……」
また会話が途切れる……俺は何がしたいんだと、誘われてろくに会話できない様に、炎司はコーヒーを飲み干してさっさと立ち去りたくなった……。
だが……それを何故か足が許さないと動きださない。まるで、お前は何かをこの男に聞かねばならない事があるだろうがと言っているようだ。
「…………焦凍が……お前を尊敬していると俺に口走った」
「え?」
「焦凍……今の荼毘である燈矢に対して、俺は野望を押し付けた……オールマイトを越えるNo.1ヒーローへなれと、だから……俺への恨みもあると知っている」
それを聞いた久は少し驚くも、その話を最後まで聞く気があるようで、押し黙った。
「その果てに、俺が荼毘を生み出し、焦凍は俺を見る事を辞めた……いつの間にか俺の手を離れ、お前に師事して強くなっていた……なぁ、父親とは……何なのだろうか」
自身が家族を壊したのは事実で、受け入れてるつもりだった。しかし……息子からよその父親を尊敬して師事していたなんて聞いて、理解はしても炎司には衝撃だった。
これがまだ、相手がヒーローならば納得できたかもしれない……聞けばただのデザイナー、会えば市井に紛れていた凄まじい個性の持ち主であったのだから。
言ってから気付く……轟炎司は嫉妬していた。息子が自身の背中を見ずに、他人の親の背を見て強くなっているから。
『俺を、見ていてくれ』
No.1になったあの日、全てが露呈したあの日、皆に言い放った癖に。一番見て欲しかった者には見てもらえなかった。
『俺を見ろよ!エンデヴァー!!』
また思い出す、焦凍に期待をかけ、燈矢を諦めさせるために見なくなった自分を。
さながら懺悔するかの様な話に、久はコーヒー缶を傾けて一息吐いてから言った。
「エンデヴァーさん……貴方の気持ちが何となくですが分かります、理想を押し付けてしまったのは……私もですから」
「なに?」
「貴方は焦凍くんに、オールマイトを越えるために指導で理想を押し付けた……私もある意味同じ事を、出久にしているんです……直接じゃない分貴方より酷い……」
炎司はようやく、初めて久へ顔を向けた。そして自分と同じ、出久へ理想を押し付けていると久は語る。そんな風には思えなかった炎司だったが、さらに久は語りだす。
「貴方が指導で無理矢理焦凍くんをヒーローの在り方を叩き込んだなら……僕は出久の退路を壊してしまったんですよ……」
「退路を……壊した?」
「あんな個性だ、ヒーローになんてなれっこないのが当たり前と見る、けど……出久はなりたいと言った……だから私は、途中で諦めない様にと、いろいろしてあげれる様にしたんです……貴方も見たでしょう?ヒーロースーツとバイク……まず学生の仮免許のヒーローには手に余るものばかりだ……」
久がそう語り、炎司も理解できないほど愚かではなかった。
そういう事かと、途中で諦めて捨てられない程の支援に後押し、それらがあれば諦めた時全てが無意味となる。久は間接的に、出久がヒーローの道を途中で降りれない様にしていると理解したのだった。
「貴方が焦凍くんに、オールマイトを越える願いを託したように……私も、出久ならと押し付けてしまった……あの子なら、僕の家の因果を、断ち切ってくれるかもしれないと」
「家の……何かあったのか?」
炎司が焦凍にしたように、久もまた出久に理想を託し押し付けた。何かあるのかと尋ねた炎司に、久は力無く笑って答えた。
「緑谷の家は……ヴィランの家系なんですよ、代々その血を引いた子は、兄弟ならばその誰かが大なり小なりヴィランになっているんです、聞いたら驚きますよ、僕の兄さんは……あの怨龍です」
「!?」
これには炎司も驚愕し、そして納得した。
緑谷久の個性の強さ、兄にAFOと並ぶ伝説のヴィラン、怨龍を兄に持つと聞いて。その久の個性、さらに息子の緑谷出久の戦闘センスや徒手空拳の実力、そして凶暴な個性に納得してしまった。
「出久がヒーローになりたいと言った日、この子ならあるいは、緑谷の家からヒーローが生まれるかもと……私も、自身の家系の因縁の為に出久を利用してしまったんです」
「………」
「だからこそ……代償は払わなければならない」
独白を終えた久が、炎司にそう言った。
「利用した罪への清算、家族を壊した罪への償い……それを行う方法は……命をかけて、家族を守る事だと思っています……それが、父親を名乗る家族の長が出来る……唯一のらしい事かと……」
久の言う『父親』の答えがそれだった。頼りない笑顔の瞳、その奥に妖しく輝く狂気に炎司は気圧されたと同時に、成る程と理解した。
オールマイトの輝きに当てられ、それに追いつこうと必死に追いかけて辿り着けず、挙句理想を無理矢理押し付けて家族を壊した……その責任は、命を持って先をゆく子ども達の火の粉を払い守る事で達成される。
それはつまり……。
「全てが終わったら……」
「はい?」
「全てが終わって、まだ俺が死んでなければ……一杯付き合ってくれないか?」
炎司は、できない約束を久にした。この戦いで死ぬつもりの筈が、それでもそうしたくなったと卑しくも久に飲みの約束を取り付ける。久はしばらく呆けていたが、微笑みながら炎司に言い返した。
「ええ、何杯でも付き合いますよ……」
久はそう言って、まだ中身があるコーヒー缶を炎司に向け、炎司もコーヒー缶を近づけ互いにぶつけ合って互いに一気飲みした。
轟炎司は……人生で初めて父兄の友人ができたのであった。
オリジナル設定に関して
・緑谷の家は代々ヴィランの家系
久の兄でありオリジナルキャラ、緑谷悠こと『怨龍』を含め、緑谷家は代々『兄弟のうち誰か一人は必ず大なり小なり悪人になる』というジンクスじみたものがある。
緑谷出久の先祖もヴィランであり、AFOやデストロ時代に暗躍したらしい。
ただし……当時の情勢や思想や政府のあり方からヴィランと呼ばれており、ある者達からは支持と英雄視をされていた、デストロや張間歐児のように。
そのあり方は、ヴィジランテやダークヒーローに近い。