※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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前章③ 普通ってなんぞや

 ーー泥を拭う暇は貰ったーー

 

 第二次決戦の作戦が決まった雄英高校ヒーロー科は……その日、雄英バリケードから出立が決まった。

 

 死柄木弔が完全復活する予想日程の四日前の事である。雄英バリケード内では戒厳令が敷かれ、その戦いに備える事となる。雄英高校ヒーロー科、作戦に参加する人間は『ある場所』へと移動する事となった。

 

「出久……必ず帰って来なさい……」

「うん、必ず、帰って来ます」

 

 右目に未だ眼帯をしている母の引子から、必ず帰ってこいと叱咤激励され、出久は抱擁を交わした。その隣に立つ父の久とも目が合う。

 

「行ってきます、父さん」

「気をつけてな……イーヴルマジンはこちらで預かっておく」

 

 父とも握手を交わした緑谷、イーヴルマジンはいざという時、父や母、雄英の避難民を守ってもらう為に父へデバイスを預ける事にした。

 

 クラスメイト達も保護者と挨拶を交わしている……絶対勝って、ここに帰ってくると緑谷は意思を固めた。

 

 余談ではあるが……この時雄英バリケード内部にAFOの賛同者が居て、緑谷出久をバリケードから追い出す為に避難民を煽る算段があったのだが、期せずして出ていく形となってほくそ笑んでいた、これでAFOが勝利したならば、今後は安泰だと思って出ていく者達を嘘の笑顔で見送った。

 

 

 雄英から出た緑谷達が移動したのは、30km離れた断崖の場所に建設された、新たな本拠地『仮設要塞トロイア』という場所であった。雄英で過ごした寮の『ハイツアライアンス』に酷似しているが塗装は無い、黒々しい外観が冷たく堅牢さを感じさせた。

 

「セメントス、パワーローダー、そしてエクトプラズムが居るからこそ、超短期施工が可能……雄英には到底及ばんが堅牢だ、各自部屋に荷物を運び準備を」

「ハイツアライアンスリスペクトだねぇ」

「親切……」

 

 引率のスナイプ先生の説明を受けながら生徒たちが見上げて、それぞれ感想を呟く。そんな中……。

 

「……終の棲家にならなきゃいいけど」

「やめい」

 

 瀬呂が滅多な事を抜かすので流石に砂藤が止めた。

 

 あてがわれた部屋に、A組は入っていく。緑谷も最小限の荷物だけで荷解きは終わった。色々詰め込んだ自室ではない殺風景な部屋のベッドに座ってみたが、まぁ新しいので寝心地は悪くないなと立ち上がってから、ベランダに出た。

 

 ふと、眼下の断崖で一人崩壊した街を見ている麗日を見かけた。

 

 ようやく、礼を言えそうだと緑谷は階段では遅いとそのままベランダを出て飛び出し、自らを引き寄せゆっくり着地してから彼女に声をかけた。

 

「麗日さん」

「おお!?出久くんいつの間に?」

「あ、ごめん……驚かせちゃった」

 

 落下が無音だったからいつの間にか後ろに立っていたようになってしまったらしい、麗日が驚いてしまったので緑谷は謝った。

 

「荷解きは終わった?」

「うん、殆ど何も持って来ていない」

「そっか……まぁ戦いも近いからね」

 

 そんなに荷物を持ち込む余裕も無いし、荷解きは誰もさっさと終わるのかもしれない、麗日は瓦礫の街をただ眺めていて、緑谷は彼女に改めて礼を言う。

 

「その……あの時はありがとう、麗日さん、本当に感謝してる」

「うぇえ?いや、あれは別に……細かい事を気にするなぁキミは……」

「いや……細かいなんて言えない、本当に潰れかけてた僕を、引き止めてくれたし……ありがとう」

「ど、どういたしまして……」

 

 モニモニ髪の毛や頬を両手でくしゃつかせやがら恥ずかしがるが、あの演説でどれだけ救われたかと、緑谷は感謝しかなかった。

 

「外で何かしてたの?」

 

 緑谷は一人果てを見て黄昏ていた麗日が、何をしていたのかと尋ねた。

 

「街……見てた……私さ……変なんだよね」

「……何かあった?」

 

 麗日は街を見ていたと言う、それは見てわかるが何やら思い悩んでいるようで、緑谷は端的に尋ねてみる。

 

「……あの時、雄英の校舎で喋っている時さ……ふと、トガヒミコが頭をよぎった」

 

 トガヒミコ……緑谷はしばらく黙ってしまった。

 

………トガヒミコ、トガヒミコ?誰だと、緑谷はしばらく頭のデータボックスを漁ってようやく顔を思い出した。

 

「…………あ!ヴィラン連合の!」

「え!?知らんかったん!?」

「いや、あんまり関わりがなくて……せいぜい死穢八斎會で数秒対峙して……それと、後で知ったけど仮免の時に現見ケミィに化けてたとしか……ダーリンと呼ばれたけど理由も分からないし……」

 

 緑谷出久にとって、トガヒミコは因縁の浅い、ヴィラン連合メンバーの一人でしかなかった。だから思い出すのに時間が掛かってしまったのだった。

 

「ま、まぁその……トガヒミコと、ギガントマキアの侵攻中に一対一になって……私は……自分が当たり前だと思う事を言葉にして返したんだ……とても、悲しそうな顔をしてた」

 

 それを聞いた緑谷は、断崖に腰を下ろしながら、成る程なとトガヒミコというヴィランのあり様が理解できてしまった。

 

「……当たり前ってさ、案外他人とズレがあるんだよ」

「え?」

「魚は丸ごと食べる食べない、目玉焼きには醤油かソース……当たり前は生きていくうちに積み上げる経験や体験から出来上がって……いざ他人と違うと驚くでしょ?」

「うん?んう……まぁ、確かに」

 

 麗日は緑谷が何を言ってるのか理解に時間が掛かった、目玉焼きにかける調味料や、魚を丸ごと食べるがトガヒミコと関係があるのかなと……緑谷は構わず話し続ける。

 

「個性を持ってる持ってない、異形かそうでないか、当たり前が違ったら……互いにそれは違うと言い合って衝突するんだ……」

「あ……」

「トガヒミコにとっての当たり前と、麗日さんの当たり前は、全く違う……そして僕と麗日さんも、もしかしたら深掘りすると違う事があるかもしれない」

 

 お互いに今まで生きて来て身についた『当たり前』が、他者と違えばやはりそこで衝突する、例え話から入った緑谷の話に麗日は気付いて、変と感じた胸の内がゆっくり晴れていく。

 

「ヴィランってさ……死柄木が言ってたけど、この超人社会で見捨てられた人たちでもあるんだ……それこそ、個性が恐ろしかったりして、排他されて……多数派の世界でお前は異常だって言われてさ……トゥワイス、Mr.コンプレス……荼毘はまぁ家族問題か、トガヒミコも多分……その一人なのかも、死柄木も……」

 

 死柄木の言う、超人社会で排他された人間がヴィランとなり、そしてあの日破裂してこの惨状が出来上がったのだ……異形、個性の問題、それが事実として目の前に広がっているし、トガヒミコもその排他されて来た一人なのだろうと緑谷は断じた。

 

「出久くんは、それが何となく分かる感じなん?」

 

 それがなぜ分かるのかと言う麗日の問いに、断崖に座っていた緑谷は麗日を見上げて笑いながら言った。

 

「僕も……オールマイトに出会わなかったら、あっちに居た人間だからね?分かるし、そう思ってる」

 

 緑谷は言い切った。

 

 あの日……爆豪を助ける為にと身体を動かし、ヘドロヴィランの目玉から脊髄をぶっこ抜いた。

 

 助けたつもりが手を振り払われ、民衆から殺人犯として恐怖を向けられ……今はヒーローを降りたデステゴロに拘束されて留置所行きになった。

 

 この少し前にオールマイトに出会わなければ、あの後留置所でオールマイトが来てくれなければ……もう自分の心は堕ちていたかもしれない。

 

「そして……そこまで踏ん張れたのは……こんな個性の僕を産みながら、恐ろしいとも言わず、親戚から守ってくれて育ててくれた両親が居たからだ」

 

 さらに言うなら、その日まで自分を普通に育ててくれて、叱ってくれて、真っ当な一人の人間として扱ってくれた理解ある両親が居たから耐えれたのだろうと緑谷は言った。

 

「トガヒミコ……ヴィラン全員そうとは言わないけどさ……多分、その中には手を取ってくれたり、抱きしめてくれたりする人が……理解者が居なかったから……そこまで行き着いたんだと思う……僕が殺して終わらせた、ヒューマライズのフレクト・ターンのように」

 

 その最果てが、トガヒミコや死柄木弔であり……そして自身が殺してしまったフレクト・ターンなのだろうと緑谷は右手を見ながら言う。

 

 全てを跳ね返す個性『リフレクト』を持ったヴィラン、フレクト・ターン……その個性故に両親友人恋人と触れ合えず離れていった。理解者を得られなかった彼は、個性を病と断じてヒューマライズを立ち上げ、世界の個性を持った人間を駆逐しようとした。

 

 一度、緑谷は手を差し伸べた、負けた以上引き下がれと、今の幸せを享受する普通の人々を巻き込むなと。その手は弾かれ、そして緑谷は殺すしかなかった。

 

 世界中を巻き込んだヴィランだったが、その始まりや個性に狂わされたのを聞けば、緑谷も同情してしまう。

 

「けど、出久くん……トガヒミコはヴィランとして、この景色を作った、たくさんの人を殺して……もう許す許さないどころじゃないよ?」

 

 麗日は聞いた、この景色を作りたくさんの人を巻き込んで殺した一人がトガヒミコであると。それはもう許されない事だと……。

 

「そうだね……けど……止める事も、償う事もできる」

 

 その問いかけに対して、緑谷の答えは単純だった、その凶行を今からでも止めれるだろう。そして……償う事もできると。緑谷は言って立ち上がりつつ、麗日に言った。

 

「この戦いで、トガヒミコに会ったら話してみるよ……倒すより、降参してくれた方が楽だしね」

 

 万に一つ、その機会があれば、緑谷はトガヒミコに手を差し伸べると麗日に告げた。それは彼女が女性だからとか、可哀想だからではない。

 

 あの時、フレクトにできなかった事を、今度こそはしてあげたいと……悪から生まれ、悪へ堕ちる道程を知る自分だからこそ、トガヒミコをまだ引き止めれるかもしれないと、緑谷はそう思ったのだった。

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