【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「そう言えば……ニアハイエンドとダツゴクに襲われた全国の刑務所ですけど、7箇所のうち2箇所からはヴィランが脱走できなかったんでしたっけ?」
最終決戦が迫る中、作戦に参加する猫の異形の警官である玉川は塚内に、ふと気になっていた事を尋ねた。
タルタロスからダツゴクした凶悪犯による、全国の刑務所の襲撃……7箇所の刑務所が襲われたが、うち2箇所からは誰一人ヴィランを逃さなかったのだ。その質問に、激務で隈ができていた塚内はしばらく呆けていたが、ああとようやく話が脳に伝達して口を開いた。
「ああ、正確には1箇所の刑務所から、ヴィランが脱走できなかったんだ……奇特な奴が居てな、そいつがダツゴクを堰き止めたんだ」
「たった一人でですか?」
塚内は玉川に頷く、そんなヒーローみたいな事をたった一人で行った者が居たのかと。しかし、玉川は確かに『2箇所』の刑務所から脱走者を出さなかったと聞いたので、改めて尋ねた。
「もう1箇所はその……何か違うんですか?」
玉川の質問に、塚内は少し目を細めて悩んだようにしばらく黙り、話してもいいかと口を開いた。
「……正確に言えば、脱走者は全員殺されたんだよ、九州の刑務所だ」
「えーー?」
「刑務官が暴走したりヒーローの凶行というわけじゃない……ただ、本当に囚人の一切合切、誰一人として生きている者は居なかった」
初めて聞く話に玉川は驚く以外できなかった、『逃さなかった』のではなく『囚人が全員殺された』という事実を知り、玉川はどうしてそんな事態があったのかと口が開きっぱなしになった。
「口開いてるぞ……まぁ無理はないか……で、詳細はあまりに奇異でな、囚人達は灰になってたらしい」
「灰?」
「……焼け死んでたんだよ、亡骸どころか骨すら残らず全て灰になっていた、刑務所の跡地や周囲に灰が散っていて、それを調べたら囚人のDNAが検出されたんだ」
確かに、燃やせば灰にはなるが……それでも骨くらい残るのが普通ではないのか?骨すら灰にした、焼け死んだとしか言えない状況となっていたその九州の囚人達の常軌を逸した死に方に、塚内は補足する。
「その時対応していた刑務官達が言うには、紫色の炎を見たとしか詳細は無いらしい……だから表向きは脱走者は居なかったと処理するしかなかったとさ」
「上も色々対応に追われて、逐一調べることも出来てないってとこですか……」
精査して原因の究明すらできない程に、今この国の司法や警察は疲弊し、人手が足りなくなっている。玉川は事実を聞いて、少しはそれでヴィランの被害はおさまって良かったと思った一方で、それでも罪を償う機会を奪い、私的に制裁し大量に殺したAFOのような巨悪がまだこの日本には存在して息を潜めているのかと戦慄した。
願わくば、この戦いに乱入して掻き乱してくれるなと玉川はヘルムを被り、何連勤目かも忘れた現場へと向かった。
「分倍河原くんに伊口くん、すこしいいかな?」
「あん?」
「なんだ、AFO」
AFOとヴィラン連合が隠れしある洞窟の中で、トゥワイスとスピナーが呼ばれてそれに応え、AFOに近づいた。何か用があるのかと、二人が並んで立つとAFOは話を始めた。
「キミ達には、この戦いの後のことについて、少し語っておこうかと思ってね」
「……おいおい、まだ勝ってもないのにか?」
「気が早くねぇか、AFO」
まだ勝ちもしてないのに、先の話をするだなんて気が早いし余裕だなと二人は同じ事を思い口に出した。その通りだよとばかりにAFOはニタニタ笑って語り出す。
「僕の勝ちは揺るがないさ、それだけ余裕と自信がある……けどね、この僕でも……日本のヒーロー達を打ち倒した後に控えている、ある相手には余裕も無くなってしまうからね、その事を話そうと思ったのさ」
「「は?」」
二人して目を丸くした、この底も分からない、死柄木の師であるAFOが『余裕が無い』とまで言わしめる相手が……この後日本のヒーローと戦った後に待っていると冗談じみた話をするので二人して同じ反応をしてしまった。
「キミ達の驚きをしっかり感じるよ……僕はね……オールマイトに一度負ける前に彼と対峙して負けて逃げた事があってねぇ……屈辱も屈辱さ、OFAを手に入れ完全となった死柄木なら、彼に勝てると思っている……キミ達はその相手と戦う際、死柄木や僕をサポートして欲しいんだ」
「あんたが……負けたって……」
「そんな奴がこの日本にまだ居るのかよ!?」
ここに来て報されるAFOの敗北の歴史、オールマイトは兎も角その前に、このAFOという伝説のヴィラン相手に勝利した輩が居たのかとトゥワイスとスピナーは驚く。そして……その相手とは、日本を支配するためにいずれ始まるだろう、ヒーローとの最後の戦いの後、避けて通れない障害だと宣うのだ。
「キミ達も名前くらいは聞いた事はないかい?彼は、怨龍って呼ばれてるヴィランさ」
AFOから告げられた者の名前は、なんと同じヴィランなのだという。しかし……二人は聞いた事が無いなと互いに顔を見合わせた。
「おや?もしかして知らないのかい?」
「初めて聞いたな……」
「聞いた事ねえ」
もしかして、彼の知名度はそこまでだったのかとAFOは意外だなと首を傾げ、なら説明しようかと口を開きかけた。
「主にアジア一帯の都市伝説として聞く、一匹狼のヴィラン……強いヒーローやヴィランの下に突如現れて戦いを挑んでくる流離の武道家で、時には敵対したヴィラン組織を壊滅させた事もあり、人によってはヒーローと呼ぶ者もいる……だったか?」
帰って来たらしい荼毘こと轟燈矢が、代わりに説明してくれたので、AFOは拍手をしてその通りだと頷いた。
「よく知ってるじゃあないか燈矢くん、もしかして会ってたりするのかい?」
「いいや……あんたみたいに都市伝説として囁かれてたのを聞いた……マジで居るのかよ」
「マジさ、僕は彼の炎に手も足も出ず、友人達を切り捨て逃げるしかできなかった……悲しい事にね?」
本当にこいつ悲しんでいるのかよと笑いながら言うAFO、しかし荼毘はAFOの語る話の一部が気になり、尋ねた。
「炎?今更あんたがそんな単純な個性に負けたのか?」
炎に手も足も出なかった、俺や親父、焦凍よりも熱い炎だったのかと思った荼毘に、AFOは語り出す。
「僕だって無敵じゃあ無いんだぜ燈矢くん?キミの本気の炎やお父さんのエンデヴァー、弟の焦凍くんの全力を直撃で叩きつけられたら危ないさ……しかし、怨龍の炎は根本から違うんだ」
「ああ?」
「彼の炎はね?概念なんだ、燃やすと言う概念が具現化している、自然の炎と違う"燃える“と言う概念が炎となって現れる、水で消せず砂でも止まらない、防御系個性ですら対処できず骨まで灰にする呪われた炎なのさ」
最早それは呪われた炎であったと語るAFO、そのような輩がこの後に控えているのかと、荼毘は歯を見せ笑った。
「さて……こちらもそろそろ動こうかな……」
死柄木の復帰も近い、そろそろこちらも動こうかとAFOはスマホを取り出した。