【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
全ては光る赤子から始まった超人社会……個性は千差万別、今も、そしてこれからも様々な個性が世代を経て生まれてくる。
死柄木弔も、トガヒミコも、疎んじまれ排斥された者は確かに居る。その手を掴んで引っ張ってあげる人が居なかったから、涙を拭ってあげる人が、抱きしめてあげる人が居なかったから、彼は彼女はこうなった。
「はい、ええよ?止血はしたから」
「ありがとうお茶子さん」
首の咬み傷にガーゼとテープを貼り止血を終えた緑谷に伝える麗日、礼を言った緑谷は立ち上がる。
「さっさと行かないと、現状が分からないし」
「こっちは任せて、緑谷ちゃん」
「気をつけてね、イズクくん」
二人に送られて、緑谷は空を引き寄せ、思いっきり飛び上がった。
『人形使いの糸』で飛び上がり、さらに7代目の変異個性『バーニア』で姿勢制御!さらに次次と空を引き寄せ距離を稼ぐが……
「……遅い!イメージのせいか!?」
自身を引っ張る『人形操りの糸』による加速は、確かに前より速いがそれでも加速は断続的で一定を超えない。
バーニアの出力も、姿勢制御には使えるが、加速しても維持できないのが現状であった。早く行かないと……考えた緑谷は『あれ』ならばと使おうとした瞬間。
『彼女に血を吸って抜いてもらったのに、もう頭に上ったか?判断力が鈍ってるぞ』
「!!」
『今、俺の異能を使おうとしたな?』
今まで黙っていた、二代目継承者が声をあげて緑谷を止めたのだった。使おうとしたのを見破られた、二代目の『個性』を、まぁ中に居るから気付かれるよなと緑谷は苦しい顔で頷く。
『その選択肢は最後に取っておけと言った筈だ、OFAの代を重ねた強化、さらにお前のAFO因子で俺たちの異能はより凶暴に強化されている……その結果『俺の異能(あれ)』は極めて特異な力に変質した……仮に使えば確かに早く着く、だが今のお前でも使える時間は"10秒"だ、貴重な秒数を移動に使うような捨て鉢になるな』
「……はい」
『友を信じて、お前はお前の戦場を見据えろ』
お叱りを受けて、緑谷は自省して水平線の彼方へ消えた。
「行ったわね……」
「そうやね……」
それを見送る麗日、蛙吹は、傍で拘束されて大人しくしているトガヒミコを見下ろした。
もしも、アクシデントが無くここに緑谷が来なかったら……トガヒミコをこんな形で捕らえる事はできなかったのかもしれない。
ヒーローとヴィラン、分かり合え無い存在同士のぶつかり合い。その中で、緑谷出久はヒーローの立場にありながら、悪のあり方を理解できるから……手を差し伸ばして彼女を引き止める事ができたのだろうと麗日は思った。
「ウラビティ!フロッピー!!残りのヴィラン達は確保した、このままヘリで空輸した後、我々もまだ解決していない戦場へ向かう!!」
「「はい!!」」
この戦場を統括していたギャングオルカから、他のヴィラン達も確保した事を報された二人は、ヴィラン達の護送後次の戦場へ向かうのであった。
ーー神奈川県、神野区ーー
かつて、オールマイトがAFOを打ち倒した場所、オールマイト広場は『グラウンドゼロ』と呼称されていた。
「ただでさえ減ったヒーローが、また少なくなっていく」
その広場を覆い尽くす蒼炎……と、倒れているヒーロー達……だけではない、この熱に耐えれないヴィラン達すらも、無差別に巻き込み倒れていた。黒煙が覆い、今はまだ午前の青空がある筈が、蒼炎が燃え盛る場所だけは夜のように暗くなっていた。
「脳無が現れ周りは火の海……ちょっと前の事なのに懐かしい光景だ……」
その活躍を讃え建造された、オールマイトの像の手にぶら下りながら、荼毘こと轟燈矢は呟く。
「俺はあの保須の戦いを見て動き始めたんだぁ……あぁ、ごめんな?自分語りしちまって……また俺を見てくれなくってよ?テンション下がっちまったぜ」
蒼炎を使い、浮き上がる荼毘。それを見上げる轟焦凍、そしてエンデヴァーのサイドキックである、オニマー、キドウ、バーニン……。
「まさかの本人は現れず、来たのは三男と側近3人だけ……これが俺に対する答えか……ってさ?ほんと、参っちまうよな」
自分を過去にして見ぬふりをした父親は、自身の暴露を経ても見ようともせず、尻拭いを才能ある三男に押し付けてよそでよろしくやっているんだなと、荼毘は呆れ果てて消沈していた。
「キドウ!お前は下がってろ!耐熱効果がある身体じゃねぇだろう!?」
エンデヴァーすら超える熱、自身の炎の耐性すら危うい中で、個性からして耐性を持ち得ないキドウにオニマーは退がるよう忠告した。
「大丈夫だ、俺はあらゆる物の軌道を変える……周囲の空気の軌道を逸らしてりゃ何ともねぇ」
心配の必要は無いとオニマーに返すキドウ、ヒーロースーツの一部である包帯がたなびいて素顔が覗き、さらに語り出す。
「いつもの事さ、冷徹に、合理的に……もう10年だ、ずっとそうやって来た……いつも通り、俺はあのおっさんの指示に応えたいから応える」
エンデヴァーのサイドキックとして10年活動して、今更指示を違えるつもりも降りるつもりもないと、いつも通り指示通り、焦凍のサポートを命ぜられたならそれを全うするだけだとキドウは言い切る。
「あの加齢臭の家庭事情が、糞でも何でも……これまでの"働き"に嘘は無かった!今もな!」
荼毘という真実、個性婚という事実、確かにそれらは人々を失望させた不祥事だ、この現状はエンデヴァーが生み出した。
だが!過去が消えないと言うならば!!エンデヴァーがヒーローとして人々をヴィランから、災害から救って来た事実も変わりはしない!あの人はヒーローとして責務を全うして、そこに嘘は一切無かったとバーニンも言い張った。
「その脇臭がキミに託した!!私たちは、キミを全力でサポートする!!」
「ありがとうございます、バーニン!」
「礼は要らない、エネルギーの無駄!」
焦凍はバーニンの言葉を受けて、改めて浮遊する荼毘を見上げた。
「燈矢、荼毘……勘違いするな……俺は言われたからここに立ってるわけじゃねぇ!俺自身が、お前を止めたいと思ってるから立ってるんだ!」
荼毘に言い放つ、父親の尻拭いでここに居るのではない、自分がお前を止めたいから俺はこの場に立ち、戦うことを選んだんだと焦凍は決意を見せる。
「それって……お父さんの思い通りの駒って事じゃん?」
その決意に対しても、結局父親の思惑通りに操られた駒として動いているだけだろうと荼毘は嘲る。しかしーー。
「お前を無視して、ヒーローを続けるってんならそうなる!」
焦凍はさらに言い返す、向き合わずに、誰かに任せたらそれこそ、お前が言う父親の駒のままだろうなと。それを聞いた燈矢は……納得した。
「そうだよなぁ、結局この戦争は人対人だ……誰かの命令で物言わぬ兵隊が動いたわけじゃねぇ……各人の思いが一つ一つ暴発して動いた結果だ」
国同士の主導者が利権争いで差し向けた戦争とは違う、人々の、正悪どちらの人間も思いが爆発した上でこの戦いは起きている……操り人形なんて誰一人居ないなと。
「自由に生きたい」
トガヒミコも。
「環境を変えたい」
スピナーも。
「仲間を守りたい」
トゥワイスも。
「壊したい……!黙認されあちこちに蓄積された歪み……超人社会の限界!」
そして、死柄木弔も、鬱屈し蓋をされた、受け入れられなかった思いが爆発したのがこの戦いだと荼毘は語った。
「それが俺……俺たちだ!!」
その歪みが、行き着いた果てが自分やお前という存在を産み落としたのだと、兄が語る話を弟は否定しなかった。
「……生きてたなら……なんで帰って来なかった!!」
その上で、弟は尋ねた。瀬古杜岳の火災で死んだ筈な貴方が生きていた、生きていて何故貴方は家に帰って来なかったのかと。
「知りたいか?……じゃあ教えてやる、腐っても兄ちゃんだしなぁ?」
身体から煙をあげ、継ぎ接ぎの皮膚がゆっくり燃えて焼けこげていきながらも、荼毘は弟の疑問に答えることにした。
「俺が"荼毘"になった経緯、お前以上の熱を絶やすことなく!生きて来られた理由を!!」
正常な皮膚すらみるみる火傷に侵食され、縫い合わせた糸が燃え落ち口は裂け、唇すら失い歯を剥き出しにしながら、荼毘は語り出した。
あの後、何故家に帰らなかったのかを。