【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
死柄木の無限に生える指の束を、自身の個性『透過』にて無力化しながら、方々に飛び回り、通形は死柄木に言い放つ。
「なんで壊す!?」
単純明快な、ストレートな質問。何故こうも何もかもお前は、壊そうとしているんだと。
「失敗しているからさ、今の構造が」
死柄木の返答もまた、短かった。この社会も、構造も失敗している。だから全てを破壊して自身が作り変えるのだと、それを聞いた通形は右手を掲げた。
「ここ!」
参戦した同輩に合わせ、波動が通形へ波動エネルギーを渡すように照射する!
「そうかお前は……友達がいなかったんだなぁ!?」
「あ?」
通形の言葉に、死柄木は呆けた声が出た。
「友達が居れば、わかる筈だ!」
波動を纏った拳を、通形は死柄木へ叩き込むために近づく!通形の個性は、移動や、防御に関しては無類の強さを持つが……攻撃力に関しては自身の肉体を頼りにする徒手空拳であるがため、今の死柄木には傷一つつけられない。
だからこその連携!波動ねじれの波動エネルギーを纏い、運んで!そして叩き込む!
「壊しちゃいけないものがあるって!!」
友達が居れば自然と学ぶだろう、壊したらダメなものくらい。お前がそれを知らず破壊を望むのは、友達のいない悲しいやつだからじゃないかと。波動エネルギーの拳は死柄木へ叩き込まれた。
「ぐぅうく!」
直撃した死柄木は、自らが伸ばした指の束に叩きつけられる程に吹き飛ばされたのだった。通形は、心中で自らに言い聞かせた、時間を稼げ、緑谷が、後輩が辿り着くまで!
「友達が居たら……こんな事、しないよね!守りたいと思うし、壊したりなんてしない!」
それでも、死柄木の皮膚にすら傷がつかない。後ずさった死柄木に持論を言い放つ通形……。
そんな死柄木の動きが、数瞬止まって……。
「……るもん」
「む?」
「居るもん……」
ポツリ、ポツリと、何やら話し始めた、その次の瞬間ーー死柄木の表情が突如、切り替わって声を荒げ叫び始めた。
「みっくんとともちゃんが!!てんちゃんはやさしいからっていってくれたもん!!モンちゃんだってぼくとさんぽしたがるもん!!ぼく!!ちゃんと!!!ともだちいるもん!!!」
さっきまで、人を喰ったような嘲りしか無い言葉遣いが、幼児のような癇癪を吐き散らして通形に叩きつけられた。あまりの変わりように……通形ものけぞってしまう程の衝撃で……当の死柄木本人も、自分が今何を言ったのか、思わず無意識に出たとばかりに顔が唖然としていた。
「ご……ごめん……ぶっ!?」
通形も、思わず謝ってしまった。そして間髪入れず指の束に飲まれたが、透過により事なきを得て何があったのだと考える。もしかしてデリケートな部分に踏み入ったかと、こんな時にもなんだがヒーローにあるまじきデリカシーない事をしてしまったなと自省する。
対して死柄木……いや……『AFO』は、今出た言葉から、まさかと考えを巡らせた。
蛇腔を経て、スターとの戦いを超え、この『肉体』はすでに完成している筈だ。蛇腔で緑谷出久に傷つけられた『個性因子』も根治している。
死柄木とも溶け合い完全に一つになったはずだ、だが……転送前に崩壊を使おうと止まった指、さらに今の出てきてしまった言葉……つまり『意識』はまだ、溶け合ってないらしい。
「志村……」
奥底、まだ微かに残っていたかと死柄木は、長引いたらこの綻びが何を及ぼすかまずいと、目的を果たすために通形に背を向け歩み出す。指の壁を退け、その先で虚ろな眼差しを見せ息を切らす爆豪と、その傍らで治療しているらしいベスト・ジーニストの下へ。
「ああ!?」
「時間稼ぎに構う理由が無い」
緑谷出久が来るまでの、そして爆豪を引き離す為の時間稼ぎ、構う必要もなしと悠々と死柄木は歩いて爆豪の下へ向かう。
「……来い、来てみろ来い!邪悪の権化がぁ!!」
普段は絶対あり得ない、荒い語気でベスト・ジーニストはファイバーを操り、死柄木の体を見えない繊維で止めにかかった、しかし、それでも止まらない!
「無理するな、いいのが一発入ってる……意識を保つだけで精一杯だろ?」
死柄木を止めるために、波動も、エッジショットも、ミルコも生え続ける指の束に応戦していく。ふと、死柄木はここに転送された直後のことを思い出した。
この浮かぶ戦場を『天空の棺』と、ベスト・ジーニストは言っていた、自分をここで倒すための、封じ込める棺桶だと。
「どうやらキミ達は、自分たちの棺桶を拵えていたみたいだ!!」
最早ここはお前達の棺桶だなと、状況が覆り無駄な抵抗でしにゆくだけしか無いと嘲り、空で相変わらず蠢く波動を撃ち落としにかかる。
しかしーー死柄木は気付かなかった。この足掻きの中、着々と、準備が進んでいた事に。攻撃の分散と、目的を達する力もある戦力差と言う余裕……とは別に、焦りもあったのだ、死柄木には。無意識に出た死柄木……いや『志村転孤』の意識がまだ残っていた事に。
だから、見落とした!!波動ねじれの波動エネルギーの一つが!!死柄木の指の束ではない、違う場所に向かって行き、吸い込まれていた事に!
この場で『唯一』死柄木弔へ、有効打を与えられる存在がいる事に!
その名は『サンイーター』!!
太陽を喰らう者!雄英高校3年天喰環!!
個性は『再現』!!食べた物を、自身の体に再現する個性!!質量保存の法則すら無視して、タコの同化により姿を隠し!!今ある全ての自身が再現できるありったけを組み合わせ、異形の砲台を作り上げていた!!
砲弾となるエネルギーは……波動ねじれの波動エネルギー!!
「混成大夥ーー」
「こざかしい!!」
「プラズマキャノン!!」
ようやっと気づいた、だがそれがどうしたその程度の力がと、薙ぎ払う瞬間ーー死柄木の指の束を次々焼き払い、本体に向かってその熱線は迫った!
「吹き飛べええぇえええーーーーー!!」
通形の期待、波動のエネルギー、それらを込めて放たれた熱線は死柄木の本体まで届こうとしてーー。
「いい加減に……理解しろォ!!」
死柄木の前腕まで迫った熱線は、それでも再構築され指の束が押し返していく!しかし!!
「ぬぅううあああ!!」
その熱線の中を、通形が飛び出して死柄木の顔面へ拳を叩き込んだ事により、死柄木は熱線に飲み込まれたのだった。
熱線は、爆豪の放ったハウザーインパクト・クラスター同様、電磁シールドを突き抜け彼方雲すら消し去るほどの威力……。
物間の目を潤していた、ノーマルヒーロー・マニュアルが、あんぐりと口を開けてその威力に何も言えない。
やがて、砂埃が上がる中、周りの指の束から、何まで動きも止まり……倒したのかと皆が見守る中ーー。
中心地から再び、指の束の雪崩が一気に押し寄せ襲いかかった!!
「な、なんで……!?」
あれで、何故まだ生きているんだ!何とか避けたが腹部を擦り、絞り出すように声を上げる波動の声を聞いたか、死柄木が答えた。
「考えてもみろ……全盛期のオールマイトが死ぬか?こんな物で!!少しは、考えてみろ!!」
死ぬだろ!?いくら全盛期のオールマイトでも!?あれだけの熱量を叩き込まれてなお、死柄木はダメージをあまり受けていなかったのだ。
羽虫が足掻いて苛立つ、さっさと終わらせてやろうとした死柄木だったが。足音がひとつ増えて、そちらに顔を向けた。
「皆の事、頼むわ……」
幽鬼の如く、爆豪が立っていた。足取りはふらつき、死を目前にただ殺されるためだけに、死柄木の前に向かおうとしていた。
「勝たなきゃな……イズク……」
鼻血を、涙を流して、身体中から光を煌めかせている……その眼差しが、瞳が、死柄木を何故か苛立たせた。取るに足らない羽虫、緑谷出久の、OFAの金魚の糞でしかないはずの男に!
「駄目だ!行くなぁ!!」
止めるために、ベスト・ジーニストが炭素繊維の縄で爆豪を止めにかかった瞬間ーー。
閃光を放ち、爆豪が消えた。
そして、死柄木の視界が何かに遮られーー爆音と共に顔面に爆破が叩きつけられた。
「右ーー!」
死柄木の反撃を、目視で見切るやまた姿が消え、間合いを取る。そのスピードは、死柄木はおろか……この場の戦いに参加したプロヒーロー、雄英BIG3にすら捉えられなかった。
死柄木が腕を振るう、指の束が叩きつけられるも、即座に爆豪の姿はーー死柄木の背後へ移動していた!!
個性『爆破』
ニトロのような汗を、手のひら『汗腺』から出して爆破させる。
エンデヴァー事務所のインターンで、彼が編み出した新境地『クラスター』は、爆豪自身も知らない『副作用』があった。
『溜めて放つ』エンデヴァーに教えられた、力の凝縮。汗を溜めて、玉として放出するこの技は……手のひらの汗腺に多大なる負担を強いる。
勝ちを見据え、線に玉を溜め続けた結果……玉は『別の出口』を求め『身体中』から漏れ出す。
"全身からの爆破"が……死柄木の目ですら追えない、更なるスピードを生み出していた。
『身体中が痛ぇ……こんな痛みは、お前の技を受けた時くらいだな……』
痛みが記憶を引き出す、こんなに身体中が痛いのは……緑谷の必殺技『バイオレントラッシュ』くらいしか思い当たらないなと。他のヴィランの攻撃でも、あれまで痛い攻撃は無かったと思い返す。
『お前はいつも……先を行ってた……なぁ、イズク……俺、お前にまだ……追いつけるかな?』
薄れゆく景色の中……光が爆豪を包み込み、やがて……見知らぬ場所に爆豪は立っていた。
制服を着ていた爆豪は、ふと辺りを見渡す。
背後に佇む、金色のモヤ、模る姿は……憧れのヒーロー。
『あ……いや……その……憧れてるくせにさ……その、くそみてぇに正直に言えなくてさ……』
左のポケットに手を入れる。
現れた、血の汚れが付着した、オールマイトのレアカード。捨てちまえばよかったくせに、持ってた品を眺めて、爆豪は笑みを浮かべた。
『俺……サイン欲しかったんだよな……』
あいつは、緑谷は……すんなり書いてもらったんだろうな。あ、でも……あいつ、オールマイトのカードは当たらなかったとか、言ってなかったっけ……。
ほんと、今になって、惜しい事したな……。
カードを眺めながら、爆豪は光の中に消えていった。
反撃の狼煙というには、あまりにも弱かった。とうに爆豪勝己の身体は限界を迎えていた。だからこそ、助けなければと皆が、爆豪へ向かった。
しかし、追いつけなかった。
爆豪の速さに
死柄木の速さに
だから、死柄木の棘のような腕は爆豪の胸に叩き込まれて、その身体は宙を舞った。
「先の戦いをなぞってるだけじゃないか……」
空が、雷雲に翳る。希望の光を覆いつくように。
「何故勝てると思った?僕たちは準備した、魔王の身体は完成した」
先程まで晴れていた青空が、暗く染まり、雨を降らせ始めた。
「理解したか?ここから先は……僕らの物語だ!」
勝利を宣言する死柄木に目も暮れず、ベスト・ジーニストは吹き飛んだ爆豪の下へ駆け出した。
「しっかりしろ!今治療する!!ダイナマーー」
胸に穴が空いている、早く治療をと手をかざしファイバーを介して爆豪を治療しようと、呼びかけた瞬間……ジーニストは目を見開き、突きつけられた。
「……心臓が……!」
口から血を吐いて、目は開き瞳に光はなく……応答も無い。
傍にお守りらしい、オールマイトのカードが落ちて潰れて、血に汚れていた。
爆豪勝己は死んだ。
その事実が、ベスト・ジーニストの目の前に、叩きつけられたのだった。