※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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353話 白と黒

 10秒間の、人智を超えた攻撃の嵐……その代償は決して軽くない。

 

 緑谷出久の身体は、ヒーロースーツの下に隠れてはいるが、皮膚は裂けて肉は切れ、血は止まらず流れ続けている。

 

 みるみると、緑谷の足元から血の溜まりが広がる様子が、その副作用の酷さを物語っていた。

 

 どさりと、背後に落下する音を聞いた。痛みを耐えながら身体をなんとか向け、背後を向く。

 

「ぐぁあ……おぁあ……」

「!?」

 

 信じられぬ物を見た。

 

 あれだけの、全てを投げ打った10秒を、叩きつけてなお……死柄木弔は生きていたのだ!

 

「危なかった……本当に危なかった……!だが……耐えたぞ!!ヒーロー!!」

 

 それでも、見るも無惨な姿だった。手足がひしゃげて立つこともままならない。超回復や再生の個性ですら追いつけないダメージ……うつぶせになり、目をギョロつかせて怨嗟をその目に宿してただ這いつくばるだけの……。

 

『動けるか!?小僧!!』

 

 二代目の意思が頭に響いた、ここで動かねば、死柄木がまた復活するかもしれない。止めを、刺さなければならないと、緑谷は歯を食いしばりながら言い放つ。

 

「動かします……無理にでもぉ!!」

 

 身体中の筋繊維が切れた痛みを、何とか押し殺し立つ緑谷。歩くだけで、痛みが身体中を苛む。

 

 それでも、全て終わらせるために、緑谷出久は死柄木に歩き出す。

 

 

 向かって来る。

 

 逃れようも無い『死』が向かって来る。

 

 始まりは『あの男』だった。

 

 初めてだった、自身以上の『悪』を目の当たりにしたのは。こちらの金銭や繋がりを狙ってではない、組織の抗争などではない。

 

 ただ『街中で肩をぶつけて、因縁をつけられた』みたいに『あの男』は私の友人達をぶちのめし、私を追い詰めた。東南アジアでの話だった。

 

 死柄木を見つけ、脳無の完成形へ向けての研究、自身を継ぐ者として育てた最中……オールマイトにぶちのめされて急死に一生を得た最中……死柄木もぶちのめされて帰って来て戦慄した。

 

 幾つもの道筋を考えて来た、そしてここに辿り着いた筈が……ここに来てまた邪魔が入る!!死柄木とAFOが混ざり合った意思、その目が近づく緑谷を睨み、言葉も吐けぬままに心中で叫ぶ。

 

 お前は誰なんだ!!どこまで僕を邪魔するんだ!?

 

 その目を見開いた瞬間、死柄木は見えた。

 

 背後に……居る。

 

 弟が、与一が居る。

 

 それだけではない、かつて自分が追いかけて、手にかけて来た歴代のOFAの継承者が、オールマイトが!

 

 そして!!

 

「そ……そうかお前はぁあ!?」

 

 思わず口に出してしまった。その背後の霊か、意思の形か知らないが、確かに見えた。その中に影の様に混ざって見えた、自身よりも恐ろしい『悪』の意思!

 

 怨龍!!

 

 そうか、お前の血族だったのか、緑谷出久は。僕の人生を、目的への障壁となった二人の意思が、力が!星積もりとなり緑谷出久という少年に集ったのかと。

 

 ならば……此方もまだ、負けていない!まだ、勝ち目は残されていーー。

 

 AFOの意思は、突如何かに引き裂かれ、そしてーー胎動が始まった。

 

 

「ううぁぁあああああああーーーーー!!」

 

 突如、呻き、苦しみの声を上げた死柄木に、緑谷は慄いた。限界が来た、とかではないらしい、芋虫の様に這うしかない肉体が、ボコボコと蠢き始めた。

 

 そしてーー背中から亀裂が入るや、裂ける音を上げて、羊膜の様な何かが背中を突き破り、亀裂が入り始める。

 

「まだ……何かあるのか!?」

 

 これ以上死柄木に、まだ何かあるのかと相澤が声を上げた。

 

 その羊膜が破れ、ひしゃげた筈の新たな腕が飛び出て、肉体もまた再生する。今までの肉体を『蛹』として、成虫の様に現れたその姿に、緑谷は絶句した。

 

「もう……いい……」

 

 現れた成虫が、そう言い放った。

 

「何もかも壊すのも、後回しだ……お前が居る限りそれが出来ないなら……俺は!!」

 

 皮膚が硬質化し、鎧となっていく。その姿はまるで鏡写しの様で。

 

 

「お前を先に、殺す事にする」

 

 

 白く輝く『象徴の鎧』を纏った、死柄木弔が、蛹となる肉体を破り現れた。

 

 あり得ない話ではない……マスターピースは、個性をより使える様に、よりその場の戦いに適応する様に『進化』する、脳無の究極となる者。

 

 緑谷出久が到達する前の、ヒーロー達の戦闘により、死柄木弔のストレスが指の鎧を纏う拒絶の防御形態を作り出したならば……。

 

 先程の緑谷出久による、一方的な戦闘が、更なるストレスを与え、新たなる進化の形を導き出した!!

 

 全てを破壊する形から!!

 

 たった一人の、憎悪する相手を殺すための形へ!!

 

 その姿を見た緑谷出久は……。

 

「ははっ……」

 

 笑った。

 

 力無い笑いだった。

 

 諦めからではない、絶望だなんて断じてない。

 

 こうも最後に、この形に収まるのかと、だから笑った。

 

 見知った場面だったからだ。

 

 『白い鎧の最強の敵』だなんて。

 

「いいよ死柄木……とことん付き合ってやる……」

 

 そんな姿になったなら、応えてやらねばならないだろう、ヒーローらしく。笑みを浮かべた緑谷の腰に、再びベルトが浮かび上がり……変身の掛け声も無く、肉体に黒き触手が纏わりつく。

 

 黒き鎧『漆黒』となって、緑谷と死柄木は対面した。

 

「「うぁあぁあああああああ!!」」

 

 叫びを上げて、互いに自身の足で走り出す。間合いに入った瞬間互いに強く踏み込み、拳が交差して互いの顔面を撃ち抜いた。

 

「ぐぐう!?」

「ぬぅう!!」

 

 殴った箇所の顔面が、皮膚の様に剥がれて血を吹き出す。剥がれた箇所から下の素顔も互いに覗いたが、癒着して自身の一部の様に筋繊維が剥き出しになるも、みるみる内に再生していった。

 

 さっきまでの、全てを破壊し尽くす様な破壊の濁流から、一方的な蹂躙から……二人の化け物が、互いに殴り、蹴り合って、血を流して皮膚を裂き、甲殻を剥がす……破壊音も、崩落音も、爆発音も無い……しかし離れている物間や相澤達にも聞こえる、肉裂き打ちつける音が、雨の音にすら遮られない程に鳴り響く生々しい戦いが始まった。

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