【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
砂藤達高校生組は、多古場競技場の総指揮を任されたタカカズにより『逃走したヴィランの確保、及びプロヒーローが取りこぼしたキメラトゥワイスの討伐』があてがわれていた。
理由としては、4人とも遠距離攻撃には少々心許ない個性である事、何よりタカカズ自身が『学生に命を賭けさせられるかっての』と断じたからだ。
後からいくらでも批判は受けるつもりだった、この最終決戦にまだそんな事が言えるのか、学生達も命懸けでこの戦場に出ているだろうにと。
「そんな俺の、甘っちょろい判断を笑うかい?13号」
押し寄せる、増殖するキメラトゥワイスを前にタカカズは13号に尋ね、13号は首を振った。
「甘い判断だろうと、ヒーローとして実現してやればいいんです、大人として子どもは守るべき者、例えそれがヒーローの道を行く子たちも隔てなく」
互いに並び立ち、賛同を貰ったタカカズ。本当は、誰かに同意が欲しかったのかもしれない。お前は間違ってねぇ、安心しろと形だけでも欲しくて口に出したのかもと自嘲する。
「それじゃあ……とことん付き合って貰おうじゃあないの!!」
「ここは私たちで、食い止める!!」
迫り来るキメラトゥワイスを前に、背を向けるタカカズと、グローブの指先を開く13号。
背部から開かれた漆黒の空間『ディメンジョン♂ホール』と指先から現れた『ブラックホール』に、キメラトゥワイス達はへし潰されながら、吸い込まれていく!
それが、『白き光』が放たれる少し前の事であった。
そこから離れた、あるビルの屋上に……雄英バリアから出てきた緑谷久の姿があった。
「ありがとう、イーヴルマジン……無茶をさせた」
『お気遣いなく……あなたは私で、私は貴方でもあるのだから』
ロボットモードのイーヴルマジンに抱えられて飛行し、戦況を見渡せる場所に辿り着いた久。デバイスから、自身がどの場所に行くべきかを判断した結果、久が向かったのが最初に戦線が崩れた多古場競技場であった。
「オールマイトさんには止められたが、日本がこんな状況だ、ヒーローだろうが無かろうが、出久が心置きなく戦えるようにしてやらんと……」
全ては愛息出久の為に、ヒーローだろうが無かろうが、それだけの為に彼は動いてここに居る。そのほかに理由は無いし、止まる気もない。だから……これを持ち出して来たと
久は、持アタッシュケースを地面に置き、それを見つめた。
『三式』と刻まれたアタッシュケースの前に跪き、手を置いて……ボタンを押そうとして躊躇うと。
『本当に、使う気ですか?』
イーヴルマジンが、久に尋ねた。皮肉な事にそれは自問自答でもあった。
イーヴルマジンの人格AIには、緑谷久自身の人格をベースにディヴィットが作り上げてインストールしていた。自身の分身として、我が子出久を守るように。
「イーヴルマジン(俺)、仮に……これを使い、個性を強化したら……」
『人ではなくなります、恐らくは……人の形を外れる、貴方(僕)の父や祖父、兄のように……』
自身からの解答に、だろうなと久は自嘲した。緑谷の一族はそうなのだ……差はあれど、個性を……異能を使い続ければ『人』から外れていく……。
理由は分からない、ただでさえ個性の研究は日々新しい論文が出るくらいだ。自身の家に連なる個性はそう言うものであった、と割り切るしかできなかった。
さて……久は自身に問う。
息子のために、妻のために……。
化け物になる覚悟はあるか?緑谷久。
「安いものだ、そのくらい……!」
アタッシュケースのボタンを押した瞬間ーーさながら生き物のようにアタッシュケースの中のパーツが、久にまとわり付いた。
『米軍に提出するパワードスーツを、キミが?』
『駄目か、デイヴ?』
I・アイランドのデヴィットのラボにて、二つの完成間近となったパワードスーツを前にして、久はデイヴに提案した。スポンサーである米軍に提出するパワードスーツを、自分が主導として作らせて欲しいと宣った事に、デイヴは少し悩んだ。
『確かに、スポンサーである米軍に研究の経過を見せる必要があるけど、シンとエルクレスじゃ駄目なのかい?』
完成間近の二機のパワードスーツの進捗報告では駄目なのかと尋ねたデイヴに、久は理由を答えた。
『米軍が求めてるのは軍事兵器だ……この二機はヒーロースーツとしてなら満点超えだろうさ、けど……米軍は軍の扱う兵器が欲しいのさ』
久の話に、デイヴは見なかった事にはできないかと苦笑した。久が米軍、アメリカ政府とのパイプを取り持ってくれた事、研究費の調達からプロジェクト再開まで漕ぎ着けたのは、アメリカ政府の後ろ盾があったからだ。
初代エルクレスから派生した二機のヒーロースーツは、あくまで『ヒーロースーツ』としての枠に収まっている。しかし米軍、アメリカ政府が欲しているのは、世界的個性研究家であり、サポートアイテムの発明家が作る『軍事兵器』だ。
『成果をアメリカ政府に出す為に、三機目のパワードスーツは俺が主導して作りたい……ま、納得させるダミーというやつだ』
久はそう言って、企画書と……ある『壊れた機械』を机の上に置いてみせた。かつて、各国政府から封印を命じられ、テロリストに奪われかけた『個性増幅装置』のスクラップである。
『抜け目ないなキミは……そして、僕とチームを組んで学んだ経験がしっかり出てるね……デザイナーだったキミが、開発のチームメイトとして話についてこれるくらいになる日が来るとは』
『これでもいい学校行ってたんだ、成績は下から数えた方が早かったけどね』
企画書に目を通し、かつて組み上げた作品のスクラップと見比べ、世界的天才が頷くくらいには破綻も、空想でもない現実に落とし込める企画に、そう漏らした。そんな天才程でもないが、日本じゃいいとこの学校の出だから勉強はできるんだと久は、デイヴに少しばかり誇った。
『米軍や政府を引っ張ってきたのは俺だ、兵器開発なんて汚れ仕事で、あんたの名前を汚せるかよ』
『キミ、まさかその為に……なぜそうまでして……』
意図を理解して、デイヴの顔は心配と悲しみに染まった。久は、責任を取ろうとしていると……個性研究の為に、頓挫したプロジェクトを再起動する為に、自身がアメリカ政府と米軍のパイプを作った……引っ張って来た事……。
やがて来る政府からの依頼が、デイヴの研究の理念や誇りを捻じ曲げかねない事も。デイヴ自身、覚悟はしていたが……久はそれすらも自分で抱え込んで背負う気らしい。
何故、そうまでと尋ねるデイヴに、久はポカンとして言い放った。
『いや……うちの息子にシンどころかイーヴルマジンまで無償で作ってくれてるのに?それを言うか?むしろ代償としてはまだ足りないと思ってるのだけど』
『え?それはほら、実働データを取るで釣り合うかと……』
『釣り合ってたまるか、俺の給料に換算したら何回人生やり直す額だよ』
金ではないんだけどなとデイヴが言いかけたところを、金は大事だろと久は遮るように言った。
『デイヴは平和のために研究して手を汚す必要は無い、あんたは真っ当な研究家で、平和に貢献した開発者であり続ければ良いんだ』
兵器開発なんて汚点を、偉大な研究家に背負わせるかよと久はニンマリ笑って言うのだった。
「痛いな……まぁ、電極直で刺して弄る試作品もいいとこだからなぁ……」
まとわりついた金属が、重々しい呻くような音を立てる。四つん這いになっていた久は立ち上がったその姿は、さながら金属を纏った『怪獣』のようだった。
「対……個性戦闘用試作外装三式……その名は機竜……かつての特撮で自衛隊が開発した兵器から名を貰った試作パワードスーツ!無個性の者をヒーローやヴィランと戦える力まで引き上げーー個性を持つ者は!」
感電してないのがおかしいほどに、久の開発したパワードスーツ『機竜』から可視化した電流が流れ込み、久の口内から蒼炎が漏れ始めた。
「その個性を数段階引き上げ強化する!イーヴルマジン!!避難命令出せ!!」
「すでに周囲のヒーローのインカムをジャックして出しております」
「仕事の早い!!やっぱりデイヴのAIはすごいな!!」
本来なら酒を飲んで燃料を作り出さねば火を吐けない筈だった久は、このパワードスーツにより『燃料の自己生成』を強制的にできるほどまで引き上げた。まだ試作も試作のこのパワードスーツは……久を人間から乖離させる危険なスーツだった。
「息子が頑張ってるんでな……余計な事考えさせない為に……ここで止まってもらう!!」
遠距離攻撃をしているヒーロー達も、ジャックした通信を聴いて退避したのを見た久は、本来燃料ありきで放つ筈の熱線を、巨人の肉塊向けて口から放射した。