【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
緑谷出久の前で、突如死柄木弔に訪れた異変。およそ首あたりから、また違う肉体が生えようと、支配権を得ようとばかりに見知った顔のない頭部が生える様は……蛇腔で死柄木に触られ精神世界で繋がった時の事を思い出す。
精神世界で言っていた『融け合い、一つになる』という、死柄木の中に居たAFOの台詞からして……AFOはこの改造に改造を重ねた死柄木弔の『肉体』を欲している。
『個性因子には意思が宿る』と、その時に理解した。歴代OFA継承者との会合、精神世界のリンクから、個性が起こす超常現象だと。
つまり死柄木は今、AFOに抗っているのかと、左前腕の断裂し露出した筋繊維を固定する為に、隙を突いてホルスターから包帯を取り出して緑谷は左前腕に素早く巻いていく。その最中だったーー。
『こちらマンダレイ!浮上制御が効かなくなった!ハッキングだ…‥コントロールが奪われかけて電磁バリアも解かれた!同時に現在管制塔が襲撃を受けている!ファントムシーフ任務継続困難!』
マンダレイのテレパスだった、緑谷はそれを聞いて、ようやく周りの状況に気付いた。
電磁バリアも消え、天空の棺も高度が下がっている。何より、抹消を担当し別棟の屋上に居た物間が、相澤先生が、マニュアルが!肉塊の化け物に追いやられてこちらを見る事すら叶わない状況になっていた。
いよいよ進退窮まったか……崩壊が解放された死柄木は目の前で呻き、天空の棺は落下しつつある。相澤先生に物間も窮地に立たされた。
そしてーーその窮地を作った張本人が……死柄木の上に漂うように現れた!
「黒霧ぃ……!!」
セントラル病院に拘束されたはずの黒霧が、死柄木の下に来たという事は、防衛ができなかった事を意味する。実情を知らぬ緑谷からすれば、障子くんと口田くんに何かあった事の裏返しでしか無く、精神的にも緑谷は追い込まれた。
死柄木を倒さないと、崩壊が使える今この地面に触れられた瞬間、この場に居る全員が死ぬ。かっちゃんも、ミリオ先輩も環先輩もねじれ先輩も……ベスト・ジーニストにエッジショット、ミルコ……地下で基盤やパーツを作っている八百万さんに発目さん、パワーローダー先生も!
離れた電力供給の別棟には、化け物が現れて物間くんも、相澤先生も、上鳴くんも居る!
さらに天空の棺が落下してしまえば、そもそも全員が危ない!
やるべき事は……死柄木を倒さなければならない。しかしそうしたら……皆が落下に巻き込まれて死ぬかもしれない……。
何かを捨てなければ、何かを救えない……
緑谷の頭に過ぎる、オールマイトだったら、こんな状況だろうと全部ひっくるめて救えるかもしれない。そのオールマイトの、力を奪ってまで、成り代わろうとした癖に……。
「くっそぉお……!」
なんてザマだと、緑谷は悔しさから歯を食い縛る。その時だったーー。
『お困りのようだね、少年』
インカムから、聞いた事のある事が緑谷の耳に入って来た。
『みーっけ!』
「……は?」
スケプティックの潜伏先のモニターに、ツインテールの物陰が映し出され、その様に彼は呆けた声が出た。こちらのPCに誰かが逆にハッキングをして来たのだ。
『やっと尻尾を出したわね!見つけるのに苦労したんだから!でもでも私、ちっとも苦じゃ無いの!だって……ジェントルの為だもの!』
スケプティックのPCが次々乗っ取られていく、さっきまで雄英の天空の棺、さらには避難システムまで掌握し停止まで追い込んだ筈が、次々と奪い返されて行く!スピーカーから聞こえた女性の声が、こちらを上回るハッキング速度を超えて来た!
「引きこもり時代を思い出すわ!練習でFGI社のサーバにお邪魔して関連広告全部GANRIKI⭐︎NEKOにしたっけ!長ったらしい関数に変数のスコープ!あの頃とコーディングの癖がちっとも変わってない!」
捜査本部のPCを操る少女が、雄英のシステムをハッキングしたスケプティックを逆に突き止めハッキング仕返していた。
次々とプログラムを組み替えていく彼女の名は……ラブラバ!
かつて、雄英の文化祭に突入しようとした迷惑動画投稿者であるヴィラン、ジェントル・クリミナルの協力者であった。
そんな彼女が、この決戦でスケプティックのハッキングに対抗する為に協力していたのだった!
『ーー〜〜き、貴様ぁぁーー!?あのせいでどれだけの損害額が出たと!!』
「それはごめんなさいよ」
うん、それは本当にごめんなさい。だから今回はとエンターを押してやれば、スピーカーの向こうでスケプティックは悲鳴をあげた。
『ヤメロォ!?ダパンプを踊らせるなぁ!!』
恐らくスケプティックのPCは今大惨事だろ、そして即座に通信を切った為逃げたなと、ラブラバは天空の棺のシステム修復に取り掛かった。今逃げたところで無駄だ、PCに侵入できた時点でスケプティックの潜伏先も既に特定し、近場のヒーローに連絡もしたので、捕まるのに1分も掛かりはしないだろう。
「塚内さん!雄英の高度、さらに低下!!陸地に向かってます!止まりません!!」
「相場!!早く何とかするんだ!!」
塚内から、焦りにより煽られた相場ことラブラバは、その頼みに笑いながら答える。
「さっきの衝撃でシステム諸々崩壊してんの!残存部だけで再浮上でさせられるよう、今プログラムを新しく組んでんの!間に合わなーーい!!」
華奢な指からは想像できないスピードのタイピングで、プログラムを次々組み直してなお時間がないと言うラブラバ、その癖楽しんでいるような笑顔に警官の一人が吐き散らす。
「やはり…間違いだったんじゃ……要の最終防衛ラインを服役中のヴィランに頼るだなんて!」
最後の砦をヴィランに任せたのが間違いだったんだと、心無い言葉を吐く警官に、塚内は呟く。
「……罪は罪、過去は消えない……だが……そこに何が在るか、だ……」
ヒーローとヴィラン……決して交わらぬ正反対。しかして違う……正義も悪も、時代で移ろうもので、表裏逆だ。
家族を助けたかった。
世界を良くしたかった。
ただ、見過ごせなかった。
その為に行動して、やがてどちらかを背負う事になる。賛辞される者、後ろ指を差される者……だがしかし、根本は変わらない。そう思い、行動する為に至った始まりの感情。
「頼んだぞ飛田」
英雄(友)の言葉を借りるならそれは。
『原点(オリジン)』と、呼ぶのであろう。
「頑張ってぇえーー!!ジェントルゥウウーー!!」
幾つものモニターの一つに、愛する男が海上にて弾む姿を見て、黄色い声援をラブラバは送った。
「何故……貴方が!」
獄中に居る筈の、かつて自首を促した敵が、通信に入って来た事に緑谷は驚き声が出た。その声に応えるように、通信が返ってきた。
『何を言うかと思えば……キミが手を差し伸べてくれたからだろう、私を信じてね……その信頼に……報いる為だ!』
その返答と共に……衝突音がインカムから響き、ガクンと天空の棺が揺れた。降下するはずの天空の棺が、その動きを止めて何が起こったのかと、ジェントル・クリミナルが何をしたのかと驚愕する。
『助かったーー!?何…?空気がトランポリンみたいに……』
全容を知る事ができたのは、マンダレイのテレパスからだった。
ジェントル・クリミナル……個性は『弾性』
触れた無機物に『弾性』を持たせて弾ませるようにする。それは、空気にすら及ぶ。かつて相対して、使わせる事なく捕まえたから知らなかった緑谷は、ジェントルがここまで……校舎一つにくり抜いた地面ごと弾ませる強い個性を持っていたのかと驚く。
だが、それだけでは無い。
彼の相棒、いや恋人ラブラバの『個性』あってこそだった。
『愛』
一日一回だけ、自身が愛したただ一人に愛を告げる事により、その力を短時間増大させる!!その愛の力が、ジェントル・クリミナルの個性を強大にしたのだ!
これで、天空の棺の『落下』は防げた……が!しかし!!
『小僧まずい!!死柄木が動き始めた!!』
死柄木がいつの間にか、生えてきた頭を押さえ込み手を地面に触れようとしていた。やらせるかと立とうとしたが、まだ激痛が身体に走り力が入らず、緑谷はその手を阻む事がーー。
できなかった、だが……死柄木の地面に触れようとした右手が、弾け飛んだ。
「!?」
一瞬、たった一瞬の事、緑谷出久は確かに見た。
ピンクとダークブルーの弾丸が、彼方先へ飛んで行ったのを。死柄木の手首を撃ち抜いたその弾丸は……あまりに遠い遥か先……セントラル病院から、この天空の棺の死柄木の手首を正確に撃ち抜いたのだ。
「ンンンナァアガァアアンンンン!!!」
そこに居るのかレディナガン?
右手が駄目ならば、左手でと死柄木が左手を振り上げれば、その手すらも弾丸に撃ち抜かれ弾け飛んだ。
そのたった数秒……たった数秒間が……緑谷出久の肉体に力を呼び戻した。差し伸べたその手からずり落ちる事もあった、拾えず、溢したと思った。
紡いだ縁は、今ここに更なる希望を紡いだ!!
立ち上がった緑谷は、瞳を赤く光らせて地面を駆け抜けて、死柄木の胴体にタックルしながら、天空の棺から共に落下した。
「少年!?」
「イズク!!」
ジェントルと、ミリオ先輩の声が聞こえた。インカムだったか実際の声だったのか、OFAは聴覚すら強化するのかは知らないがとにかく聞こえた。
今、死柄木は抹消から解き放たれ崩壊が使える。それなら天空の棺で戦う事はできない、だからこそ緑谷出久は、天空の棺から離れた。
降下した自らを引き寄せで吊り上げ、落下速度を殺して着地する緑谷に、死柄木は自らの足で衝撃を物ともせず着地した。
雨はいつの間にか豪雨となる中で、死柄木が、首から湧き出ていた頭部も消え去りこちらを見ていたので、緑谷は尋ねた。
「一つ聞く、キミは死柄木なの?AFOなの?どっち?」
この場で、何故そんな質問をしたのか緑谷も分からなかった。どの道倒さねばならない相手だろうに、聞いてどうする?どうしたいのかと思った。
「仮に……俺か先生か知って……何かしたいのか?緑谷出久?」
応える必要も無かろうに、律儀にこの男は答えた、知ってどうする緑谷出久と。
「またクソまずいチェーン店の、ラーメンでも並んで啜るか?辛いだけの高菜と油ぎった餃子もつけて?」
「覚えてるんだね?……もう一度……それができたらさぞ楽しかったよ」
まずいと言う割にはよく覚えてるなと、口元が緩んだ。気に入ってないか本当はと思う緑谷に、死柄木は言い放つ。
「無駄だ、お前はヒーロー、俺はお前のヴィランだ……既にあの場で道は交わらなくなったんだよ」
あの時、あのショッピングモールで、既に道は分たれた。
その口ぶりはまるで、もし違う場所で出会っていたら、互いに並んでたかもしれないと言いたげで……緑谷もそうかもしれないと実感する。
「そうだね……何か違えば、交わってたかも……そして、ここまで暴れたお前を、僕は許さない」
息を整え、拳を握りしめる。この手はもう解けない。
お前は敵で、僕はヒーロー。
例えその苦しみや悲しみ、有り様を理解をしても、手を差し伸べるにはあまりに遅すぎた。また違う世界があるならば、それでも放っておけない自分もいたかも知れない。
割り切れ緑谷出久、お前の目の前に居るのは。
『救いようの無い悪』なのだから。
「死柄木弔……お前を……ここで!終わらせる!!ここが貴様の墓場だ!!」
緑谷出久と死柄木弔、最後の戦いが始まった。