【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ーー群訝山荘跡地ーー
「僕をここまで追い詰めたーー」
大雨が降り頻る最中、ただ一人佇む人間は一人だけだった。プロヒーロー達は誰もが倒れ伏し、呻きを上げる者、気を失った者しか居ない。
常闇も、耳郎も倒れた。
それどころか……ギガントマキア拘束地点を担当していた、Mt.レディやミッドナイト……切島、峰田、心操も倒れ……ギガントマキアは身体を縦に切り裂かれ死んでいた。
佇むはーーただ一人。
AFOだけだった。
その姿は、かつての黄金期から若返り青年となりて、声色も若くなっていた。
事の顛末を語ろう。
『巻き戻し』の個性によりかつての黄金時代に若返ったAFOに、ホークス達が死柄木への合流を阻む為に応戦した。
荼毘を引き剥がす為、エンデヴァーは戦線離脱。ホークスは常闇と組み、AFOを阻む為に戦闘開始……。常闇は自身の個性であり半身『ダークシャドウ』を、完全に解放した最大出力必殺技『光明(バルドル)』でAFOと対峙した。
キメラトゥワイスも現れた中で、増援に士傑高校の学生達、夜嵐や肉倉に現見他士傑生も参戦、波状攻撃でAFOの防衛線突破を食い止めた。
それだけの戦力でも、黄金時代の悪は止まらなかった。
それどころか……事態は最悪になろうとすらしていたのだ。
ギガントマキア拘束地点にて、ギガントマキアが目覚めたのだ。ヴィラン勢力側が用意した高周波音波装置により、AFOの声を模した周波数を流してギガントマキアは目覚めた。
しかし、それを逆手に……見抜いていたとばかりに心操がAFOの声を『ペルソナコード』にて模倣、ギガントマキアを洗脳してそのまま拘束地点の勝負を決めて、群訝山荘まで増援に駆けつけた。
洗脳は効いていたのか?その問いには『No』と語らせていただこう。
ギガントマキアは怒り、悲しんでいた。AFOが迎えにきてくれると思っていた、唯一の主が助けに来てくれると、助けに来る事なく裏切られたと。
洗脳に抗ったのは緑谷含め二人目だと当時の事を心操は語った、だから怒りに相乗りする形で洗脳したのだと。
常闇の『光明』
Mt.レディ。
ギガントマキア。
士傑の増援。
それら全てを結集させた防衛線が……たった一人に全て崩壊したのだ。
黄金時代から、さらに若返ったAFOが放った個性の攻撃が全てを薙ぎ払い、かつての忠臣すら殺して、ただ一人その場に立ってみせた。
ボロボロになったホークスの首を掴み持ち上げて、その背後に倒れ気を失った、常闇を見やる。
「彼の個性を貰う、どけよ、もう十分頑張ったろホークス」
常闇の個性『黒影(ダークシャドウ)』は、その力とあり様から魅力的だった。常闇を守るために虫の息のホークスがまだ睨みつけてきた。
首を掴む手から、赤いエネルギーの流れがAFOへ流れていく……最早根本から数枚しか無いホークスの羽が、そのまま皮膚に吸い込まれる様に消え去るや、AFOの背中に生えてきた。
ホークスの個性『豪翼』が、AFOに奪われたのだった。
「因子が爛れている、ゴミクズ同然のコレでよく戦い抜いた」
「……ストック個性は……外部扱いで巻き戻しに作用されないのか……クソだな……」
人から奪った個性は、巻き戻しによって回復に至らないのかと、奪った個性の状態はそのまま反映される事にホークスは嘲笑を込めて呟いた。
返答はしなかった、どうにでもできる虫ケラにわざわざ答えてやる必要もない。しかし、この波状攻撃のダメージによって巻き戻しが進行している。更に早く、更に幼くなりつつある事に、時間が無いなと感じたAFOはさっさと常闇から『黒影』を奪おうとした。
そのAFOの足に、何かが引っ付いて、AFOはそちらを見た。震えながら、這い這いになるも睨むヒーローが一人いた。
「黒影なんか奪っても……中2の痛いヤツになるだけだぞ……」
誰だったか、雄英の学生ヒーローらしい。有象無象の一人が睨みながら、引き絞る様に声を上げる。
「奪るならオイラのモギモギ奪れやこら……最高の髪型になれるぞ!……常闇から……黒影奪るんじゃあねえよ……!」
取るに足らない弱者の咆哮……それがAFOを慄かせた訳などない、しかし今は……一分一秒が惜しい程に追い詰められたのが事実。自身が消え去る前に、弔と合流しなければならない。だから、AFOは『黒影』を奪う事を諦めて、空を見上げながら言った。
「見ろ、報道のヘリだ」
この戦いを報せる為に飛ばしているらしい、記者魂逞しいものだと空を浮遊してAFOは有象無象に、離したホークスに告げた。
「人々はこの光景を目にし…再び君らに失望するだろう……何も守れなかったな、ヒーロー」
AFOは飛翔する、勝利に向けて。
各地の戦線で、勝敗が決まりつつある。
この国の行く末もーーあと少しで決定する。
「被害状況不明!AFOまっすぐ東に進行中!まずいよ!」
「相場!!状況はどうなってる!?」
捜査本部は、群訝の戦線崩壊と雄英避難システムのハッキング対応に追われていた。雄英を取り返し、止まっていた避難システムを順次作動させていた相場、ラブラバに塚内が状況確認の檄を飛ばす。
「避難システムは取り返してる、動き出したブロックもあるでしょ?でも……中から止められてるブロックがある、止めているヤツが居る」
「17〜32ブロック通過再稼働確認!AFO伊銅市を通過!」
「まだ戦える者は!?」
内通者による避難妨害か、現場対応を命ずるしかない、現場式の塚内は次々来る報告と、AFOが死柄木に向かっている状況に、誰か戦えるヒーローは居ないかと叫ぶ。
「各方面に招集かけてます!奥渡島のヒーローが居ますが、間に合わない!!残りは満身創痍でーー」
緑谷のアクシデントから、奥渡島のヒーロー達がまだ十分戦えるが、AFOの下に行くまで間に合う筈も無く、他は最早戦う力も残っていないと報告が上がる中。
「うわぁああああ!?」
一人の警官が、叫びを上げた。
「次はなんだ!?」
何があったと、叫ぶ警官に塚内は尋ねた。尻餅をつくほどの事態があったのかと、その警官は戦況を映す画面の一つを指差して答えた。
「まずいです……熱が!群訝の!荼毘の……熱が!!」
「熱が何だ!?報告しろ!エンデヴァーがやられたのか!?」
荼毘にエンデヴァーが負けたのか?たずねる塚内に、警官がゆっくり答えた。
「いえ……まだ、でもそうなる解析結果が出ました……!荼毘は確保後から……うちにとどめ続けてるんです!圧縮して……熱エネルギーをとどめ続けてるんです!」
熱が圧縮されている?一瞬理解ができなかった塚内だったが、即座に気付いてまさかと画面に目を向けた。
「このままだと持って数十分か数分で……奴は、消滅します……そして圧力から解き放たれた熱エネルギーは……!直径5kmを灼き溶かす規模の、超高圧爆発を引き起こすーー!」
戦慄……塚内の身体をその二文字が強張らせた。復活した荼毘によって、そんな事態が今起こっていた事に。
AFOが死柄木へ向かい、荼毘は爆発寸前で、一体が消し飛ぼうとしている。
「連絡なさい!今すぐに!!被害予想範囲にまだ止められてる避難ブロックがある!!」
声が出せない……どうしたらいいのだ……塚内は身体が冷え切り喉も渇き始めながら、逆に汗ばかりが出てきて、ラブラバの大声すら聞き逃すほどだった。
「塚内さん!AFO更に加速!!間もなく推定泥ワープ圏内に入ります!!」
「増援は……」
「無理です!万全な者が居たとしても……間に合うヒーローなんて……」
死柄木の下に、AFOが辿り着いたら……今の緑谷出久でも敵うか分からない。群訝では、取り残された民間人が荼毘に焼き殺されそうになっている。
最早打つ手は無いのかと胸苦しさに吐き気が込み上げて来る最中ーー。
『塚内くん』
この場に居た筈の、ある一人の声が画面越しに響いた。
「轟くん、まだ燐の負荷が……」
「大丈夫だっつってんだろ……」
神野、オールマイト広場。轟焦凍は飯田天哉に肩を貸してもらいながらも、どうにか自分で歩くと肩から離れようとした。
倒した筈の荼毘が起き上がり、さらに黒霧のワープで群訝へ、エンデヴァーの下へ向かい、自身は取り残されてしまった。通信で聞いた、その群訝で今……荼毘による大爆発が起ころうとしている。
止めなければ、彼の弟として、早く行かなければと気持ちはあるが、決して間に合わない。それでも轟は、歩みを止めなかった。
「できる事を、やらなきゃ……」
思いだけが、轟を動かしている。その呟きに飯田も泣きそうになった。
「君が、どれほどの思いで立ち向かったか……どれだけくやしいか……優しい君が、なんでこんな思いをしなきゃいけない……」
家庭の事……荼毘という存在、エンデヴァーの所業……全てがまだ同じ年齢の彼にのし掛かり、責任を取らせようとしている。
もう十分だろう、関係もないだろう、これ以上轟焦凍(かれ)が背負う必要なんて何処にある?
それでも、彼は背負うのだろう。周りが大丈夫だ、キミは関係ない、まだ子どもなんだからと優しく声をかけても。優しい彼は、全てを背負う気でこの戦いに参加した。それがこんな結末でいいわけないだろと、悔しさが込み上げる。
『あーアー、ん!やっと繋がった!!』
そんな二人のインカムから、声が響いた。聞いただけで安心できる、そんな声が応答を確認する。
『二人とも!まだ無事だってな!?』
「オールマイト……!?」
オールマイトからの通信に轟が声を上げた。
『時間が惜しい、手短に伝えるね!キミ達は今すぐ群訝へ走れ!!』
そんなオールマイトから言い放たれる指令、いやお願いに飯田は目を丸くした。
『荼毘が爆発寸前、範囲内には避難ブロックが停止……現在エンデヴァーが荼毘を見ているが、彼の個性では爆発を止められないだろう……飯田少年、キミは走れる筈だ』
キミならば、荼毘の下まで走れるだろう。その頼みにしばらく黙る飯田を他所に通信は続く。
『轟少年!心と体は一元だ、悩み進んできたキミなら分かると思う』
「オールマイト、でも……AFOが……」
『大丈夫!強力な助っ人がまだ控えている!』
迫り来るAFOにも誰か行かねばならない、しかしその声は、本当に大丈夫で助っ人が居ると確信が持てる力強さがあった。
『迷いを抱いて戦ってもアレには勝てない、悩んで迷って…そんな少年が心に決めた想いこそ何よりも尊い……燈矢を止めて皆を安心させてくれ!キミがキミであるために……今、群訝の危機をどうにかできると可能性があるとすれば……"エンジン"と"半冷半燃"キミ達だけだ!頼んだぞ!!』
オールマイトの通信が終わって……轟は無茶なと少し文句を口走った。
「……走れって、飯田はエンストしたし、群訝までどんだけ距離があると思ってんだ……」
確かに飯田の個性があれば早く辿り着ける。しかし距離が無理でしかないと轟は、流石に無茶なとこぼす。その頬へ、強めに何かが押し付けられて、轟の口もとを覆い尽くした。
「雨で足の熱がいい具合だ、走れる……走れるよ轟くん……だって俺の脚はね」
飯田のヒーロースーツのヘルム、その顎や口元を守り走行中の酸素供給をする役目のフェイスガードだった。そのまま有無を言わさず、飯田は轟を背負った。
「迷子を導く為にあるんだから」
エンストしたエンジンが、飯田の脹脛のマフラーが唸りをあげ排気音を響かせた。
「しっかり捕まってろ……全速力だ!」
その一言を言った瞬間、即座に轟にGがかかり、手を離しそうになった。
飯田天哉は……走るどころか、そのエンジンの全速力で持って『空を駆けた』のだ。ビルの一部に激突しようと意を介さない程のスピードで、轟(迷子)を目的地まで運びにかかる。
そしてーー死柄木、緑谷戦闘地点の近く……。
「これでいいんだよ塚内くん、元々私の戦いだったんだから」
『馬鹿やろう!!?』
豪雨の中、一人立つオールマイトは、かつての友である塚内と通信を交わしていた。現役時代、度々世話になった彼が必死で止める為に叫んでいる。
肉眼でも、その姿を確認できた。群訝のヒーロー達によってダメージを負い、青年にまで巻き戻っている。ホークスからの戦闘戦闘記録によれば、AFOは若くなっていく度に個性の力は増していっている。
そして『負の感情』も増しているとの事だ。
「思い出すよなぁ、長く戦ってきた…」
雨に打たれるオールマイトは、スーツの内ポケットに手を入れた。
「死柄木弔の憎しみが、本体(お前)にまで影響を及ぼしてるって?」
胸ポケットから取り出した、棒状のそれを握りしめる。中心に黄色の輝きを放つ球体に、捻りのあるグリップ感がある意匠は、両端が青色で、赤いラインが入っていた。
「じゃあ無視はできないだろうなぁ?」
AFOも、視界にその姿を捉えて狂笑を浮かべた瞬間、オールマイトも同じように笑う。
「何てったって……」
中心の球体が輝きを放つ、背後にここまで自信を運んできた友からの贈り物である黒い車体が、電熱を帯びて銀と赤の色を浮かび上がらせ、カーナビの画面が点り文字が浮かび上がった!
Heracles Powered
Battle mode boot up
「私が!!来た!!」
その名乗りと共に、右手に握ったそれを掲げ上げるや、オールマイトは光に包まれた。