【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『個性』というものは……宿した肉体の成長と共に強くなっていく。
自発的に鍛えなくても、積み重ねた年齢と肉体の成長で自然にある程度までは強くなる。だが、その個性に『耐えうる肉体』というのは、訓練を積み重ねなければ得る事ができない。
時には使っただけで、肉体が追いつかず怪我をする事もある。個性事故というものだ……だから、時には両親や医療関係者の下、個性に適応する訓練を行わなければならない。
緑谷出久の個性『脊髄ぶっこ抜き』は、元々母から遺伝した『引き寄せ』に、AFO因子が作用し生まれた。
本来の彼の個性は、母の引き寄せが主で、脊髄ぶっこ抜きは副次的に生まれた物である。
雄英体育祭まで、緑谷出久はそれに気付かなかった。しかし、それだけではヒーローになれないと考えて試した結果、母と同じ個性も宿っている事に気づいた。
が、雄英に入学するまで『引き寄せ』をできないと思い込んでいた緑谷出久にとって、その個性は脳に負担が凄まじくかかる副作用が発生していた。
『生まれたての赤子がようやく立てた』
それ程までの、無経験故の副作用。
サポートアイテムありきでの使用から、林間合宿の修行、様々なヴィランとの戦い……インターンの中でエンデヴァーに課せられた、常日頃から個性を使い慣れて理解を深めるという積み重ね。
それが今……この土壇場で実った。
意識による個性の行使から……。
無意識下の個性操作。
それに耐えうる肉体への成長……。
蛇腔では膝を付いた限界を超え、更に向こうPlus Ultraの限界突破!!
「それでも、俺の命に届かない」
先程のカウンターの一撃を喰らった死柄木の顔面の皮膚が、鼻まで削げ落ちた顔がじわじわ再生していく……いや、成長して補っていくが正しいらしい。
「切り札を切るタイミングを間違えたな、あの高速移動、今も使わないのを見れば……使えないんだろ?」
指の鎧から、白き鎧を経て、人の形に還った死柄木。その背中よりミシミシと指が増殖していく。
「お前が強くなるたびに、俺はそれを超え最適解に成長をしていく……ああそういえば、お前もなんだっけ、先生から聞いたんだ」
指が、死柄木を包み込んでいく。伸びていく背中の指たちが、翼を象り……その肉体も、人から離れていく。
死の気配が、より一層拡がりを見せ……向かい合っていた緑谷の目線が、ゆっくり斜め上に登っていく。
「はっ……いよいよこんな形になるとは……ヴィランらしくなったか?」
その肉体は、より巨大に。そしてよりおぞましく……羽を生やし、口は割けて指が新たな人らしからぬ手を作り上げ爪を作り上げる。
あらゆる個性に適応した成長の果て……人から離れたそれはーー。
『怪獣』
「行き着いた先が……それなんだな、死柄木……」
ヒーローの敵。
全てを無慈悲に破壊して、希望を打ち砕く破壊の象徴。
狂気に堕ちた悪よりも。
暴力に酔いしれる悪よりも。
思想を説く悪よりも。
単純明快で、原始的な……行き着いた果て。ただひたすらに破壊して、希望の芽を摘む姿に、緑谷はそう呟いた。
目の前に居るのは、巨悪AFOの継承者なんて枠に収まる奴ではない。
ただひたすらに全てを破壊する、それを目的に暴れ続ける破壊の権化だ。
「なら、止めるよ……同じ悪から、生まれた縁だ!」
その破壊を止めるために、緑谷出久は宣告するや『個性』を使った。ーー瞬間。
『やめろ小僧!?自殺行為だ!!』
OFA二代目継承者、駆藤が静止をかけた!二度目の『駆動(アクセル)』を使おうとしていると。それ以外に、死柄木を倒す手立ては無いと。
ーーだが、違った。
『そっか、キミは兄さんと同じ……彼も……分かったよ、9代目』
『!?』
初代継承者、与一がそう言って姿を霧散させた。
『終わりが見えてきたな、負けるなよ小僧』
3代目継承者のブルースも、霧散していく。これは一体なんだと、継承者の意識が消えていく様に駆藤は何事だと驚愕した。
『長い旅だった、頼むぞ……』
『頑張れ!頑張って勝つさ!』
四ノ森が、万縄も霧散して、ようやく駆藤が気づく。霧散して消えたのでは無い、9代目の肉体に、より深く取り込まれているのだと。
『辛い事をさせるね、9代目……』
『ごめんね……』
揺蕩井、志村も、取り込まれて行き……そして、まだ存命の8代目……八木もまた緑谷出久に取り込まれた。
『小僧、お前一体ーー!?』
一体この継承者は、何をする気なのかとこの現象を起こした緑谷に、駆藤は尋ねたところで、その耳で聞いた。
「発勁プラス……危機探知プラス……黒鞭プラス……」
その言葉、行動に駆藤はそうかと理解した。9代目が、何をしようとしているのかを。それを理解した駆藤は笑みを浮かべた。それが苦笑か、はたまた歓喜かまでは分からない。だが、その最後の手段に賭けてみようじゃあないかと、駆藤も意識を手放して霧散した。
「煙幕プラス、浮遊プラス!変身プラス!!変速プラス!!…………脊髄……ぶっこ抜き!!!」
歴代のOFAと、目覚めたAFOの力が……今、緑谷出久の中で混ざり合った。
「うぁあぁああああああああああーーーーーー!!!」
「!?」
咆哮を上げた緑谷の肉体から、炉心融解の如く光が漏れ出た。皮膚が引き裂け、筋繊維が飛び出し、その膨張にヒーロースーツが破けさる。
膨張して断裂する筋肉を硬質化した銀色の皮膚が鎧となり抑え込む。それでも、露出した筋繊維が見え隠れするーー。
「お互い様だな……同じ化け物になったか、緑谷」
銀色の『怪人』となった緑谷に、死柄木が嘲笑う。しかし緑谷は言い返した。
「失礼な、ちゃんと人の形をした……ヒーローだよ、俺は」
互いに言葉を交わした数瞬ーー両者は遥か空へと飛翔した。