【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
空を舞う怪獣と、銀の怪人。幾度とぶつかり合い、交差する中で……銀の怪人となった緑谷の拳が、蹴りが、怪獣となった死柄木を叩きのめす。
しかし、死柄木もまた、異形の腕を伸ばして緑谷に振るい、腕を弾けば……緑谷の銀の甲殻のような表皮がぼろぼろと脆く崩壊していき、剥がれ落ちれば新たな甲殻が再生して現れた。
『でぇえやぁあ!!』
返す一撃と、前腕のヒーロースーツの一部だったアームブレードが肉体と同化した刃が振るわれ、死柄木の腕を切り落とした。しかし、腕は断面から即座に生え変わり新たな腕を形していく。
互いに、同じ場所まで辿り着いた。
『純粋培養(マスターピース)』と
『野生(ワイルドピース)』
増大する個性『特異点』に対して、成長し進化して意のままに操る進化の果てが、同じ場所でありながら、その姿のなんと対照的な事か……。
ガパァ!と口を開いた死柄木の喉奥から、光が溢れ出したのを見て、緑谷も即座に右腕を構えて前腕の甲殻から噴射口を形成する。
緑谷の背後にある、墜落する天空の棺目掛け放たれる、個性を混ぜ合わせ作り上げたビームに、緑谷の変異個性のバーニアによって放たれた収束レーザーがぶつかり合う。
『あぁぉあ!!』
『せぇえあ!!』
この戦いの映像が、まさか雄英高校経営科によって、撮影されている事を緑谷は知らない。ましてや、撮影をしている経営科生徒も……そとで特撮ヒーローじみたビームの撃ち合いをしているなんて信じられなかった。
だが、その戦いも……もう直ぐ終わる。
「おい、あれ!!」
「うわぁああああ!!」
悲鳴が、緑谷の耳に入った。
遥か遠くだ、背後の天空の棺から……離れているのに聞こえるのは、肉体がそこまで強く進化したからなのか?そんな事を探る時間すらなく、悲鳴の理由を緑谷は目撃した。
死柄木の背後、その先に……居たのだ。
オールマイトが、小柄な子どもに片足を吊り上げられてボロボロになって晒されているのを。
『オールマイトを助けなきゃなぁ!?それとも見捨てるか、緑谷出久!!』
表情すら変えれない異形の顔を読み取ったのか、ビームの出力の揺らぎか……はたまた、同じAFO因子のつながりか、緑谷出久の揺らぎと理由を察した死柄木が、嬉々として言い放つ。
『行ってこいよ!ヒーロー!!その間に、さっき俺を痛めつけた連中も、雄英も!全部壊しといてやるからさ!』
ビームが押し切られそうになる、刹那の思考……。
AFOを引き寄せて諸共倒す?無理だ、二人が混ざった時点で敗北だ。
助けに行く?だめだ、ヒーロー達を、クラスメイトを、見捨てるなんてできない。
オールマイトを……見捨てる?
見捨てれば……まだ、勝てるかもしれない。それが最善手だと、突きつけられる。
けれど……かつての平和の象徴の死は……世界に『絶望』を散らす。
それだけは駄目だ、けれどどうしたらいいと緑谷は歯を食いしばった。
憧れのヒーローで。
決して辿り着けない輝き。
手を差し出してくれた、二度も自分を引き摺り出してくれた恩師の死を、緑谷出久は受け止める事はできない。
嫌だ、誰か……オールマイトを!助けてくれ!!
ギリギリまで頑張って。
ギリギリまで踏ん張って。
このピンチの連続、最早誰もが満身創痍な戦場に。
緑谷は背後の天空の棺から、気配を感じた。
見てはいない、そんな余裕など無い。腐れ縁という縁か、幼馴染の繋がりか……そこに彼は居て、立ち上がって来たと緑谷は見ずとも分かった。
空いた左手を、背後にかざし……そして緑谷は皮膚が固まって塞がった口をこじ開けて叫んだ。
『Get!Over!Here(来てくれ!かっちゃん!!)!!』
左手に掛かる抵抗、そして視界の外からーー射出されたように放たれたボロボロの身体。しかし、その身体から無数の煌めきが、包み込みーー。
「勝つぞ!!」
確かに、そう聞こえた。
凄まじい……今の緑谷出久ですら追いつけないかもしれないスピードで、体を引き裂かれそうになったオールマイトを、爆豪勝己がAFOから奪還したのだった。
『お前、こっちに来るつもりだったじゃろ?』
意識と無意識、生と死の狭間……そんな世界をオールマイトは確かに見た。小さくない、かつて自信を鍛えてくれた若き頃のグラントリノが、腕を組み漂うオールマイトを、いや……八木俊典を見つめていた。
『……その覚悟を持って、戦いました』
かつてのサー・ナイトアイの予言が、まだ残っているならば、ここが死に場所だろうとその気で戦った。差し違えてでもと、その気で。
『弟子を送り出さずに死んでいいと教えたか?あの鼻垂れ泣き虫、お前が死んだら次はもう戻って来れんぞ』
鼻垂れ泣き虫……緑谷少年の事だろう。短い期間でも、師弟として戦い方を教えてもらって、蛇腔で死んだ時は悲しんで壊れかけるくらいに、彼はグラントリノを敬愛していたから。
『死んだワシがほざくなと言いたいが……お前が引き上げたんだ、最後までしっかり見てやれ俊典』
分かってる、これはあくまで幻影だ、死の間際に私が作り出して、都合よく言わせているだけの。
その幻影に、言わせるくらい……死んではならないと、思い願っていたのだろう。
「っで!だっ!?」
衝撃に景色が二転三転する、うつ伏せになったオールマイトは、痛みとかすれる景色の中で、目の前に立つ背中を見た。
「爆豪……少年……!大丈夫か!?」
「こっちのセリフじゃ!ヨボヨボのジジイがよ…ボッ!?」
身体中は傷だらけでヒーロースーツは焼けこげている、そんな爆豪がビクンと震えるや、ゴポリと口から血を吐き出した。
「こっちの……台詞でも……あるんだがヨボボボーボボーボボッ!?」
血を吐き続ける爆豪に、自身の大怪我の心配より勝ると声をかけようとしたオールマイト。しかし、爆豪の胸板から何か……ハリガネムシのような、蠢く糸じみたものが出て来たのを見て、それが何かと気付く。
「エッジショット!?」
「中に溜まった血を吐かせた…少しは楽に…なったか……?」
体内で、蘇生活動と治療を行っていたエッジショットが、最早頼りない糸の一つとなり、地面に落ちる。息も絶え絶えながら、爆豪に施した治療を簡潔に説明を始めた。
「各臓器、折れた骨…俺の体で……秘伝袴田流もやい結びを施した故、まず綻ぶ事は無い……!だが、一息が地獄の痛みの筈だ、動いていい……身体じゃない……!」
死柄木に破壊された肉体は、自身の個性をで紡いだ糸により縫合した。心臓の穴も、臓器の損傷も、骨も……その代価とエッジショットは、肉体が戻らないまま糸の体で語る。
確かめるように、手やら動かして浅く息をする爆豪は、微笑と共にエッジショットに言った。
「わーってる……生かしてくれて、ありがとう、先輩」
「……俺は、繋いだだけだ、目覚めさせたのは……お前が磨いて来た個性(ちから)だ」
あくまで自分は、命を繋いだだけ、目覚めたのは自身の意志と力だったと語るエッジショット。爆豪は話を聞いて、浮かんだままの輝く少年AFOを見上げ……。
「つーか、状況的にAFOだと思ったら!なんだあの光るチビ!!ぶっ飛ばす」
「AFOだよ少年」
起きたばかりで状況を理解してなかったらしい、あの光る子どもがAFOなんだよ、信じられないがとオールマイトが簡単に説明した。
「……手を」
「!」
オールマイトが言う、手をこちらにと。死柄木に砕かれな右腕を、爆豪は倒れ伏すオールマイトに差し出した。
「もう、機能は失っているが、添木くらいにはなる」
左腕に、微かに残った装甲が、オールマイトの手を生き物のように蠢き、砕けた爆豪の右腕に纏わりつき固定する。
「大・爆・殺・神……ダイナマイト」
本来であれば、彼の個性を模した機構が備わっていたが、AFOに砕かれ失った。だが、爆豪の右腕を固定する事はできようと、託された装甲を見て、爆豪は晴れやかに笑った。
AFOは爆豪とオールマイトが何やら動いているのを見たが、そちらよりも今はと、死柄木と緑谷の方に行くべきだと振り返った。
ようやく、ここまで来た。後は死柄木の心を乗っ取り、自分自身の個性を与え、そして緑谷出久のOFAを奪えば、全て完遂する。
泥ワープの範囲内に既に入っていたが、死柄木は結局従わなかった。だから、自身が近づかなければならない。
ああしかし、本当に腸が煮えくり返る。何事も思い通りにならず歯車が狂うと、苛立つAFOは、なぜこうもと考えた。
数多の有象無象が、こうも足を引っ張り邪魔をする。いい加減諦めろと、死柄木の下に向かうAFOだったが……その視界が微かに隠れた。
「俺がラスボスだぁ!AFO!!」
凄まじい爆破が、AFOの体を包み込む。その眩い閃光の中、爆豪の顔を見たAFOは……思い出した。
その眼差し……始まりは、あの時だった。弟を奪って行った、あの男から全てが始まったのだと。
「あいつに拭えねーもんは!こっちで拭うってなぁあああ!!!」