【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
爆豪の一撃が、AFOの渾身を止めた。煙の中、崩壊した肉体が朽ちていく様を爆豪は地面に踏ん張って立ち、息を切らして見つめる。
その土煙から、這い出して来た……『光る赤子』が居た。
「まだ……消えねーのかよ……」
最後の最後踏みとどまったかと爆豪は、支えるのもやっとな足で這うAFOらしき赤子を見て……。
「がぼっ!?」
血を吐き出した。
その身体は最早、寒気にさらされ痛みを呼び起こす。限界を超えた先の警鐘、流石にもう倒れて休めと肉体が、脳が意識の幕を下そうとしていた。
「あぁあああ!(どけ!)」
鳴き声が聞こえた、這ってまだ向かおうとしているのかと爆豪は、帳が降りそうになる中、流石に大丈夫だろうと膝をーー。
『倒れねーってのはクソ強ェだろ』
いつだったか、自分が言った言葉が、頭に浮かんで。爆豪の足は踏み込まれ体を持ち上げた。
「っぶねぇ……完全に勝たねーとなぁ!?」
自分が掲げた信念を、曲げるところだったと爆豪は笑った。憧れがそうだったように、それに習い、成し遂げろと自らに言い聞かせ爆豪は膝を折らなかった!
「ホギャア(来るな)!」
赤子になったAFOの口から、螺旋の杭が飛び出して爆豪の頭部に向かう。ぶつかった感触がAFOに伝わったが……。
「オネンネの時間だAFO」
杭は、歯に噛み締められ封じられ、そして爆破された。
それを皮切りに……鳴き声か悲鳴か、どちらともわからない声をあげて、AFOがみるみる小さくなっていく。
「あん?」
その体から……幾つもの光が、まるで花火のように空へ打ち上がり……彼方此方へと散っていく。
そして、赤子から胎児へ……胎児から有精卵と巻き戻って……AFOは消滅した。
文句無しの勝利、爆豪は左拳を握った。しかし、身体は限界を迎えて力を失い、乾笑いしながら倒れる。
勝ったのに、せっかくだから、オールマイトのスタンディングをしようとしたけど、無理かと仰向けに倒れながら、爆豪はもう声も出せないと笑いながら心の中で言った。
出久、頑張れよ
幼馴染へ、同じヒーローへ憧れた男への激励を込めて、爆豪は左手を掲げた。
『……先生が死んだな』
死柄木のテレパスを聞いた緑谷、そして自身も、死柄木がそう呟く前にAFOが死んだのが『感覚』で分かった。
AFO因子を持っているからか、OFAの繋がりかは知らない。ただ、爆豪は勝った事だけは理解できた。
『これで邪魔者は居なくなった……全てを壊そう、思い通りに……緑谷出久、お前を壊してから!』
翼を広げ飛び込んで来る死柄木、緑谷はその突撃を上昇で回避して、バーニアを左右の前腕から展開して死柄木向けて振り抜いた。
バーニアの熱を利用した斬撃に翼が切り落とされたが、死柄木は即座に再生して勢いすら落とさず追従してくる。それを緑谷が逃げて距離を離し、間合いを保つ。
互いの性能を比べれば、死柄木の方に軍配は上がるらしい。いいようにやられてるなと、空を舞いながら緑谷は考える。
逃げてどうする、緑谷出久。
今更怖くなったかと自問した、ちょっと前なら……簡単に踏み込めた『死の間合い』が、今になって踏み込めないでいる。
ステインも。
I・アイランドのテロリストも。
マスキュラーも。
オーバーホールも。
ナインも。
フレクト・ターンも。
ダークマイトも。
踏み込んで行けたはずが、死柄木に何故と考える。今更になって、命が惜しくなったのかと……。
そして、気付かされた。
その通り、だった。
今になって、この場で……死を目前にしただけではない。
今まで……一人だったから、だから死んでも誰も悲しんだりしないと、だから緑谷出久は踏み込めていた。
けど……雄英に入ってから、色々な繋がりができたのだ。
気を許せる友人達。
愛してくれる恋人。
指導をしてくれる先生。
頼れる先輩。
そんな繋がりが、緑谷の背中を引いていた。
『死んでもいいよ別に』なんて、思っていた自分が『死にたくない』と思うようになっていた。
繋がりが……緑谷出久に死の恐怖を与えた。
「逃げてばかりじゃないか!怖気付いたか緑谷ぁ!!」
ああ、だからこそかと、迫り来る死柄木の手をーー体を捻り、掻い潜り。
「だからこそ……!!」
振り抜いた右腕がーー死柄木の胴体を思い切り貫いた。
「ぶはぁあーー!?」
「本当に、強くなれた!!」
体表を、臓腑を、掻い潜って!!見つける!!直に!!その感触に緑谷は叫んだ!!
「おぁあぁああああああああああああああ!!!」
「がぁああ!?ごあ、うぁあ!!」
その手から引き摺り出される、白き棒状の物体は……脊髄!!その脊髄が、腹を引き裂きながら引き摺り出されていく!
「や、やめろぉおおおお!!」
死柄木の両腕が、緑谷の両肩を掴み翼で包み込み、引き剥がすまいと捕まえる!両肩から広がっていく、崩壊のひび割れが、装甲を砕いて筋繊維を露出し、引きちぎれ始めた。
砕け散るか、脊髄を引き抜くか、落下しながら行われるせめぎ合いの最中ーー緑谷出久の意識は、暗闇に堕ちていった。
『うわぁああ!?』
どさりと、緑谷出久はどこかに落下した。即座に立ち上がり、体勢を立て直し構えたが……静寂だけが辺りに漂っていた。
死柄木は、皆は?まさか……死んだか、自分はと空白の世界を見回すなか、自身の服装もヒーロースーツから雄英高校制服に変わっていたのに気付く。
そして……。
『何だ、ここ……家?』
いつの間にか、見た事ない一軒家が目の前に佇んでいて……ふと表札に目が行った。
『志村……?』
ローマ字で、そう刻まれていた。7代目継承者、オールマイトの師、志村菜奈と同じであった。
死柄木弔も、元々は『志村転弧』と本名があった事を思い出す。
『ここは、多分……あの子の深層意識だよ……』
背後から声がかかる、志村菜奈がこの現象と今居る場所を説明した。蛇腔の時と同じ、精神世界、意識の繋がりの世界と聞いて……緑谷は、踏み込もうと門を押し開いた。
『知ってどうする』
門を隔てた先に、黒いモヤが現れる。自分自身を模るような姿の靄が、尋ねた。
『過去を暴いて何が変わる』
その通りだ、人様の過去に踏み入るなんて、ましてや目の前に居るのは、敵だ。
『だったら、何でここに引き入れた、招待しといて……追い返すなよ』
その幻影に吐き散らした緑谷は、門を思い切り蹴飛ばした。鉄門が吹き飛び、からんからんと音を立てる。
『邪魔するよ』
幻影を気にもせず、そのまま入っていく。その上空からーー何かが殺意を持って降りて来たが、緑谷はそのまま首辺りを引っ掴み、脊髄ごとぶっこ抜いてやった。
『そこをどけ!!』
見れば……ステインの生首だった、それが知らない鼻やらが尖った顔に、たしかリ・デストロ?だったか、さらにオーバーホールへと変わったが、そのまま投げ捨て玄関口に来たので、ドアノブを捻って開けた。
展示された一枚絵が、その行手を阻む。志村菜奈と、だれか子供が笑い合って抱きしめられていた。
『ひみつだよ、この人おばあちゃんなんだって』
どこからか声が聞こえ、手をかざすと透過して中に入れた。だから緑谷は、そこに踏み入れば……大人が、子どもを叩いていた。
『あれはおばあちゃんじゃない、子どもを捨てた鬼畜だ』
黒い影の子供を、大人が叩いて、そう言い放っていた。
つまりは、あの黒い影が……過去の死柄木かと、緑谷はずんずんと近づいたが、途中で何かに阻まれーー。
『邪魔するな!!』
阻む何かすら、無理矢理に引き裂いてーー。
『な、何だねきみはーー』
『黙れ!!この、虐待毒親がぁあああ!!』
『ごぶふぅおぁあああ!?』
『弧太朗ぉおおおーー!?』
大人の男を、思い切りぶん殴ってやった。顎がひしゃげ囲いに叩きつけられ、囲いが崩落した。菜奈さんが絶叫したが知った事か、尋常じゃないし、いくらでも後で説教だろうが取り調べだろうが受けてやると、黒い子どもの影に緑谷は手を伸ばしてーー空を切った。
『僕もうやだよ……モンちゃん』
いつの間にか、夜になっていて……黒い影だった子どもがその姿を現し、泣きながらコーギーに縋って抱きしめていた。
そのコーギー、モンちゃんに……ひび割れが入り、モンちゃんはバラバラになった。
ここは、この場面はつまり、死柄木の『原点』かと、気付いた緑谷の身体もまた、幼児にまで戻っていた。
『転弧、あのね、あのねーー』
その声に振り返る、家の方からまた違う少女が近づいて来て、モンちゃんのバラバラしたいを見て悲鳴をあげた。
『いやぁーー!』
そして、死柄木……いや、志村転弧は縋るように、助けを求めるように手を伸ばしながら少女に向かった。
自身の発現した個性が、人を殺すーー。その光景はまるで……緑谷出久の経験した昔の、自身の事と同じで……緑谷は小さな体で即座に二人の間に入り込み、転弧の手首を引っ掴んだ。
『何で……』
『何でもクソもあるかぁ!泣いてんだろうが!!』
志村転弧の始まりは、あまりにも残酷だった。この全てを破壊する個性が、家族を殺してしまった。あまりにも恐ろしい、その個性は……緑谷出久も同じであった。
違いはある、親がヒーローを否定した転弧。否定しなかった出久……。
AFOに手を差し伸べられた転弧と、オールマイトに引き上げられた出久。
ふと思う。
何かが違ったら、どこかで違っていたら。自分達は逆だったかもしれないと。
理解を得られずに、悪に堕ちて共に並ぶ死柄木と緑谷。
手を引いた相手が変わり、ヒーローとなった転弧と、悪の権化となった緑谷。
『手を離せ……』
離せと転弧が言い放つ、放っておいてくれと。しかし……緑谷は舌打ちをしながら死柄木の、いや、志村転弧の足を払い襟首を引っ掴んだ。
『やなこった……予定変更だ、泣いてる子どもをヒーローが、見捨てられるか……イーヴルヒーローはな、たとえ自殺願望持ってようが!襟首掴んで無理矢理にでも!引っ張って助けるくらい傲慢なんだ!』
ぶっ倒すと決めた、その覚悟もあった。
だが、その深層心理の奥底で最大の敵は泣いていた。
あの時誰かが、手を差し伸べなかったから、こんな事になった。
今更何をと、誰もが言うだろう。覚悟はどうしたと指差す奴も居るだろう。
けれど、泣いてるんだ、この子は。
法のしがらみも、民衆の意見も知った事か。
それを悪と呼ばれようが、泣いてる子や、助けを求める人が居るならば、全て投げ打って助ける。
それが『ヒーロー』なんだと、教わったから、緑谷出久は決して志村転弧の手を離さなかった。