※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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367話 ヒーローは多少、傲慢でお節介である

 爆豪の一撃が、AFOの渾身を止めた。煙の中、崩壊した肉体が朽ちていく様を爆豪は地面に踏ん張って立ち、息を切らして見つめる。

 

 その土煙から、這い出して来た……『光る赤子』が居た。

 

「まだ……消えねーのかよ……」

 

 最後の最後踏みとどまったかと爆豪は、支えるのもやっとな足で這うAFOらしき赤子を見て……。

 

「がぼっ!?」

 

 血を吐き出した。

 

 その身体は最早、寒気にさらされ痛みを呼び起こす。限界を超えた先の警鐘、流石にもう倒れて休めと肉体が、脳が意識の幕を下そうとしていた。

 

「あぁあああ!(どけ!)」

 

 鳴き声が聞こえた、這ってまだ向かおうとしているのかと爆豪は、帳が降りそうになる中、流石に大丈夫だろうと膝をーー。

 

『倒れねーってのはクソ強ェだろ』

 

 いつだったか、自分が言った言葉が、頭に浮かんで。爆豪の足は踏み込まれ体を持ち上げた。

 

「っぶねぇ……完全に勝たねーとなぁ!?」

 

 自分が掲げた信念を、曲げるところだったと爆豪は笑った。憧れがそうだったように、それに習い、成し遂げろと自らに言い聞かせ爆豪は膝を折らなかった!

 

「ホギャア(来るな)!」

 

 赤子になったAFOの口から、螺旋の杭が飛び出して爆豪の頭部に向かう。ぶつかった感触がAFOに伝わったが……。

 

「オネンネの時間だAFO」

 

 杭は、歯に噛み締められ封じられ、そして爆破された。

 

 それを皮切りに……鳴き声か悲鳴か、どちらともわからない声をあげて、AFOがみるみる小さくなっていく。

 

「あん?」

 

 その体から……幾つもの光が、まるで花火のように空へ打ち上がり……彼方此方へと散っていく。

 

 そして、赤子から胎児へ……胎児から有精卵と巻き戻って……AFOは消滅した。

 

 文句無しの勝利、爆豪は左拳を握った。しかし、身体は限界を迎えて力を失い、乾笑いしながら倒れる。

 

 勝ったのに、せっかくだから、オールマイトのスタンディングをしようとしたけど、無理かと仰向けに倒れながら、爆豪はもう声も出せないと笑いながら心の中で言った。

 

 出久、頑張れよ

 

 幼馴染へ、同じヒーローへ憧れた男への激励を込めて、爆豪は左手を掲げた。

 

 

 

『……先生が死んだな』

 

 死柄木のテレパスを聞いた緑谷、そして自身も、死柄木がそう呟く前にAFOが死んだのが『感覚』で分かった。

 

 AFO因子を持っているからか、OFAの繋がりかは知らない。ただ、爆豪は勝った事だけは理解できた。

 

『これで邪魔者は居なくなった……全てを壊そう、思い通りに……緑谷出久、お前を壊してから!』

 

 翼を広げ飛び込んで来る死柄木、緑谷はその突撃を上昇で回避して、バーニアを左右の前腕から展開して死柄木向けて振り抜いた。

 

 バーニアの熱を利用した斬撃に翼が切り落とされたが、死柄木は即座に再生して勢いすら落とさず追従してくる。それを緑谷が逃げて距離を離し、間合いを保つ。

 

 互いの性能を比べれば、死柄木の方に軍配は上がるらしい。いいようにやられてるなと、空を舞いながら緑谷は考える。

 

 逃げてどうする、緑谷出久。

 

 今更怖くなったかと自問した、ちょっと前なら……簡単に踏み込めた『死の間合い』が、今になって踏み込めないでいる。

 

 ステインも。

 I・アイランドのテロリストも。

 マスキュラーも。

 オーバーホールも。

 ナインも。

 フレクト・ターンも。

 ダークマイトも。

 

 踏み込んで行けたはずが、死柄木に何故と考える。今更になって、命が惜しくなったのかと……。

 

 そして、気付かされた。

 

 その通り、だった。

 

 今になって、この場で……死を目前にしただけではない。

 

 今まで……一人だったから、だから死んでも誰も悲しんだりしないと、だから緑谷出久は踏み込めていた。

 

 けど……雄英に入ってから、色々な繋がりができたのだ。

 

 気を許せる友人達。

 愛してくれる恋人。

 指導をしてくれる先生。

 頼れる先輩。

 

 そんな繋がりが、緑谷の背中を引いていた。

 

『死んでもいいよ別に』なんて、思っていた自分が『死にたくない』と思うようになっていた。

 

 繋がりが……緑谷出久に死の恐怖を与えた。

 

「逃げてばかりじゃないか!怖気付いたか緑谷ぁ!!」

 

 ああ、だからこそかと、迫り来る死柄木の手をーー体を捻り、掻い潜り。

 

「だからこそ……!!」

 

 振り抜いた右腕がーー死柄木の胴体を思い切り貫いた。

 

「ぶはぁあーー!?」

「本当に、強くなれた!!」

 

 体表を、臓腑を、掻い潜って!!見つける!!直に!!その感触に緑谷は叫んだ!!

 

「おぁあぁああああああああああああああ!!!」

「がぁああ!?ごあ、うぁあ!!」

 

 その手から引き摺り出される、白き棒状の物体は……脊髄!!その脊髄が、腹を引き裂きながら引き摺り出されていく!

 

「や、やめろぉおおおお!!」

 

 死柄木の両腕が、緑谷の両肩を掴み翼で包み込み、引き剥がすまいと捕まえる!両肩から広がっていく、崩壊のひび割れが、装甲を砕いて筋繊維を露出し、引きちぎれ始めた。

 

 砕け散るか、脊髄を引き抜くか、落下しながら行われるせめぎ合いの最中ーー緑谷出久の意識は、暗闇に堕ちていった。

 

 

 

『うわぁああ!?』

 

 どさりと、緑谷出久はどこかに落下した。即座に立ち上がり、体勢を立て直し構えたが……静寂だけが辺りに漂っていた。

 

 死柄木は、皆は?まさか……死んだか、自分はと空白の世界を見回すなか、自身の服装もヒーロースーツから雄英高校制服に変わっていたのに気付く。

 

 そして……。

 

『何だ、ここ……家?』

 

 いつの間にか、見た事ない一軒家が目の前に佇んでいて……ふと表札に目が行った。

 

『志村……?』

 

 ローマ字で、そう刻まれていた。7代目継承者、オールマイトの師、志村菜奈と同じであった。

 

 死柄木弔も、元々は『志村転弧』と本名があった事を思い出す。

 

『ここは、多分……あの子の深層意識だよ……』

 

 背後から声がかかる、志村菜奈がこの現象と今居る場所を説明した。蛇腔の時と同じ、精神世界、意識の繋がりの世界と聞いて……緑谷は、踏み込もうと門を押し開いた。

 

『知ってどうする』

 

 門を隔てた先に、黒いモヤが現れる。自分自身を模るような姿の靄が、尋ねた。

 

『過去を暴いて何が変わる』

 

 その通りだ、人様の過去に踏み入るなんて、ましてや目の前に居るのは、敵だ。

 

『だったら、何でここに引き入れた、招待しといて……追い返すなよ』

 

 その幻影に吐き散らした緑谷は、門を思い切り蹴飛ばした。鉄門が吹き飛び、からんからんと音を立てる。

 

『邪魔するよ』

 

 幻影を気にもせず、そのまま入っていく。その上空からーー何かが殺意を持って降りて来たが、緑谷はそのまま首辺りを引っ掴み、脊髄ごとぶっこ抜いてやった。

 

『そこをどけ!!』

 

 見れば……ステインの生首だった、それが知らない鼻やらが尖った顔に、たしかリ・デストロ?だったか、さらにオーバーホールへと変わったが、そのまま投げ捨て玄関口に来たので、ドアノブを捻って開けた。

 

 展示された一枚絵が、その行手を阻む。志村菜奈と、だれか子供が笑い合って抱きしめられていた。

 

『ひみつだよ、この人おばあちゃんなんだって』

 

 どこからか声が聞こえ、手をかざすと透過して中に入れた。だから緑谷は、そこに踏み入れば……大人が、子どもを叩いていた。

 

『あれはおばあちゃんじゃない、子どもを捨てた鬼畜だ』

 

 黒い影の子供を、大人が叩いて、そう言い放っていた。

 

 つまりは、あの黒い影が……過去の死柄木かと、緑谷はずんずんと近づいたが、途中で何かに阻まれーー。

 

『邪魔するな!!』

 

 阻む何かすら、無理矢理に引き裂いてーー。

 

『な、何だねきみはーー』

『黙れ!!この、虐待毒親がぁあああ!!』

『ごぶふぅおぁあああ!?』

『弧太朗ぉおおおーー!?』

 

 大人の男を、思い切りぶん殴ってやった。顎がひしゃげ囲いに叩きつけられ、囲いが崩落した。菜奈さんが絶叫したが知った事か、尋常じゃないし、いくらでも後で説教だろうが取り調べだろうが受けてやると、黒い子どもの影に緑谷は手を伸ばしてーー空を切った。

 

『僕もうやだよ……モンちゃん』

 

 いつの間にか、夜になっていて……黒い影だった子どもがその姿を現し、泣きながらコーギーに縋って抱きしめていた。

 

 そのコーギー、モンちゃんに……ひび割れが入り、モンちゃんはバラバラになった。

 

 ここは、この場面はつまり、死柄木の『原点』かと、気付いた緑谷の身体もまた、幼児にまで戻っていた。

 

『転弧、あのね、あのねーー』

 

 その声に振り返る、家の方からまた違う少女が近づいて来て、モンちゃんのバラバラしたいを見て悲鳴をあげた。

 

『いやぁーー!』

 

 そして、死柄木……いや、志村転弧は縋るように、助けを求めるように手を伸ばしながら少女に向かった。

 

 自身の発現した個性が、人を殺すーー。その光景はまるで……緑谷出久の経験した昔の、自身の事と同じで……緑谷は小さな体で即座に二人の間に入り込み、転弧の手首を引っ掴んだ。

 

『何で……』

『何でもクソもあるかぁ!泣いてんだろうが!!』

 

 志村転弧の始まりは、あまりにも残酷だった。この全てを破壊する個性が、家族を殺してしまった。あまりにも恐ろしい、その個性は……緑谷出久も同じであった。

 

 違いはある、親がヒーローを否定した転弧。否定しなかった出久……。

 

 AFOに手を差し伸べられた転弧と、オールマイトに引き上げられた出久。

 

 ふと思う。

 

 何かが違ったら、どこかで違っていたら。自分達は逆だったかもしれないと。

 

 理解を得られずに、悪に堕ちて共に並ぶ死柄木と緑谷。

 

 手を引いた相手が変わり、ヒーローとなった転弧と、悪の権化となった緑谷。

 

『手を離せ……』

 

 離せと転弧が言い放つ、放っておいてくれと。しかし……緑谷は舌打ちをしながら死柄木の、いや、志村転弧の足を払い襟首を引っ掴んだ。

 

『やなこった……予定変更だ、泣いてる子どもをヒーローが、見捨てられるか……イーヴルヒーローはな、たとえ自殺願望持ってようが!襟首掴んで無理矢理にでも!引っ張って助けるくらい傲慢なんだ!』

 

 ぶっ倒すと決めた、その覚悟もあった。

 

 だが、その深層心理の奥底で最大の敵は泣いていた。

 

 あの時誰かが、手を差し伸べなかったから、こんな事になった。

 

 今更何をと、誰もが言うだろう。覚悟はどうしたと指差す奴も居るだろう。

 

 けれど、泣いてるんだ、この子は。

 

 法のしがらみも、民衆の意見も知った事か。

 

 それを悪と呼ばれようが、泣いてる子や、助けを求める人が居るならば、全て投げ打って助ける。

 

 それが『ヒーロー』なんだと、教わったから、緑谷出久は決して志村転弧の手を離さなかった。

 

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