【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
また、場面が変わる。
どこかの公園だ、見知らぬ公園だ。
緑谷出久にとって、公園はあまり遊ばなかった場所だ。
というより、仲間外れにされた。個性のせいで……。
いや違う、自分が皆を怖がらせたのがいけないんだと、個性が現れた時に揶揄われて、全員の脊髄ぶっこ抜いてやった事を思い出す、自業自得この上ないなと自嘲した。
ふと、目の前に……おかっぱ頭と鼻が大きな子、そして……転弧が居た。
『じゃあ、転ちゃんがオールマイトね!』
死柄木……いや、転弧には友達が居たんだな、少し羨ましいと緑谷は、遠くから見ていた。ふと、転弧がこちらに気付いて、とたとたと走って来た。
『どこのこ?みてるならいっしょにあそぼ!』
遊びに誘われて、手を差し出された。緑谷は……その手をかまわず握りしめた。
『なまえ、なんていうの?』
『いずく、みどりやいずく』
『じゃあ、いっくんだね!ぼく、てんこ!しむらてんこ!』
引き連れられて、四人で、遊んだ。こうして遊んだ事なんて無いから、初めてだったから、嫌われたくなくてわがまま言わない事にした。
『じゃあヴィランやくやるよ、ぼく』
『いっくんってへんなの、ふつうヒーローやりたがらない?』
『だってヒーローやく……みんなやりたがるし、ヴィランいなきゃヒーローごっこできないよ』
『あ、じゃあぼくもヴィランやる!にたいにでさ、そのあとこうたいしようよ!』
『そうしよう!』
転ちゃんの友達、みっくんとともちゃん、交代してヒーローごっこ。しばらく遊んで、夕方が来て……別れの時は、来た。
「どこかで会えたらさ……俺ら、友達になれたかもな」
死柄木が、その体を崩させながら膝をついてそう呟いた。緑谷も膝を屈めて目線を合わせ、しっかり顔を見ながら答えた。
「そうだね弔……いや、転弧……もっと早く会ってたら、一緒に雄英で……」
もう少し早く会えていたら、その手を掴んでこっちに引き寄せて一緒に歩んで行けたかもと、緑谷の言葉に転弧は鼻で笑った。
「あり得ねえよばぁか……お前のがこっち来てんのが似合う……お前と一緒なら、あいつらの……敵(ヴィラン)の、ヒーローに……」
ヒーローなんてごめんだ、ごめんだが……一緒にお前がこっちに来ていたら、また違ったかもしれない。炙れた者達の為に、声無き声の為に、共に並んでいたかもしれない……。
語り合う最中、二人の頭の中に映像が流れ込んだ。
『志村さん』
『ああ、甲賀建設のーー』
なんだ、この記憶は。
目の前に映る男は、先程緑谷が殴り飛ばした……志村弧太朗。志村転弧の父親だった、彼が誰かと話していた。最近腰痛がひどいんですと、いい医者がいるよと世間話をして……二人は小洒落たバーで酒を酌み交わす。
『そうですね、手は掛かりますが……』
『個性はもう?』
『それがまだ……』
この声は……聞き覚えがある、その男が……ワイングラスを手に取った瞬間ーー。
地面が割れた。浮遊感を覚える最中、下に視線を向けた緑谷が見たのはーー。
巨大な、AFOの顔面だった。
『ああ……愚かな器!失敗作に敗北し、心を捩じ伏せられるとは!』
巨大なAFOの口が、ばかりと開き、志村転弧はその中に落ちていくーー緑谷はとっさに手を伸ばすも、歯が閉じられ緑谷の体も地面無き暗闇に落ちていく。
『弱いまま強くあろうなどああ愚かな志村転弧……お前は今まで、何一つ選んでなどないのに』
巨大なAFOが、転弧を喰らいその姿を現すや落下してゆく緑谷出久を見下ろしながら声を発した。
『緑谷出久!僕のOFAを……与一をよくも……だが、無意識領域……転弧の心が押し負けたおかげで、再び意識を取り戻す事が出来た!』
AFOは死んでなかった、いや、そもそもの話だ……その目で見たから分かっていた、緑谷は。
転弧の体を奪う為に、個性因子にAFOが宿っているのを。まさかこの間隙を待っていたのかと、ただ見ることしか緑谷には出来なかった。
『愚かな志村転弧、無垢なる超自我……薄鈍の人生と永訣できぬ弱き者!折角導いてやったというのに!』
『……先生が、何を言ってるのかわからない』
無意識領域故か、AFOの因子の繋がりか、AFOに食われ消えかかる転弧の呟きが、緑谷にも聞こえた。
『言ったろう、君は何一つ選んでいない』
『選んだ……これは……僕の選択だ』
先生の手を取ったのも、世界を壊そうとしたのも、全部僕が選択した。その筈だと転弧は言い返す。
『そう思わせなければ"意志力“は生じない、自由意志を逆向けにする事が肝要だった』
AFOが、何かを仕組んでいた、その話を緑谷にもまるで聴かせるように、AFOは語り出す。
『“ラリアット"万縄大悟郎、"ガエン"揺蕩井煙……二度の接触で確信した、OFA奪還には"意志力"で上回らねばならぬ事……オールマイトに追い詰められ行く中探したのさ、いつか、奴の"意志力"を削ぎうる魂……そして最も強気感情、イドを抑圧する事で生じる機能……原始の欲求"憎しみ"を醸成する苗床を」
空に、映像が浮かび上がる。
また、志村弧太朗との会話だった。
『それを迷う事は無いでしょう、このご時世ヒーローは本当に助けてほしいときに助けてくれませんから、助けあえるきょうだいは必要ですよ』
AFOが、弧太朗を諭していた。恐らく家族計画の事、それ程までにAFOは志村弧太朗と仲を築いていた。
『長女は育ちすぎていたし、絶対に見つかってはいけない、目立つ行動は取れなかった……僕は後押しするだけだった……』
やがて場面は変わり、赤子の……転弧の頭をAFOが撫でている場面が次々切り変わる。愚痴をこぼす弧太朗、それだけじゃ無い……二人の友人、みっくんとともちゃんすらも、AFOが仲良くしてやるようにと、頼んでいた。
『両親から授かった、まだ見ぬ因子を抜き取り、抑圧を増進させ、憧憬を与えた……そして、頃合いを見て』
項垂れる転弧に、知り合いの老紳士を装い送迎を兼ねて手を繋いで、光が、転弧の手に送られた。
『ドクターの施設にあった個性から、可逆性を取り払い、破滅にのみ進む粗悪な複製品を……君に!与えた!』
『……じゃあ……!』
そうだ、志村転弧。いや『死柄木弔』全て、僕が与えたのだ。
この世に生まれたのも、悲劇も、試練も、否定も、肯定も!
『僕が与えた!全部だ!何が"遷ろわない"だ!?恥を知れ!!』
その全て、今までの人生の何もかも初めから!僕のためにお前は生まれ、育てられてここに居るんだと、事実を突きつけたAFOが叫んだ。
「僕の体から消えろ!!」
「オールフォォオワァアアアアン!!お前ぇぇええ!!」
精神世界より押し出された緑谷の叫びが響き渡り、やがて景色は暗闇から、雨空の町に緑谷は投げ出された。