【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
投げ出された緑谷は、二転三転してようやく止まりうつ伏せとなって倒れ伏した。
「…………もう与一は居ない、僕の中期目標は絶たれた」
顔を持ち上げ、達は……死柄木弔ではなかった。意思を奪い、肉体を奪ったAFOが虚しい事この上無しと無気力に言葉を紡ぐ。
「弔の叫び、余韻か……黙っていろ」
自らの口を、死柄木弔がしていたように、手首で塞いだ。死柄木弔の、完成した肉体に……AFOの意識が宿る。即ちそれは、目的を達した事となるのかと、緑谷は歯を食いしばる。
「死んだか、なら……虚しき最終目標に移行する……即ち世界へ……」
「させてたまるかよーー!?」
手を地面について、立ちあがろうとした緑谷。しかし、支えが効かずに……ようやく気付く。
肩から……両腕が喪失していた。
最後の接触、脊髄をぶっこ抜こうとした時、死柄木に両肩を触られていた事を思い出す。まるで、モータルコンバットの映画でサブ=ゼロに腕を凍結され、砕かれたジャックスのように自身がなっていた。
「お互い肉体に出たな」
「五月蝿い!!」
見下ろすAFOに緑谷は転がって仰向けになり、身体を縮めて、肉体のバネだけで器用に起き上がって立ち上がる。
「まだ足が残ってる!!口も!!蹴り殺せるし噛み殺せる!!まだ戦えるぞ!!AFO!!」
腕がなくなったからなんだ、蹴れるし噛みつけるぞと、怒りの形相で睨みつける緑谷にAFOは目を細めた。
「人は失う事で強くなり……その物語性を確立していくんだ……で、失敗作……足も失ってまだそう言えるかな?」
手をかざし、攻撃が始まろうとして、両腕を失ったバランスの違いに一歩踏み出せず緑谷は、無様に倒れーー。
死柄木の身体は、白い帯状の何かが巻き付いて攻撃が止まった。その姿を倒れ伏しながら、緑谷は驚き口を開けた。
「緑谷ぁ!助けに来たぞ!!」
拘束されたAFOに、また二つ影が現れた。そしてーー。
「シュガーナックル!!」
「尾空旋舞!!」
二つの必殺技に、AFOが吹き飛ばされた。何故ここにと、緑谷は驚くしかなかった。
「瀬呂くん……尾白くん!砂藤くん!!みんな……無事……」
戦況はどうなったかまで随時聞いてなかったから、無事でここに来た事に驚く緑谷。その緑谷の後ろから、足音と声が響いた。
「緑谷……待たせてごめんな……」
黒い渦の中より、相澤先生が壊れた義足のままで、謝りながら現れーーそれに続いて、幾つものワープゲートが、この場所に現れ始めた。
「先生……」
「腕失って……どれくらいだ?」
「わかりません……けど、腕が無かろうが僕は……」
「相変わらずお前はそんな事……」
憔悴する緑谷だが、眼差しは怒りと悲しみに満ち溢れ折れる事は無いとわかる。林間合宿での腕が折れながら戦おうとしていた事を思い出させられ、呆れながらも……相澤は何やら破片を取り出し緑谷の肩に触れさせた。
「エリちゃんがな、お前にって……またお歌ききたいし、一緒に歌いたいって……ギター弾けないまま会うことは許さんぞ」
エリちゃんが、生えていたツノ。つまりは『巻き戻し』の力が溜まった証、その破片は小さく、巻き戻ることすらわからなかったが……ズタズタの腕が再び緑谷の肩に生えてきて、それを見た緑谷は握りしめ動きを確かめ立ち上がった。
「皆もきっと、オイラと一緒だよな……もう動けねーって思ってても、緑谷が頑張ってっとよぉ……身体、動いちまうんだよなぁ!!」
背後から、声を聞いて振り返る。
ワープゲートから次々と、出てくる、皆ががーー雄英高校ヒーロー科、一年A組が!
それだけじゃない!一年B組も、雄英高校教師たちも!プロヒーローも……ヒーローを辞めた筈の元ヒーロー達も!全ての戦える者達が、この場に集まった!!
「おまえらもかよ」
「そっちもな……」
「警察が、まだ戦えるものはって……」
そんな満身創痍でよくきたなと、無理に笑う切島に障子と口田が言葉を返した。
「相澤先生が黒霧を味方につけたって言って……」
「友達がまだ戦ってんの見て……」
「行かずにいられましょうか……」
一人緑谷だけに任せられるものかと、芦戸が、上鳴が、八百万が頷く。
「意識があるうちはどこだって」
「助けを求めるなら、どこへでも」
蛙吹に麗日も、余力万全と意気込み。
「勝つためにここまでやってきたもんね」
何のために凍えきたのかとわかりきった理由を耳郎は言い放つ。
「今日踏ん張れなきゃ……何の為にヒーロー夢見たかわかりゃしねぇ!だからよ〜〜〜!」
「みんな……!」
立つのもやっとな峰田がふらつきながらも歯を食いしばり、声を上げる。
オイラ達が、来た!
全てのヒーローが、今戦える全ての者達が、巨悪AFOとの戦いに、最終決戦を迎えようとしている。
立たないと、膝を屈したらダメだと、力を込めて立とうとしたが、身体は疲労と外傷に緑谷は力が入らなかった。
「戻ったのは数分だ、腕を失う少し前だ……継戦のダメージは残っている、息を整えて機をーー」
肩を支える相澤が、少し休んで力を取り戻せという最中、ふと足に何かが触れて相澤は下を見た。
「緑谷、足元のそれは?」
「えーー?」
足元に、瓦礫や石飛礫とは明らかに違う白い、握り拳に収まる塊があった。奇妙な形のそれを拾い上げ、どこか見たようなと……しばらく見て。
緑谷は目を見開いた。
ああまさか、これはとAFOを見てから、その塊を見て理解する。
これは……死柄木の、志村転弧の脊髄、その一部!『椎骨』であると。あの時、ぶっこ抜こうとして阻まれた、しかし一部が手に残ってここにあるのかと。
もしも、今死柄木が、志村が……力を貸してくれるのかと自分が問いかけたら、否定するだろうなと緑谷は歯を食いしばる。その為じゃない、勘違いすんなと。
「ああ、そうだよな、浮かばれないよな転弧……あんなに好き勝手されたんだから」
全部全部、人生全て、AFOにむちゃくちゃにされて奪われた。何もできず、残せず、依代になるためだけに生かされて育てられた死柄木に、緑谷は椎骨を握りしめながら言う。
「行こう転弧、いや……弔、一緒にぶっ倒そう、あのクソ野郎を……叩き潰す!!」
敵討ちだの弔い合戦だの言わない、一緒にぶっ倒そう、ぶちのめしてやろう。抜けた力を怒りが動かし、瞳を赤く激らせ緑谷は叫んだ。
「脊 随 着 装 !!」
死柄木弔の椎骨が、緑谷出久の右手を覆うように変形し、纏わりつく。
武器とも呼べぬ、しかし残され、託された意思が……模る形は拳の形となって、緑谷の右手をしっかり固めた。
「崩壊拳……転弧」
必ず叩き込んでやる、そう決めて……ヒーロー達の一人として緑谷は立ち上がった。
「灰色の肉が並んでいる……」
対するAFOは、肉体こそ手に入れはしたが、目的のOFAは既に緑谷出久が取り込み、弟の与一の意思も緑谷と溶け合い融合した喪失感から、世界から色を消されたようだと語った。本来なら打ち砕かれて消えたはずが、意識が生き延び死柄木より肉体を奪えた理由は、そうかと理解する。
「執心を失い、故に、喪失の穴に通る攻撃は無く、僕はとどめを免れた」
今なら分かる、緑谷出久。その肉体が、様々な個性で持って変異、変化して適応し、異形に変わりゆく。個性を武器としたあまりにもグロテスクな姿で、緑谷へAFOは問いかけた。
「悲劇こそが、人を強くする……そう思わないか?」
僕は弟を奪われて失い、たどり着いた。キミもまた、様々な別れ喪失の果てにそこに立つのだろうと理解したかのようにAFOが騙る。
「どうだろうね」
答えたのは、緑谷ではなく瀬呂だった。
「あんたらみたいに起伏に富んだ人生じゃねぇから、明日の実技に置いてかれねーよーにとか……そういう事でしか、俺は頑張って来なかったな……それに……」
あんたがどんな人生を送ったかは知らない、ここまでぬくぬく暮らして生きてきて、ひたすら授業に食らいつくしかなかったから分からないと、瀬呂は走り出しながら続けた。
「今日まで大変そうだったよ、かつてガンギマリだった彼は!」
瀬呂の突撃と同時に、AFOの左右斜め上にワープゲートが展開された!そこから現れたのは、エンデヴァーと轟焦凍!
「悲しいことなんざ!あるより無い方がいいだろ!」
親子による赫灼熱拳が、AFOに叩き込まれた。しかしAFOは即座に上空へ飛ぶや、瀬呂はテープを肘から飛ばしエンデヴァーと焦凍を回収した。
「戦えるやつ、召集完了」
そして、最後のワープゲートから……プレゼント・マイクが現れて、その大声でヒーロー達に号令をかける!
「ガイズ!!今日が分水嶺だ!!行こう!!最後の大仕事だ!!」
AFOに向けて、今居る全てのヒーロー達が、最後の力を振り絞り突貫する。
「手負のヒーロー……これだけの数がいて何も感じないのは……寂しいものだな、オールマイトには届き得ぬ屑肉だ」
所詮はオールマイトに並べぬ有象無象だと、腕を向け何やら放とうとしたAFOだったがーーそれは何かに引き寄せられ阻まれた!
横に回り込んだ13号の『ブラックホール』と、タカカズの『バキューム』が、攻撃を逸らし、そこにギャング=オルカの『シャチ』の個性による音波攻撃が畳み掛ける!
「掃き掃除だ」
鬱陶しいと、触手が幾つも蠢き、集るヒーローを薙ぎ払いにかかる!
「逸らせえ!!」
バーニン達が、その薙ぎ払いを数人かかりで逸らして事なきを得たが、それでも余波の凄まじさがAFOの攻撃力を物語った。
「速ぇ……!一つの挙動に数十人で対処しなきゃ戦いにならねぇ!」
「みんな離れないで!一かたまりになって戦おう!」
誰が驚き、号令を出しているのか、緑谷にはわからなかった。しかし、行かねばと足は動く中で、また力が抜けそうになるも、その手首を掴み支える者が居た。
「走ろう⭐︎」
「青山くん……」
「僕らはキミの力が必要だし、キミも僕らの力が必要だ」
青山が、引っ張り上げて立たせてくれた。その手の力に応えるように、息を大きく吸い込み、足に力を入れて緑谷は駆け出した。
同時に、青山はAFOの触手に巻き込まれた。
「青山くん!」
「走れ緑谷くん!⭐︎」
振り返るな行けと、青山の笑顔と言葉に、緑谷は走り出す。飛び交う触腕や炎にレーザー、積み上げ奪ってきた個性の無差別砲撃を、ヒーロー達が防ぎ、逸らす中を、緑谷は走り抜ける。
「道を作れ!死柄木に至る道を!」
相澤が声を張り上げた、死柄木へ、AFOへの道を作れ、緑谷を向かわせろと。ヒーロー達が一丸となって、緑谷の道を作り出す。
それを阻むように、レーザーが緑谷の目の前に飛来した。
「光線の類なら、私ぃ!」
「葉隠さん!」
その軌道を、葉隠自らが体を盾にして、透明の個性の性質により逸らして、間隙を突く!
「電磁投射砲用意!」
「ウェイ」
八百万が『創造』で作り出し上鳴の『放電』により発射されて、AFOを迎撃する!
「小賢しい」
砲撃は片手に霧散し、AFOの攻撃はより激しく、ヒーロー達を打ちのめす!
「これ以上、皆をーー」
向かってくる触腕だけでも砕けば少しはと拳を握った緑谷。だが、その前に瀬呂が、砂藤が、尾白がーーB組の回原、宍田、塩崎が触腕を防ぎ切る!
「全身ズタボロだろ!温存しろ!」
「あいつに届く力はお前だけだ!俺たちが禦ぐ!」
「行け!」
立ち止まった緑谷の身体に、ピンク色と肌色が巻き付いて引っ張られた。蛙吹、障子が遅れを取り戻そうと舌と多節腕を伸ばしたのだ。
「俺たちの機動力じゃこの猛攻を掻い潜るのは難しいが!」
「少しだけあなたを、運ぶくらいなら!」
「蛙吹さん!障子くん!」
そのまま奥へ、AFOの下へ一気に近づいたが、着地を狩るかのようにまた一つ薙ぎ払う触腕が放たれる!
「「「根 性!!!」」」
放たれた一撃は、切島、芦戸、ファットガムが自ら盾となり防ぎ切る!
「頑張れ!!」
「頑張ろう!!」
切島と芦戸に激励を受けて、さらに体の力が蘇り、緑谷は声を張り上げた。
「っしゃあああ!!」
駆け抜ける、瓦礫を、破片すらも、攻撃も。身体に染みついた動きをこなして、AFOの下に!そしてーー。
「イズクくん!!」
麗日が、走る緑谷に手を伸ばして、意図を理解した緑谷がその手にハイタッチした瞬間ーー体の重量が消えてーーその身体に鞭が巻き付いた。
「飛ばすわよ!!」
傷だらけのミッドナイトの鞭により、上空に投げ出された緑谷が、AFOへ一直線に向かうのを見て、麗日は指を組み叫んだ。
「解除ぉ!!」
勢いがついたまま、個性の触腕で本体を高く掲げていたAFOの下へ!死柄木弔の力を重ね、緑谷出久はAFOへ拳を振り下ろした!
「ぐおあ……ああ……!」
死柄木の個性を帯びた拳、それを受けたAFOの肉体に、亀裂が走る。
だがーー。
「失敗作共が!届かないと言ったろう!?」
「くっ!?」
亀裂が、みるみる塞がれていくーー死柄木の『崩壊』を跳ね返す再生力が、まだこのAFOにはあるのかと、届かなかった一撃に、緑谷は歯噛みした。
『オールマイトじゃないくせに、なにやってんだよ……』
「!?」
『1発で倒せないなら、100でも、1000でも叩き込めよ、俺にやったみたいに』
幻聴にしては、あまりに鮮明な声が響き渡る。死柄木弔の声に、緑谷ははっとした。
そうだったよと。
僕は、オールマイトじゃない。
オールマイトなんかになれやしない。
その強靭なる『力』に迫るために。
『技』を磨いてきたんだろ、緑谷出久!!
「全力!!」
二撃目が、新たな亀裂を作り出す!
「全開!!!」
三撃、四撃目が、さらに亀裂を広げていく!
「ひっさぁあああああつ!!!!」
ありったけを、全てを拳に込めて、叩き込む!!その必殺技の名前は!!
「バイオレントォオオオオオ!!ラァあぁああああアッシュァアアアアアアアア!!」
「ぬぐぁあぁはぁあああああああああ!!?」
AFOの身体に多々囲まれる、暴の雨が、死柄木の崩壊と重なり、亀裂を広げていく!!断末魔を上げながら、AFOの肉体はーー繋めを解くかのように崩壊を始めた。