【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
スピナーとの面会を終えてから、緑谷出久は雄英高校へ登校した。これで、一先ずは区切りがついたし、覚悟も決めたと教室へ歩き出す。
去年あたりのこの時期は『どんなヒーローになるか?』と悩んでいたのが懐かしいなと、まだ一年前をなつかしむ。ミッドナイト先生に相談して、グラントリノの下で励んだなと。
そういえば……グラントリノの墓参りに行けていなかった事を緑谷は思い出した。
「オールマイトに聞いとかないと……うん?」
花を買って、供えようそう決めて教室前の廊下にたどり着くと……騒がしさと、何やら数十人が屯していたのが見えた。
見かけない顔の学生達だった、頭の中の雄英高校生データには無い。つまり入学してきた新入生のヒーロー科かと、そのまま近づいてみれば、飯田が何やら話していてその背後に轟と爆豪が隠れていた。
「憧れるのはいいが彼らも人間だ、集団で追い回されたら驚いてしまうよ」
「一人一人なら話せるんだが……」
「廊下を走ってたぜ廊下をよぉ!委員長!!」
成る程、おっかけミーハーに追いかけられてたのかと、しゅんとする新一年生を諭す飯田が、緑谷の方に気付いて笑って声をかけた。
「緑谷くん!おはよう!用事は済んだのかい!」
「「「「え?」」」」
「うん?」
緑谷に挨拶をした飯田、そして新一年生が緑谷の方に振り返ってきて、緑谷もその反応に首を傾げーー。
「うわぁああああ!?緑谷先輩だぁあああ!!」
「総員整列ぅう!!背筋を伸ばせェェ!!」
1秒あったかなかったか、廊下の左右に新一年生がビシィイッ!!と整列して軍隊さながらの気をつけとなり道を開けた。
「えぇ……いや、何をそんなキミら……楽にしなよぉ」
「おう、ヴィラン恐怖の象徴、怖がられてんなぁ」
「笑わないでよかっちゃあん……」
緑谷出久、この一年の活躍により見事『怒らせたらクソ怖い先輩』枠に納まった模様。悲鳴が違うじゃんと気を落とす緑谷に爆豪がケタケタ笑って、項垂れながら緑谷は教室に入ったが、ま、なるわなと心操ほかクラスメイト達は頷いた。
なお緑谷出久は、この後『さらなる珍事』が全国に伝わり、一生その伝説を擦られつつさらなる恐怖を雄英どころか、全国に広めていく事になる事を知らない。
ーー8年後ーー
『デビュー以降、目覚ましい活躍を見せるテンタコル、僻地などで見られる形質的差別由来の事件に尽力し、平和的に解決してきたその功績と影響にたたえ、イマムラ平和賞が授与されました』
『続いてはチームアップニュース!インゲニウム、フロッピー、クリエティが全国の小学校を巡ってます、ウラビティの打ち出した個性カウンセリング拡張計画はーー』
『男性からの支持圧倒的!漢!烈怒頼雄斗の意外なオリジンに迫ります!』
超人社会が崩壊してから8年、日本はその傷をゆっくり癒していくように立ち直りつつあった。
今でもヒーローは8年前の決戦から変わらず、日本中を駆け回り助けを呼ぶ声あれば駆けつける。
ヴィラン犯罪は減少傾向にありながらも、エンターテイメントや、個性との向き合い方への為にヒーロー達が率先して活動していた。
『えー続きまして……因子怪人、因子怪獣情報です……神野にて怪人反応が見られたと、ヒーロー公安委員会から報告がありました』
だけど、平和になったのかと言われたら……まだまだ先の話になりそうだ。
『個性が唐突に変容した、個性が突然強力になった、そのような異変が起きましたらお早めにお近くの病院、保健機関への相談をーー』
ヒーロー達は、ヴィラン犯罪とはまた違う、新たな脅威の対応を求められていた。
『因子怪人、怪獣に遭遇しましたら、即座に避難するようお願いいたします』
テレビのニュースを見つめながら……少年は取調室にてひたすら待たされた。
彼の名前は……ダイとあだ名でクラスメイトから呼ばれていた。中学生で、今は受験を考える時期に来る中……彼は警察のお世話になっていた。
「どうしよう……こんな事になるなんて……」
自身も、事態が飲み込めないし、こんな事になるなんて思わなかった。
進路希望で、ヒーロー科を志望していた彼は、自身の個性が他と比べて強力じゃなかった為それを馬鹿にされて、衝突があった。
学生による個性を使った喧嘩、小競り合い。珍しくも無いが……それが大惨事を起こしてしまったのだ。
「僕の個性、円盤だったはずなのに……手首を切り落とすなんて……」
彼は、当初にある円の模様から、円盤を出すだけの個性であった。クラスメイトと喧嘩になり、相手も個性を使ってきて……それを仕返しになげたら……手首が切り落とされた。
警察も救急も出動する大騒ぎの果てに、ダイは現在勾留されていた。知らなかったのだ、自分の個性がこんなに強力になっていた事に。
だが、理由も理解している。
8年前から、世界中で現れた……個性因子の化け物『因子怪人』に『因子怪獣』だ。
かつて、イズク、大・爆・殺・神ダイナマイト、ショート……今の名だたるヒーロー達が若き学生の時代に打倒した『巨悪』AFO……彼が奪い、手に入れた因子達が世界中にばら撒かれ、その因子が普通の人間に取り憑くのだ。普通に生きている人々だけではない、死んだ人間……さらには因子自体が意思を持ち、暴れ始めたのだ。
だから、突如個性が強まった場合……AFO因子が取り憑いた可能性がありとなって、即座に保険機関やヒーロー公安委員会に連絡が必要となっていた。
多分、それだ、自分はと。どれだけの時間待っただろうか……面会室がノックされて扉が開く。
そこに立っていたのは……警官ではなかった。
「やぁ、初めまして……キミがダイくんだね」
ダイは唖然とした。
なんで、彼がここに居るのだと。
「え、あ……イズク!?イーヴル・ヒーロー!!」
「まぁ、楽にしなよ……」
イーヴル・ヒーローイズク。
『ヴィラン恐怖の象徴』『世界のヴィランが最も恐れるヒーロー』『情け無用の男』『首刈りイズク』『因子怪人第0号』『怪人、怪獣退治の専門家』
そんなヒーローが、何故ここにとなったダイは理解して……即座に頭を下げて言い放った。
「どうぞ、死ぬ覚悟はできてます」
「何故!?いやぁ……懐かしいな、昔の僕みたいだ」
「え?」
イズクに目をつけられたヴィランは、決して逃げられない。必ずその脊髄をぶっこ抜かれて退治されると、彼がプロヒーローになる前から誰もが知っていた。だから、ダイは死刑宣告と理解して首を差し出したのだ。
『悪い事したら、首を刈りにイズクが来るぞ』なんて、親に散々聞かされるくらいには。
そんなイズクが笑顔で、フランクに話をし始めて、懐かしむ様子にダイは目を疑った。彼は何やら資料を眺めつつ、対面の彼に語りかける。
「警察から話聞いてさ、怪人案件かと飛んできた……で、キミの情報とか集めて、最近発熱があったとか、何か問題起こしたとか調べたんだ……まぁ、よくあるよ、喧嘩でのやらかしって……安心しなよ、キミはただ個性が強くなっていたのを知らなかっただけ」
所謂、因子怪人案件と感じてわざわざ飛んで来たのだと、和かにそして安心して欲しいとダイに彼は語りかけた。しかし、ダイからすれば……怪我をさせてしまったクラスメイトが心配でしかたなかった。
「けど、僕はその……クラスメイトの手首を……わざとじゃなくてもそれは」
「あぁ、それ……」
事件の内容も、聞いているとイズクは別の資料に目を移して、ダイに経過を伝えた。
「不幸中の幸いってやつだね、一切後遺症なく繋がるらしいよ?キミのその円盤……凄いな、黒曜石の切れ味を持った頑丈な円刃とは、細胞を切り離す切れ味なんて個性でしか再現できないんじゃない?」
「……けど、こんな問題起こして……もうヒーローにはなれないですよね、僕」
今更になって、自分の個性が強くなっていた事実を知った。だけど、こんな大問題を起こした以上、ヒーローとしての道は閉ざされただろうと、ダイは自嘲する。
「何言ってるのやら……たった一回で?なるわけないでしょ?」
「え……」
そんな自嘲に、緑谷は呆れながら語りはじめた。
「まぁ確かに……個性使ったやらかしは看過できない、けど……キミはわざとでもないし、反省の意思を示している……たった一度やらかしてヒーローになれないなら、僕なんかヒーローになれてないぞ、今でもやらかしてるの知ってるだろ?」
「ま、まぁそれは……」
「誰しも失敗するし、やらかしはある……次はそうならない為に、個性を良く知って理解して、使い方を学んだ人間がヒーロー免許を取ってプロになる……」
イズクは立ち上がって、ダイの肩を叩いて告げた。
「大丈夫、僕が保証する、その反省の意思をしっかり相手に伝え、個性を理解し、熱意がまだ消えていないなら……キミは、ヒーローになれる」
かつて、オールマイトに手を引いてもらった時のように、沈みゆく少年の手を、緑谷は掴んで引き上げた。ダイはしばらく固まってから嗚咽を漏らして涙を流した。
「さて……じゃあ君の親御さんと、怪我させたクラスメイトに親御さん、先生としっかり話をして許してもらおう……大丈夫、訴訟とかなったら僕の専属弁護士を紹介するからさ」
かつて……平和の象徴として、人々に笑顔をと平和をもたらしたヒーローが居た。
オールマイトは、その笑顔と大きな背中で、平和の礎として今もなお語り継がれている。
彼が、次の世代へ託した火は……様々なヒーローに受け継がれている。
その中の一人、オールマイトが引退した後、ヴィラン再起の時代を壁となり食い止めたヒーローが居た。
オールマイトが、笑顔で民衆に平和をもたらしたならば。
彼はその力で持って、ヴィラン達に『恐怖』をもたらした。
そのヒーローは、オールマイトの宿敵が、戯れで産んだ化け物であったが。彼の手をオールマイトは引き寄せて、ヒーローの道に引き込んだ。
悪に生まれようと、その力を正しく使えば、生まれも関係なくヒーローになれると彼を諭した。
やがて、その化け物は、自らを産んだ宿敵を打ち倒し、意志を継いだ一人となった。
彼の名前は、緑谷出久。
またの名を。
『イーヴル・ヒーロー イズク』
今日も何処かで、ヴィラン達の絶叫が。
夜の街に響き渡る。
『Finish Him!!』
〜〜僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア〜〜
完
次回!!8年後の飲み会編!?
そして……オリジナルの2年生編、開幕!!