【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
救援物資の輸送とその護衛、それが緑谷達の仕事であった。桂駐屯地より京都の各地へヒーロー、自衛隊、そして警察の混成部隊が出発して、担当区域の避難所へ運び出す。
トラックの荷台から覗く京都の街は荒れ果てていた、しかし……言ってしまうのも駄目だが『戦地よりはマシ』と緑谷は思った。まだ現存する建物も家屋もあるし、何より普通に人が歩いている。少し前までは『超常黎明期のよう』と喩えた、OFA5代目の万縄大悟郎の言葉を思い出した。
「はーい次行きますよー!」
「あいよー!」
緑谷とプロヒーローのジュウモンジが救援物資を運んだのは、京都北区の小学校であった。避難所代わりの一つとして使われており、なかなかの人数がまだ家に帰れず、ここで避難生活をしていた。
「ほんま助かるわぁ、ありがとなジュウモンジさん」
「いえいえ、俺らヒーローとして当たり前やってますから、そうしないと信頼も取り戻せんからね」
若々しい笑顔を避難民に見せ、率先して次々物資を運ぶジュウモンジ。緑谷達もそれに続きいそいそと物資を運び、必要な量をアクシデントも無く運び終えた。
「怪我人とか病人は居ない?居たら運ぶけど、大丈夫?」
「ありがとうございます、今のところ大丈夫です」
「分かりました、それじゃあ何かあったら緊急ダイヤルで!」
救援物資を配達し、怪我人や病人が居れば即時移送。居なければ次の避難場所に物資を運び、尽きたら桂駐屯地へ戻って再度積み込んで次へ。この繰り返しだ、単純で気が滅入るが、むしろこれだけで済んで人的被害が出ない方が平和だろう。
「っし、じゃあ次行くぞ」
「「「「はい!」」」」
語らう暇があれば動いて、一般の市民への助けに迎え。まだまだ救援物資が足りない、届いてないと待つ人が居ると、急かすようなジュウモンジの号令に、緑谷達雄英組は動いた。
「次は老人ホームだな、そこでこの物資引き渡しして、一度駐屯地に戻って再度積み込んで次の場所に向かう……単純で退屈か?」
「いえ!そんな事は無いっす!!助けを求めてる人の為、何往復でも行きますよ!!」
「元気があるな、あの鉄火場で戦い抜いただけはあるよ」
「同じく!」
「私も!」
この後の物資の配達先を確認しながら、あの戦いを切り抜けたらこんな単純作業は退屈だろうと、ジュウモンジは笑いながら尋ねるも、切島が優劣は無い、ヒーローとしてこれも仕事のうちだと笑って右腕で力瘤を作ってアピールした。
続いてノリ良く芦戸が、葉隠も見えない身体でふんす!と力瘤を作っているらしい所作をしたので、緑谷も続いておいた。
「その意気だ、この単純作業が結構疲弊してしまう、特に表情ね?ヒーローが疲れた顔をしたら、それだけで民衆はーー」
元気があってよろしい、その表情が人を勇気付けるから笑顔は大切だというジュウモンジ。だがその時、トラックがゆっくりと動きを止めた。
「なんてこった、行き止まりになってる」
運転席の自衛隊員がそう溢した。緑谷達とジュウモンジは外に出れば、十字路になっていたが進んできた道以外の全てが、左右の倒壊した建物の瓦礫によって塞がっていたのだ。
「いつの間に……この通りが塞がれてるなんて連絡来てなかったのか?」
「来てないです、迂回しますか?」
倒壊して通行できないと連絡は来てないと、自衛隊とジュウモンジが確認を取る中、ここで一人、ならばと彼女が声を上げた。
「私が道、作りますよ!任せてください」
芦戸三奈、ヒーロー名『ピンキー』個性は『酸』身体から濃度及び溶解度を自由に変えれる酸を分泌、噴射できる彼女ならこのくらいとさっそく取り掛かった。
「アシッドショット!!」
目の前の瓦礫に噴射されて、溶かされていく瓦礫にこれなら回り道も必要ないなと自衛隊員は、おお!と唸りを上げた。しばらくしたら通れるだろうと芦戸の働きを見守る中、緑谷は……妙だなと首を傾げていた。
「こんな全ての道が、こうも塞がるものなの?」
「言われてみれば、こんな場所あったら普通連絡通ってるよな?」
自分達が通って来た道以外、全てこうも塞がれている。妙に綺麗というか、こんな場所すぐ連絡が来てもおかしくないと切島も首を傾げた。
その瞬間だった、背後の通りに面した家屋が爆破されたのだった。つまりは……緑谷達は十字路に閉じ込められてしまったのだった!
「罠か!!」
その爆破を合図としてか、十字路に面した廃墟からわらわらと現れる。服装こそジーンズやらサーフパンツ等違いがあるが、全員が黒の上下で統一し、黒の仮面や黒スカーフに黒マスクで顔を隠して身元を割れないようにして、鉄パイプや木刀、割れた瓶、素手の輩もちらほら見えた。
「痛い目見たくなけりゃ荷物置いてきな、ヒーロー?数見りゃ勝てねぇのわかんだろ?」
その集団を束ねる首魁か、B系ファッションの輩が鉄パイプをカラコロ鳴らして緑谷達に言い放った。カラーギャングからヴィランになった野盗集団が、緑谷達を取り囲んだのである。
「鴉天狗衆か、お前ら」
「鴉天狗衆?」
ジュウモンジが、この野盗連中のチーム名を知っているらしい。それくらい名が知れている奴らなのだろうかと、緑谷は尋ねる。
「強盗集団のヴィランだ、耄碌ジジイにやられてからいなくなったと思ったら、火事場泥棒で小銭稼ぐためにまた現れたマトモに生きれない、ヴィランとも呼べないチンピラだ」
中々辛辣に毒吐くなジュウモンジ、京都人らしからぬストレートな毒舌に、そもそもこの人京都出身じゃないのかもと苦笑する。そう毒吐けば、カルシウムが足りないらしい首魁のB系ファッションの輩が声を荒げた。
「イキってんじゃあねえぞ雑魚ヒーロー!!あのクソジジイが居なくなってからこの辺りにゃマトモなヒーローもいねぇ、ガキの前でカッコつけてんじゃあねぇぞ!」
その言葉に、切島も少しは退屈だったと拳を平手に打ち込み笑いながら体を硬化させながら売り言葉に買い言葉と言い返す。
「ガキかどうか、試してみるか!悪党ーー」
その買い言葉を返し、緑谷も指を小指から握りしめて拳を握った瞬間ーーまさかの事態が起こった。
「は?」
「え?」
その事態に緑谷、切島は呆けるしかなかった。
本来ならば、プロとして……サイドキックへ配属された学生達に指示を出すべきプロヒーロー、ジュウモンジが……。
「おらぁああああああーー!!」
いの一番に、その集団の中に飛び込んで跳躍しーー着地すら考えない勢いで、飛び込むような、さながらヤンキー映画のスローモーションのワンシーンの如く、首魁のB系ファッションチンピラの顔面を殴り抜いたのである。
「ぶぶげぁあ!!」
「「えぇえええーーーー!?」」
首魁のチンピラが殴り抜かれて背後の仲間達すら巻き込んで薙ぎ倒し、一撃で白目を剥いて倒れ、ジュウモンジは残りの輩に言い放った。
「雑魚かどうかぁ!!試してみろやぁチンピラ共がぁ!!魁ヒーロージュウモンジ舐めんじゃあねえぞコラァ!!」
その先制攻撃により、火蓋は切って落とされて鴉天狗衆なるチンピラ野盗が一気に襲いかかったのである!!
「やれやぁああ!!」
「こいつら生きて返すなぁあ!!」
「ぶっ殺しちまぇええ!!」
何やってんだ!?このプロヒーロー!!こっちから戦闘開始のゴングを鳴らし、一気に向かってきた鴉天狗衆に、緑谷は切島と芦戸、そして葉隠に指示を出した。
「切島くん!葉隠さん!!自衛隊員と共に輸送車と芦戸さんを守りつつ迎撃!!芦戸さんは逃走経路確保に急いで!!」
「緑谷!お前は!?」
「ジュウモンジさんのフォローに向かう!!何やってんだよプロが!?」
「わぁった!!葉隠!!芦戸と輸送車守るぞ!指一本触れさせんな!!
「わかったよ!!」
切島と葉隠を芦戸の逃走経路確保と、輸送車の防衛を任せて、緑谷は一人集団の中に飛び込み乱闘騒ぎを起こし戦うジュウモンジのサポートへ飛び込んだ。
鴉天狗衆(からすてんぐしゅう)
現在の京都一帯で、集団強盗等を行なっているヴィラン組織。元々は半グレ組織でクラブやバー経営音楽活動、地下格闘技団体運営、薬物売買を行っていた。ヨロイムシャが引退する前、彼によって違法行為を摘発されて解散、息を潜めていた。
大戦後の京都でヨロイムシャの引退により再結集。輸送車襲撃や救援物資の強盗の本格的なヴィラン組織として活動を再開。
全員が黒尽くめの格好にて統一している。