【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「やれぇええ!!」
「ぶっ殺せェエ!!」
鴉天狗衆が怒号を響かせる中、一人で魁ヒーロージュウモンジは、前後左右より迫る相手を前に徒手空拳で相手をしていた。無謀この上ないと思うが……彼もまたプロヒーローの一人であり、この超人社会崩壊の日本で辞めずに戦ってきた一人である。
武器を振り抜く一人を回避しながら肘を叩き込み、蹴りで牽制して間合いを保ち。さらに体を捻りながら指で空に『十』の文字を刻めば、光と共に刻まれた文字が現れてそれに掌底を叩き込んだ!
「交差滅衝(クロスロード)!!」
「「「うわぁああ!?」」」
その文字が、勢いよく直進して鴉天狗衆を薙ぎ払い吹き飛ばす!
これが、魁ヒーロージュウモンジの個性『十文字』!!
指先で描いた『十』の文字をエネルギー体として生み出し、それを押すと直進していく!大きさによって威力も変わり、押すだけでなく投げつけて軌道を変える事も可能!
「囲め囲め!囲めば数で押せる!」
「個性使えるやつは使え!!」
しかし、ただの暴徒ならば一人でもなんとかできようが、世界の8割が個性持ちの超人社会崩!ジュウモンジの衝撃波を掻い潜り、耐え抜き、鴉天狗衆も襲いかかる。
「貰ったぁ!」
「!!」
鉱石が生えた肌の異形系のメンバーが、その背後を取り、ゴツゴツの鉱脈を纏った拳で殴りかかる、ジュウモンジが気付き、振り返ったその時には避けることも出来ないタイミングであった。
「はう!?」
だが、その拳は止まりビクン!と跳ねた瞬間ーー引き裂ける音と共に、鉱石異形ヴィランの頭部が、脊髄と共に引き摺り出されぶっか抜け!鮮血の噴水を噴き上げた!!
「ぐいぎゃあああ!!」
断末魔をあげるヴィラン、その首無し遺体が崩れ落ち、生首つき脊髄を放り投げながら、緑谷はジュウモンジに怒声を上げた!
「何やってんですか!?プロでしょ、ジュウモンジさん!!」
「イズク!?」
プロの貴方が、逸るインターンの仮免ヒーローを押さえ込むなら分かるが、一人突貫するのは違うだろと叫ぶ。
「お、おい!?こいつって!!」
「い、イズクだ!!雄英の!!イーヴルヒーロー!!」
そして、その脊髄ぶっこ抜き一つで、一気に流れが切り替わる。今や『大戦の英雄』とも呼ばれ、それ以前から恐ろしい個性を持ったまだプロですらないヒーローとして『ヴィラン恐怖の象徴』として噂が広がっていた出久。その彼が、この場に居るというだけで一気に鴉天狗衆の動きは止まったのだ。
「ひ、怯むんじゃねえ!!いくら強い個性持ってようが一人!良くて両手で二人までしかあんな事できやしねぇ!!遠距離個性と武器の間合いで戦やぁ無力だ!!」
首魁のB系チンピラがいつの間にか立ち上がって、仲間達に檄を飛ばした。その様子に緑谷は、成る程よく見てるなと緑谷は少し驚いた。
こっちに恐怖して逃げるかと思えば、的確に指示を出して戦おうとしている。余程ヒーローと戦って来たらしい、慣れがその指示より伺える。名前が広がるほどには、組織力も力もあるのだろうと。
「おらぁあ!」
早速鉄パイプを振り上げ、一人が出久に飛び掛かる。しかしーー緑谷は斜め前に踏み込みながら回避するやその手首を掴み、足を払う。宙に放り投げられた鴉天狗衆は、その勢いを保ったまま、緑谷は『引き寄せ』を使い頭と足をほんの少しそれぞれ引っ張ってーー。
「っしゃああ!!」
コンクリートの地面に、脳天から叩きつけた!パァンと明らかに鳴ってはいけない音を上げ、緑谷に襲いかかった鴉天狗衆は……哀れにも杭のようにコンクリの地面へ突き刺さり、脳天は平たくされて血を叩きつけられた水風船のように散らし、そのままバタリと倒れた。
ありふれて、様々な創作で使われる月並みな説明とはなるが、中国に『殺一儆百(しゃーいーじんぱい)』という言葉がある、日本の四字熟語なら『一罰百戒』がそれか。
一人を惨たらしく殺傷し、100人に警告するという意味だ。
この場で全員、鴉天狗衆を叩きのめすのはできるが、そもそもまだ全容を緑谷は掴めていない。下手したら今目の前で指揮を取るB系チンピラは幹部の一人に過ぎなくて、後詰めがいるかもしれない。
それに、今の自分達がやるべき事は『ヴィラン殲滅』ではなく『救援物資を避難民に届ける事』である。
この場で全員叩きのめすのも考えたが、その間拘束や移送する人員が今、この場にも桂駐屯地にもいない以上、この場は仕切り直して後から対処がいいと、緑谷は鴉天狗衆が此方に恐怖して逃走させるように、わざと惨たらしく二人を叩きのめしたのだ。
……そもそも彼は最初から、ヴィランは惨たらしくぶちのめしてるよね?という感想は、控えていただきたい。
「緑谷!道できたよ!!発進するから早く!!」
「緑谷!!早く!!」
しかし、流石芦戸。鴉天狗衆が怖気を覚えるよりも早く、塞がれた瓦礫を溶かしきったのだ。
「ジュウモンジさん掴まって!!」
「うぉおあぁあ!?」
掴まってと言いつつもしっかり手を掴み、緑谷は空を引き寄せ大きく跳躍し、輸送トラックの荷台にジュウモンジと共に幌に着地すれば、自衛隊員の運転手はアクセルを踏み抜き、芦戸が切り開いた道路を一気に直進した。
ぐんぐんと、鴉天狗衆が離されていく。しかし、あれだけされてまだやる気らしい、走って追いかけてくる様に、緑谷は血の気が多いなと、幌の上で胡座をかいてその様子を眺めるのだった。
「……すまん、不甲斐ない」
無事、鴉天狗衆から逃げ切り、救援物資も届けた緑谷達。老人ホームへ運び終えて、細心の注意とルート選定により、鴉天狗衆の再襲撃も回避して桂駐屯地に戻って来た。
次の輸送まで、時間があるため待機となった緑谷達に、ジュウモンジは深々と頭を下げた。
「いやそんな!怪我とかないっすかジュウモンジさん?」
爆豪だったらテメェふざけんなプロ引退しやがれ!と言いそうな先走る事態に、切島はむしろフォローした。何しろ飛び込んだ時の怒号が尋常じゃなかった、何かあってあんな事しでかしたのが見て取れたから心配もあったのだ。
「ちょっと……頭を冷してくる……準備ができたら呼んでほしい」
自分でも、やらかしてしまったと結構堪えているらしい。積荷が終わったら呼んでくれと、ジュウモンジは項垂れながら緑谷達から離れて行った。
「プロもあんな事、あるんだね」
「ちょっと意外だったな、私達が見て来たのが上澄みってやつなのかも」
自分達がその在り方を習い、追うはずのプロヒーローが怒りに任せて突撃していく様に、芦戸と葉隠は意外だったと呟いた。思えば自分達を指導している雄英教師も上澄みの上澄みなヒーロー達だった。
何より皆30代以上の、十数年はヒーローとして活躍しているベテランでもある。対してジュウモンジはまだ20代で独立までしている若きヒーローで、自分達より経験は積めどまだまだ若手の発展途上なのだ。
「……じゃあさ、しっかり僕らでフォローしていこう、あの人がちゃんと実力発揮できるように、僕らは今……ジュウモンジさんのサイドキックなんだから」
だからこそ、僕たちが居ると緑谷は声を上げた。若手と仮免許、力を合わせてしっかりヒーロー活動して、この仕事を完遂しようと緑谷の号令に、切島に芦戸、葉隠は応える。
「そうだな!っしゃあ!切り替えていこう!」
「まだ始まったばかりだからね、ここから頑張ろう!」
「済んだことだから仕方ない!取り返すぞー!」
おー!と四人で手を掲げる緑谷達、それを近くの倉庫の片隅から、ジュウモンジは覗いていた。不甲斐ない自分に幻滅したと思われたが、まさか盛り立ててくれるとはと、ジュウモンジはため息を吐いた。
全く不甲斐ない、だがそこまでしてくれている、善性も善性な雄英生徒に、ジュウモンジは頬を自ら叩いて、サイドキック達の下へ戻るのであった。