【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
唯一の目撃者であり、対峙したヒーロー『コウシロウ』は、ジュウモンジと同期の桜であり、元ヨロイムシャのサイドキックとして同じ釜の飯を食った仲であった。
ジュウモンジがヨロイムシャ事務所退社の際に、同じように退社した一人だが、コウシロウはフリーランスのヒーローとしてジュウモンジとは離れて活動をしていたらしい。
大怪我してすぐだが、話を聞けるのは彼だけだとジュウモンジと緑谷達は、コウシロウが入院する病院へ向かった。
「コウシロウさんでしたら、先程目を覚ましまして、今警察に連絡を入れようと……」
「タイミングが良いな、すぐで悪いが話を聞かせてもらおう」
受付に確認を取ったら、丁度意識を覚ましたらしい……目覚めてすぐだが話を聞かねばと、ジュウモンジに続き緑谷達は病室に向かった。
「コウちゃん、入るぞ」
『『『『…………コウちゃん??』』』』
「あっ……んんっ!」
ジュウモンジの呼びかけとノックに、緑谷達が目をぱちくりさせて、ジュウモンジもあっとなり咳き込む。
「どうぞ」
応答があったので、静かにスライドドアを引いて開ければ、点滴につながれた黒髪の美丈夫が寝転がっていた。昨夜運んだ際は、顔をあまり見てなかったが、所謂儚げ系美男子で、芦戸も葉隠も少し赤くなり、イケメンだ、イケメンさんだと耳打ちしあった。
……切島は少し気を悪くしたが、大丈夫だ切島くん、ヒーローは面じゃないし切島くんもかっこいいからと緑谷は心の中で言っておいた。
「……ばっつん、ごめん……やられた」
「おい、他の人居るから普通に呼べ……ああ俺も呼んでた、すまんコウシロウ」
成る程、ジュウモンジの本名、月形伐(つきがたばつ)からばっつんというあだ名かと、納得しつつ。ジュウモンジはパイプ椅子を引き出して座り、コウシロウに話しかけた。
「本当、無事で良かったよ……で、早速悪いんだがな、やられた相手の事覚えてるか?」
慰労の言葉や世間話と行きたいが、事が事だ。目覚めてすぐで悪いと、申し訳なさそうに言うジュウモンジに、コウシロウはゆっくり語り出した。
「……悲鳴が上がった時にはもう、被害者は首を斬り落とされてた、僕はちょうど近くをパトロールしていたから、すぐたどり着いて……目視した瞬間襲い掛かられた」
緑谷も、ジュウモンジも聞いた一度目の絶叫。あの時点で既に手遅れで、先にコウシロウが現場近くに居て、即座に駆けつけたらしい。
そして、現場に立ち入った瞬間、戦闘が始まったと。
「個性を使う間も無く、僕は数合斬り合った……そして斬られた……」
「お前が……そうも簡単に?ジジイから刀渡されたお前が?」
コウシロウの証言に、ジュウモンジは信じられないとでも言いたげな雰囲気が言葉に含まれていた。そして話の中で、緑谷は気になった事が出てきたので尋ねる事にした。
「刀を渡された……とは?」
「ん?ああ、ジジイ……ヨロイムシャは所謂教えたがりでな、気に入ったサイドキックに、自身の剣術教えて、独立できる実力ついたやつに刀を渡してたんだよ」
ヨロイムシャ事務所の伝統というやつらしい、彼の傘下サイドキックに、自身の剣術を教え、個性以外の戦い方を学ばせていたとジュウモンジは語る。
「あ!そう言えば青山も誘われてた!事務所に道場あったよね!」
「あったあった、けど青山くんは断ってたなぁ、勿体ない」
芦戸と葉隠が、そうだったと青山がヨロイムシャから剣術指導を誘われたのを二人は思いだして口にした。そう言えば青山くん『ネビルソード』というレーザーを固定して近接戦を可能にしてたなと緑谷と思い出した。あれはあれで動き方を教わったのだろうか……今となっては知る由もない。
「じゃあ、ジュウモンジさんも刀を?」
となれば、やはり思いつく事なわけで、切島はそうジュウモンジに尋ねた。ジュウモンジは首を横に振って、違うと否定した。
「俺は……てんで性に合わないから習ってないんだ、才能ないって言われたよジジイに」
「けど、ヨロイムシャはジュウモンジを一番重用してたよね?」
「チッ……」
どうやら、剣の才能は無いらしい。それを差し引いてもジュウモンジは、ヨロイムシャに重用された筆頭サイドキックであったとコウシロウは語ると、恥ずかしさに思い出したくなさ、そして懐かしさをない混ぜにした表情で舌打ちをするのであった。
「話が逸れたな……で、同じ刀を使うヴィランだろ、何か他は?」
脱線したなと、本題に戻ろうとジュウモンジがコウシロウへ、他に何か無かったのかと尋ねた。
しかし……コウシロウは……黙ってしまった。
「おいどうした、少しだけでもいい、戦ったんなら手がかりくらい……」
「その……信じたくないんだよ……」
「信じたくない?」
コウシロウの台詞に葉隠が疑問を抱く。『話したくない』ではなく『信じたくない』とは、見たらしい手がかりが、見間違えであって欲しいと望んでいるような口ぶりだった。表情も強張り、言う事すらも苦しいと、斬られた痛みより強く、心に渦巻く疑念が締め付けているようだ。
「できれば、見間違えで……聞き間違えであって欲しい……けど、見た、斬られた最中に、確かに……」
「一体……何を見たんだ」
何を見たのか、言ってくれと覚悟は決めているとジュウモンジの催促に、コウシロウは、躊躇って……しかし意を決して答えた。
「あの鞘も、鍔も……ヨロイムシャが……サイドキックに与えていた物と同じ刀だった……」
「はーーー?」
「僕を斬った後に……そのヴィランは見下ろしながらこうも言った……ヨロイムシャに、助けを乞うてみろ……って……そして立ち去って、ジュウモンジたちが到着した」
コウシロウの証言に、ジュウモンジは目を見開き、緑谷に切島、芦戸に葉隠も、驚愕する他なかった。それでこの人、コウシロウは『信じたくない』と口走ったのかと理解した。
この人斬り事件の犯人は……かつての『ヨロイムシャのサイドキック』という、ヒーローの『ヴィラン堕ち』事件の可能性が、一気に高まったのだから。