【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「間に合った!大丈夫っすか!?」
金属の球体を、その硬く固め上げた身体で受け止め、マインハートの前に立つは切島鋭児郎こと『剛健ヒーロー 烈怒頼雄斗』!
俺の後ろにいる守るべき人たちを、決して誰も傷つけさせやしないと硬化した身体に叩きつけられた球体を振り払い、打ち倒されかけた守護神の代わりに仁王立ちで黒丸の前に立ちはだかった!
「ガキがぁ、でしゃばんじゃあねぇよ!」
だが、防いだところでこっちは自由に動かせるんだよと振り払われた『黒弾』は、切島の背後に庇われたマインハート向けて放たれーー。
「アシッドショット!!」
「ジェルバウンド!!」
黒弾が、酸に溶かされ、また違うヒーローの身体にめり込み、弾んで跳ね返された!
「すまないな橇引、待たせた……」
「滑野……先輩……」
「酷い、こんな事……」
切島と同じく行動していた芦戸三奈が、マインハートの怪我に怒りを露わにし、その傍らで黒弾により凹んだ胴体をゆっくり戻す青髪に陣羽織を着た青年が、待たせてしまったとマインハートを本名で呼び詫びた。
切島と芦戸が、ジュウモンジに頼まれて訪ねに行ったヒーロー……元ヨロイムシャサイドキックの一人であり『ヨロイムシャ四剣士』最後の一人。
名前は『滑野久次(なめのひさつぐ)』
ヒーロー名『軟体ヒーロー ジェリーグルー』
その個性は『ジェルボディ』
肉体がまるで、ジェルを内包したような柔らかさを持つ特異体質で、打撃や衝撃を無効化する!
「随分と……暴れてくれたな、黒丸!そして、鴉天狗衆!」
腰元の鞘から頭身を引き抜き、構える滑野ことジェリーグルーに、Ho-Gun・GCは瞼をガン開きに、歯を見せて笑う。
「ヨロイムシャの介護士がぁ!ガキ二人連れてイキがんじゃねぇよ!やっちまえテメェら!!こいつらもーー」
たかが3人増えて戦況が変わるかよと、このまま全員飲み込んで流れ込めと叫ぶ!
「「「「どわぁあああ!?」」」」
だが、それと同時だった背後の兵隊が一気に叫びを上げて宙に舞い吹き飛ばされたのは!!黒丸が何だと振り返ったその先には、兵隊の合間を掻い潜る白いヒーロースーツの男が、地面に何かを描きーー。
「交差昇撃(クロスライズ)!!」
十字の衝撃波に、兵隊たちが次々打ち上げられて吹き飛ばされていく!
「集光屈折!!ハイチーズ!!」
さらに太陽を背にした不可視の肉体を持ったヒーローが、自身に集めた光を集めて輝きを一気に放ち、兵隊達の目を潰しーー。
「ぐぁあ!?閃光弾か!!目をアギゃああ!?」
「な、何だ今!?おい何をがばぁあ!!」
「み、見えおぐあはぁぉあ!!」
視界を潰されたのが幸いと、次々脊髄付き生首が宙を舞い、断面から血を吹き出し血の雨が降り注ぐ!!
「その首置いてけお前らぁああああ!!」
ジュウモンジ、葉隠、そして緑谷が!桂駐屯地に合流!!その事実に黒丸は、舌打ちするや一度ジェリーグルーを見てから、黒弾を呼び寄せてそれを一枚の板の様に敷き詰め、飛び乗った。
「ここまでみてぇだな、まぁいい……お前ら引き上げんぞ!!」
このまま熱の赴くままに、攻め切ることを即座に辞めて兵隊にそう声をかけ、一人空を飛び去って黒丸は消えていく。その声を聞いたらしい、鴉天狗衆達も一気に攻撃をやめて転身して、桂駐屯地から走り逃げ去っていく!
「あいつら……このまま追撃して!」
「待てイズク!駐屯地の被害が酷い!そっちからだ!」
逃してたまるかと追跡を試みようとした緑谷、しかしジュウモンジに肩を掴まれて声をかけられはっとした。襲撃された桂駐屯地の、駐在ヒーロー、自衛隊、警官……その被害を無視はできない程だった。
ジュウモンジの言う通りだった、また周りが見えなくなりかけていた。緑谷は火災も起きているらしい、桂駐屯地での救助活動が先と、逃げゆく鴉天狗衆に歯を食いしばりながら戻るのであった。
拠点である桂駐屯地の、あらかたの被害を解決したのは夕方であった。ヒーローから死者が出て、何より大怪我を負った者も少なくない。
「近隣の県の空き病床が、幾つかあるみたいだ……任務続行不可能な者達は、夜間に人員を割いて送るとさ?」
「橇引……マインハートは?」
「眠ってるよ、あんなにやられたのに……骨一ついってない辺り頑丈だよな」
ようやく一息つけたヒーロー達だが、その疲労は容易に見てとれた。南区に出ていたヨロイムシャ四剣士の一人、滑野ことジェリーグルーに、ジュウモンジが、マインハートの様子を尋ねる。
金属の弾丸にめったうちにされながら、まさかの骨一つ折れてない打撲と出血だけの彼女に、ジュウモンジは苦笑した。流石守護神ヒーローを名乗り、ヨロイムシャの甲冑を真似て纏うだけあると。
「しかし……鴉天狗衆がヒーローも公僕も関係なしに襲撃して来たとなれば、いよいよこちらも考えないとね」
「それが出来る、やって勝てるくらい、あっちは戦力持ってる意趣返しだよなこりゃあ……」
ヒーローが本拠地としている、自衛隊駐屯地に攻め入る力を鴉天狗衆は、そして頭領のHo-Gun・GCは所有しているのだろう。死柄木にAFOによって、日本社会が崩壊したその後、復興の最中を狙う為に今まで潜めて気を待っていたらしい。
「……ヨロイムシャさんが居たら、まだ少しはマシだったのかな」
こんな状況の京都で、ジェリーグルーが思わず出てしまった呟きに、ハッとして口を塞ぎ、ジュウモンジを見る。ヨロイムシャは……諦観の笑みを浮かべてジェリーグルーに言い返した。
「変わらねぇよ、居たとして……京都はどのみちこうなってた……オールマイトが引退し、エンデヴァーが台頭してから、全国同じ様にヴィランは活発になった……例え群訝でジジイが辞めてなかろうが、ここに居ようが、この景色はあっただろうさ」
居たところで何一つ変わらないと、断じるジュウモンジ。そのまま少し外に出るとだけジェリーに伝え、離れていく。その背中を見ながら、ジェリーはジュウモンジの言葉にため息を吐きながら壁に背中を預けた。
「嘘つき……一番ヨロイムシャに居て欲しかったのはお前だろう、ジュウモンジ」
「2日でこれとはハードだねぇ……」
「戦闘になるとはなぁ……」
緑谷達雄英組は、駐屯地内食堂で夕食を取り終え、しばらくの休息を与えられていた。まさか物資輸送からヴィラン襲撃、殺人事件の捜査と次々変わる状況に、切島と芦戸がぐったり身体をテーブルに預けていた。
「他のとこも同じになってないかな、皆が心配だよ……」
葉隠は、この京都だけならまだしも、他の地方も同じことが起きてないかと心配した。情勢不安定、復興途中の日本各地で、ヴィラン達の動きもまだ落ち着かないとなれば、同じ事になっているA組クラスメイトも居るかもしれないと過ぎってしまう。
「ヒーロー達が辞めた皺寄せを、嫌でも感じるね……」
緑谷も一徹からまだ寝れてない為に、紙コップのコーヒーをすずりながら、人員不足を肌で感じると呟く。
「てかさ、ここまでじゃなかったよ京都……ねぇ透ちゃん」
今のこの社会崩壊を差し引いても、京都はここまで世紀末じゃなかったと芦戸がぐてんと首を捻り葉隠に同意を求めた。京都の治安はここまで酷くなかったと、その言葉に葉隠も頷いた。
「ねー……すっごい平和でインターンもヨロイムシャさんの直接指導が多かったもん、凶悪なヴィランも遭遇しなくて……ヨロイムシャさんが辞めてから、こうなったのかな?」
確かにそうだったと、インターンの時の京都から変わり果てている事葉隠は同意した。そして、あれだけ平和だったのはやはり、ヨロイムシャの存在が大きかったのかもしれないと寂しげに呟く。
「チャート9位だもんなぁ、穴がデケェよ……」
唯一、あのチャートの中で辞めてしまったヒーローで、実力もその人気も高かった。できてしまった穴はとても大きく埋めるのは難しいよと、芦戸と同じようにぐてんと首を捻る切島が、そう言えばとある事が気になった。
「と言うか、ヨロイムシャの個性ってそういや何だ?爺さんまでずっと長い間ヒーローやれてるって事は、相当強い個性だったのか?芦戸、葉隠、インターンで見たりしなかったか?」
そのヨロイムシャの『個性』を、知らないなと。ヒーロービルボードチャートに載るヒーロー達は全て、個性も知られている、自ら開示しているヒーローが大半だ。だが、ヨロイムシャは印象がなく、知らないなと気付いた切島は、インターンで世話になった芦戸、葉隠に尋ねてみた。
「いや、知らない……」
「そう言えば、気にも留めなかった、普通に刀で戦ってもん」
インターン組の二人も、全く個性を使った場面は見なかったなと思い返す。となれば、この男に話が回って来る。
「緑谷は……知ってる?ヨロイムシャの個性?」
「ヒーローオタクだもん、知ってたりする?」
緑谷なら、知ってるんじゃないかと芦戸と葉隠に尋ねられ、紙コップを置いた緑谷は、3人を見てニヤリと笑った。
「うん、知ってる、せっかくだから当ててみなよ、時間潰しのクイズだ」
やはり知っていたこの男、せっかくだから気晴らしにクイズ形式にしてみようと皆に言えば、切島がじゃあと最初に答えた。
「名は体を表すよなぁ、甲冑?とか?」
「残念、引退会見の時脱いでたじゃん」
まぁまずヒーロー名が個性を、表す考えになるかと思ったら違うらしい。ならばと芦戸が手を上げた。
「分かった!剣術だ!!生まれながらの剣聖!!」
「外れ、けど身体に関する個性だよ、近くなった」
剣術という生まれながら剣の達人という個性ではと芦戸も外れた、しかし身体に関する個性だと近くなったという緑谷の言葉に、葉隠がこれかと解答する。
「シンプルに、パワーアップとか?身体能力を上げてて、トップヒーローにも引けを取らない動きができてたもん」
世代も前だから、シンプルな個性で身体強化のパワーアップでは?葉隠の答えに緑谷は首を横に振り、全員不正解となったので答えを発表する事にした。
「ヨロイムシャの個性は……もっと単純、単純であるが故に、ヨロイムシャはその個性を磨き、鍛え上げ、極めたからこそ、今の世代の若いヒーロー達と対等に渡り合い、トップヒーローとして長年君臨していたんだ……」
「そ、その個性とは?」
「一体……」
「何なの、緑谷くん?」
ごくりと息を呑む3人に、緑谷は右手の人差し指と中指を立てて、ゆっくりと自らの両目を示してみせた。
「「「……目?」」」
「そう、両目、その目に宿った個性の名前は……“見切り"……単純でシンプルでしょ?」
緑谷に報されたヨロイムシャの個性、そのあまりにもシンプルな個性に、3人は呆然とした。