【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
寝て覚めたら……また一人死んでいた。
さらに、昨日話を聞いたヨロイムシャを守っていた、ヨイチが切られたとあっては、ジュウモンジも平静を保てなかった。
「状況を!状況をはっきりしてくれ!!ヨイチは生きてんのか!?ジジイは大丈夫なのか!!」
「ジュウモンジ落ち着いて!」
「これが落ち着いていられるかぁ!!誰がやりやがったぁ!!」
起きて一番に報告してきた警官の襟首を持つジュウモンジに、ジェリーグルーに庇い締めにされて、さらに軟体で足や腕を拘束された。
「よ、ヨイチさんは……生きてます、コウシロウさん同様、浅く広い傷だと……ヨロイムシャも、家族も被害は……しかし、また一般人が……」
ふー、ふー、と怒りによる興奮から目を血走らせるジュウモンジに、襟首を掴まれた警官は続けて報告した。
また、ヒーローは生きていた。
そして一般人だけが、殺された。
緑谷は、この違和感が何なのかと考える事にした。しばらくジュウモンジさんと行動はできそうにない為、一人駐屯所内のテントの一つに入る。
パイプ椅子と、机、ホワイトボードには京都全域の地図が貼られており、緑谷はホワイトボードに置かれた赤のマーカーを取り上げてキャップを外した。
「一日目の夜、僕とジュウモンジさんが遭遇した現場が……ここか」
一日目の夜の辻斬りが起こった場所、三条通近くに丸をつけて、緑谷は今朝の報告にあった、ヨロイムシャの邸宅の通りにも赤丸をつけた。
一箇所目と二箇所目の犯行現場は、距離にして約3km圏内。歩ける距離でそう離れていない……緑谷はマーカーを走らせた地図を眺めて、1回目の犯行と2回目の犯行を比べてみた。
まず、標的。
最初は、それこそ目的も無い『殺人鬼』的な犯人かと思ったが、二回目で緑谷はある確信が浮き上がった。
「……この犯人、もしかしてわざとヒーローを生かしてる?狙いは一般人の方?」
この殺人犯、明らかに『一般人』を標的にしているなと。夜中に出歩いている、誰でもいいのかもしれない。
何より『ヒーロー』は生かしている。という不可思議な行動だ、最初はたまたま警備範囲で遭遇したコウシロウが斬られた。
だが、今回は『ヨロイムシャの邸宅』まで上がり込んで、警護していたヨイチを斬り、ヨロイムシャや家族に手を出していない、ただヒーローだけを斬りに侵入したらしい。
そして、コウシロウに口走ったらしい犯人の言葉。
『ヨロイムシャに、助けを乞うてみろ』
この台詞から、この犯人が行おうとしている目的は、緑谷とジュウモンジも同じ考えに行き着いた。
『犯行を自演し、それをヨロイムシャが解決してカムバックするためのお膳立て』
そう考えたが、当のヨロイムシャは最早復活ができない痴呆に侵されていた。だから、違うと思われた。
では、コウシロウが見たらしい『ヨロイムシャが与えた刀』を持つ犯人は何者だ?ヨロイムシャの関係するヒーローを斬り、一般人だけを殺す理由は?
何か見落としてないか、何かを忘れてないか、考える緑谷がホワイトボードを睨む中、背後からテントを捲る音が耳に入り振り返る。
「おお、緑谷起きてたか……」
夜間パトロール後の睡眠から起きたらしい、切島が緑谷に声をかけて来た。
「切島くん、昨日はごめん……寝させてもらって」
「いいって、徹夜だったんだ……てか、また同じ事あったんだってな……
切島も今聞いたような口ぶりな辺り、担当していた地域や近辺ではなかったらしい。しかし、2日連続で人が死ぬとなれば……力が及ばないやるせ無さに表情も暗かった。
「……俺、昨日真反対の区域にパトロールしてたんだけどよ……何というか、弄ばれてるみたいで気分が悪ぃよ、まるで俺らじゃ捕まえるのも、倒すのも無理だってメッセージ突きつけられてるみたいでさ……」
その場に自分がいれば、どうにかできたかもしれない……決して倒れない守れるヒーローである切島にとっては、手が届いたかもしれないと悔やむのは緑谷の目に見えていた。
「……必ず見つけて捕まえよう」
これしか言える言葉がないと、やるせなさに緑谷も、見えない犯人がこれ以上の被害を出さない為に、早く見つけ出さねばと決心するのであった。
そしてーー正午、現在の京都の状況を聞いた隣県のヒーロー達が、次々と到着し始めた。ヒーローだけでは無い、同じく仮免を取った学生ヒーロー達も集まる中、そこには見知った姿もあった。
「切島!!大分手こずってるみてぇだな!!」
「鉄哲!!来てくれたのか!!」
「大阪は大丈夫だから行ってやれって、ファット・ガムさんと天喰先輩がな!」
「随分大変な事になってるみたいだな、緑谷」
「尾白くん!」
大阪に派遣されていた、鉄哲徹鐵と、尾白猿夫が補充要員として派遣されたのであった。
静岡でのAFO決戦とまでではないが、それでも多数のヒーロー達が京都に集結。より強固な防衛体制、そして捜査網が引かれる事になる。
さて、そんな慌ただしくなる中、緑谷達雄英組は……ジュウモンジによって集められていた。
「鴉天狗衆の一斉摘発とは別に、俺達は辻斬りの捕縛で動く事になった……集めたメンバーは、この事件に関わって話を知る雄英組と、俺……そして、マインにジェリーのチームで捜索に当たろうと思う」
落ち着きを取り戻したらしいジュウモンジのそれぞれ左右に、同じくヨロイムシャのサイドキックだったマインハートと、ジェリーグルーが立って、雄英生徒に話し始めた。
「あの、マインハートさん大丈夫なんですか?」
「凄いボロボロだったじゃないですか!」
その前に、まぁ驚くとなったのはマインハートが立っているという事だ、昨日Ho-Gun・GCの個性でめった打ちにされていたのに、絆創膏やガーゼを数枚貼り付けているだけの姿に芦戸と葉隠は尋ねた。
「私、力と頑丈さだけは取り柄だから……あの時は意識を失いかけたけど、骨も内臓も無傷ですよ」
ニッカリ笑うこの戦女神の笑みは、慈愛か……はたまた戦を前にした狂奔の笑みか……。
本当パワー馬鹿と、呆れたジュウモンジが呟いたのを馬耳東風とならず、聞いたらしいマインハートが軽い蹴りをジュウモンジの尻に入れて、それだけでも前のめりに倒れかける辺り凄まじいパワーを身に秘めている事を示した。
「ってえ……つ、続けるぞ?で、だ……まだ二箇所なんだがな、俺はある見立てがあってな、その辺りを捜索しようと考えている」
ジュウモンジは尻を摩りながら、この辻斬りが次に現れる見立てを考え、ホワイトボードに貼られた地図の『とある場所』を囲い、今夜この辺りを捜査しようと今考えていると語った。
「京都御所……」
「まだ二つだが、二つの現場から近い場所がここになる」
それは、京都御所……平安遷都から明治維新の間まで天皇の居住区として使われた文化遺産。
「ここを中心とし、夕方より住民の皆様に帰宅の声かけをしながら、夜間のパトロール、そして……囮捜査を行おうと思っている」
囮捜査、その単語にジュウモンジさんも、気付いていたのかと緑谷は顔が強張った。
「最初は偶然とは思ったが……ジジィ……んんっ、ヨロイムシャの館にまで踏み入って斬られた以上もう確信だ、この辻斬りが狙ってるのは……ヨロイムシャ四剣士だ」
コウシロウの時は、あくまでその時遭遇した相手だったとも取れたが、昨晩ヨロイムシャの邸宅にまでこの辻斬りが踏み込んだ以上、狙いは『ヨロイムシャ四剣士』だとジュウモンジは言い切る。
「この辻斬りの目的はこうだ、ヨロイムシャ引退の後、その跡を継いだヨロイムシャ四剣士を斬り、さらに見せしめに一般人を殺して無力さを民衆に突きつけ不安を煽る……群訝直後のヒーローたちの様に批判を募らせ、復興を挫こうとしている……恐らくだが、この辻斬りも鴉天狗衆の単独行動しているメンバーの一人ではと俺は考えている」
そして、この辻斬りもまた『鴉天狗衆』の一人であると仮定した。個人で動き、夜な夜な徘徊している一般人を、そして『ヨロイムシャ四剣士』を狙い、斬っているのだと。
かつての群訝でヒーローが信頼を失い、死柄木、AFOを打ち倒し復興に向かう最中、傷の癒えぬ日本で更にヒーローの信頼を更に砕き、民衆を不安に陥れようとしていると。
「囮捜査だが、2チームに分かれ、京都御所周辺を夕方からパトロールし、襲撃を待つ……マインハートには、切島くん、鉄哲くん、芦戸さんの3人を……ジェリーグルーには、俺と緑谷くん、葉隠さん、尾白くんがつく、いいか?」
「「「了解!」」」
ターゲットとなるだろう、四剣士の二人にそれぞれ学生がサイドキックが配置された、緑谷も、文句は無く、確かにジュウモンジの言う通り狙いはそうかもしれないと納得もできた。
しかし、やはり違和感がある。何だこの奇妙な感覚は……そう考えながらも緑谷は返事をして立ち上がった。
「理由も無く一般人を殺しやがってその辻斬り!絶対許さねぇ!なぁ切島ぁ!」
「応!今夜必ず捕まえてやる!」
切島も、来たばかりの鉄哲も事情を知って気合が入っている。狙いはあっている筈だ、後は"どちら“に来るのか……テントを出て緑谷達とジュウモンジ達は、京都の街へ向かった。
京都中心街から更に北北東……鞍馬山。
かつて、牛若丸こと源義経が幼少の時、山に住まう『鞍馬天狗』に兵法武術を教えてもらい修行を行なった、密教の修験地ともされている……また、一説ではこの鞍馬天狗こそ、陰陽師にして兵法家の『鬼一法眼』の正体ではなかろかとする作品もある。
黎明期より前は、その言い伝えからパワースポットとして、ケーブルカーが通り観光地とまでなっていた。しかし、黎明期の動乱の後、この寺もまた打ち捨てられて整備もされず、廃寺として跡を残すのみとなった。
その廃寺には今ーー自らを『天狗』と騙る者達が住み着いていた。
黒一色、全員が様々な装いながら、色は統一した者達……。
『鴉天狗衆』
鞍馬寺本殿跡、Ho-Gun・GCこと、黒丸砲鉄は集まった配下達の列をモーセの様に割らせ、その道を歩き廃墟となった本殿へ歩き、石段を登った。
そして振り向いて、配下へ言い放つ。
「今回の奇襲で分かった、今の京都を守れるヒーローはいねぇ、数もこちらが上回っているのが分かった!」
それを聞いた部下達は沸々湧き上がる感情を抑えながら、頭領黒丸の話を聞いた。
「先の祖父に習い!明日の夜、俺達は決起し京都を手に入れる!鴉天狗衆による支配、これを実現させる!」
ヒーローも、公僕も、先の駐屯地奇襲で戦力も見切り、勝てると見た黒丸は、いよいよ本気で京都を奪ると宣言するや、配下達は各々の腕や武器を掲げて声を上げた。
その叫びに静かなる山が動いた様に揺れて、鴉達が驚き羽ばたく。たった一羽だけは、黒丸を冷たく睨みつけて木に止まったままで、やがて悠々と羽ばたき飛び去っていった。