【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
京都3日目の夜が来る。
京都御所北側では、マインハートのサポートという形で、切島、芦戸、そして大阪から援軍にて派遣された鉄哲の四人が、夜間パトロールを開始した。
「大阪じゃ復興支援であちこち行ってたんだがよ、隣の京都がこんな事になってるとは思わなかったぜ」
「ファット・ガムさん元気にしてたか?」
「おお、大戦の時危うく死にかけたらしいけど、今はピンピンしてた!」
切島と鉄哲の二人は、同系統の個性の持ち主というのもあるが、何かと行動を共にする事が多かった。遡れば職場体験も同じヒーロー事務所だったし、インターンの時も一足先にファット・ガムにお世話になった切島のつてで、ファット・ガム事務所へお世話になった仲である。
野郎二人が仲がいいと、女は疎外感をやはり感じるもので、芦戸は一人ポツンとマインハートの横でブー垂れるのであった。
「なんか疎外感……」
「烈怒頼雄斗、リアル・スチール?私語は慎み業務に集中を」
「「うっす!!」」
それを察したか、ただ私語が多く散漫になっていたからか、マインハートは長巻の柄尻で地面を小突いて指摘した。凛とした、なんとも通る声だ、女性ヒーローを何人も見てきた芦戸だが、こうも引き締まる雰囲気を出すヒーローは初めて見たかもしれないと、自身も気を引き締める気持ちが促された。
「えっと……マインハートさん」
「なんでしょうか、ピンキー」
「本当に、怪我とか大丈夫なんですか?」
だがやはり、心配してしまう。昨日あれだけ打ちのめされた、ヒーローも一人死んだ金属弾の殴打にボロボロになっていたのだから、本当に大丈夫なのかと尋ねる芦戸に、マインハートは慈母の如く微笑む。
「たとえ、万全でなかろうと……求められ助けを呼ぶなら私は立ち上がります、ヨロイムシャよりこの一振りを賜ったその時から、そうあろうと決めたのです」
か、カッコいい……その一言に芦戸は思わずゾクリとした。まだホークスのような若手のヒーローなのに、ここまで心構えが固まっているのかと感嘆に芦戸は震えた。
「必ずや、この京都を混乱に貶める狼藉者を捕らえましょう」
「はい!マインハートさん」
頼もしいヒーローの叱咤に、体に力も入ると夜なのである程度抑えた声で芦戸は返事した。
とはいえ、事件は起こらない事に越した事は無い。また一人犠牲者が増えた、なんてならないように、マインハート班は歩きながら警戒を強めた。
その時だったーー。
「「「「!!?」」」」
一斉に、この場に居た全員が、首を刎ねらた様に錯覚した。
芦戸も、マインハートも、思わず首に触れた。切島や鉄哲も焦り、何かされたかと辺りを見回す。
一気に緊張感が迸る程の殺気ーー冷や汗が垂れ、ヒーロースーツの下の地肌が滲む程。明確に向けられた殺意に、マインハートはあたりを見回した。
プロヒーローとして、この学生達に怪我は負わせれないーー守らねばと見回し声を張り上げる。
「誰だ!!出てきなさい!!」
長巻を構え、周囲を見回しそれに続ききりしまも鉄哲も身体を硬化、鋼鉄かし構える。芦戸もさんを即座に放てる様に構え、街灯だけが照らす路地の暗がりを見回しーーそしてーー。
「マインハートさん!危ねぇ!?」
「!?」
空よりの襲撃!!
夜闇を舞う何かが閃光を煌めかせ、咄嗟に飛び上がり切島が身を挺して盾になるや、削り砕けた音が響き渡る!!
「うぉおああ!?」
「切島ぁ!?大丈夫!?」
切島が転がるも即座に立ちあがる、芦戸はその姿に息が止まった。
切島の硬化した身体を、袈裟に線が走っている。即座に新たな肌が固まり再生して、怪我はしていないが、それ程の一撃が振り下ろされたことが示された。
「仕損じたのは初めてだ……身体を固める個性が二人か……」
四人は目撃する!この、目の前に現れた者こそが、京都の人々を恐怖に陥れる辻斬り殺人犯!
夜闇に紛れる様な黒の衣装、顔を隠す面もまた、カラスを模した意匠が見える。その男は、右手に白刃煌めかせて四人の前に佇んでいた。
この黒装束、やはり鴉天狗衆の一人かと、長巻構え、最前列に立ち学生組を守るマインハートは、殺人犯の左腰の鞘を見て気付く。
「その鞘……何故あなたがそれを!!その鞘と刀は、ヨロイムシャが認めた者にしか与えない物の筈!!」
同輩である『ヨロイムシャ四剣士』その一人、艶髪ヒーローコウシロウの証言の通り!!同じ模様の鞘!!事実だったかとマインハートは何故それを持っていると尋ねた。
辻斬りヴィランは、一度左腰に目線を落とす。そして、マインハートに何を当たり前なとばかりに言い放った。
「見てわからないか、貴様も奴らも、俺も……同門だ」
「巫山戯た事を吐かすなぁ!!」
同門を騙るか、同じヨロイムシャのサイドキックと嘯くか巫山戯るな!お前の様なヴィランなぞしらぬと、勇猛に!マインハートとヴィランの剣戟が始まった!
およそ、普通のヒーローやヴィランでは、その一振りの風だけで体が揺らぎかねないマインハートの長巻による剣戟、それを辻斬りヴィランは避け、時に弾き流して幾度と火花が散る。
「くうう!?」
「荒いな、力任せが多々見える……才能ならあの弓取りと艶髪のがあったぞ」
鉄哲も切島も、芦戸もやがて気付く。押されてるのはマインハートだと、剛力を受け流され悠々と、一歩ずつ辻斬りヴィランがマインハートを後退させている事に!
辻斬りヴィランの言葉もまた図星!自身もヨロイムシャに認められたとは言え才能は先にこのヴィランに斬られたコウシロウとヨイチ二人に劣る事を見透かされ、追い詰められるマインハート!
「それが貴方に屈して!負ける理由になど!なるものかぁ!!」
だから負けて、二人と同じ様になる理由にはならないと、気迫と膂力でなんとか切り結ぶマインハート……だったが。
「哀れなーー」
刹那、振り下ろしを回避した辻斬りヴィランが峰を踏み、刃を振り下ろす!向かうは右手首!反応できたが間に合わない!手を離す間もなくーー。
「あぶねぇ!!」
火花散る!鉄哲が割り込む様に!辻斬りヴィランの刃がマインハートの手首を切り落とす前に、身体を割り入れて防ぐ!
「アシッドショーー!?」
「のぁあ!?」
その隙に、酸を放とうとした芦戸だったがそれも見ていたと辻斬りヴィランは鉄哲のヒーロースーツを掴み引き寄せ、身体を入れ込み背中に周り盾にして芦戸へ近づき、鉄哲の頭部横から容赦なく芦戸の顔へ突きを放つ!
「安無嶺過武瑠!!」
が!それを復帰した切島が必殺技でさらに硬化した額で防ぎ窮地を救う!
「チッ……」
「どわぁあ!?」
「っとお!大丈夫か鉄哲!!」
「のやろぉ……ちょこまか動きやがる!」
弾かれたと見るや、辻斬りヴィランは鉄哲を蹴り、切島へぶつけて間合いを取り、切島はそれを支えた。
プロヒーロー1人と学生仮免ヒーロー3人、それを相手にこの辻斬りヴィランは、対応して拮抗するどころか上回っている!死柄木、AFOとの戦いを超えてきた自信、自負すら押し潰しそうな立ち回りと強さに、切島は焦燥が湧き上がってきた。
「こいつ、強い……なんて言うんだろう、AFOとか、死柄木とか、強力な個性とか……そんな感じと別だ!と言うか個性まだ使ってない!?」
目の前の辻斬りヴィランの強さに、芦戸がそう言い放つ。知らないタイプの強さで、そもそも個性を使ってすらいないと気付かされた。
「悔しいですが、相手は私以上の手練みたいです……恐らくはヨロイムシャさんに匹敵する剣術ーー!それどころか……」
「マジかよ……!」
マインハートも気圧されて、そして実力を突きつけられて息が上がっていた。切り結んだから分かる、その剣術はヨロイムシャに匹敵、いやまさかーーとその先を言いかけたところで、斬られたが固まらなければ真っ二つかもしれなかった切島が戦慄した。
どうする?どうすればと3人が止まる中ーー。
「だからなんだってんだ切島!俺らの強みを忘れたかぁ!!」
鉄哲徹鐵は構わず突貫!!その突進に、辻斬りヴィランが合わせのから竹割りで迎え撃ち、その頭部に命中して甲高い音が京都の夜に響き渡る!!
「「鉄哲!!」」
「なんて事……!!」
真っ向唐竹割り!目を覆いたくなる光景ーーしかし!
「むーー!?」
「鉄を切るにはまだまだみてぇだなぁ!!」
「ぐぉお!?」
刃は、徹らず!!
そのまま頭を振り上げ鉄哲は辻斬りヴィランの腹部にボディブローを叩き込み、身体がくの字に折れ曲がった!
「ちぃい!!」
後退した辻斬りヴィラン、しかし即座に体勢を立て直すもズンズン進んでくる鉄哲の首目掛け袈裟に振り下ろして、さらに蹴り抜いて間合いを離した。
「ほぉ、傷くらいは付くんだな?余程その刀いい物みてぇだな、分からねえけど」
首から腰に、鉄哲の鋼鉄化した肌に確かな線の傷こそ入ったがそれだけだった。その姿を見て切島は、ああそうだったと飲み込まれそうになった心を平静にし、鉄哲の横に並び立つ。
「そうだよな、単純だったな鉄哲……硬い俺らに!」
「おうよ切島ぁ!刃なんて通りゃしねぇんだよぉ!」
『硬化』そして『スティール』!!肉体を堅く固め上げる個性には、如何なる鋭い刃も通さない!!絡め手も、技術も、知った事かと2人が駆け出す!!
「個性信じてひたすらにぃ!!」
「真正面から打ち砕ぁく!!」
突貫する2人、そして飛びかかり放たれた拳が、辻斬りヴィランの胸板を撃ち抜いた!!