【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『硬化』と『スティール』に固められた拳が胸板を射抜く、コンクリの地面を踏ん張って靴の擦れた線が引かれる程の威力が見て取れる。
「くっ……」
しかし、鴉の仮面を被った辻斬りヴィランは、一瞬ぐらついたが即座に刀を構えた。
「「おらぁあああ!!」」
効いている!そして自分たち2人ならこのまま押し切れると、目線も合図も無しに切島と鉄哲がさらに踏み込んだ!固められた腕と拳形四つが!辻斬りヴィランに容赦なく、間断なく振り下ろされる!
「ちぃい!!」
舌打ち一つ、辻斬りヴィランはそれだけして刀身で弾き、更には身体を傾け回避して、時には腕でいなして2人の猛攻を全てとまではいかないが受け流して見せた!
「おおっ!?」
それだけではない!雨霰の拳撃の中、辻斬りヴィランは鉄哲の手首を掴み、更には足を掬うように払い体勢を崩して地面に倒した!
「鉄哲!?のわぁあ!!」
連携が崩れたと見るや辻斬りヴィランは、切島の腕を取りながら背後に回り捻り上げ、背中を押して離れていた芦戸とマインハートに向かう!
「非道な!盾にするなど!?」
「マインハートさんかまわねぇ!俺ごと殴り飛ばせえ!!」
チームアップした仲間を盾にするなんとも非道!しかし上手い立ち回りにマインハートは歯噛みするが、構わんやれと切島は自分ごと長巻で薙ぎ払うよう叫んだ!
「そんなのやらせないって!」
「駄目だ芦戸!!近づいたらーー」
仲間を見捨てられるかと芦戸がその言葉に踏み込む、自分や鉄哲徹鐵は兎も角斬られるぞと待ったをかけたが止まらない!
来るか!切島を盾に向かって来たーーしかし、芦戸は切島からも、そして辻斬りヴィランの視界からも消えた!!
「なーー?」
「アシッドベール!」
「おわぁあ!?」
芦戸三奈が自ら酸を纏い、スライディングで地面を滑りながら視界から消えて、辻斬りヴィランの足首を掴んで引き、体勢を崩しつつ通過!辻斬りヴィランが切島を離せばーー。
「ぬぅうん!」
「ぐぅうーー!?」
マインハートの長巻の横薙が、辻斬りヴィランに叩きつけられる!それだけではない!
「ーーしまっ?!」
芦戸がスライディングした地面!酸により摩擦が消えて滑る事により、足で身体を支えれず辻斬りヴィランは押し込まれ横転!
そこへーー!
「行ってーー来い!!」
「よっしゃああ!!」
芦戸が酸で引いた滑る道へ!笑みを浮かべた鉄哲が投げ出された!!
「「スティールピンキーコンボ!!轢き逃げトレイン!!」」
発射された鉄哲徹鐵という人間ボブスレーが、倒れた辻斬りヴィランに直撃!さながら自動車事故の如く、辻斬りヴィランは勢いよく身体を回転させて宙を舞い、どしゃりとコンクリの地面へ叩きつけられた。
「おっと!」
滑って来た鉄哲を切島がしっかり受け止めて、4人は現れそして対峙した辻斬りヴィランを注視した。
流石に今ので倒れただろうと思ったが、うつ伏せになった身体を辻斬りヴィランは即座に跳ねて起き上がらせた。
右手に握った刀、その柄の後端を左手で拳を作って叩き、くるりと回して鞘に納めれば、一息吐いて辻斬りヴィランは言い放つ。
「見誤ったな……ここで退散させて貰う」
「「逃すと思ってんのかぁ!!」」
こいつ逃げる気だと、そんな事させねぇよと切島と鉄哲が飛び掛かる!しかし辻斬りヴィランは右手を振った瞬間、地面より何かが霧散した!
「うわぁあ!!」
「目が!?目潰しか!!」
目潰しか煙幕弾か、そんな物まで持って来ていたのかと2人視界を潰されたが、逃がさないと芦戸とマインハートが追撃!だがーー。
「なーー!?」
マインハートは見た、煙幕から宙に飛び出した、辻斬りヴィラン。その背中から黒い翼が、生えている姿を。ようやく見せた辻斬りヴィランの個性が、まさかこの場を逃げるただ一点の為に使われようとは。
「まぁいい……次は必ず斬る……貴様も、もう1人の弟子も、一番弟子も……そして京都の民全てを斬るまで終わらない……覚悟しておけ」
「待ちなさい!!」
羽ばたく黒翼が羽を落としながら、辻斬りヴィランは夜の空へと即座に消えて行った。
「逃げられた……まさか飛べる個性だったなんて」
「奇襲の時に空から来たのに、気付くべきだった、畜生!」
確かに追い詰めた筈だった、最後の最後で逃がしてしまったと芦戸と切島は悔しがる。最初の奇襲から、空から来ていたのに頭に入れとくべきだったと語るも遅い。
「というか……逃げるだけに個性使って、剣と体術だけで俺達4人がこうも立ち回られるとは……何なんだあの辻斬りヴィラン……」
何より、こちらは4人で連携して最後に何とか互角な戦いができたが、いいように場を支配された感覚に鉄哲は悔しがった。4人も居たのだ、それなのにたった1人に逃げられたとその事実が切島と芦戸に重くのしかかる。
「……仕方がありません、信じたくないですけど……あのヴィランの実力は、私も貴方達よりも上だった、4人でかからねば……皆斬られていたでしょう……」
マインハートも認めざるを得なかった、この場に居る4人の誰よりもあのヴィランは強かった、1人でも居なければ全員斬られていたとまで彼女は語る。長巻を鞘に収めたその表情は、力不足ゆえに撮り逃した悔しさに責任が浮かんでいた。
「撃退はできました、皆様一度戻りましょう……私も、今のヴィランの話をジュウモンジやジェリーと共有したい……何より……」
しかし、それだけではないとマインハートは言葉が詰まり、辻斬りヴィランが飛んで行った夜空を見上げ、戦いを終えたばかりの拳に力が入った。
「どうかしたんすか……マインハートさん」
「……私も、ヨロイムシャさんに話を聞かなければならなくなりました」
マインハートの胸中に、疑念が一つ生まれていた。それを晴らせるのは……ヨロイムシャしか居ないのだと、彼女は切島達を引き連れ桂駐屯地へ帰還する事にした。
「……二人ともさ、よく生きてたね、てか線が刻まれてるじゃん」
パトロールから帰還し、合流した緑谷達は早速接敵したマインハート組と情報共有……とはいかなかった。
「うっわぁああ……え?斬られて、その跡ってこと?」
「おう!まぁ全く効がなかったがな!!」
緑谷も葉隠も、鉄哲徹鐵の頭から顔の中心線に入った赤い線に、驚嘆と苦笑、心配ない混ぜになって大丈夫なのかと尋ねた。辻斬りヴィランの真っ向唐竹割の斬撃を見事受け止めた、ダメージもないのは事実だが、後はくっきりと残っていたのだから。
「切島はそれ、本当に大丈夫なのか?」
「ああ、けど安無嶺過武瑠無しだと斬られてたかもしれねぇ……」
切島も同じ様に袈裟に赤い跡が肩から腰にくっきりついていたので、尾白がマジマジと眺めるほどだった。
「で……接敵して、戦って、どうだった?マイン」
取り逃したマインを諌める事も、叱る事も無く、ジュウモンジは戦った辻斬りの感想だけを求めた。いい様にされて逃げられたからというのもあるが、何かあったからマインハートはここまで思い詰めていると、ジュウモンジが何とはなくだが察したのだ。
椅子に座ったマインハートは、少し言い淀んだが、ジュウモンジとジェリーに語り始める。
「戦った時に……あの辻斬り言ってたの、同門って……」
「あ?」
「刀の振り方も、足運びも……彼ら、雄英の子をいなす体術も、何もかも……ヨロイムシャの……私たちのものと同じで……私たちより洗練されて……強かった……!」
「それは……一体……」
信じたくも言いたくもない、搾り出す様な声。ジュウモンジも、ジェリーも、そんなまさか、あり得るのかと信じられないと言いたいが、彼女の声が事実であると突きつける。
「私たちが戦ったのは、紛れも無い……同門であるヨロイムシャの弟子で間違い無いよ……」
放たれたその事実に、ジュウモンジとジェリーは二人して硬直するしかなかった。